イワテバイクライフ 2008年 1月後半
2008年1月31日(木)
最高気温+1度(盛岡)は、さておき、穏和な青空が広がった。けれで夕闇は鋭利な寒気にふるえた。 @盛岡市
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(どんな高慢不遜も、いずれ和解を求める) 衰えとともに 笑顔をふりまくようになる。 足蹴にした者にさえ、目を細める。 (それを承知で、微笑み返す) 心細くなると 連絡先を無闇に教えたがる。 黙殺し続けた者にさえ、電話する。 (それを承知で、長話に応じる) 下り坂に向うと 穏和な日々の記憶だけ語る。 叩きつけた理屈を忘れ、情にすがる。 (それを承知で、深く頷き返す) 先細り、消え行く者ほど 爪を立てて滑り落ちていくから、 恨みの毒を、ひっかき傷に込めるから、 邪険にせず、 やさしく手を取り、 ゆっくり指を解き、 見送ってあげる。 |
2008年1月30日(水)
0度を下回ることなく朝を迎えた。日中も3度1分まで上がった(盛岡)。束の間、早春の青空。 @岩手山麓
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緯度や経度で特定できたものが、 そこにあるとは限らない。 風が移ろえば、雲も千切れる。 光が移ろえば、影は踊り去る。 時が移ろえば、色彩は変わる。 見渡す一面は、今日限り。 聞こえる歌は、今日限り。 流れる大地は、心の出来事。 誰かの鏡を盗み見て 誰かの轍を追ってみても、 行き着く場所に待つものは、 自分を映す今日限りの鏡。 |
2008年1月29日(火)
最低気温−2度7分、最高気温+4度4分。凍り付いた雪の手強さは消えて、泥水の飛沫に濡れた。早春幻想の一日。 @岩手山麓
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義務など、 てきぱき片付けて、 自由になることだ。 (自らに何をすべきか考えろ) 目標など さっさと達成して、 夢を広げることだ。 (目標は、それ自体劣化する) 形式など ばっさり切り捨て、 核心へ迫ることだ。 (意志を持って本題へ移れ) |
2008年1月28日(月)
最低気温・マイナス4度5分。最高気温・プラス3度5分。凍っていた雪がとけて崩れて大騒ぎ。 @岩手山麓
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走らなくても、いい。 ここで小さく呼吸しているだけで、いい。 跳ばなくても、いい。 こうして丘の向こうを思うだけで、いい。 挑まなくても、いい。 この厳しい冬に正対するだけで、いい。 じっと目を閉じて、 雲の気配を感じて、 私の今日が、大地と繋がっていることを 感じられるなら、 こうしているだけで 雪をとかす涙が溢れる。 |
2008年1月27日(日)
最低気温・マイナス10度8分、最高気温・プラス0度9分(盛岡)。青空の下で、かすかな寒気の緩みは感じられた。 @滝沢村
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言葉を失うほど純粋善良な君よ。 理想の壇上に颯爽と立ちたければ、 こう叫んでいるがいい。 「皆仲良くしよう」と。 「花を育てよう」と。 「歌を歌おう」と。 「慎ましく暮らそう」と。 「自然を大切にしよう」と。 「助け合い生きよう」と。 「日々は芸術である」と。 目を輝かせて叫んでいてくれ。 惨憺たる前線を這い回る俺は、 足手まといを置き去りにし、 怒りの種を撒き散らし、 呼吸を感じるのは狙撃の寸前ぐらいで、、 食える時には腹いっぱい詰め込み、 花畑に塹壕を掘り、 最後の弾丸を分け与えず、 日々は生死の境であると 氷雪の中で叫んでいる。 爆撃か破綻か天災で同時に終る俺達は、 その日まで、この街で、 それぞれでいよう。 |
2008年1月26日(土)
濃厚な空の蒼さは、山並みを覆う冬雲の白さを引き立てるだけ。結局、真冬日(盛岡)。夕闇と共に更なる氷の世界へ。 @岩手山麓
