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イワテバイクライフ 2013年3月後半


2013年3月31日(日)
まったく天気予報の通りだった。昼過ぎから小粒の雪。まあ、ほど良いお湿り。夕刻には青空。こればかりは予報には無かった。冷えてはいたが、気にはならなかった。



  登れないのではない。
  登れないかもしれないと思う私が
  いるだけだ。

  越えられないのではない。
  越えていく途上の不運を思う私が
  いるだけだ。

  曲がり切れないのではない。
  その道筋を外れそうだと思う私が
  いるだけだ。

  立ち止ったままの心では、
  いつまでたっても何も始まらないよ。


 
※画像と本文は一切関係ありません。
ライダー:高橋さん(ヒデさん)@山屋トライアルパーク(花巻市)

2013年3月30日(土)
朝方の青空と光の透明度は、水準を越えていた。ただ、昼過ぎから凡庸な晴天に変質し、暗くなる頃には雲り空に成り果てた。



  悲しみは、
  雨に洗われ、雪に埋まり、歳月に揺られて、
  何か別のものになっていく。

  焼野原に美しい街ができるように。
  荒涼たる原野が森に移ろうように。
  悲嘆の涙が結晶し珠になるように。

  悲しみがあったから、
  その後の道は、一途だった。
  その後の旅は、鮮明だった。
  ある日、天地の狭間で微笑む私に辿り着いていた。
MOTO GUZZI V7Classic @岩手山麓

2013年3月29日(金)
青空の盛岡から北上すれば、やけに暗い雲。冷えた風。沿岸に抜けるのを諦め、県北(けんぽく)遊走。盛岡に帰れば実感の無い最高気温10度9分。



  道端で写真を撮っていたら、
  軽トラックが停まった。
  ハンチング帽の布袋様が下りて来た。
  「ハーレーだよね」と笑顔が小走りになる。
  タンクに触れんばかりに近付いて、
  「やっぱりハーレーだ」と断言するので、
  黙ってうなずいておく。
  「500万はするな、そうだな」と決め付けるから、
  「わかりますか」とこたえておく。
  「やっぱり500万か」と唸ってみせると、
  今度は、当方の出身地や年齢を聞いて来る。
  「イタリア生まれの35歳」ということにして
  その場を離れた。


  ※愛機はハーレーに非ず、500万円に非ず(笑)・・・念のため。
MOTO GUZZI California Vintage @岩手県北部

2013年3月28日(木)
やたらに雲が多かった。でもね、最高気温が盛岡で16度9分で、沿岸では20度前後。太陽の熱が汗を誘う感覚は久しぶりだ。置き去りにされた冬を面倒見ておくれ。



  穏やかに過ごしていられるなら、
  心をとかす為の劇薬はいらない。

  清々しく暮らしていられるなら、
  陽光に満たされる歌はいらない。

  嬉々として生きていられるなら、
  心躍る物語など綴る必要もない。

  ありのままの日常が、
  もう十分に幸せであるなら、
  敢えて表現すべきものも無いだろう。

 (芸術への分岐点だ)
Harley-Davidson XL883R @岩手山麓

2013年3月27日(水)
ほのぼの青空が広がった。やわらかい陽射しだった。何より霞をまとった山が、春到来を告げていた。最高気温10度6分(盛岡)。



  大きな仕組の中ではね、
  決められた通りであることが最優先でね、
  それ以上に良いことをしてみせることは、
  むしろ仕組みを戸惑わせ、
  故障の原因となり、
  責任を問われたりする。

  創意だとか進化だとか、
  そいうことはね、
  鋼鉄の装置から解放され、
  素っ裸の一匹になって初めて
  あらわせることなんだ。
MOTO GUZZI 850GT @岩手山麓

2013年3月26日(火)
南には青空があった。北には、もやもやした冬の雲。八幡平方面へ向うと波乱含みの暗雲。やけに冷えると思ったら、風に小雪がまじった。最高気温5度3分(盛岡)体感的には冬の一日。



  気位の臭気をふりまき、
  ひとり高みにうずくまる者に限って、
  汚れ汚れて、ずたずたになって、
  底の底から這いあがった記憶を
  後生大事にしていたりする。

  春はね、
  冷たい思い出を忘れた者から順に
  微笑みかけるのにね。
Harley-Davidson XL883R @岩手山麓

2013年3月25日(月)
思わせぶりな青空。温厚を装う陽射し。それら望外の現象は、やがてリアルな曇天に飲み込まれた。予報通り午後3時を過ぎて水滴。



  厄介な家臣も、様々だ。

  忠心なんぞ鼻で嗤いながら、
  武功をてきぱき積み上げてみせる者。

  溢れんばかりの忠心を吐露しながら、
  てんで戦えない者。


  (いやはや・・・)
MOTO GUZZI California Vintage @岩手山麓

2013年3月24日(日)
福島は、薄ら寒い曇天だった。300km北上してみれば、岩手の空は機嫌良く、最高気温も10度を越えていた。



  成功を熱望するのなら、
  まずは失敗を重ねることだ。
  きちんと、ありのままに失敗することだ。
  失敗を味わい尽くし、
  己が身の一部とすることだ。

  うまくいかない理由が鮮明になるにつれ、
  備えは怠りなく、構えは盤石となる。
  うまくいかない心理をときほぐすにつれ、
  焦燥の霧は晴れ、野心の炎は鎮まる。

  失敗に向き合う勇気の先に
  道は拓けていく。



  ※ 本文と画像は一切関係ありません。念のため。
ライダー:工藤さん(国内A級) @明治エンジョイトライアル大会(福島県選手権)

