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イワテバイクライフ 2010年7月前半
2010年7月15日(木)
小雨断続。北上川も土の色を混ぜて勢いを増していた。梅雨の出口が見えない。 @岩手山麓
思い通りにしようとするから、 誰かが邪魔に思えて来るんだ。 からっぽにおなりよ。 (ほら、楽ちんだよ) 完璧なものを追い求めるから、 自分が無能に思えて来るんだ。 まずは失敗からだよ。 (ほら、笑えるよ) 美しい夢ばかり見たがるから、 汚れることを毛嫌いするんだ。 泥んこにおなりよ。 (ほら、自由だよ) 今日限りの花さえ心得ている。 |
2010年7月14日(水)
西日本の豪雨に較べれば「おしめり」程度の降雨。気温も20度に届かず(盛岡)、ようやく岩手の梅雨らしさ。 @盛岡市
おいらに 不条理な荷を負わすのは、 あんたの勝手さ。 だがな、 それを担いで何歩進むか、 それは、おいらの勝手さ。 形の中の苦しみなんて、 いつでも、どこでも、棄てられる。 自らの覚悟で負ったものとは 比べようも無い軽さだということを あんたは知らない。 歯を食いしばる値打ちも無いことを あんたは知らない。 机の上で生きて来たあんたには、 到底想像出来ない。 そんなあんたも、早晩思い知る。 しっぺ返しは、辛辣なタイミングで押し寄せることを。 |
2010年7月13日(火)
降りそうで降らない雨。曖昧な梅雨空。夏の高校野球開幕。 @岩手山麓
昨日を読み返して すんなり飲み込めたら、疑うことだ。 明日の目を気にして その日限りのニュアンスを 切り捨てていなかったか? 一筋縄ではいかないイメージを 通りいっぺんの言葉にすり替えなかったか? 自分とは似ても似つかない者になって 見知らぬ明日に媚を売らなかったか? 今日の魂は、 なにひとつ解決されないまま、夜を越えて、 明日の光の中で見失われ、忘れ去られ、 後には、不可解な日記が残されるだけだ。 ならば、明日の私よ。 今日という岩場に刻まれた道筋(ルート)に どうか目を凝らしてくれ。手足を掛けてくれ。 辿り着けなかった場所を確かめてくれ。 あるいは、めざしたものが、 真実であったのか、虚像であったのか、 見届けてくれ。 (引き継がれていく意志こそが、私だ) |
2010年7月12日(月)
沿岸部はフェーン現象で真夏日。盛岡あたりは、かろうじて夏日。夜はひんやり。 @姫神山麓
この地に根をおろし、 命を養い、 情けをもらい、 夢を与えられ、 やがて、毒まで吸わされ、 骨になることを許されるのか。 |
2010年7月11日(日)
未来を選択する一日は、白濁の風が吹き渡り、実にぼんやりしていた。
今日という日に 居るはずの無い場所に佇み、 波音に洗われれば、 また、ひとつ心が決まる。 (意外な明日が見えて来る) |
2010年7月10日(土)
岩手の広範囲に、大雨や雷の注意報が出たけれど、まあ、大事に至らず、晴れ間のある夕闇。 @盛岡市
猛烈な剣の修業だった。 嵐のような白刃の中で、 その声を聞いた。 「よいか。 人は、己の価値で人を支配したがる。 それを失うことを 人は恐れるはずだと思い込む。 それを欲しがって 人は無理を重ねると信じ込む。 それを待ち焦がれ、 人は歳月を数えると決め付ける。 (そこを突くのだ) 守ると見せて、捨てる。 従うと見せて、外れる。 追うと見せて、離れる。」 怒りとは無縁の太刀だった。 先を読ませない太刀だった。 本心を見透かす太刀だった。 |
2010年7月9日(金)
油断ならない曇天に、かすかな陽射しを見付け、三陸に出てみれば、冷えた霧と雷鳴。帰路の小雨。 @久慈市
形だけの笑顔を作り、友情を装い、 輝いてみせる子供達より、 希望を奪われても、 顔色ひとつ変えず、 境遇を受け入れる子供達こそ、 抱きしめてあげたい。 絶望を感情に手渡すことなく、 今日一日を生き抜く健気な冷静を 抱きしめてあげたい。 |
2010年7月8日(木)
炎熱の旅から戻って見れば、北国の夏の夕暮れ。乾いて澄んだ風だった。 @岩手山麓