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すでに 砲弾が自動装填された120mm砲は、 雪原の彼方を見据えていた。 総重量50t。 鋼鉄の虎は、 キャタピラーを新雪に食い込ませて停まった。 標的は、追尾され、認識され、判別されていた。 それは、 高速ディーゼルエンジンが押し進める 重戦車ではなく、 火器を搭載した装甲車両の隊列でもなかった。 見渡す限りの冬に 時速20km/hで轍を刻む人影ひとつ。 50ccの4サイクル単気筒エンジン。 背負うバッグには小型カメラ。 それが標的のすべてだった。 「いまだ人に見られたことのない大地の秘密を 記録させてはならない」 砲塔に届いた命令は、正確に実行された。 山麓の天空に雷鳴が轟いた。 雪原を吹き飛ばした風に乗って、 真っ赤なダイヤモンドダストが舞った。 |
2008年1月25日(金)
雪雲は流れ去り、青空は広がり、昨日の膨大な雪が残された。とかしたくても、とけない昨日。 @盛岡市
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他人(ひと)は、 私すら忘れていた私のことを 今日の私のことのように 話し出す。 私は、 湧き水のように 微笑み、うなずき、聞き流し、 あさっての私を 考えている。 さて、 今日の私のことを 遥か遠い未来 誰かが気紛れに思い出すかもしれないから、 居ずまいだけは正しておく。 |
2008年1月24日(木)
未明の雪は、朝方から吹雪き出し、分厚い銀世界に、大雪・強風をめぐる警報や注意報が飛び交った。 @盛岡市
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川に棲むものが 大魚かどうか知りたければ、 まずい餌をまいてみるといい。 雑魚は、 水を騒がせ食い付いて来る。 舞台上のものが、 聡明かどうか知りたければ、 まずい台本を手渡せばいい。 大根は、 台詞を丸呑みしようとする。 城を守るものが、 忠臣かどうか知りたければ、 まずい知らせを流すといい。 偽者は、 ひたすら隠し通そうとする。 |
2008年1月23日(水)
晴天続きも今日で終り。グレーに染まった空は、明日の吹雪と雷を予告する。 @盛岡市
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無心に歩む こんな、ささやかなもののあとを 付け回してはいけません。 こんな、薄暗いものに意見したところで、 昨日の轍は消えません。 こんな、片隅のものを嘲笑ってみても、 今日の風は止まりません。 こんな、単純なものに毒を吐いたところで、 明日の方角は変わりません。 どうか、賢く立派なあなた様は、 あなた様以上に賢く立派な人々を追いかけ、 至極まっとうで、 誰にもわかる人生訓などを 高らかに謳っていてください。 アルミニュウムの弁当箱を包む新聞紙のように ほのぼのとした人間賛歌などを 綴っていてください。 |
愛機:ホンダ モンキー |
2008年1月22日(火)
氷点下9度から+0度9分まで大気を和らげたのは、早春を思わせる青空と太陽の微熱だった。 @花巻市(トライアルパーク)
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うまくいったと喜ぶことが 練習ではない。 うまくいくことだけ繰り返したところで 何も変らない。 とことん、うまくいかない私に向き合い、 その理由を 探り出したり、 突き付けられることから すべては始まる。 ひとつひとつ 点検し、解決し、 正しい私を掴み取るまでの道程こそ、 ときめく旅なのだ。 挑むほどに、 困難の沼は深まり、 越えるほどに、 めざす山は遠ざかる。 けれど、 今日一日を終えた私は、 私の最前線に立つ私に違いないから、 どんなに苦しい汗も、 確信の微熱に乾くのだ。 |
ライダー:米澤さん マシーン:GASGAS TXT PRO250 |
2008年1月21日(月)
凍り付きそうな心に「大寒」という通過点が告げられる。最高気温・氷点下0度9分は、数字以上の切れ味だった。 @岩手山麓
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刺してくるものがある。 進むほどに鋭くなる北風だ。 (甘くないぞ)と胸板を貫く。 尋ね来るものがある。 走り続ける理由を夜が問う。 (先はないぞ)と言い残す。 踊らせるものがある。 誰かが幸福をめざした跡だ。 (狂う他ない)とけしかける。 嗚呼、俺は、 蒼白い山麓に 記憶すべき自分を見失い 寒気に身をさらす。 凍る血が針となって心を刺す。 痛みに膝をつき、 がくがくと呻く無様こそ、 とにもかくにも 今日ここまでの 我が身のすべてだ。 |
