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イワテバイクライフ 2005年7月前半


7月15日(金)
梅雨明けモドキの夏空。内陸各地、真夏日周辺の暑さ。 @西根町

  だからどうした
  それがなんだのハードブレーキング。

  どうでもいいよ
  知ったことかのフルバンク。

  いまさら遅いよ
  見切り発車のフルスロットル。

  泥道、砂利道、獣道、
  夏のしげりのスクランブルエッグ。

  誰も止めないエンドレスモーニング♪
  誰も止めないエンドレスモーニング♪
  誰も止めないエンドレスモーニング♪


7月14日(木)
曇天の監修のもと、小雨と霧雨の狭間に推移したもの、例えば、開幕した高校野球。 @盛岡市近郊

  神々の去った夕暮れに、
  クレオパトラの歌を聴く。

  「降伏すれば、目を合わせてあげる」
  「奴隷になれば、口をきいてあげる」
  「賛美の嵐には、微笑んであげる」
  「宝石の贈り物には、口づけしてあげる」
  「世界をくれたら、私をあげる」

  (可哀想に)
  みじろぎも許さない気位や、
  おさまる気配無き腹の虫や、
  目にもの見せたい底意地や
  死んでも言えない昔話しを
  (忘れてごらん)
  ネオンにとけて泣いていたクレオパトラよ。


7月13日(水)
ところどころに滲む青空など望外で、内陸は軒並み夏日。沿岸部は「やませ」で20度に届かず。 @岩泉町

  自らの正しさを証明したくなったら、
  どうか、一人でやってくれないか。

  他人の誤謬や暗愚を引き合いに
  立証される見識や正義など、
  所詮、その範囲のものだ。

  井戸の中で空を睨み、
  流れる雲を論じ、斬っても、
  届かぬ自分を思い知るだけだ。

  いったい、その蛸壺には、
  正答無き設問に向き合う成熟はあるのか。
  ぬくぬくと正邪を断じるばかりの巻物を焼き
  暗がりから這い出るイメージはないのか。

  (見える空が、世界のすべてではない)


7月12日(火)
天気予報の落胆など、常に最悪を想定したものかもしれない。遂に雨らしい雨もなかった。 @雫石町

  錯覚かもしれない。

  走っているのに、
  私は、私の中に静かにおさまっている。
  道が飛んで来るのに、
  私は、安らかな呼吸を繰り返している。

  求めるのではなく、
  かわすのでもなく、
  ゆっくり瞬きして
  醒めて眺めながら、
  この朝を匂いとる。

  走っているのに、
  すべてが一定に。

  錯覚に違いないのだが、そうなのだ。


7月11日(月)
薄日も漏れて、梅雨の小休止というには、暗い雲の印象が強かったのだが。 @四十四田ダム

  実はね、
  何というのか、
  うすうす
  だいたいのことや、
  おおよその様子は、
  わかってきたから、
  (なるほどね)という感じで
  もう、いつ、おわりにしても
  かまわないと思っているのだけれど、
  雨季の狭間にうっすら陽が射して
  緑がそよいだりすると、
  もう少し夢を見ていようかと、
  昨日の続きをするなんて、
  まったく僕のあしたは、
  風まかせだよ。


7月10日(日)
警告される大雨と雷の夜に向かって、大気はゆっくり不安定になっていく。 @岩洞湖周辺

  膝頭を削るようなシュート、だとか、
  胸元に躍り込むストレート、だとか、
  際どく枠を掠め取るカーブ、だとか、

  つまり、そんな言葉のスケッチを
  しておこうと、
  雨中の2サイクルエンジンに
  五感を集中した。

  スコールの中に
  乾いた炎が目覚める瞬間や、
  水の皮膜に突き刺さっていく
  加速の手応えを、
  僕は、言葉に変換しながら
  重く黒く濡れ、
  噛み締めた印象だけは、
  油紙に包んで胸の奥深く
  しまいこんだ。


7月9日(土)
ごく穏和な冷涼というだけの曇天。やがて油断ならぬ暗さから、夕刻の霧雨。 @滝沢村

  人それぞれのサイクルがある。
  同じトライアル場に集う顔ぶれも
  土曜日と日曜日では、まったく異なる。
  
  久し振りに土曜日の門を叩いた。
  広い山の中に、総勢4名の練習。
  熱血コーチの斎藤さんにつかまり、
  みっちり汗をかく。

  授業をさぼって、森へ逃亡。

  一人になると自分を確かめたくなる。
  湿って軟弱な急斜面を駆け上がる。
  山の上に届く寸前、エンジン停止。
  泥と一緒に転げながら愛機を引きづりおろす。
  プラグがかぶる。
  さて、エンジンがかからないこと以外は
  まったく至福の時間なのだと
  僕は、荒い息の中で思っていた。


