イワテバイクライフ2006年11月前半
11月15日(水)
青空は流れ、純白や灰色の雲も流れ、雷注意報が出され、やがて冷えた雨に洗われた。 @盛岡市
己の意向を 最愛の者の意見にすりかえる者よ、 (臆病な足跡などを残すな) 己の危機を、 友を犠牲にしてでも乗り切る者よ、 (純白などと言葉にするな) 己の破綻を 善良な人々に背負わせる厚顔よ、 (雪の如くとける罪は無い) |
11月14日(火)
小雨模様の朝。最低気温8度9分(盛岡)に「本当に冬なのか」と半信半疑。けれど、それ以上気温も上がらず、やがて夕闇。 @盛岡市
鞭の数で恐怖を煽り 人をねじ伏せてきた者の末路を見た。 忖度に忖度を重ねて 白も黒にしてしまう者の末路を見た。 一切の決断を放棄し、 瓦解の風景を眺める者の末路は近い。 末路を照らす灯があるなら せめて確実に闇へ導いてくれないか。 二度と舞い戻れない深い闇の底へ 画策すら思いつかない真っ暗闇へ 導いてやってくれないか。 |
11月13日(月)
盛岡市郊外に初雪の痕跡。青空と暗い雲。その混濁の末に小雨模様。 @北上高地
晴れ間は 冬雲の大群に飲まれていった。 見渡す限りの大気に迷いは無く、 回復の素振りなど微塵も見せず、 小雨混じりの決意を運んで来た。 それでもなお、 私は、かすかな光を手繰り寄せ、 自らの輪郭を確かめようとする。 沸々とたぎる愛馬の体温を貰い、 氷雪の季節の先触れを迎え撃つ。 境界線に立つ炎となって、 押し寄せる漆黒の闇を迎え撃つ。 |
11月12日(日)
冷えた青空に、冬の雲が流れ込み、猛り狂い、沈殿し、山を隠し、けれど陽射しだけは遮れず。 @岩手山麓
移ろうものに併走する行為は、 刻々に集中するということだ。 今動き出していること。 今流れ出していること。 今描き出していること。 そこから離れ抜け出し、 先を思ってはいけない 振り返ってもいけない。 精魂を傾ける「今」が、 辿るべき道を指し示し、 呼吸と歩調を導き出す。 ひとつの瞬間、ひとつの時間。 それらひとつひとつを「生き切る」ということ。 歳月を重ね、季節を繰り返す人の道も つまりは、そういうことか。 |
11月11日(土)
秋霖。霧に包まれ、まれに強まる雨音を聞く。 @滝沢(トライアルパーク)
雨に濡れて 力の限りを尽くす楽しさは、 格別なのだ。 大気の中で 自身の熱と志を噛み締める 至福の時だ。 困難を迎え、 大地のあり様を受け止める 一人の力だ。 初冬の雫を纏って 駆け上がり乗り越え、 落ち葉と泥にまみれ、 山の気持がしみわたる。 |
11月10日(金)
途切れ途切れの陽射しや、千切れ飛ぶ青空より、通り雨の印象がすべて。 @北上高地
百万光年の彼方の英雄よ 安らかに眠れ。 この空の下で、 あなたを語り、 あなたに学び、 あなたで食い、 あなたで潤い、 あなたで立つ、 あなたの故郷。 あなたを誇りに、 あなたを土産に 夢も尽きぬ故郷。 (敵役など即座に投獄だから) 大丈夫、枕を高くして眠れ。 |
11月9日(木)
満点の星空は、眩しい朝陽に蒼く塗り込められ、月だけが天空に居座り、奇跡の如き小春日和。 @岩手県北部
友よ お前が見えるのだ。 何か叫んでいるお前が見えてくるのだ。 机を叩き、 言葉を尽くし、 涙を流し訴えるお前が見えてくるのだ。 けれど友よ、 私には、お前の声が聞こえないのだ。 お前の全身全霊の表情は 美しいほどの静寂に包まれているのだ。 嗚呼、夕暮れに立ち尽くす私の耳には、 風にそよぐススキの音さえ鮮明なのに 友よ、 残酷な秋を生き抜いてしまった私には、 お前の命がけの友情が聞こえないのだ。 |
11月8日(水)
暗き雲、ごうごうと流れ、引き裂かれ、まれに青空などのぞく初冬。 @盛岡市
(舞い狂う、舞い狂う) 無常の風は この朝の形を決めかねて 雲を破り捨て、光を砕く。 (走り去る、走り去る) 季節さえ背中を押されて走り去る。 私を置き去りにして 大地さえ走り去る。 無常を思い詰める一切の眺めは、 じっとできずに 舞い狂う、走り去る。 |