2013年3月23日(土)
高気圧圏内。いよいよ弛緩してきた三月。残雪は、とめどなく解けて道を洗い、走ることは、すなわち、晴天に水飛沫を上げることになる。



  人を教え導く者にとって、
  技量の優劣は絶対条件ではない。

  どこまでも後進に向き合う誠意。
  とことん背中を押し続ける熱意。
  ともに最善の姿を思い描く創意。

  それさえあれば、
  気の無い天才より、よほど為になる。
MOTO GUZZI 850GT @岩手山麓

2013年3月22日(金)
最高気温12度6分(盛岡)。通りで午前中の光彩は尋常ではなかった。いつもの大地が何か奇跡のような造形に見えた。午後から急速に大気不透明。



  日頃、冗談のひとつも言えない者が、
  いざ檜舞台に立って、
  気の利いた台詞なんぞ言えるものか。

  日頃、慮るという事を知らない者が、
  いざ人の不幸を前に、
  優しい言葉なんぞ差し出せるものか。

  日頃、意見のひとつも言えない者が、
  いざ馬鹿な話を前に
  突きっ返す啖呵なんぞ切れるものか。

  (おろそかにしちゃあいけない、日頃を) 
MOTO GUZZI 850GT @岩手山麓

2013年3月21日(木)
白く雪化粧して夜は明けた。春の気分へ急ぐ身にとって、プラス1度8分という最高気温(盛岡)は、まあ、ありがちな三月の嫌がらせと受け止めておこう。



  ひとつの物語を
  淀みなく転がす為に、
  登場人物がいるのではなく、
  事が起きるのではない。

  たったひとつの道理や大義のために
  多くの人が現われ、
  万事を起こすのだ。

  この当たり前のことを知る者が、
  大河の流れを綴り出せるのだ。
MOTO GUZZI V7Classic @盛岡市近郊

2013年3月20日(水)
春分の一日は曇ったまま。おまけに黄砂で山の眺めもぼんやり。最高気温9度4分(盛岡)が誤報に思える冷え冷えとした印象。むしろ雨で黄色い砂を洗ってほしかった。



  青年は伸び盛りだった。
  勢いが自然に口を突く。

  「良いものに出会ってしまうと、
  いささか困ったことになります。
  目の前に立ち現れる様々なことに、
  未熟が見え、浅薄が匂い、
  最後まで向き合えなくなるのです。
  ピンの価値を知るには、
  キリを知っておくべきでしょうが、
  そんなものに誠実に付き合える時間は無い。
  人の一生は短いですから」

  剛健な言葉に私は恥じ入った。
  「お目汚しでしたな」と
  我が身をたたんで、片隅へ下げたのだった。
MOTO GUZZI V7Classic @葛巻町

2013年3月19日(火)
内陸から海へ抜ける道中には、ずぶ濡れの時間もあった。それでも海岸線には予報以上の晴天が待っていてくれた。引き返してみれば夕闇の岩手山麓も澄み切っていた。



  人は、
  己が夢を追いかけることで、
  誰かの夢を奪っているのかもしれない

  人が、
  この地に出会い、
  骨を埋める覚悟を決めただけで、
  誰かの居場所を奪ってしまうこともある。

  それで、どうしたのか。
  すべては、どうなるのか。
  寄せては引く波が笑うばかりだ。
MOTO GUZZI V7 Classic @岩手県三陸沿岸北部

2013年3月18日(月)
はっきり言えば、しみったれた一日だった。北上川にかかる気温表示は6度だったが、小雨を含む風に愛想は微塵も無かった。



  辻の煙草屋は、
  爺さんの代からの付き合いで、
  小路の畳屋は、
  四代前からの出入りで、
  川端の米蔵は、
  餓鬼の時代の遊び場で、
  目抜きの花屋は、
  叔父さんのいい女の店で、
  三味の音が通る一角は、
  婆さんが若かった時分の舞台だ。
 

  そういう気分で暮しているんだ。
  思い込むのは、てめぇの勝手さ。


  ※画像と本文は一切関係ありません。
HONDA ベンリィ50S @盛岡市

2013年3月17日(日)
清明だとか鮮明だとか、そんな神々しさとは無縁な、わかりやすい庶民的な晴天だった。春の実感は、10度近い気温が誘う汗だった。



  数歩先のために
  この瞬間の一歩がある。

  数秒先のために
  いま流れる一秒がある。

  数年先のために
  今流す汗の意味がある。

  そんな瞬間が連続し
  入り口と出口は、
  一本の道となって結ばれている。
ライダー:高橋健啓さん(国際A級) @花巻市

2013年3月16日(土)
うらめしく曇天を見上げるばかりで、埒も無い一日だったが、気温だけは、岩手全体10度を越える地域が続出。ただ、盛岡は4月の感触とは無縁だった。



  海原は宵闇に飲まれかけていた。
  河口を跨いで大鳥居が聳えていた。
  背景の空は、入日の炎に揺らめいている。
  鳥居が黒々と夕景を縁取っていた。

  そこへ、老夫婦が河を渡り始めたのだ。

  私は、急いでレンズを向けた。
  二人の影が鳥居の中央にさしかかった時、
  静謐な絵画が現われた。

  「止まって。止まって。立ち止ってください」
  と私は叫んでいた。

  あまりの大音声に
  舞い上がろうとした海鳥が
  翼を広げたまま宙に停止した。

  そこで夢は途絶えた。
  夫婦は、海に向かって合掌した気がする。
HONDA Monkey @岩手山麓

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