イワテバイクライフ 2008年 1月前半
2008年1月15日(火)
最低気温・氷点下5度1分(盛岡)は標準的。日中は予想以上の晴天だったが、氷をとかすほどの力は無かった。 @花巻市(トライアルパーク)
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きのうのトライで かすかに曲がったシフトレバーを補修した。 アルミニュウムの部品だから、 気持だけをハンマーの先に込めて コツコツ叩き続けた。 指がかじかむころ、本来の形を取り戻した。 たったそれだけのことで またトライしたくなる。 花巻の山には、 昨日以上の青空があった。 たったひとりの練習は、 昨日の仲間の轍を辿ることから始まった。 凍ったラインに、 昨日の笑顔や歓声が重なる。 額に汗がにじむ頃、 昨日より一歩厳しいラインになっていく。 たったひとり 今日の道筋を刻んでいく。 |
2008年1月14日(月)
よく晴れた。この冬一番の冷え込み。でも藪川の氷点下22度8分を盛岡の最低気温と全国放送されても・・・。 @花巻市(トライアルパーク)
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冬休みの終った大学生を 盛岡駅へ送った。 そのまま夫婦は 岩手山麓の温泉に向かった。 露天風呂は、私ひとりだった。 屋根からとけた雪が雪崩となって落ちてきた。 湯けむりの彼方に北上高地を見渡しながら、 (何故、うちの子供は頭が大きいのか)と思った。 湯上がりのソフトクリームを舐めながら、 (今頃、あいつは福島あたりか)と思った。 遅れて風呂から出た女房に (うまいから、お前も食べろ)と 蕎麦茶の味のソフトクリームを買わせた。 青空を二人で見上げていて 祝日だったことを思い出した。 山には仲間がいるかもしれない。 トライアルマシーンを車に積み込んで 花巻の山中へ向かった。 案の定、にぎやかに練習ができた。 少しクラッチレバーを曲げた。 夕闇にヘッドライトを向けて盛岡に戻った。 師匠の店に立ち寄ると MFJのライセンスが届いていた。 飲みたくなった。なにせ祝日だ。 炬燵で冷酒をすすった。 とっくに学舎へ戻ったはずの子供から 特に連絡はない。 (無事着いたんだな)と呟きながら 二合飲んだ。 |
2007年1月13日(日)
ほぼ岩手全域で氷点下(真冬日)。所により強風が新雪を巻き上げて地吹雪。いよいよ「らしく」なってきた。 @盛岡市
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幸せな者は 冬を選び取る。 氷雪を美しいと思える 微熱にあふれているから。 苦しむ者は 春に手を伸ばす。 心の氷河をとかすのは 命をもたらす光だけだから。 さて私は、 夏の終わりの夕暮れに 立ち尽くす。 春から夏へ 燃え盛った私の余韻が漂っているから。 秋から冬へ 深く沈潜する私の影が伸びていくから。 |
2008年1月12日(土)
暗い冬空に岩手山の印象は希薄だった。真冬日の街は氷に閉ざされたが、引き換えに積雪は無かった。 @盛岡市
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ここに いるはずのない者になってみたくて、 何かを捨てた。 (それはそれで痛快な日々だ) ここに ありえない事実を深々と刻みたくて、 何かを捨てた。 (それはそれで豊かな日々だ) ここを離れる理由さえ失って ここを愛し続けているうちに もう帰る所のない私になった。 もう何者でもない私になった。 もう何事でもない私になった。 もはや、ここに、 熱望することはない。 おそれることもない。 この土に還り、美しく凍る日を ごく自然に思い描ける私が嬉しくて 雪にまみれるばかりだ。 |
2008年1月11日(金)
夕べの新雪で薄化粧した街から、青空はみるみる消えて、夕闇をちりちり刺す小雪が街の化粧を厚くした。 @雫石町
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たとえ正しくても 正しいと言い切れば 否定されることもある。 たとえ誤っていても ひたすらに謙虚なら、 肯定されることもある。 まったく このもやもやした霧に 舌打ちしたところで、誰も振り返らない。 唾を吐いたところで、牙をむいたところで、 気にとめる者はいない。 見渡す一面が平穏である限り、 人ひとりの正しさや誤りなど、 ひとかけらの雪のようだ。 |
