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イワテバイクライフ 2003年9月後半


9月30日(火)
曇り時々小雨のち晴れ間も慌ただしい雲の群舞にうやむや @岩泉町


  岩手山は、十月の色を含んで、ほのかに赤く、
  憂鬱な水田の彼方に、姿を変えていく。
  
  玉山村の藪川でシールドに水滴。
  行く手に舞う黄色い葉を
  ライダーは確信犯となって胸に受ける。

  岩泉に至り、空一面の雲にも情けはあるようで、
  わずかな間隙(かんげき)が光を許し、
  大地は血色を取り戻す。

  一切の錨(いかり)を切り落とし、
  寄せる時間に身を任せ、
  流れ去った道を振り返る。

  北上山地の頂に今朝も一人、
  走り出した理由に向き合う。
  

9月29日(月)
曇りのち晴れ、いささかの夏雲は、やがて雷注意報を招き、波乱の夕焼け @七時雨


  ジャケットの通風口を閉めて走る。
  10月を目前にした風は冷えて、
  日溜りを物色しながらの巡航速度は60km/h。

  曇天の西根町から田代平をめざす。
  高原を間近にして秋晴れ。
  七時雨山を囲むように青空がぽっかり。
  天然のスポットライトに歓声を上げる。

  整然と刈り込まれた牧野に
  短角牛がくつろぐ。、赤茶色に艶々。

  昼過ぎの
  「小選挙区比例代表並立制」をめぐる勉強会をにらみ
  快走モードにシフトする。

9月27日(土)
早朝の秋晴れは束の間で、曇り、風が青空の断片を拾い集めて薄日差す。 @滝沢村



  滝沢村のトライアル練習場へ。
  最短距離を採ると、
  この畦道を行くことになる。

  稲穂は、確かに頭を垂れているのだが、
  気のせいか、
  田園の顔色に、充実や質量の気配は薄い。
  
  ススキ揺れるトライアル場の先客は、
  顔馴染みのY氏一人。

  定年を前に決断した氏の近況に聞き入る。
  トライアルだけは続けるとの言葉に安堵し、
  練習を始める。

  二人黙って、別々の空を見上げる。

  

9月26日(金)
揺れて朝を迎え、曇りのち晴れ @盛岡市大通3丁目



  糸電話がふるえた。
  聞き耳を立てる時間が重く固まり、
  振り子となって、
  海峡を往復する。
  揺りかごの中に胸騒ぎは溢れ、
  黒い海面に
  朝は飲まれていく。



  十勝沖地震。北海道で震度6弱。
  三陸沿岸に6年ぶりの津波注意報。
  カキ・ホタテなどの養殖施設に被害。
  

9月25日(木)
曇りのち霧雨から小雨、夕刻、黒く濡れた街に濃霧注意報 @盛岡市大通三丁目


  盛岡駅のバス乗り場、
  8番停留所を見たくなる。
 
  花巻空港行きのバスを待つ私の影を
  回収しようと思った。

  駅前の道を挟んで
  人影の無い停留所を眺めていると、
  バスの往来が、無造作に記憶を遮る。
  
  イワテに帰って4ヶ月。
  
  今朝も、
  心おきなく街に同化し、歳月に染まる。
  

9月24日(水)
県北部では11月上旬並の冷え込み。天気は、概ね曇り時々薄日。 @八幡平アスピーテライン


  冷えた朝。北へ走り出す。
  岩手山の頂きに白銀の雲が絡む。
  姫神山へ続く牧草地が薄日を浴びてそよぐ。
  新調したシールドは
  深まる秋を、ありのままに透過させる。
  信号待ちの息に、行く手が白く曇る。
  澄んだ視界を求めて八幡平へ急ぐ。

  山腹に密生する樹木は、かすかに煉瓦色で
  まれに赤く染まった葉が飛び散る。
  光は雲に遮られ、雲は光の出番を思案する。
  流れるセンターラインに絡む陰と陽。

  ステップに立ち、全身で風を受け止める。
  目は、冷気に晒され、理由のない涙が流れる。
  
  前傾姿勢でカーブへ飛び込めば、鋭利な冬が匂う。

9月23日(火)
秋分の日。秋晴れ @中津川河畔


  滝沢村のトライアルパーク。
  米澤さんが、赤と青のカラーボードを
  乾いた赤土の斜面に配置していく。
  オートバイトライアルの練習問題である。
  
  クリーン出来るようになると、
  師匠は「飽きたでしょう」と笑って
  更に難しいコースをプレゼントしてくれる。

  3つ目のセクションを攻略できた時には、
  すっかり日が頃いていた。
  土煙を離れて、山に立つ。
  姫神山を灯台にして北上山地の稜線が南に連なる。
  
  下山し、シャワーを浴び、洗車。
  朱色の光線が盛岡上空を鋭く横切る。
  イワテの短い秋を掬い取るように街に繰り出す。

9月22日(月)
曇りのち晴れ、夕雲に冬の影。@盛岡市近郊(牛の飼料・デントコーンの刈り取り)


