イワテバイクライフ 2014年8月前半
2014年8月15日(金)
東北の南に停滞する前線で、予想外に雨が強まった。二戸では1時間に47ミリという観測史上最大の雨量を観測。夏の体温は奪われ、最高気温21度1分(盛岡)。
幾度も張り切ったものさ。 春へ通じる道を拓こうと 夢に届く橋を架けようと 心ひとつに輪を結ぼうと 真っ直ぐな風だったのさ。 初めは、うまくいくのさ。 道はね、どんどん伸びて、 橋はね、高々とそびえて、 輪はね、大きく膨らんだ。 でもね、いつもね、あと一歩でおしまいなのさ。 今、思えば、私自身がね 春を求めていなかった。冬を愛し過ぎたから。 甘い夢など見なかった。夢は結局さめるから。 歩調を合わせなかった。一人旅のままだった。 |
|
HONDA Ape100 @岩手山麓 |
2014年8月14日(木)
昼過ぎまでは薄雲が広がり、曖昧な夏の大気だった。が、夕刻に至り、にわかに空は澄み渡り、夕陽が燃えた。この夏一番の涼風。最高気温28度6分(盛岡)。
マンモススタジアムは夕闇の中だった。 無灯火のグラウンドに ボールの白さだけが浮き立っていた。 さて、3アウトで攻守交代と思っていると、 なおも攻撃は続く。 手元のスコアブックでは、 確かに凡打三つで3アウトなのだが。 当り前のように次の打者が立つ。 スタンドの応援は途切れず、 審判は動かない。 その後も、重なるアウトカウントをよそに、 攻守はそのままなのだ。 「これは野球ではない。だとしたら何だ」 私は、暗い螺旋階段を駆け下りながら、 幾度も、そう呟いた。 |
|
MOTO GUZZI V7 Classic @北上高地 |
2014年8月13日(水)
天気予報が「曇り」と告げていたら、束の間の青空でも得した気分であったろうに。日中一杯の晴天などと大嘘をつくから、空がうらめしくなるのだ。最高気温29度8分(盛岡)。
怪しげな理想を振りかざすのなら、 目も眩む光の中でやってくれ。 言い切れば、正義のようだ。 繰り返せば、真実のようだ。 (薄暗ければ胡散臭い) 臆面も無く、 装飾の夢を謳い上げる精神に 天地は目を伏せる。 |
|
MOTO GUZZI 850GT @岩手山麓 |
2014年8月12日(火)
早朝の青空も早々にかき消され、午後には小雨が降ったり止んだり。ただ、不思議に乾いた大気は、極上の涼しさとなった。最高気温25度2分(盛岡)。
気を張り詰めて、 仁王立ちの者は、 孤独だ。 それ以外の構えを知らない 不器用者だ。 だから、せめて、私ひとり、 小鳥のさえずりとなって、 鬼の肩を撫でてみようと思うのだ。 |
|
Harley‐Davidson XL1200CA @姫神山遠望 |
2014年8月11日(月)
台風は温帯低気圧になって北へ遠ざかった。待ち焦れた青空は夕刻になってからだった。冷涼な北国の大気。夜風に運ばれて来る秋の虫の音。
富や誉と引き換えに いつもの自由を捨てる。 その愚かしさは、 風となって雲を追うだけで、わかる。 今日限りの幸福は、 今日掴み取るのだ。 そのための今日の自由だ。 |
|
Harley‐Davidson XL1200CA @岩手山麓 |
2014年8月10日(日)
台風は北へ一直線。雨雲は岩手を覆い、小雨断続。夜になって、多少、雨音が高まった。台風より昼過ぎの地震。青森で震度5弱。津波なし。
山を揺らす風だった。 夜一面を押し潰す雨だった。 爺さんと婆さんがふるえていると、 あばら家の戸を叩く音がする。 どしん、どしん、 ずしん、ずしん、 重く、鋭く、音は嵐の中に高まった。 すべてが流れ去った朝、 山は光に包まれていた。 おそるおそる爺さんが外を覗いて、仰天した。 家は、巨岩の群に囲まれていた。 岩は折り重なり、石垣となって聳えていた。 夫婦は、よろよろと岩の上に立って、腰を抜かした。 山は崩れ、周囲の森を飲み尽くしていた。 その真っ只中にあって、夫婦の家は岩の群に救われた。 よかった、よかった、たすかった。 手を取り合い、小躍りしていて、夢からさめた。 |
|
HONDA ベンリィ50S @岩手山麓 |
2014年8月9日(土)
内陸は午前中から小雨に濡れることもあったが、北上し太平洋をめざすほどに、道は乾き空はうっすら明るくなった。結局、帰路は夕刻の雨に濡れた。最高気温22度7分(盛岡).。
失われたものを 取り返すために、 ひたすらに走り、 心を埋めて来て、 ある日、気付く。 波ひとつ無い海。 永久に動かぬ空。 語り尽くした私。 果てしない平面を海鳥がかすめ、 旅の終りを告げて、舞い上がる。 |
