イワテバイクライフ 2004年11月後半
11月30日(火)
盛岡で最低気温・氷点下2度6分など、ほとんどの地域で氷点下、この冬一番の冷え込み。夕暮れのあかね雲も冷え冷え。 @岩手山麓(春子谷地)
しぐれ雲が途切れて 空高く西日が走る。 光の中に どんな小さな傷も、後悔も、 ありのままに照らされる。 するとまた、 しぐれ雲が辺りを目隠しする。 どんな大きな傷も、後悔も 曖昧な影に飲み尽くされる。 影を払う術を知らず、光を呼ぶこと能わず。 いつかきっと訪れる寂しさを すでに見てしまった老人のように 私は、蒼白の大地にうずくまり、 歳月という刺青を撫でるばかりです。 |
11月29日(月)
見た目の青空など冬雲に縁取られた孤立無援の希望のようなもので、結局、冷えた夕闇。 @滝沢村
不思議なことに、 すべての答えは決まっている。 とうの昔に決まってる。 王様も家臣も、 船の行き先も 物語の結末も、決まっていて すべては儀式の如く流れていく。 無縁か血縁か 反骨か服従か、 黙殺か溺愛か、 反乱か去勢か、 選択の余地もない朝。 恐ろしくも滑稽な王国で、 |
11月21日(日)
小春日和とひと言で片付けるのは容易いが、厳しい冬の前に束の間の春など、残酷な夢だ。 @姫神山遠望
もう、 自分でも恐ろしいのですが、 この至福の大地に 一人佇む時間を守るためなら、 大切なものをすべて失っても、 どんな顛末が待っていようと、 おそらく私は、 半狂乱となって闘います。 取り返しのつかないことなど、 この大地を失うことに比べれば、 もう、どうでもよいことに思われ、 自分でも恐ろしくなるほど、 この瞬間を守りたくなるのです。 |
11月20日(土)
冷えた青空に北西からしぐれ雲がわき出し、途切れては現れ、鋭い光と影を走らせた。 @奥羽山脈間近
山岳を越えて雲はやって来る。 寒気の匂いをしのばせて流れて来る。 轟々たる気流に乗って押し寄せる。 折り重なり、絡み合い、引き裂かれ、 あるいは、千切れ飛び、舞い上がる。 そのまっただ中に太陽は、 かき消され、蹴り出され、浮き沈みする。 あたかも嵐の海のガラスの浮きとなって、 居場所を変えていく。 網膜が切れるほどに鋭い光と 世界の終わりすら予感させる影が 無造作に訪れる。 大地に身を伏せる命どもは、 彼方に現れる光の津波に息を詰め、 飲み込まれては陶酔し、 見送っては落胆し、 帰る理由を失っていく。 |
11月19日(金)
最低気温7度5分(盛岡)など、北国の秩序が、どこかで足踏みしているとしか思われず・・・。 @雫石川の土手(南昌山)
もしや、 私は、四面楚歌の風に恋をしなかったか。 もしや、 私は、孤立無援の砦を夢に見なかったか。 氷雪の丘に打ち込まれた一本の杭となり、 小鳥の囀りや嵐の恨み言に顔色も変えず ただ黙々と突っ立つ直線の如き私こそが、 密かに願い求めてきた姿ではなかったか。 もしや、 虚しくも悲しい末路に憧れなかったか。 美しく滅びゆく物語を綴らなかったか。 もしや、 耐えきれないほどの小春日和に火を放ち、 一切を黙らせる午後を幻想しなかったか。 |
11月18日(木)
慇懃な雲の皮膜は、陽射しを霞ませ、けして単独行動を許さず、旧制帝国のかび臭さを沈殿させた。 @岩手山麓
黒土の丘で、 何が始まるというのだ? かすかな薄日を呼吸して 堆肥が甘酸っぱく匂い立ち、 丘は何千何万という男と女が 生き埋めにされたばかりのように 静まり返り、 やがて、死にきれないものの嗚咽が漏れ、 蒼白の裸身が、 大根のように立ち上がるのか。 、 山の頂の雪よ、山の麓の硝煙よ、 冷たくも鋭く その有様を黙殺しようというのか。 |
11月17日(水)
陽射しの中に雨雲、雪雲、複雑に入り乱れ虹までかかる。冬が秋を駆逐する凄惨な花火は、どこまでも荒涼。 @玉山村
冬の丘を下る。 朽ちた草木が曖昧な轍を覆い 朝の雫を纏って滑る。 タイヤのブロックパターンは、 ペースト状の黒土を噛んで横を向く。 家に帰るだけなのに 容赦のない惰力が私を追い立て 丘を下らせる。 ブレーキをかけようものなら、きっと転ぶ。 上体を引き、足を踏ん張り、降りていく。 エンジンの火を消さないように降りていく。 澄んだ頂で孤独を楽しんでいた私が 幸福の雪玉となって転落していくように、 冬の丘を下る。 |
11月16日(火)
昼前、盛岡でみぞれながら初雪。平年より8日遅く、去年より6日早い観測。午後、黒雲に覆われるなど陰気。 @岩手山麓
通勤ラッシュの交差点で呟く。 凍った畦道で呟く。 今朝の寝言に |