7月8日(金)
ずっと続くものなど無い。ところが、案外無いのが、心地良い「中断」。本日の梅雨の晴れ間。 @安代町

  たらふくの雨季が、
  山野から溢れ出て
  道を濡らす。

  僕は、じゃ、と水を斬り、
  高原地帯に躍り出る。

  雨に洗われた牧草地は
  蒸留されたグリーンで、
  雲の影に飲まれる朝は
  揮発していく夏の匂い。

  掌のライターひとつで、
  渾身の雄叫びひとつで、
  一面は火炎の海となり、
  雨季は枯れ果てていく。


7月7日(木)
暦の上では小暑(梅雨も終わりに近付き、本格的な暑さの始まり)というけれど、現実は梅雨寒。 @イーハトーブ

  水の音がする。
  森を叩く雨音ではない。
  確かな道筋を辿る水の気配だ。

  林道を離れ、
  腐葉土をそっと踏み越え
  木々の葉の雫をもらい進めば、
  小川が現れる。

  数日の雨のためか濁ってはいるが、
  とろりとろりと、よどみなく、
  どぼんどぼんと、存外に深い。
  
  その場限りの希望より、
  よほど安らかな旋律だから、
  合羽に冷たい雨がしみるまで
  ここに佇む。


7月6日(水)
屋根を打つ雨の音で目を覚ますなど久し振り。鉄道の運行見合わせ、停電。大気不安定のまま夜へ。 @雫石町

  満たされた者の心ほど濁るのは早い。
  快活は驕慢へ、自信は傲慢へはしる。
  そのように自ら崩れ、自らを傷付け
  形ばかりの幸福の中に死期を迎える。

  未だ満たされず、夢を追う者の心の
  満たすべき場所は、蒼く澄んでいる。
  
  だから、
  夢を入れる袋は、最後まで空がいい。


7月5日(火)
終日の小雨模様。最高気温も20度前後。緑を艶めかせ、花をひきたてる雨。 @盛岡市

  仕事へ向かうこの道で、
  思えば、僕は、
  いつも俯いていたのかもしれない。
  花吹雪の朝でさえ、
  空を見上げることは稀だった。
  この道を離れる日を思って、
  一片の懐かしさも残さぬよう黙々と歩き、
  幹をかわし、枝をかいくぐり、
  季節の香りや色を肩でかすめ、
  (定刻)へ急いでいたのかもしれない。

  (あれから何年経った?)

  今、同じ道で、
  花を失った樹皮の痛みや、
  葉の精一杯を愛おしみ、
  幾度も幾度も足を止めては、
  最後の道をかみしめている。

  


2005年7月4日(月)
梅雨寒。最高気温が20度を越えたのは二戸のみ。概ね、4月下旬から5月上旬並。 @雫石町

  (君も大変だなあ)

  立派になりたいんだね。
  真ん中にいたいんだね。
  先頭に立ちたいんだね。

  (で、何人消すんだい?)

  僕はと言えば、
  いやはや、
  小雨に濡れてみすぼらしく、
  好きな片隅に一人ぽつんと、
  競い合う人影も彼方に消え、
  今朝も花に寄り添っている。

  (何だか申し訳ないなあ)


7月3日(日)
雨の気配すら漂わせた朝の雲は昼過ぎに青空を滲ませ、やがて澄んだ夕暮れ。 @滝沢村

  終日、山に籠もってトライアル修行。
  前日までの雨を含んだ山肌は、
  なまじのスロットルワークでは、
  通用しなかった。

  タイヤは空転し、横に払われ、転びに転んだ。
  何故転んだのか良くわかっているから、
  泥にまみれる度、
  それはもう腹の底から笑った。

  出来るか出来ないか
  想像しているだけでは,
  本当の自分はわからない。
  もらった泥の分だけ
  とにもかくにも
  今の自分を思い知らされる。
  爽快に納得できる。
  (嗚呼、なんて素敵なんだ)

  


7月2日(土)
曇天の予報からは望外の青空など広がる朝に誘われ、午後の山間部で雨に濡れる。 @八幡平

  (ちょっと下北半島へ)と
  家人に告げたのは、午前6時を少し過ぎていた。
  ところが、北をめざして30分足らず。
  八幡平の頂に晴れ間が見え、つい、道草。
  霧の行く手に射す光。
  前夜の雨で濡れた山岳路が
  みるみる乾いていく。
  雉が飛び出し、小走りに道を先導する。
  一緒に停まっては走り、また停まる。
  (時間は、たっぷりある)
  それが油断だった。
  ぬくもる大地に愛機は馴染み、すっかり和み
  県北(けんぽく)の裏道を彷徨ううちに
  雨が降り出し、日は暮れていたのだ。
  
  僕には、
  このイーハトーブを抜け出て旅する才能は
  どうやら無いようだ。

  


7月1日(金)
我慢強い曇天のもと、岩手山の山開き、鮎漁解禁。夕刻に至り梅雨らしく濡れる。 @イーハトーブ


  夏のしげりに腹這い、
  大地に耳押し当て、
  息詰めて目を見開き、
  私が立ち去るのを待つ者どもよ。

  忘れ去られ、息絶え、腐敗し、土を肥やし、
  夏の緑を濃くすることのみ願う者どもよ。

  吹き渡る風に未練を残し、
  揺れて波打つ草原に思いを残し、
  ひと夏に朽ち果ててしまいたい者どもよ。

  私が、この場を離れたとたん立ち上がる
  累々たる骨の白さよ。

  雨が降り出す前に、
  ガソリンをかけ、
  焼いて欲しいと言うのか。

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