2008年1月20日(日)
依然、厳しい冷え込みではあるが、青空の下の最高気温・+1度7分の有難さは、格別だ。 @花巻市(トライアルパーク)
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幾多の空の下で 何を積み重ねた? (果てしない思いさ) 流れる雲を見上げ 何を探り当てた? (私の居場所をさ) 雪が舞う山の中で 何が見えて来た? (手の届かぬ夢さ) いつ終るとも、 いつまで安住できるとも いつになったら掴み取れるとも 答えの無い日々こそが、 黙々と道を拓いていくのかもしれない。 |
2008年1月19日(土)
この冬の最低気温を更新。盛岡で氷点下11度4分。青空が頑張り、かろうじて真冬日は免れた。 @盛岡市
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ここに来る気があるかないか。 それは意志だ。お前しだいだ。 ここに立つ気があるかどうか。 それは気概だ。お前しだいだ。 ここに求めるものがあるのか。 それは若さだ。お前しだいだ。 ここに血が流れ続けるか否か。 それは体温だ。お前しだいだ。 ここで心底納得がいくかどうか。 それは度量だ。お前しだいだ。 ここを故郷と呼べるかどうか。 それは情念だ。お前しだいだ。 ここが出発点と思えるか否か。 それは大志だ。お前しだいだ。 |
2008年1月18日(金)
最低気温は氷点下10度2分(盛岡)。平年を4度下回る冷え込み。青空もあったが、結局、真冬日。夕刻の山沿いに小雪。 @盛岡市
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明日の王は 昨日の王を 貶(おとし)めることから始める。 血眼で過去の失政を掘り起し、 喧伝し、謝罪させ、 どれほど 昨日までが間違っていたのか 声高に指し示す。 (だから私でなくてはならないのだ)と 意気揚々と玉座を占める。 並べ立てる正論に刃向かう者も無く、 ちやほやされて 昨日までの一切を焼き払う。 その勢いで、 自らの城まで灰にして いずれ 明後日の王に追放される。 冷えた城の暗闇だけが、 見飽きた歴史を眺めて、呟く。 (今日をまっとうする王は、遂に現れない) |
2008年1月17日(木)
晴天の暁に記録した氷点下11度2分(盛岡)は、この冬一番の冷え込み。全国的には前頭上位程度。 @盛岡市
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すんなり仕事を片付けても 透明な汗を浮かべ 息を弾ませるんだよ。 (チョロイものだと言ってはいけない) たっぷり燃料が残っていても すべて使い切った瞳で タンクの中を覗くんだよ。 (まだ走れると威張ってはいけない) 小さな丘をひと跨ぎしても、 「いい山登りでした」と 深く感謝するんだよ。 (こんなものかと笑ってはいけない) もの静かに責任をまっとうしたら、 「では、お先に」と明るく立ち去り、 さっさと昨日の続きを始めるんだよ。 有り余るものは、 夜が来る前に焼き捨てるんだよ。 |
2008年1月16日(水)
あるテレビでは、藪川のことを「しきかわ」と誤読していたが、岩手の冷え込みは認知されて来たようだ。本日も晴天・真冬日。 @岩手山麓
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傾いていく塔を見上げ、 その頂を求めるあなたを 私は、深く尊敬します。 人々の信任を得て 実権を握ろうとするあなたに 私は、畏敬の念を抱きます。 すでに修復不能の角度に至った事態を 花で飾り、絵で飾り、夢で覆い 人々を励まし、勇気付け、 けれど、ついに重力に抗えず 倒壊していくことと引き換えに手に入れる名誉こそ あなたが熱望するものであることを 私は、充分理解しています。 どんなに無残な最期を迎えようと、 私は拍手します。 素晴らしい勇気を讃えます。 だから、塔の傾斜が加速する前に どうか早く、一刻も早く、 頂に駆け上がってください。 再建への計画を語ってください。 束の間の勇姿を見せてください。 命を捧げる覚悟を示してください。 その純粋と善良を目の当たりに出来ると思うと、 私は、気も狂わんばかりです。 |