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イワテバイクライフ 2010年11月後半


2010年11月30日(火)
雪が積った昨日の暗さのせいか、今日の慎ましい青空も有難かった。街はすっかり乾いたが、山の雪はとけて、ゆるんで濡れていた。 @岩手山麓



  思うほど敵ばかりじゃない。
  思いがけず味方は多いのだ。

  ただし、その援軍は、
  今日もあなたがあなたであることを
  持続させる力だから、
  特に目立つこともなく、
  変わらぬあなたを
  静かに見守るだけだ。

  ついに、あなたがあなたを貫いた時、
  その影は、あなたの前に現れることもなく、
  風にまぎれ、足跡も残さず、遠ざかる。
  春の光にとけていく。
HONDA ベンリィ50S  


2010年11月29日(月)
盛岡で初積雪。平年より5日、去年より8日遅い冬の印。だが、所詮はとけるための雪だった。 @岩手山麓



  冬は、冬であることを示す。
  時が来れば、一面を白く染める。

  私は、私であることを示す。
  雪が積れば、足跡を刻んで進む。

  冬が冬であるように、
  私が私であるように
  繰り返し、果てしなく、
  この地を染める。この地に刻む。

  いつか消え去る定めなど忘れ果て、
  今日を染める。今日を刻む。
  繰り返し、無心に、染める、刻む。

  そんな頑迷こそが、
  季節だ。人生だ。
HONDA Monkey


2010年11月28日(日)
朝の大地はしっとり濡れていたが、空から降って来るものは無かった。夕方には陽が射し、夜には星も現れた。 @岩手山麓



  旅人は、いつもそうだ。
  勝手に山を切りひらき、
  迷惑な柵など押し立て、
  異郷の規律を押し付け、
  さんざん騒いだ挙句に、
  時が来ればいなくなる。
  すべて途中で放り出す。

  だから里は心得ている。
  ものごとは、
  旅人が去った後に始まると、ね。

  その小賢しさに言葉をはさまず、
  その思いつきに頷くこともせず、
  じっと微笑んで時を待つだけさ。

  (実に皮肉なおもてなしさ)
HONDA Ape100  ※画像は2008年11月16日に撮影したものです。  


2010年11月27日(土)
人生には、稀に親友との出会いがあるのだが、今日の小春日和はまさにそれだ。やがて厳冬に飲まれていく記憶だ。 @岩手山麓



  なあ、おまえさんよ。
  口先で、ああだこうだと
  吠えていたって、
  屁の足しにもなりゃしねぇ。

  ひとつ成し遂げて
  うめえ酒を飲みたきゃ、
  退路を断つことさ。
  その真剣の刃渡り(はわたり)の末に
  辿り着いた場所の熱気で
  酒がうまくなる。
  掴み取ったものの重さで
  酒がしみわたる。

  それが、つまり供養ってぇものよ。
  斬り捨てて来た日々のための祭さ。
スポーツスター883R


2010年11月26日(金)
陰気な雲は、時折雨を降らせ、辛い季節の到来を告げていたが、夕刻になって、気が変わったように青空を許した。 @岩手山麓



  ここに、
  こうして暮していることが
  嬉しい。
  見渡す限り長い友人たちだから。

  ここに
  こうして生きていることが
  誇りだ。
  ゆるぎない天地にひとりだから。

  ここで
  こうして走っていることが
  物語だ。
  風が意外な未来をささやくから。
HONDA Ape100  


2010年11月25日(木)
まったく罪なフェイントだ。北国の厳冬を前に目もくらむ青空と陽射しで最高気温が10度1分(盛岡)なんて。罪な悪戯だ。 @岩手山麓

 

  検討?その間に事は移ろう。
  静観?その間に事は弾ける。
  分析?その間に事は終わる。

  原野に獣を追うのに、
  地図を広げ、コンパスを当て、
  捕獲の計画を練るだけの群は、
  早晩、滅亡する。

  普通の感情と理性と
  優れた想像力と
  反射神経を持つ者にこそ、
  世界の矢面に立ってもらえまいか。

  たったそれだけのことで、
  未来は、しごく正しい方向へ向かうはずだ。 
250 EXC−F


2010年11月24日(水)
放射冷却の朝は、鋭利に澄んで山々の稜線を浮き立たせた。走行風も冷えて鋭く、冬が胸板を刺して来た。 @秋田県(田沢湖)



  我慢強い者は、
  我慢している間に蹂躙される。

  慎み深い者は、
  己を押し殺す間に占拠される。

  理性的な者は、
  クールに佇む間に凍結される。

  常識的な者は、
  実に整然と時の波に飲まれる。

  (まったく、大人ほど組みしやすいものはない)

  思慮深く、じっとしているから
  これ以上の獲物は無い。

  形を重んじ、取り乱さないから、
  これ以上の標的は無い。
スポーツスター883R


2010年11月23日(火)
冷えた灰色の空は、夕刻に青空を取り戻した。それでも冬雲のベールが山並みを覆っていた。 @岩手山麓



  ひとつの天地に生き続けるのは、
  残酷だ。
  愛すべきものが色褪せる様(さま)に
  向き合うのだから。
  荒れ果てる山河や異国と化す街。
  老いていくもの。
  薄れていくもの。
  冷えていくもの。
  一切を間近に克明に見せつけられる。
  その穏やかな地獄の中に正気を保ち、
  朽ち果てる日まで慈しむことが、
  此処を故郷と定めた者の宿命なのだ。



