イワテバイクライフ 2007年 4月前半
4月15日(日)
片付けようもない悪天候の空気は、昼過ぎになって、ようやく好天へ傾いた。だが、薄ら寒さまで払われず。 @滝沢村(トライアルパーク)
実力者の4サイクルエンジンが 胸を突く斜面に雷鳴を轟かせる。 仲間が定めた試練のルートの 遙か上を越えて行く。 嗚呼、見上げるばかりの私は、 やがて置き去りにされていく。 (まあ待て) 遮二無二 追い掛けるだけの自分を 黙らせ片隅に佇ませろ。 誰が、 どんな呼吸と構えと勢いで 難関に挑んでいくのか、 目を向けろ 耳を傾けろ 心に仕舞え。 身も心も静まり返った時、 すっと、 同じことが出来たりするのだ。 |
4月14日(土)
終日断続的な小雨。それでも最高気温は12度3分(盛岡)。岩手公園のソメイヨシノ二輪ほころぶ。 @盛岡市(中津川)
成功を求めるから 呼吸が乱れるのだ。 あるがままの流れに寄り添い 迷い無きひと筆となれ。 失敗を恐れるから、 呼吸できないのだ。 けして変わらない流れを思い、 淀み無きひと筆となれ。 遥か先を思うから、 飛び込めないのだ。 いつ終わってもよいほど今日を愛し、 胸深くおさめた息を信じ 明日へ流れ行け。 |
4月13日(金)
冷えた曇天は、小雨を断続的に漏らし、花の季節への見通しを一段と不透明にした。 @岩手山麓
道は 求めるから 現われるのだ。 進もうとするから 続くのだ。 お前が現われるまで 雪に埋まり待っていたのだ。 空は 仰ぎ見るから 広がるのだ。 明日を託すから 開けるのだ。 お前が未来を思うまで 光は闇に閉ざされていたのだ。 |
4月12日(木)
晴れて最高気温13度(盛岡)でも、陽射しに熱がこもらなければ、桜前線など加速させられない。 @滝沢村(トライアルパーク)
去年の春は けして悪くはなかった。 だからといって 去年の春と 同じでよいわけはない。 一年前の春の轍をはずれ、 より鋭く、険しく、高く走るから 新しい春なのだ。 当然、出来ないことばかりだから、 あたかも 後退したような気分になるが、 進歩とは、 そんな泥沼の中に芽生えるのだ。 泥にまみれるのが嫌なら、 出来ることだけを繋ぎ合わせ、 居心地の良い轍に はまっていればいい。 過ぎ去った春の印象を 辿っていればいい。 |
4月11日(水)
氷点下0度4分から13度急上昇(盛岡)してみせた春の本気。大気は乾き、澄み切り、視界良好。 @盛岡市
ぎりぎりの決断というのは どうも、うまくない。 紙一重の乱れで 一気にすべてが崩れ出す。 どう転んでも 何とかなるように しておけないものか。 例え、真っ暗闇に包まれても、 誰かが笑い出し、 誰かが火を焚き、 誰かが酒を出し、 (しょうがねえなあ)と 宴が始まるくらいの 余白を残しておけないものか。 |
4月10日(火)
朝方の青空は、やがて流れる雲に寸断され、昼過ぎから断続的な小雨。とはいえコート無用の春。 @盛岡市(北上川堤防道路)
ニュートラルランプが ふらふらし始め、 やがて、ウインカーライトと リヤブレーキランプが死んだ。 行く手は右か左か、 進むのか停まるのか、 意思表示できず、 数日、翼を失った。 ほどなく理由は明らかになった。 「接点の腐食」だった。 雨の日も雪の日も 走り続けた証と思うことにした。 それはさておき、 求める方角を照らす灯りは 私を宵闇に導き泳がせる。 少し先の未来まで 饒舌に示めそうとするから、 川のほとりで黙らせたのだ。 |
4月9日(月)
空一面を決めるもの無し。思い出したように暗くなり大地を騒がせる降雨。やがて安定の夕暮れ。 @滝沢村(トライアルパーク)
雪はどうかと 駆け上がった。 春はあるかと 這い上がった。 山の頂の尾根に辿り着けば、 まったく冬の遺骨のような 樹林が続くばかりだ。 今年も ここに幾度 挑み、 届かず、 転げ落ち、 助けられ、 振り返り、 みなぎる悔しさが 私を引き上げてくれるのか。 見守る野性の牙に 祈りを捧げ 山を下りた。 |
4月8日(日)
統一地方選挙の投票日。晴れたり曇ったり。天気雨や暗い雨。明暗互いに譲らず、熟成していく春。 @盛岡市(岩洞湖)