|
MOTO GUZZI 850GT @北三陸 |
2014年8月8日(金)
東北の空に袈裟懸けの前線。曇天は、当たり前のように雨をもたらし、気紛れに止んでみせる。ただ、酷暑から解放されたのは救い。最高気温24度6分(盛岡)。
場所と刻限は指定されている。 何をすべきか、わかっている。 しかし、道筋が定かではない。 時々、そんな夢がやって来る。 巨大な構造物の中を駆け回り、 すれ違う人々に尋ねてみても、 首をかしげ不思議な顔をする。 エレベーターは堂々巡りだし、 めざす所から離れるばかりで、 約束の時間だけが迫って来る。 一切が手遅れになった場面で、 責任を問いただす電話が鳴る。 |
|
HONDA ベンリィ50S @岩手山麓 |
2014年8月7日(木)
概ね曇天。とはいえ、薄日が射したり、所によっては青空ものぞいたが、時折の小雨が一番自然に思えた。最高気温30度5分(盛岡)。
いくら押しても、開かない。 扉ではないものを押しても、 開かない。 いくら育てても、咲かない。 花ではないものを育てても、 咲かない。 いくら話しても、届かない。 人ではないものを愛しても、 届かない。 目の前に 開きたがっている扉があるのに。 咲きたがっている花があるのに。 打てば響く心があるというのに。 |
|
モンテッサ コタ315R @岩手山麓 |
2014年8月6日(水)
彼方の台風。頭上の前線。逃げ場のない曇天。断続的な降雨。それでも夕暮れの空は、かすかに開け、清明な光を見た。最高気温31度1分(盛岡)。
抗えないものが、ある。 自然の力、人の世の流れ。 その勢いの前に、 人ひとりの思いなど無力だ。 それでもなお、 一輪の夢を抱き続けるのなら、 笑顔で嵐の中に立て。 鮮やかに濁流へ舞え。 |
|
HONDA ベンリィ50S @盛岡市 |
2014年8月5日(火)
結局、雨らしい雨は降らなかった。ただ、それだけの一日だった。殺人的な陽射しがなければ、まあ可としよう。最高気温30度5分(盛岡)。
自分の明日のことを知っているのは、 案外、見知らぬ他人だったりする。 その筋書に乗せられ、流され、 自らの思いから離れていく。 それが我慢ならない者は、 ついに己を破壊するのだろう。 |
|
MOTO GUZZI 850GT @八幡平市 |
2014年8月4日(月)
強靭な夏空で始まったが、昼を過ぎて陽はかげり、音を立ててスコール。かすかな涼しさも束の間、雨上りと共に大気は熱を取り戻した。最高気温34度2分(盛岡)。
ひとつひとつの出来事が、 ひとつひとつ心に石を積み やがて、 ひとつの道となり、旅となる。 日々の空が、 明日の行方を告げている。 |
|
MOTO GUZZI V7 Classic @岩手山麓 |
2014年8月3日(日)
朝方こそ澄んだ青空だった。やがて真夏の閃光が走り、異様な熱気が巻き起こり、日陰にうずくまる他はなかった。最高気温34度6分(盛岡)。
押し寄せる夕闇の中に風を止めても、 なお煮えたぎるものがある。 今日一日の炎熱か、 遠い過去の怒りか。 流れたものを いくら燃やしたところで、 道を照らす灯にはならない。 (せめて、ひとかけらの希望を溶鉱炉へ) |
|
Harley‐Davidson XL1200CA @八幡平市 |
2014年8月2日(土)
朝からやる気満々の夏空。ギラギラの太陽。むせかえる熱気。吹き出す汗を止める術なし。北東北の大気に非ず。岩手県内陸各地で33〜34度。
もう大丈夫か? と問われれば、 それは「あなた次第」とこたえよう。 今日の空と同じで 晴れ渡っていれば、私は大丈夫。 今日の道と同じで どこまでも続けば、私は大丈夫。 今日の風と同じで、 心を撫でて来れば、私は大丈夫。 あなたが、嵐に怯え、身構えていれば、 誰が微笑むものか。 見渡す限り病んだ眺めだ。 |
|
MOTO GUZZI California Vintage @秋田県 |
2014年8月1日(金)
じっとり曇り空。かすかに陽射しを漏らすベール。青空を滲ませたかと思うと、叩きつける雨粒。さんさ踊りの空は、どうにか回復。
失敗した者には、侮蔑の礫。 成功した者には、黙殺の壁。 (形だけの輪が見せる顔) 貴方だけは どんな時も 微笑みの風。 |
|
Harley‐Davidson XL1200CA @岩手山麓 |