  ※本文と画像は一切関係ありません。
HONDA Ape100


2010年11月22日(月)
ひと筋の陽射しも許さない曇天だった。夕方には小雨さえ降った。けれど、沿岸部では20度を越えるところもあり、師走目前を忘れさせた。 @盛岡市菜園



  その風景は
  もうずっと前からあった。
  けれど、そこに佇む私の姿は、
  この夕闇が初めてなのだ。
  愛する街の好きな場所に足を止め、
  とけこむことが許されるのなら、
  私は、この街に
  影を焼き付けてもよいと思う。
  目もくらむ幸福の熱線を浴び、
  道端の影となってもよいと思う。
  凍結した真夜中の此処に
  じっと佇む影で良いと思う。
HONDA Monkey  


2010年11月21日(日)
岩手全体16度前後まで温もり、10月中旬から下旬並みの陽気。こんな日々の後に冬が来たら、心は折れる。 



  終わっているものは、更新できない。
  崩壊しているものは、修復できない。
  人が遠のいたものは、つくろえない。

  なのに、人は、そんなことに
  力を尽くし、金を注ぎ、心を砕く。
  手遅れの現状にメスを入れ、
  姿や形を変えて延命させる。

  目の前の風景に見入るだけで、
  昨日から離れられない悲劇は、
  凡庸な努力家たちに支えられ、
  幕をおろすことすら許されず、
  不可解な歴史を刻みつづける。

  未来は、それを、失われた時代と呼ぶ。
KTM 250EXC-F


2010年11月20日(土)
あとで振り返れば、宝石のように耀く一日に違いない。初冬の春の光の柔らかさときたら、厳冬に身構える心をとかすようだ。 @岩手山麓



  隕石が
  大地の奥深く
  突き刺さったような衝撃の直後、
  火柱は天を焦がし、
  原子雲が途方もない広がりを見せた。
  それでも、なお
  私は、小さな夢を抱き、
  此処にひざまずくのです。
  この楽園に生きることが許されることを祈り、
  焼けただれていく風景の中で
  灰となるのです。
  ああ神よと叫びながら、
  爆風に飛ばされるのです。
スポーツスター883R


2010年11月19日(金)
午前中は、予報を疑うような曇天と局地的な小雨だった。午後になって予想は現実となって晴れた。小春日和の盛岡は13度7分。 @岩手県洋野町



  ペテン師は、
  最初からペテン師じゃない。

  夢を追い、夢に酔い、
  夢が叶う物語を描き、
  主人公になり切って、
  熱弁と奔走を繰り返し、
  やがて現実と夢の境界を越え、
  ついに人はペテン師になる。

  その道筋に不可欠なのは、
  周囲の盲目的な人間愛と
  奇跡に等しい友情だ。
  白痴のような善意だ。



  ※本文と画像は一切関係ありません。
ヘリテイジ ソフテイル クラシック


2010年11月18日(木)
まったくタフな晴天だった。予報に反して崩れなかった。最高気温13度4分(盛岡)。夕焼け雲が明日の晴天を告げた。 @岩手山麓

 

  選択肢を持つから不自由になる。
  何かを選ばなくてはならないから、
  心にもない道を歩くはめになる。

  (原点にかえるがいい。)

  選ぶ余地の無いことを噛みしめるがいい。
  心に決めた道以外に何があるのか、
  静かに問うがいい。

  覚悟の前に道はひとつだ。
  一途な旅の果てに待つ鬼など、
  直進する歓喜の敵ではない。 
KTM250EXC−F  


2010年11月17日(水)
放射冷却で氷点下2度5分の朝。日中は陽射しを遮る雲も無く10度7分(いずれも盛岡)。山の雪がみるみる消えていく。 @岩手山麓



  浅瀬を渡るのに
  深い思慮は邪魔だ。
  さっさと進めなくなる。

  急流を渡るのに
  こだわりは命取だ。
  止まると押し流される。

  清流を渡るのに
  遊び心は要注意だ。
  旅を忘れ楽園に迷込む。

  めざす場所があるのなら、
  流れにとけて波立てず渡れ。
  すみやかに、水の如く。 
ヘリテイジ ソフテイル クラシック  


2010年11月16日(火)
最高気温4度9分(盛岡)は12月中旬並み。師走ならまだしも11月の寒気には夢も希望も無い。ただ薄ら寒いだけ。 @小岩井農場



  人は、そう簡単に決断できないものだ。
  重い選択などなおさらだ。
  では、何も選び取らずに終わるのか。

  (心配はいらない。)

  ある日、それは来る。
  とんでもない不条理が押し寄せる。
  ありえない理不尽に飲み込まれる。
  その時、人は初めて心を決める。
  迷うことさえ許されず、
  断崖から飛び降りるように答えを出す。

  そんな判断が、案外正しいのだ。
  後々、自分を救うことになる。
ヘリテイジ ソフテイル クラシック