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イワテバイクライフ 2006年3月後半
3月31日(金)
山々に吹雪をもたらす雲の白さは、頭上の青空と鋭く対比。最高気温5度1分(盛岡) @岩手山麓
さらば黒い冬よ。おぞましき王女よ。 苔むした心根をプライドで塗り固め、 むくんだ頬を嫉妬の炎で赤く染めて、 是が非でも正統であろうとする者よ。 お前を乗せた舟は、既に岸を離れた。 お前の過分な冠は、錆びた思い出だ。 もはや逃げられぬ季節の別れと知り、 己の自伝を美しく飾りたてる驕慢よ。 ひとり正しかったという物語の為に、 罪無き者に十字架を負わせる悪魔よ。 その声色の傲慢不遜こそ性悪の証だ。 転落の濁流から城を振り返るがいい。 お前の影を焼き払う煙の清々しさを。 |
3月30日(木)
二日続きの降雪。積もる力は弱くても、頬を刺す痛さ。盛岡の最高気温(2度)は身にこたえる。 @盛岡市(玉山区)
虐げられたものは、やがて虐げる。 疎外されたものは、いずれ疎外する。 見下されたものは、見下すものを探し出す。 どん底で生まれたものは、 這い上がるだけでは飽き足らず、 のしあがり、なりあがることに夢中で、 目障りなものを虐げ、 幸せそうな者を疎外する。 意のままになる者で辺りを固め、 賛辞や拍手が途絶えることに我慢ならず、 檻の野犬さながら駆け巡る。 虐げられ、疎外され、見下された記憶に 一矢報いたくて、 今日も、ほら、何かを引きずり駆け上がる。 |
3月29日(水)
朝方の小雪は、夕刻に至り、ほぼ吹雪へ豹変。最高気温も5度前後など3月上旬並。 @盛岡市玉山区
どうした。 何を俯いている。 だめなものをだめだと断じたのは、 お前だ。 先送りされてきたものを、 ばっさり、やったのだ。 胡座をかいているものを、 きっぱり、やったのだ。 淀んだものを斬り払ったまでだ。 (見渡すがいい、春満開を) 我ながらよくやったと 褒めてやったらどうだ。 傷口から溢れる血を止めてやったら、どうだ。 |
3月28日(火)
最低気温が氷点下3度以下だとか、最高気温が13以上だとか、陰気な曇り空の下の出来事。夕方からの雨。 @盛岡市玉山区
その視線や足取り、事の運びの暗闇に、 私は、ある語感に行き着くのだ。 (君は、もしや、そうなのか) 獲物を無慈悲に追い詰めていく仕掛に、 私は、その語感を握り締めるのだ。 (君は、やはり、そうなのか) その友情は、歳月をかけた偽装工作か。 その交信は、月夜の海をわたる暗号か。 その微笑は、私に気付いた抹殺指令か。 夕暮れと共に 冬の疑念をとかすように 雨が降り出した。 (まさか、そんなはずはない)と。 |
3月27日(月)
高気圧の圏内を実感。温厚な光と青空は、やがて、澄み切った夕闇へ。 @盛岡市玉山区
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3月26日(日)
日曜日の朝に薄日射す春。昼過ぎには小雨降り出す。沿岸部では16〜17度まで気温上昇。 @岩手山麓
家から30分走った。 それで十分だった。 この光、この風。 例え国境を越えて走っても、 (家から30分)の光と風を遥かに越えるものに 出会えるという確証は無い。 思えば、 この光景の中に生きていくことを 選ばせた道程こそが、 私にとって、 最高のロングツーリングだったのかもしれない。
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3月25日(土)
空の蒼さは深みを増し、陽光は熱をおび、吹き渡る風には残雪が匂った。 @岩手山麓
幾度ここから見渡しても、 同じ眺めは無い。 幾度ここに辿り着いても、 同じ私ではない。 幾度ここで心を決めても、 同じ明日は無い。 (けれど) ここに辿り着き、心を決めて、 ひたすらに明日を見渡した日々は、 けして消えない。 |
3月24日(金)
冬の雲に包囲されながら、頭上の青空は、やがて彼方へ広がった。雪の下からあらわれた草や落ち葉も乾いて。 @盛岡市玉山区