明日を探すな。 探すから、見つからない。 明日を思うな。 思うから、ままならない。 明日を描くな。 描くから、消えてしまう。 明日を明かすな。 明かすから、閉ざされる。 知らぬふりして待つがいい。 偶然出くわしたような顔で、 受け取ればいい。 (まんまと、ね) |
2010年7月6日(火)
紺碧の空に積乱雲。その純白の爆発と上昇は、実にエネルギッシュだった。5日連続の真夏日(盛岡)。 @盛岡市
この空の下で 私が過ごしてしまった歳月を 誰も奪えない。 私が享受してしまった至福を 誰も汚せない。 私が深々刻んでしまった轍を 誰も消せない。 すべては、記憶だから、 私の現在にとけてしまって、探り出せない。 それが忌々しいと言って、 私が重ねてしまった日々を 相殺したがる風が吹く。 (だが、お気の毒だね) 駅のホームには、発車を告げるベルだ。 港からは、出航を告げる汽笛だ。 私の「勝ち逃げ」は確定したのだ。 (丸儲けのまま、おさらばだ) 形ばかりの「罰ゲーム」など、束の間の余興だ。 愚かな「辻褄合わせ」は、手遅れだ。 |
2010年7月5日(月)
どうも、このところ小さな地震が続く。真夏日の空には、夏と秋の雲。 @葛巻町
「ちょっと、あなた」 仕事に出かける僕を君は呼び止めた。 「どうした?背中に何か付いているか?」 と振り向けば、 君は、ふふっと笑って首を振った。 「何もついていないわ。 さっぱりしたものよ。 重荷だとか、迷いだとか、憂いだとか、 まるで影の無い後ろ姿ね」 ぽんと背中を叩く君の手が、 (また、何か決心したのね)と呟いた。 |
2010年7月4日(日)
予報を嘲笑う青空が広がった。勿論、真夏日(盛岡)。暗くなって、束の間の大雨警報が出たが、ノー・プロブレム。 @岩手山麓
群には、それぞれの流儀がある。 たいていは、 中心人物の振る舞いや好みを 取り巻きが体系付けたもので、 一種の空気なのだ。 新参者は、それを読み、忖度し、 とるべき態度を学ぶことになる。 (過不足無ければ、まずは合格だ) 誠に難儀な流儀ではあっても、 群の絆を強めたり、 群の輪を広げたり、 群の格を高めるものとされているから、 どれほど馬鹿げていても、 私見など口にしてはならず、 ひたすらに隊列を乱さず、 歌い踊る時と所をわきまえ、 はしゃぎ、おどける呼吸を外さず、 集団演技を完成させることになる。 そんな旅を繰り返して 人は大人になると信じる者がいる。 さて、私は、 一日ぐらいなら、群の優等生でいられるが、 二日も経つと、口数が減り、笑顔も消える。 三日目には、群からはぐれ、一人風になる。 (童のように道と戯れる) |
2010年7月3日(土)
不快指数の高い真夏日だった。大雨・洪水警報。そして夕刻の雷雨。 @岩手山麓
大きな街だった。 駅のホームには、 ビルの影が折り重なっていた。 電車にどっと人がなだれ込んで来た。 老夫婦がいた。 私は、立ち上がり席を譲った。 二人の感謝の振る舞いが 父母に似ていたので、 私も微笑んで、大きな鞄を持ってあげた。 窓外には、摩天楼が西日を反射していた。 私は、はっとした。 眼前のビルで仕事があることを思い出した。 発車を告げるベルが鳴り出す。 私は、人をかき分け電車を飛び降りた。 閉まるドアの向うで、 夫婦が私の慌てぶりを見ていた。 滑り出す電車の中で、 老いた口元がかすかに動いた。 (お前は、いつもそうだ) 私の手には、遠ざかる老夫婦の鞄が残された。 そんな夢を見た。 |
2010年7月2日(金)
積乱雲の競演。核爆発の群のようだった。宵闇は雨に濡れ、雷鳴に揺れた。 @姫神山麓
「俺のことを係長と呼べ」 それが男の口癖だった。 仲間があだ名で呼ぼうものなら 大変な剣幕で例の台詞を繰り返した。 その要求を守る限り上機嫌だったから、 まわりの者は、そう呼び続け、 男の名前さえ忘れ果てた。 やがて、男は老い、隠居した。 それでも、人々は、 男を「係長さん」と呼んで笑った。 さて、男の墓には、 「係長」とだけ刻まれていた。 |
2010年7月1日(木)
まあ、いつもの傾向だが、予報は「悲観的」。案の定、昼前から所々青空。最高気温も29度4分(盛岡) @盛岡市
駄目な支配者の 駄目さ加減を 広く、はっきり示す方法には、 いくつかあるのだが、 駄目な命令を 忠実に実行してみせるのも、 ひとつの手ではある。 |