イワテバイクライフ 2003年8月下旬
私のイーハトーブトライアル大会は、 昨日で終わった。 けれど、同じ風を求めて、また安代に向う。 夏への未練か、初秋の感傷か。 七時雨の丘に乾いたエンジン音が流れる。 2日目のコースを走り抜いた猛者が次々戻って来る。 焼けたオイルの香りを含んで 8月が、ぽつりぽつりと暮れていく。 紙の単車屋さん御家族。クボトラの店長。 イーハトーブトライアル大会会長。 そして、昔の仲間・・・。ばったり偶然の多い日だった。 |
3人一組で20のセクションを巡る。 盛岡のS氏は、 次の競技場所へ疾風となって飛んで行く。 追いつけない。 振り向けば、福島のK氏はマイペースで なかなか現れない。 初めての単独走行。 コースミスの不安が募る。 原生林の幹に小さく「右」「左」「直」のマーク。 獲物を追うハンターのように感覚が尖っていく。 森の奥に原色の群れを発見。 先着していたS氏が照れ笑いしている。 嬉しさのあまり叫ぶ。 「罰金だよ、速度違反だ(笑)」 遅れて来たK氏が、結局、一番うまかった。 |
仕事を終えて 真っ暗闇の裏道を急ぐ。 年に一度、イワテの懐でライダーの力が試される イーハトーブトライアル大会。 安比高原ペンション村に着いた時には、 ライダースミーティングが終わっていた。 前夜祭の残り火の中で旧交を温める。 「ウイングライト」で宮城県のK氏たちと 濁り酒を酌み交わす。 23時を過ぎて小雨。 愛機モンテッサを木陰に移動し ベットに倒れ込む。 画像は、ホンダ4サイクルエンジン搭載の注目マシーン |
高松の池に紅葉の兆し。 稜線も鮮明に山が連なる。 昼過ぎ、病み上がりの先輩を訪ねる。 半月の病院暮らしのせいだろうか、 頭髪と笑顔が白く見えた。 いつもの国道を走って帰る。 眩しくほてった風の中で、 言いようもない無常感に襲われる。 夜、甲子園帰りのI君を慰労。 酒に飲まれる。 |
遠雷を、じっと聞く。 6時にセットした目覚まし時計は5:40を指している。 ザンザン降りの朝 厨川で研究員のK氏と合流。 9:50分、袖山高原に到着。 岩泉町・安家地区の方々と 打ち合わせを済ませ安家森へ。 雨は止み、霧は晴れ、 天然の放牧地に秋空がのぞく。 澄み切った大気に歓声が上がる。 70歳の牛飼いK氏から 「牧野が生まれ、捨てられ、蘇生した」物語をl聞く。 全容を知った時、雨が降り出した。 |
修羅場の後には、 運命以上のものが待っている。 盛岡市長選挙開票結果 投票率 53.67% 当選 谷藤裕明 47432 桑島 博 39473 斎藤 純 27121 芦名鉄雄 3949 |
交換したばかりのトライアルタイヤは、 「世間知らず」を剥き出しに 熱を帯びたアスファルトや砂利、赤土に噛み付く。 大地と和解していくような 交換寸前のタイヤの手応えを懐かしむ。 一人、北上山地の稜線を見渡せば 真夏日の予感が汗となって眼(まなこ)にしみる。 ガソリンの残量を気にして帰宅。 冷たいシャワー。陽の匂いがするバスタオル。 おろしたてのシャツの首にネクタイが吸付く。 小走りに近所の職場へ急ぐ。 日焼けした顔を俯け、弾む息を押し殺し、 白紙のノートを小脇に、午後の大会議に臨む。 |
イーハトーブトライアル大会。 イワテに深く分け入る一日。 イワテ永住への思いを募らせた一日。 イワテを離れた4年の日々を支えてくれた一日。 9日後に大会が迫る。 ゼッケンナンバーも決まって スタートの鐘が聞こえてくる。 週末の道場通いだけでは、いよいよ落ち着かない。 大会は、競技区間を延々とつなぐ林道走行が 流れを決める要素にもなる。 調整を施した愛機を林野に持ち込み あの日の風を思い出す。 昼過ぎ、青空が戻る。 会議の窓外に夏雲を盗み見る。 |
今にも泣き出しそうな朝。 以前なら早々に出撃中止だった。 待ちくたびれて流れた「梅雨明け」のおかげで、 走り出す条件から「天気」は消えた。 北山から八幡神社の脇を駆け抜ける頃には、霧雨。 国道4号線をくぐって雨宿り。 愛宕山展望台の樹林に身を寄せる。 と、犬を散歩させる年配の紳士に声をかけられる。 「綺麗なバイクだ」と呟き、しげしげと見つめる。 新聞配達のバイクの親戚であることを説明するが、 「いや、いいものだ」と断じて、歩き出した。 (バイクの思い出、おありなんですね) 4号線に戻ると雨は止んでいた。 |
飯岡の物件:その1 陸路、盛岡を離れる時は、 南昌山をしばらく眺めるのが、儀式かもしれない。 盆休みを終えて南下する車列が 気持ち、時間差を置いて、田園に轟音を伝えて来る。 かつて、あの流れの中に居た日々を こちら側から愛しむ。 ふと、脇の反射ポールに目が止まる。 「盛岡市」のシールがはがれ「都南村」の文字が・・・。 11年前の合併のあれこれを思い出させるのは、 風の悪戯か、それとも・・・。 あちらから、こちらへ、シール1枚、辞令ひとつ。 心の境界線が決まるまでには、 それなりの歳月が要る。 ☆盛岡市長選も、いよいよ。 |
ヘルメットのシールドを上げて走るのは、 先の見えない林道や混雑した市街地、 それに、肌で受け止めたい季節の光線がある時。 そんな時、決まって、こめかみのあたりに 走行風がからみ口笛を吹く。 切ない音色に夏の終わりを思う。 分厚い冬の印象が秋の背後に控えている。 だから、ことさらに左右の頬を行く手に向け 口笛を大きくする。 午後、県北から沿岸部の裏道を探る。 空も道も人も、枯れた笑顔で散っていく。 時折の陽で、大地が陰影を持つ度、 立ち止まり、憑かれたようにシャッターを切り 夏の収穫を急ぐ。 |