性能ではない。 道が 走らせてくれるのだ。 (だから、急ぐことはない) 地図ではない。 雲が その先を決めるのだ。 (だから、予想もできない) 意志ではない。 光が 風にとけて燃えるのだ。 (だから、止まることはない) |
4月7日(土)
広がり流れ途切れる雲の不透明は春霞の一種なのか。陽射しや青空に輪郭無し。最高気温13度3分(盛岡)。 @盛岡市
清らかなところにしか 住めない悪人は、 確かにいる。 清らかな流れに 清らかな心は集まる。 その純真を食い物にする輩は、 なるほど 川が汚れたら食っていけない。 どす黒いものを良く知る者は、 自らの悪の及ばない汚濁に敏感だから、 居座ったり、踏ん張ったりせず、 さっさと泳ぎ去る。 善も悪も消えたあとには 川が澄み切るまでの歳月を 辛抱強く待てる者だけが残るのだ。 |
4月6日(金)
三日続けて氷点下の朝(盛岡)。薄雲を押し分けて広がった青空の脆弱な印象。最高気温が10度を越えた実感も無し。 @岩手山麓
道を急がなければ 追いかけてくる影も無い。 狙う獲物もなければ 逃げて遠ざかる影も無い。 張る意地がなければ 付き纏う勝敗の影も無い。 暗い約束がなければ 選択を縛る鎖の影も無い。 動くべきこともない日々の影に 春の夕闇を重ねて ひっそり佇めば 道端の犬さえ 吠えることはない。 |
4月5日(木)
朝から雪が降ったり止んだり、晴れたり曇ったり、定まらない空は、やがて冬の夕暮れに辿り着いた。 @岩手山麓
君が その花を あまりに気に入った様子なので 僕は黙って見ていた。 毒の花粉に鼻を寄せるのを。 君が その道を あまりに美しいと賞賛するので、 僕は黙って眺めていた。 橋が崩れ谷底に落ちるのを。 君が その空を とても怖ろしいと言い出すので、 僕は黙って見上げていた。 漆黒の雲が宝石になるのを。 |
4月4日(水)
東京の春の嵐に隠れて「どんど晴れ」の故郷には、ささやかな青空があった。けれど、どこか冷え冷え。 @紫波町
変革するなどと 大声を出してはいけない。 (旧態依然の掟の下で) 創造するなどと 軽々に語ってはいけない。 (古色蒼然の舞台上で) 再生するなどと 真顔で言ってはならない。 (見殺した人々の前で) 清新な心などと うたい上げてはならない。 (黒幕の背中に乗って) かたい絆などと 目を潤ませてはいけない。 (密約を交わした仲で) |
4月3日(火)
日が陰れば冬を思い出した。陽が射せば初夏を幻想した。昼過ぎには「凡庸な春の晴天」で統一された。 @花巻市(山屋トライアルパーク)
どこまでも 駆け上がっていければ それは楽しいけれど、 いつか 折り返す時はやって来る。 人の道は 走り抜けるだけで至難で、 全うすべき歳月に等しい 技と力が必要になるが、 まさに折り返す時、 ターンの瞬間こそが、 最も難しいのではないか。 目も眩む絶壁で 身をひるがえして宙に舞い、 天空をめざした思いに別れを告げ もうひとりの自分へ 向きを変えることが どれほど難しいことか。 せめて、ターンの背景は、 雄大でありたい。 まっすぐ求めた夢であるなら。 |
4月2日(月)
時折霧雨が舞い早春を湿らせた。薄雲のベールは陽射しがこぼれるほどに黄色く霞んで見えた。 @盛岡市
ボルトのひとつひとつと話した。 関節を一段と滑らかにした。 火炎の顔色を確かめた。 呼吸の道筋を清めた。 手元を引き締めた。 血液を更新した。 思いのままに 悔いを残さず そして 正しく大地を掴むために 明日の準備を進めた。 仕上げは、 いつも、この空の下だ。 心を込めた今日という日が キックバーを踏み抜いた途端 どう叫び燃えさかるのか 聞き入る場所は、 いつも、この空の下だ。 |
4月1日(日)
かすかな陽射しがあったかもしれない。水滴も風に混じったかもしれない。けれど、ついに雪は見なかったのだ。 @滝沢村(トライアルパーク)
見渡す一面の冬を知る者は、 雪が消えたといって喜ばない。 土が現れたといって歌わない。 冬は、けして悪くはなかった。 冬に、けして罪などなかった。 ただ、しばらく、 私をひとりにしただけだ。 私を休息させただけだ。 私に春を夢見させただけなのだ。 燃え盛り燃え尽きそうな思いを 冷え冷えと抱きしめてくれたのだ。 ざんざん降り積もる銀世界が、 焦燥の言葉を吸い取って、 おそろしく静かな夜を 聞かせてくれたのだ。 |