11月7日(火)
昼過ぎまでは超温暖。「爆弾」と形容された低気圧が、夕刻、強い風雨をもたらし、一気に冷え込んだ。 @滝沢村(トライアルパーク)
今夜の毒のお陰で、 明日まで生きていられることがある。 今夜の夢のお陰で、 明日を待つのが怖ろしいこともある。 毒でも薬でもいい、 涙の河を凍らせる程の劇薬はあるか。 夢でも銃でもいい、 窓を叩く悲しみを撃つものはあるか。 |
11月6日(月)
冬を目前にしながら曖昧模糊とした温暖は「「関西芸人」のごとく、その場を笑いのめすだけ。夕刻かすかに水滴。 滝沢村(トライアルパーク)
がらんとした山のてっぺんに ただ一本、秋が燃えていた。 (もしや、私が現われるのを待っていたのか) 色に込めた遺言を私に見せたい一心で あたりが次々季節を終らせる中、 お前は、じっと今日の私を待っていたのか。 (まさか、私はお前を待たせ続けたというのか) 去年の紅葉の下の私を越えたい一心で 今年の色に目もくれず挑む日々、 私は、情けのひと欠片もない者だったのか。 私が立ち去ったなら、 どうか燃え尽きてくれ。 心ゆくまで散って、 安らかに眠れ。 |
11月5日(日)
生暖かい朝は薄気味悪いほどで、最高気温が20度を越えた地域も複数。だが、天気は下り坂へ。 @八幡平市
そこへ急ぐ道は濡れていて、 けれど仰ぐ空は晴れ渡って、 何かあったに違いない朝だ。 ここへ通じる道標は鮮明で、 けれど辿る記憶は霧の中で、 何かあったに違いない私だ。 (嗚呼、風が雲を連れて来る) 希望を胸に抱きしめながら 大地走る闇に飲まれる私よ。 (嗚呼、風が光を連れて来る) 絶望を胸に突き刺しながら、 照らされ暴かれていく私よ。 何かあったに違いない旅よ。 |
11月4日(土)
冬の現実を突き付けられるまでの猶予の如き温もり。凍り付く季節を目前に現われる幻覚の春。 @岩手山麓
私に別れを告げる日が来たら、 これだけは覚えていてくれ。 (ひとつ) どこにでも顔を出す輩に 私が刻んで来た轍を語らせてはいけない。 (ひとつ) 傍観するだけだった輩に 私が走破した日々を偲ばせてはいけない。 (ひとつ) 狐のように暗躍する輩に 最愛の鉄馬と大地を手渡してはいけない。 以上、ささやかな願いすら叶わない時は、 さっさと火を放て。 |
11月3日(金)
街路樹の紅葉舞い散り、歩道に踏まれ、こなごな。青空のもと、晩秋のスパイスとなって、さらさら。 @八幡平市
山は色を落とし、頂まで見通せる。 木立をかわして山腹を駆け上がる。 バランスを崩し倒れ込んでも そこは分厚い落葉の絨毯だ。 弾む息の中から見上げれば、 照らし出された樹林は、 さながら秋の遺骨だ。 ひと昔前に分け入った道は 野性に戻りかけていた。 マシーンは猟犬の様に先を探り、 息をひそめる記憶に牙を立てようとする。 (人もまた、原形を失いながら生きるのか) 雪に閉ざされる前に確かめておきたくて、 引き返す理由を失っていく。 |
11月2日(木)
盛岡で初氷を観測。所詮、季節の歩みのおしるし程度の出来事。うららかな秋晴れに氷の印象も皆無。 @岩手山麓
この冷えた大気が よほど美味いのだ。 燃料は美酒の如く、 シリンダーに注ぎ、 火炎は透明で軽く、 爆発に迷いは無い。 張り詰めた神経が、 私の意図を受けて、 彼方の秋に刺さる。 (人の性能もそうだ) この明朗な光線が、 よほど嬉しいのだ。 希望は私を満たし、 心は一気に燃えて、 彼方の明日へ飛ぶ。 |
11月1日(水)
まずは絵に描いたような秋晴れだった。朝方の冬めいた雲や、夕刻の刺すような冷気を問わなければ。 @八幡平市
まったく なまっちょろいヤツだ。 少しぐらい高度を上げたからといって、 それがなんだ。 少しぐらい氷雪が匂ったからといって、 それがなんだ。 それだけのことで、 笑顔を失う炎など消えてしまえ。 (いいか) 見渡す秋の色が脱落した夕暮れに、 なお赤々と燃え盛ろうとするのは、 お前と俺だから、 (さあ、行くぞ) |