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イワテバイクライフ 2007年 7月前半


7月15日(日)
房総沖を東に遠ざかる台風4号。その気配は希薄。陽射しこそ稀だったが、わずかな湿度とかすかな風の心地よさ。 @滝沢村(トライアルパーク)

何かを払い過ぎた男に
神は苦慮した。

払い過ぎたものを返してくれと
訴えられることを恐れた。

何とかトントンにする手はないかと
神は思案を重ねた。

まさにその時、
男は、山の暮らしを気に入った。

その選択は、神にとって渡りに舟だった。
実にたやすい解決の道筋だった。
ここに男を置き捨てれば良いのだから。

男が上機嫌で暮らす限り、
払い過ぎたものを返せと迫られる悪夢を
神は見なくてすむのだ。

(そうさ、両者は実にうまくいったのだ)
この大地のおかげで。






※画像と文は、一切関係はありません。


7月14日(土)
大型の台風4号は、時速35キロで接近中。嵐の前の静けさか、雨らしい雨も降らなかった。 @雫石町

わたくしは
まったく
井の中の蛙です。


このちっぽけな居場所の
広さと深さすら
いまだ測りかねている蛙です。

ただ、
この小さな空も
宇宙の果てに続いていると思うと
大海を見たという自慢話が
どうにも狭く浅く思え
じっと星を見つめる蛙です。


7月13日(金)
最高気温26度(盛岡)を裏付ける陽射しの記憶は希薄。とにもかくにも梅雨の晴れ間。 @滝沢村(トライアルパーク)

めざす者と
同じ高さを越えたところで
それが何だ。

めざす者と
同じ軌道を描いたところで
だから何だ。

理にかなった行為が
美しい筆のあとならば、
この夕暮れの私は、
あまりに醜い。

心を立て
狙った一点に加速し、
しなやかに跳躍を完了することが
永久に不可能だと思えた私は、
せめて、あなたの筆致を記憶しようと
夕空を仰いだのです。


7月12日(木)
梅雨空継続。けれど天気予報が言いふらす雷雨どころか、行く手を濡らす雫すら稀だった。 @雫石町

  思いのままに走るほど
  
不要なものが飛ばされていく。
  
(何と身軽なことだ)
  

  失ったのではない。

  
風が
  
本当の姿を削り出したのだ。
  

  傷付いたのではない。

  
風が
  
嘘の無い心を形にしたのだ。
  

  信じるほどに

  
風は鋭利だ。


7月11日(水)
梅雨空戻る。ためらいがちな小雨は、夕刻、本降りに至る。湿った冷気は、確かに岩手の雨季だ。 @雫石町

  (この地を遠く離れて暮らしていたら)

  雨合羽を貫通してくる宝石の雫に
  胸板を濡らすことなど
  願っても叶わない。

  林から森へ
  森から田園へ
  尽きることのない風景を辿り
  一面潤っていく心模様など、
  およそあり得ない。

  嗚呼、
  わけもなく彷徨う夕暮れの
  何と懐かしい時間だ。
  何と嬉しいずぶ濡れだ。


7月10日(火)
雲の皮膜に直射日光は遮られ、緑陰の風は、かすかな涼を運んできた。 @滝沢村(トライアルパーク)

空を覆う緑が
風に揺れるたび、
すり鉢の底に
光と影が踊った。

静けさと
乾いた空気をたたえて、
何とも心安らぐ居場所に見えた。

けれど、
其処に佇むためには、
舞い降りる力が必要で、
何より重要なことは、
家に帰るために、
舞い上がる力が必要だった。


7月9日(月)
真夏日の宣告には0度6分足りなかった(盛岡)そうだ。寝言は控えろ。アスファルトの路上は炎熱だったぞ。 @盛岡市(らしい)

日は
もはや山の向こうに沈んだのだ。

それでもなお
ブーツを濡らす流れは
夏の残光を映し、めざす場所へ急いでいる。

この夕暮れに
流れることも忘れ立ち尽くす私は、
ひそかに期待する。

幸せを水面に浮かべれば、
未来へ運んでくれるのか。

痛みを、そっと沈めれば、
過去へ運んでくれるのか。

あるいは、
梅雨の増水が
いっさいを押し流してくれるのか。

祈りに寄り添う水音が
ころころと闇へ転げていく。


7月8日(日)
内陸各地、真夏日に迫る暑さを記録。8月上旬並み。軽く乾いた大気が、北国の救い。 @滝沢村(トライアルパーク)