2008年1月10日(木)
今朝の最低気温は氷点下7度9分(盛岡)。健気な青空と陽射しが精一杯挽回して、最高気温は0度8分(盛岡)だった。 @盛岡市
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運が良いとか悪いとか。 それはさておき 今、太陽は西の山に沈みかけている。 (さあ、この場を離れろ) 明日が明るいか暗いか それはさておき 今、風にまじる寒気の針は一層鋭い。 (さあ、この指を温めろ) 何を得たとか失ったとか、 それはさておき、 今、血流は凍結して痺れ出している。 (さあ、この命を燃やせ) この丘に突っ立つ者には、 進むか退くか、 ただ、それだけだ。 凍って眠るか生きて還るか、 それだけのことだ。 (極寒の闇に、心だけは狼のように静かだ) |
2008年1月9日(水)
鉛色の空から、絶えず雪は舞い、時に街を白く霞ませ、気温など、ほぼ真冬日(盛岡で0度1分)状態だった。 @盛岡市
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この村の 幾百という朝を駆け抜けた。 その度、村の風を胸におさめた。 すると、この村が、 本当の生まれ故郷のように思えて来る。 (まざまざと、扉の向こう側が見えてくる) 釜戸の鍋に煮立っている味噌汁。 土間のストーブの轟々たる熱波。 炬燵の上に開く地元紙のインク。 遅れて届いた賀状には墨の経文。 仏間の蜜柑に絡みつく線香の煙。 むせ返る樟脳の海深く眠る喪服。 とうの昔に満期を迎えた定期預金。 こじれにこじれた土地問題の証書。 屋根裏に隠し通された伝来の凶器。 すでに卵を産まない庭先の倦怠。 天井を睨み介護の手を待つ咳払い。 ひた隠しにされた男女のなれの果て。 ついに居場所のない三男の高級車。 確執で宙に浮いたままの手打ち式。 村を捨てる夜まで演じ続ける嫁の顔。 脳梗塞の日まで倒れ続ける一升瓶。 藁まで凍る納屋の薄暗がりの密談。 嗚呼、いろいろありながら、 今朝も生きている故郷よ。 懐かしい風の香りだ。 暮らしの匂いだ。 ※画像と本文は一切関係ありません。 |
2008年1月8日(火)
朝夕、雪が舞ったが、日中は青空ものぞき、積もった雪は、ゆるみ、とけだした。 @花巻市(トライアルパーク)
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たったひとり、 何を どうすれば よいのか。 わからなければ、 まずは、 走り出すことです。 自身が ごく自然に出来ることを 確かめるのです。 そこに刻まれた 精一杯の足跡を 愛しんで愛しんで けれど安住せず、 もっと厳しく もっと鋭角なわたくしに出会うまで、 走り続けるのです。 そのような道筋の果てに、 わたくしの居場所が、 定まっていくのです。 明らかになるのです。 |
2008年1月7日(月)
霞み加減の青空のもと、最高気温は4度8分(盛岡)だったから、大きな通りの雪はとけた。それだけの一日。 @岩手山麓
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私にわかることは、 まさに、ここまで来たということだけです。 この先 彼方の雪原に 心だけは駆け出すのですが、 その後ろ姿が、あまりに眩しくて、 私は、ここで、私を見送るばかりです。 しなやかに跳び 鋭く雪を蹴散らす私の幻は、 やがて、手を振り、 黒い森の中へ消えていくのです。 嗚呼、未来とは、 何と希望に満ちて、 そして、不確かなものでしょう。 ここに立ち尽くし、 振り返れば、 切り拓いてきた道が、私の轍が、 春の予感の中に とけて消えようとしています。 確かなことは、 ここに取り残された私を包み隠す夕闇が そこまで来ているということです。 |
2008年1月6日(日)
暦の上では、そろそろ寒さが厳しくなる頃「小寒」。そんなニュースを笑う光に包まれた。 @盛岡市
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走ることは、 刻々の変化だ。 ところが、 私の何かが、 過ぎ去った瞬間に居つこうとする。 うまくいった記憶が、どこかに残っていて、 新たな局面に対処できると錯覚したがる。 風であり続けるなら、 じっとしようとする私の何かを 捨てなければならない。 拘りや思い込み、さては流儀まで 即座に連続的に捨て続けるということだ。 流れ来るものを押し返すのではなく、 瞬間、やわらかく受け止め、後方へ送り流す。 流れ来るものの勢いや重さを 我が身のバランスに換えていく。 その動作は、川の水の如く、 同じものは、けして無い。 自然であることは、 すなわち、 直前の私を捨てること、やめることの 連続なのだ。 |