  オートバイトライアルのことを、まだ考えている。
  
  高難度のセクションで
  クリーンを連発する一流ライダーが
  一回でも足を着くと、どよめきが起きる。
  5点など取ろうものなら、悲鳴と静寂。
  一方、悪戦苦闘しながら、減点を苦にもせず、
  けれど諦めず、完走を果たす凡人の
  何と微笑ましく爽やかなことか。
  
  人は、一人闘う者を遠巻きに拍手し、
  楽しむ者には駆け寄って肩を叩く。  
  
  日々の我が事に立ち返れば
  ことさらに足を着きたがるのは、
  深まる秋のせいか。

  走行風は10月中旬並に冷えていた。、

9月21日(日)
曇り、やがて薄日、夕刻、劇的な夕焼け @青森県新郷村


  そこに飛び込むには、洞察と勇気。
  そこから抜け出すには、集中と技術。
  入り口と出口の間で思い知らされる「私というもの」。
  
  一度も足を着かずに走破することをね、
  「クリーン」と言うんだよ。つまり「減点0」。
  でも、減点を恐れているとね、
  ちょっとしたミスに集中力が切れて次の策が出ない。
  エンジン停止やバイクと共倒れ。最悪の減点5さ。
  足を着こうが両足で這い出そうが
  粘りに粘って競技区間を抜け出せば減点3で済む。
  減点覚悟で、いかに、どこで足を着くか。
  意味のある減点。
  それも立派な戦略であり勇気なんだね。
  出来ることと出来ないことを知っていれば、
  自分の力を越えた場面でも
  「大健闘の減点3」で切り抜けられる。
  人生なんだな。オートバイトライアルって。
  

9月20日(土)
雲は時折の薄日をもたらしながら寡黙に流れ、夕刻、一気に明日を告げてくる。 @玉山村(国道4号線からの岩手山)


  夕刻、花屋の若旦那が
  ハイエースで迎えに来てくれた。
  翌日のトライアル大会の会場、青森県新郷村へ急ぐ。

  辿り着いたのは20時。
  真っ暗闇の山中にランタンの灯りが浮き立つ。
  マシーンを運んできた車両が
  集落を形成し、夕餉を始めていた。

  盛岡の面々は、ひっつみ汁とカツオの刺身、
  焼き肉を次々に平らげる。
  ほろ酔い加減の和気藹々。
  ターフの外を見上げれば、満天の星。

  「トライアルをなめちゃいけないよ」
  去年2位のヤマダさんが私の目の中をのぞきこむ。

  米澤師匠の車に間借り。寝袋で熟睡。

9月18日(木)
晴天続きの秋も、さすがに電池切れ寸前で、混乱をきたした大気に大雨・雷注意報。 @国道46号線(雫石町春木場)


  大好きな岩手、
  などと昔の記憶にしがみついていないか?
  丸暗記した公式となって誘い込まれる「いつものルート」。

  だから、やり直す朝。
  雫石から滝沢へ、
  走ったことの無い道を選んで彷徨い迷う。

  ところが、
  たまに、見覚えのある十字路や物件に出くわし、
  どこを走っていたのか了解できたりする。
  白地図が一気に色彩を持つ瞬間。

  国道46号線のベゴニアは、
  そんな心の地図の基点となって
  秋の記憶に走り続ける。  


  

9月17日(水)
薄陽さす残暑は、稲穂の実りの味方であることは間違いないわけで。 @雫石町鶯宿


  愛機・アドベンチャーの健康診断のついでに
  沢内村まで走る。
  
  腰高なシートは、走る「火の見櫓」のようで、
  ススキの原やこうべを垂れる海原が
  眼下に流れる。
  
  この巨体を停めるのは、よほどの景観なのだが、
  県道1号線、雫石町鶯宿で、ハッと足を着く。
  一束百円の花の無人販売もさることながら、
  その道端の記憶が、そこに佇ませた。

  4年前の3月。残雪匂う夕暮れ。。
  沢内帰りのTLM220Rを焼き付かせ、
  この道の奥の農家で電話を借り、救援を待った。

  見慣れぬ花とパラソルに
  恩人の歳月を思う。

9月16日(火)
純度で語れば100%の秋晴れ。胸の奥まで蒼くなる気がして深呼吸。 @雫石町春木場(岩手山西麓)


  パンが焼けるまでの時間ももどかしく
  フラットツインに火を入れた。
  珈琲をひと口含んで飛び出す背中に家人の声。
  「いい秋。光線が違う」

  獲物の大群を迎えた漁師となって
  センターラインをたぐり寄せる。

  秋晴れは、
  仙岩トンネルを貫通して田沢湖になだれこむ。

  湖底の石のひとつひとつが
  走行風の中に光る。

  泳ぐように湖を周回。
  3時間足らず。往復147kmの「ちょっと、そこまで」

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