イワテバイクライフ 2006年1月後半
1月31日(火)
一関学院が選抜高校野球初出場を決めたが、それを越える青空と陽射しは見当たらなかった。 @盛岡市近郊
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人は、 現在という自分の歩調や速度の中から すべてを眺める。判断する。予測する。 けれど、 人生という大きな川の流れを追い越したり、 あるいは、 見送ったりすることは出来ないのだ。 (まして見知らぬ者の人生など) それでも承服できないのなら、 お前の空の深さを見上げろ。 春に怯える雪の白さをすくい取れ。 不用意に残した足跡を振り返れ。 光に背を向ける影に向き合え。 敢えて語ってしまった「本当の理由」を 問うがいい。 |
1月30日(月)
弛緩した冬とはいえ、基本のトーンはグレーだった。 @盛岡市近郊
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運命は、 梱包されて届く贈り物だ。 配達が少し遅れて 途方に暮れても 投げ出してはいけない。 どんなに暗い空のもとでも、 荷を解くのは、私だ。 自分で開いた道は 自分で走るのだ。 いかに無様であっても、 歯を食いしばって まずは、歩き出せ。 |
1月23日(月)
朝方のパウダースノー。ふっくら覆って、凍り付いた街をコーティング。かすかな滑り止めになったかも。 @盛岡市近郊
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ある日、 あなたの視界から私が消えても、 私は、風を切っている。 いつか、 あなたの記憶から私が消えても、 私は、魂を綴っている。 轟々たる雲の群れの中に 一本の杭の如く滞空する予感となって、 私は、どこかで目を見開いている。 風聞という風聞をかき集めてみても、 絶望のあまり命を絶ったという噂も無く、 堰き止めた怒りを放つ機を窺う噂も無く、 きっと、 立ち枯れの枝に私の気配だけが燃えている。 |
1月22日(日)
白い皮膜のかかった青空と陽射しは、わずかに雪の原を湿らせた。そんな春の幻を夕闇が凍らせた。 @盛岡市近郊
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谷の向こう側に激しい砲撃を仕掛け、 もうよかろうと要塞は静まり返った。 月に照らされ砲身も眠りついた頃 人の声が近づく。 谷を渡って来たひとつの影は、 やがて白い歯を見せ、手を振る。 門番の前に立った男は、 硝煙の臭気に包まれてはいたが、 山野の季節を越えてきた瞳は 屈託なく城壁を見上げていた。 (砦に何の用だ)と突きつける槍に男はこたえた。 「この丘は、私の故郷です。 ここに暮らす人々が、 あれだけの砲弾にこめた憎しみとは何だったのか、 それが知りたくて戻ってきたのです」 |
1月21日(土)
明け方、かすかな小雪を纏った街の空に、薄めた水色がにじみ出したが、目を覚ますことなく灰色。
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冬眠という気分に誘われて、 格納庫に腰を下ろす。 かすかなオイルやガソリンの香りが 冷気にシェイクされていく。 金属たちは、 およそ金属を離れた議論に熱中していて、 私のことなどお構いなしだ。 すなわち彼らのテーマ。 「人の心変わりを、いかに受け流すか」 「人の熱情を、いかに風に変換するか」 「道に待つ死の気配を、いかに絶つか」 「失われた心の体積を、いかに測るか」 「結末のない道程を、いかに認めるか」 「走る者の最期を、いかに見届けるか」 (春までに、答えは出るのか) |
1月20日(金)
大寒らしく日中も氷点下。この冬早くも23日目の真冬日。陽射に氷をとかすほどの熱情もなく。 @雫石町
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歳月に試され 霧散するものもあれば、 確信に変わるものがある。 灰色が漆黒となるように、 絶望が宿命となるように、 人の心一面が決っていく。 不要になった喜怒哀楽を川へ流し、 あまりに整理された者の手には、 次の歳月を削り出す手斧一本が握られる。 (その乾いて冷えた重さの、何と言う心地よさだ) |
1月19日(木)
八幡平市の竜ケ森トンネルで氷の塊が列車運転席の窓ガラスを直撃。運休。磨きがかかる氷の世界。 @旧・玉山村
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日々の暗闘に勝たなければ 庭の花が枯れるというのか。 反目する群れを葬らないと、 川が枯れるとでもいうのか。 噂の種をまき合い、罠を仕掛け合い、 笑顔で刺し合って酒を飲む。 誰が誰と小声で話したとか、 誰が誰の背中を指差したとか、 粛清の狼煙や、巻き返しの火の手に 一喜一憂する人生とは、いったい何だ。 生き残らない限り、 花吹雪の丘で昼寝もできないというのか。 静寂の淵に釣り糸も垂らせないというのか。 |
1月18日(水)
雪も氷も踏むことなく岩手山麓に辿り着けた。幹線道路は乾き、所により砂煙が舞い上がった。 @岩手山麓
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長い長い廊下の奥の闇にまぎれて 眠っているのか、覚めているのか、 もの思っているのか、放心しているのか 生きているのか、死んでいるのか そんな気配すら埃を纏い 真夜中に沈殿する炎よ。 古時計が乱打する時の下で 屋根裏を跋扈する影を見逃さない眼差しよ。 悪霊の仕業を柱に刻む爪よ。 大伽藍の片隅に控える正義よ。 すべてを明らかにする日が来たら、 私の命を使え。 |
1月17日(火)
3学期の始業式だとか、沿岸のユキヤナギだとか。街の氷はエッジを鋭くしても、季節は春へまた一歩前進。 @盛岡市
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別れを告げる時にこそ、 幸せでいたいなら、 残された日々を キャンドルで飾るがいい。 三日も経てば鎮まるような言い分など 笑顔と引き換えに投獄して、 さっさと明朗な絨毯を敷き詰める。 息の根を止めて、なお足りぬ憎悪など、 明日と引き換えに斬首して、 さっさと理性の薫風を解き放つ。 愛されて終わりたければ、 手負いの狼の声など上げてはならない。 暗い目論見など呟いてはいけない。 (せめて、乾いた轟音の中に押し黙れ) |
1月16日(月)
寒気も緩んで街の雪道はざらめ状。ざくざくしゃくしゃく攪拌して進めば、かすかに3月の匂い。 @盛岡市近郊
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幾重に鍵を掛けて籠もっても無駄だ。 春が来れば 花の匂いに誘われ這い出して来る。 隠れ家を迷彩色で覆っても無駄だ。 月夜の晩の、 遠吠えの文体までは偽り切れない。 底冷えの穴蔵で 屈辱のあまり牙を打ち鳴らす者よ。 のんびり春を待つ無数の銃口が お前に照準を合わせていることを 忘れるな。 |