この場所は、 私ひとり、言葉もなく居られるから、 いいのだ。 見渡す風景に人々の暮しがあるから、 なお、いいのだ。 この大地は、 地図だけでは仕組みが見えないから、 いいのだ。 天空が近いのに、手が届かないから、 なお、いいのだ。 |
3月23日(木)
朝方の霙は雨へ変わり冬の垢を洗った。どんなに濡れても風は柔和。 @盛岡市
季節は気紛れに色をもたらし、 染まる大地に筆致をあらわす。 どこにもある山野の藪の中で、 どうにも気乗りしない霙の朝。 腐葉土に心が沈みかけた途端、 辺りに走る色鉛筆の縦横無尽。 意図か偶然か折り重なる描線。 にじみでる春と冬のブレンド。 |
3月22日(水)
各地10度を越えて4月上旬並の陽気。夕刻からの薄雲で、束の間の春本番は遠のいた。 @盛岡市(北上川)
冬の妄想よ、人を追う病魔よ。 異臭を放つ己の影を振り返れ。 憎しみが過ぎると、 かすかな笑顔も許せない。 (まして、青空の下の私など) 嫉妬が燃え盛ると、 束の間の情愛も許せない。 (まして、白鳥を送る私など) 黙殺され続けると、 巡り合うことも許せない。 (まして、この大地と私など) |
3月21日(火)
風に光がとけて吹き渡り、深いスカイブルーに雲は泳いだ。春分の楽園は夕暮れと共に冷えて衰弱。 @花巻市
途方に暮れたら、基本に戻る。 置き去りにされても、やり直す。 無様な自分を見捨てはしない。 悔しさと肩組めるまで繰り返す。 出来ないと甘える心を突き放す。 先を行く姿があれば、凝視する。 遙か上をいく姿に、ただ見とれ、 その音に憧れ、その呼吸に恋をする。 (いつまで見ている。おまえの番だ) そうさ、これが今日の正念場。 乗り切るものを見渡して、 越える高さを見定めて 出来る力を絞り出せ。 挑む心を飛ばせ、真っ直ぐ。 |
3月20日(月)
強風猛烈、とりわけ沿岸。鉄道の運行、空の便もズタズタ。山岳に吹雪。みちのくの我慢比べ。 @盛岡市玉山区
君は、予言者みたいに微笑む。 (ほら、やっぱり) 求め過ぎれば、追い詰める。 強く握れば、壊れてしまう。 言葉に尽くすと、棘を刺す。 背を向ければ、離れて凍る。 優しく撫でれば、膿が出る。 信じるほどに、わけありで、 別れを告げれば、毒を吐く。 (で、どうするの?) 春の吹雪に向かって目を閉じて、 白く染まり風を聞く。 昨日を持ち去るものを待つ。 |
3月19日(日)
朝方の小雨。日中は青空に沸き立ち流れる波乱の雲。山並みを覆い、霞ませ、つるべ落としの気温。 @盛岡市玉山区
死、というのか、 命を失うということは、 どういうことなのか、 いまだ、ぼんやりとしていて、 よく飲み込めないのですが、 この地を失うということが、 どういうことなのか、 それは、もう、 実によくわかるのです。 つまり、 私を失う、ということです。 |
3月18日(土)
刺すものも揺さぶるものも無い。安穏な光に包まれ、山々は霞み、最高気温12〜13度。夕刻の曇天。 @岩手山麓
尊敬が軽蔑に変ろうと、 僕らは、ここで、ずっと。 希望が落胆に変ろうと、 大空は、彼方へ、ずっと。 情熱が倦怠に変ろうと、 大地は、季節と、ずっと。 」 明日が昨日に変ろうと、 歳月は、星々と、ずっと。 |
3月17日(金)
春の嵐で目を覚ます。盛岡で最大瞬間風速25mを超える。午後には天気回復。透明な夕闇に岩手山の影も鮮明。 @滝沢村
酒とともに語る思い出は、 やがて真実から遠ざかる。 楽観的に語るあしたなど、 やがて希望から遠ざかる。 春の嵐を聞きながら、 酔い潰れ、あるいは、絶望する者よ、 まずは、目を見開け。 いかに鮮やかな出来事も 終わってしまえば過去のひとつだ。 いかに精彩無き出来事も 迎えるべきものは未来のひとつだ。 |
3月16日(木)
曇り空ながら風はやわらかく、なごり雪のとけた原野は深き春泥の海。 @盛岡市近郊
冬をやりすごし、 君をやりすごし、 私をやりすごす。 無縁なものに別れを告げ、 やがて来る静寂の王国を 狂おしいほどに待ち望み、 この瞬間すらもどかしく、 何を聞いてもうわのそら。 何が起きてもあわてない。 すべて終わるその日まで、 脇目もふらずかたづける。 無理難題でもかたづける。 次から次へとかたづける。 見事逃げ切るその日まで、 真顔でしのぎかたづける。 傷のひとつもいとわない。 |