2008年1月5日(土)
青空は、濃淡の波こそあれ広がった。陽射しは、強弱の波こそあれ射し込んだ。そして夕闇に雪が舞い始めた。 @盛岡市(姫神山麓)
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(どんな森にも臆病な獣はいる) 光の中では賛成し、 闇に紛れると反対するものよ。 春が来れば肯定し、 冬を迎えると否定するものよ。 酔えば受け入れ、 醒めれば窓を閉ざすものよ。 (臆面もない表と裏よ) 反対する理由を他人に預け、 自分は賛成してみせる者よ。 反対する者は、常に匿名で、 賛成する者は、不思議に実名だ。 そのように立ち回るものよ。臆病な獣よ、 闇の中から すべて見られていることを知れ。 反対と否定と拒絶の理由を 言えるものなら、声に出せ。 (それこそ、お前の正体だ) |
2008年1月4日(金)
冬晴れは、太陽が高いうちこそ気分をとかすが、ひとたび西に傾き出すと、氷に磨きをかける。 @盛岡市
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往来の新雪は、 永久に無垢ではいられない。 足跡が足跡を踏み付け、 轍が轍を断ち切り、 それは、にぎやかだ。 (けれど、法則はある) 細い轍は、受け止めてくれる。 ひとたびはまると、外れられないが、 誰かの重さが、 ひと筋に雪を踏みしめていて 私の車輪を受け止める。 太い轍は、遂に油断ならない。 一見思いのままに道筋を選べるが、 誰かの重さは 分散されて固められてはおらず、 崩れ沈んで私を乱す。 (似ている) さんざん思い知らされた 何かの道のようだ。 |
2008年1月3日(木)
単に「真冬日」ではなかったというだけの真冬の一日。風弱く、青空もあったから、厳しい印象は希薄。 @花巻市(トライアルパーク)
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(ほほお・・・) そうかい。 一面の雪で走れないのかい。 (それは、大変だ) では、雪をかいたらどうだい。 そうかい。 忙し過ぎて遊べないのかい。 (それは、不幸だ) では、何かを捨てて楽しんだらどうだい。 そうかい。 壁が立ちはだかっているのかい。 (それは、面倒 だ) では、盛大に爆破したらどうだい。 そうかい。 頂が高過ぎて届かないのかい。 (それは、上等だ) では、死ぬまで挑んだらどうだい。 |
2008年1月2日(水)
大雪の気配も遠ざかり、広い青空が戻った。最高気温1度6分とはいえ、とけた雪が氷に変っていた。 @岩手山麓
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リセットされたカレンダーなど 何を保障するものではない。 世界は刻々崩壊している。 鮮血はどくどく流れている。 絶望は更に加速している。 (ところが、お前ときたら) その笑いは 糾弾の刃をかわすものなのか。 その大食は 飢餓を忘れさせるものなのか。 その演歌は、 行く末を哀れみ慰めるものか。 その熱戦は、 真の敵から目をそらせる為か。 馬鹿騒ぎが終り、 人々が、お前から離れる頃には、 桁違いの困難が聳えている。 それでも、なお、お前は 笑って、食って、歌っているのか。 すべてのスイッチが断ち切られる日まで、 流れ続けるのか。 浮かれ続けるのか。 |
2008年1月1日(火)
音もなく前夜の雪が白銀の厚みを増していた。日中は青空も広がったが、真冬日(盛岡で氷点下0度1分)だった。 @盛岡市(材木町・宮澤賢治像)
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ねえ、先生。 私はね、やっと、わかってきたんだ。 ここに骨を埋めようと思ったのはね、 ここが気に入ったからじゃない。 ここで走り続ける私が 嬉しかったんだよ。 ねえ、先生。わかるかい。 この冬が好きなわけじゃない。 この冬に悠々としていられる私が 嬉しかったんだよ。 ねえ、先生。許してくれるかい。 私が追いかけているのは、 あなたの理想じゃなくて、 私が見渡す一面なんだよ。 果てしなく拓かれた大地に、 私の心が深く深く根を張って、 ここを離れられなくなっちまったんだよ。 |