イワテバイクライフ2006年2月後半
2月28日(火)
ぼんやりとした晴天の中に、どこか、うっすらと影をまとった岩手山。足踏みする季節に何か言いたげに。 @岩手山麓
あなたの前で 落胆したところで、それが何だ。 あなたの裾野で 毒づいたところで、何が始まる。 その懐に近付き過ぎて、 あなたを見失った男が、 何を叫ぼうと、吠えようと、 山びこひとつ返えらない。 野犬一匹振り向かない。 稜線は迷い無く天空にせり上がり、 歳月が飲み込んだ膨大な人々の思いとともに、 今朝を見下ろすばかりだ。 |
2月27日(月)
どっどど、どうどうど、どっどど、どどう。風の又三郎か、春の嵐か。冬晴れ以上の温もり無し。 @盛岡市(三ツ割)
(ひとかど)をめざし、のしあがる雲よ、 (鉄の結束)をほこり、なりあがる風よ、 (輝く勲章)をならべ、なりすます光よ、 せめて、私の前では、演じてくれるな。 お前が、どれほど這い回り、涙を流し、 土を食い、石を噛み砕いてきたことか、 私にはわかるから、 悲しいほどに、気を張らず、 虚しいほどに、はしゃがず、 空々しく、友情など貪らず、 ただ黙々と、 わきたて、吹き抜けろ、照らし出せ。 |
2月26日(日)
妙に重い曇り空から、やがて雨。堆積するだけの冬の記憶は、土台から崩れ、ずぶずぶ。 @北上高地
その隊列は、 是が非でも揃えるべきものか。 その王座は、 悲願ともいうべきものなのか。 あるいは、 人生の風穴を塞ぐものなのか。 背負う影の、あまりの暗さに、 自らを慰め説き伏せるために、 無理を重ねて貫く意地なのか。 桜吹雪にまみれては泣き笑い、 夢に遠い自分を呪い狂うのか。 (楽しい楽しい、ああ楽しい)と。 |
2月25日(土)
乳化した大気を「春霞」と言い切る自信は、まだ無い。崩れかけた雪の群れが陣取るうちは。 @安比高原
海の彼方の誰かの理由で 僕の旅の行き先まで変る。 山の彼方の誰かの理由で、 僕が描き続けた夢が終る。 星の彼方の誰かの理由で 僕の地平は爆心地になる。 津波のように、 山彦のように 流星のように 見知らぬ理由が向かってくる。 |
2月24日(金)
金メダルで迎えた朝は、何とも穏やかで、終日、テレビのスケートリンクを滑り続けたヒロイン。 @岩手山麓
私は、 けして正しいわけではない。 また、 すべて間違っているとも言い切れない。 (どちらも私なのだ) 正しさと誤りの狭間にあって、 真心だけは抱きしめていたい。 あなたに優しくできる私でありたい。 これからも懸命に 正しい道を探して、旅を誤るかもしれない。 春を求めるあまり、光を失うかもしれない。 どうか、そんな私を許してほしい。 |
2月23日(木)
なお(春うらら)の幻想を振りまいた晴天だが、大気の人事異動とばかりの夕刻以後の冷え込み。 @岩手山麓
神様はね、 時々、練習問題を出すんだよ。 うんと悩んで君が出した答えを 神様は、じっと見つめるだけさ。 やがて、いつの日か、 君のもとへ採点が返ってくる。 君の答案に花を添えただけのものだよ。 君は、その時、気付くのさ。 それは、君自身の教訓に他ならない。 君が、苦しんで苦しんで辿り着いた答えだよ。 神様の練習問題に正解は無いんだよ。 |
2月22日(水)
宮古では最高気温が14度(4月上旬並み)。今日も岩手全体、春へ前進。 @北上高地
空が開けたといって 運が向いてきたと思ってはいけない。 (あまりに悲しい天空の蒼さだったりする) 陽がさしたといって 自分の番だなどと勇んではいけない。 (すでに衰弱し消え入る西日かもしれない) 風が優しいといって、 明日への夢など物語ってはいけない。 (刑場に吹く風は、おおむね慈悲深いのだ) |
2月21日(火)
盛岡はじめ、ざらに10度を越える4月上旬並みの陽気に、バブリィな春気分に満たされた岩手大陸。 @滝沢村
(あなたは、いったい誰と踊っているのだ?) 向き合えば 誰かの右は、あなたの左。 あなたの右は、誰かの左。 あなたが進めば、誰かは下がる 裏になり表になり、あなたは踊る。 やがて相手は誰でもよくて、 今朝もマネキン相手に回り回る。 すがり、からんで、満たされ、踊る。 あなたを主役に前後左右は決まり、 とにもかくにも食べていける。 (やれやれ・・・) 私が向き合っているのは、 道に巡り逢う季節の曖昧なのだが。 |
2月20日(月)
雪崩を打つような春の気配。もはや、どんな大雪も、寒波も、勝ち越せない、季節の趨勢。 @岩手山麓
(変だ変だと思ってはいたのだけれど・・・) 真夜中に呟く君は、実に正しい。 深呼吸して、不可解の門の鍵穴に たった「ひと言」差し込むだけで、 すべて解けることがある。 すべて頷けることがある。 あの熱狂や、沈黙や、視線や、暗号や、 なるほど話は、みるみる繋がっていく。 幾度繰り返しても、そこへ辿り着く。 白昼に「理由」を探して苦悶する誠実を嘲笑い、 そのキーワードは、真夜中の天井裏に蹲る。 闇の中で、私は君の手を握る。 (そうさ、気付いているのさ、誰もが) その「ひと言」を口にしないから、 無事に朝が来るってことを。 |
2月19日(日)
けだるいグレーの空に、いつまでも冬気分でいたら、根雪は衰弱し、公道は乾き、山野に芽吹きの予感。 @盛岡市玉山区(天峰山)
今日を掴み損ねて道に迷うことは、 間違いじゃない。 明日の為に来た道を捨てることも、 悪いことじゃない。 吹く風を追って黙りこくる私は、 あなたが決め付けるほど、 冬のままじゃない。 とけていく理由をきかれても、 きえていく心情をきかれても、 もはや、春へ押し出す雪解け水だから、 昨日の私は、もう、私じゃない。 |
2月18日(土)
山岳を覆う冷えた雲の群。平野に開ける冷えた青空。固くなる一方の足元の氷。 @盛岡市玉山区(天峰山)
爆薬ひとつ抱いて 大海原を低空飛行する者よ。 二十歳の妄想に飛び立った狂気よ。 ピンクフロイドと 安いウイスキーに酔いどれながら、 けれど、射抜くべきものを忘れず巡航を重ね、 今、氷山を見渡す零戦よ。 お前が待ち続けた(その時)は、今だ。 保身の果ての肥満と 決断しない好々爺を 氷結の海に沈めるなど 不本意の極みかもしれないが、 どうやら、確かに、この日の為に、 あの日、お前は飛び立ったのだ。 |
2月17日(金)
青空も陽射しもあったが、時折の風に冷えた印象が強かった。事実、最高気温は、真冬日寸前(盛岡)。 @岩手山麓
ぐるり襖の裏の白刃に気付きながら、 我ら、ゆるり茶などすする。 天守にかかる黒雲をすでに語らず、 春の兆しのあるがままに 今の命を喜び合う。 (では、参ろう) あなたは、右と後ろ、 わたしは、左と前を、 (心得た) どっとなだれ込む襖を斬り払い、 血に染まりゆく殿中の夕暮れ。 |