  求めに求めた
  名誉な役割を担った途端、
  歩き出すことを忘れる者がいる。
  
  担うものの大きさに陶酔し、

  腰を上げられない者がいる。
  
  数年で枯れ果てる花園や

  いずれ立ち消える祭りのことに
  熱中するうち
  終っていく者がいる。

  
  肝心の重荷は、

  結局、誰かに譲り渡して
  あとは歴史に君臨するだけの者が
  確かにいる。


7月7日(土)
乾いて澄んで眩しく、何とも純度の高い光が、彼方のものを鮮明にしてみせた。 @岩手山麓

  人は、不覚にも、
  話の例えに持ち出す固有名詞で
  自身の器を語ってしまう。


7月6日(金)
梅雨の晴れ間に、瞬間25度を越えたところで、夏日だと謳い上げるほどの実感もない。 @北上高地

  どうしても、と望むのなら、
  あなたが人々を導くことに

  反対はしない。

  ただし、だ。

  押し寄せる巨大な波を知りながら
  密室で堂々巡りをしていてはならない。
  (即座に決定せよ)

  倒壊し沈み行くものを知りながら
  名誉欲のおもりをしていてはいけない。
  (即座に宣告せよ)

  破綻し滅亡する明日を知りながら、
  美しいものにうっとりしている暇はない。
  (即座に着手せよ)

  その上で、
  清らかな理想を謳い上げることは
  あなたの自由だ。


7月5日(木)
どこかひんやりと夜は明けた。庭先に紫陽花。水溜りに薔薇の花びら。小雨断続。 @盛岡市

  青年だった私の隣で
  あなたはいつも扇子を開いて
  空を眺めていた。

  苦しい胸の内を明かすと
  「ほお、そりゃ、たいへんだ」と
  微笑んだ。


  不条理に憤慨すると
  「ほほお、よく言った」と
  真顔になった。


  人生について尋ねると、
  「なんちゅうか、ほんちゅうか」と
  便所に立った。


  どん底から助けを求めると
  「なあに、死にはしないさ」と
  焼酎を美味そうにすすった。

  あなたは、とうに職場を卒業し、
  悠々自適の田舎暮らしだ。

  (あなたの口調に似てきた私です)


7月4日(水)
かすかに青い印象さえ滲んだ朝方の空は、やがて大真面目な梅雨空へ移ろい、夕刻の小雨。 @滝沢村(トライアルパーク)

不安にかられる前に、
行く手を見定めろ。


失敗をおそれる前に、
しっかり踏み出せ。


難所に向き合う前に、
心を真直ぐ立てろ。


出口が見えた時こそ、
全力でトドメを刺せ。


すべて完了するまで、
結末など微塵も思うな。


7月3日(火)
朝方の小雨も、日中は小休止。まずは梅雨空。吹く風に、かすかな冷涼感。 @滝沢村(トライアルパーク)

  空を見上げて
  
山を思っているだけでは
  
今日という日が雨に洗い流されるだけだ。
  
(だから、山の扉を開いた)

  窓の雫見つめ
  
夢を思っているだけでは
  
今日という日は暗い梅雨の一日なのだ。
  
(だから、火炎を起こした)

  
音楽を聴いて
  
イメージに浸っていては
  
今日という日は美しい印象に過ぎない。
  
(だから、雨の大地に立つ)

  
私を空転させる赤土と
  
私を払い落す岩肌と
  
私を寄せ付けない頂を確かめるには、
  
泥にまみれて
  ここに在り続けなければならないのだ。


7月2日(月)
梅雨前線の北上はのんびりしたもので、日中は夏空さえ現われた。さすがに吹く風に熱気は無かった。 @岩泉町(たぶん)

  トライアルを離れた。
  
岩手山麓を離れた。
  
慣れた道を離れた。

  
すでに地図など役に立たない場所で
  
来た方角を見渡せば、
  
今日の私の為に拓かれたような
  
アスファルト道路が見えている。

  けだるいラインに別れを告げて、
  
本当の道を始める。
  
ステップに立ち、
  
夏草を分けて進む砂利道に、
  
引き返す理由を探し始める。

  ふと、携帯電話が鳴った気がして
  
山腹のど真ん中に風を止めた。
  
空を狭める山懐に届くものとは、何だ。
  
  汗の中で夏の幻聴に返事をする。


7月1日(日)
所により早朝まで雨が降った。その雲と霞を払って七月の夏空は現われた。 @宮城県 ( スポーツランドSUGO)

  野心は、力の手に踊らされ、
  才能は、富の手に泳がされ、
  知性は、悪の手に磨かれる。

  (さて、たいそうなものではない)
  ようやく掴んだ喜びは、
  雑草のようなものだから、
  誰の手に乗ることもなく
  原野に繁る。

  正体の知れぬ命を
  手にとる者は稀だから、
  幸いにも捨て置かれ、
  だから伸び伸びとしていて、
  色褪せず、形を失わない。

  未来に在り続けるのは、
  実に、そのようなものかもしれない。


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