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イワテバイクライフ 2007年 8月後半


8月31日(金)
夕べから早朝にかけて断続的な小雨。昼前から間断無く降り続いた。かすかな肌寒さは、秋の深まりか。 @盛岡市


  生きていればこそ
  雨に濡れる。
  

  無事であればこそ

  夜を迎える。
  

  思いがあればこそ

  涙は流れる。
  

  希望があればこそ、

  闇が訪れる。
  

  明日があればこそ

  今日は終る。
  

  友よ、君がいればこそ

  俺は一人だ。


8月30日(木)
早朝の雨に濡れた街は、みるみる乾いた。青空を挟んで、南に夏雲、北に秋雲。 @岩手山麓

  引き金を引くから、撃たれる。
  刀を抜くから、斬られる。
  
  責めるから、噛み付かれる。

  追い詰めるから、問い詰められる。
  
  守るから、傷が付く。
  逃げるから、捕らわれる。
  頑張るから、支え切れなくなる。
  
  思うから、悪魔まで見る。

  願うから、絶望もする。
  求めるから、苦しむ。
  
  (ならば)
  実に無意味な風に吹かれ、
  安らかに終ればいい。
  
  百に拘り、千を失うくらいなら、

  夕闇に染まる
  一匹の蜻蛉(かげろう)で
  いるがいい。


8月29日(水)
秋の長雨を目前に、戸惑うほどの晴天。陽射しも残暑の匂いを漂わせた。 @盛岡市



  (弱き者よ)
  
  ある日突然近づく影に

  握手されたら、(固く握り返せ)
  友にされたら、(深く感謝しろ)
  飲まされたら、(本音を漏らせ)
  歌わされたら、(十八番でいけ)
  依頼されたら、(二つ返事のみ)
  利用されたら、(見事やり抜け)
  見限られたら、(即座に消えろ)
  忘れられたら、(祝杯をあげろ)
  
  切り札などさっさと切って

  終らせるがいい。
  
  恨まれず、

  憎まれず、
  縁が切れ、
  無傷で生還した孤独を喜べ。
  懐かしい静寂の風を呼吸しろ。


8月28日(火)
頼りなく、よたよたと青空は広がった。夏雲と秋雲の板挟みに遭った空は、夕刻の透明度で、秋に傾いた。 @北上高地

  針一本
  糸一本
  釘一本
  骨一本

  私のものは、
  誰かにとって
  所詮「他人(ひと)事」なのだ。
  善意であっても、
  結局「他人(ひと)事」なのだ。

  誰かが刺す誠実な針は、
  決められた場所だけなのだ。

  誰かが通す親切な糸は、
  とりあえず繕うだけのものだ。

  誰かが打つ正直な釘は、
  傷付くことなどお構いなしだ。

  誰かが組む堅牢な骨は、
  折れるまでの気休めなのだ。

  (そういうものだと素直に受け止めるなら)
  針一本、自分で刺せ。
  糸一本、自分で通せ。
  釘一本、自分で打て。
  骨一本、自分で組め。

  (一切の因果は我にあり)
  


8月27日(月)
青空もあったが曇りがちな空の下、先を急いで歩けば汗が噴き出した。夜になれば、秋の虫の音が聞こえて来る。 @盛岡市加賀野


  道は、何も思わない。
  ただ、そこに
  人の喜怒哀楽が行き交うだけだ。
  私ひとり立ち止まっても
  道は、途切れない。
  

  壁は、何も語らない。

  ただ、そこに
  歳月の筆跡をとどめるばかりだ。
  私ひとり心を向けてみても
  壁は、黙っている。
  

  川は、何も答えない。

  ただ、そこに
  移ろうものの深さがあるだけだ。
  私ひとり飛び込んでみても、
  川は、騒がない。


8月26日(日)
残暑めいた白濁の晴天も長続きせず、雲は広がり、夜の雨を予感させた。 @岩手山麓


  花のように
  一年に一度
  人を巻き込む風がある。


  ある者には闘いだから
  明と暗を
  また一年背負うことになる。


  ある者には祭りだから
  灯す思いを
  また一年準備すことになる。


  ある者には人生だから
  春夏秋冬を
  また黙々と巡ることになる。


8月25日(土)
陽射しを遮る雲も稀で、喉の渇きは、真夏日と言い切ってしまいたい。けれど、風にまじるのは蜻蛉ばかりだ。 @第31回イーハトーブトライアル大会(七時雨会場) 


  一滴の血も
  ひとしずくの涙も流さず、
  不安の欠片もなく、
  まして心に固く決めたこともなく
  競う日を迎えた者にできることは、
  屈託の無い笑顔で
  はしゃぎ続けることだ。
  
  
  (何がどうであれ、そうする他ないのだ)

  
  
  ひとつひとつの結果に
  大袈裟な意味はないのだから。
  せいぜい声を張り、白い歯を見せ
  一日をエンジョイするほかないのだ。
  
  
  深い落胆や爆発する歓喜や

  剃刀のような沈黙とは無縁の風の中で、
  アルバムに残す一日を演じる他ないのだ。
  
  
  (結局、それが一番幸せなのかもしれない)








  ※画像と本文は一切関係ありません。


8月24日(金)
再びの夏空。残暑の一種。流れる雲は山並みを隠したりしたが、夕暮れには晴れ渡った。 @安比高原(第31回イーハトーブトライアル大会前夜)


  (きっと明日は、色々なことが起きる)
  

  出来ることが

  ちゃんと出来たら
  うれしい。
  

  出来ないことが

  やはり出来なかったら
  かなしい。
  

  出来るのに

  出来なかったら
  くやしい。
  

  出来ないことが

  出来てしまったら
  ありがとう。


8月23日(木)
天気予報の「晴れ」という語感ほど単純な空ではなかった。夏と秋の雲が混在し、結局、涼やかな処暑の夕晴れ。 @盛岡市


  美しい道は、
  地獄を知る者が行け。

  
  責任ある道は、

  自らを捨てられる者が行け。

  
  苦難の道は

  希望を捨てない者が行け。

  
  答え無き道は

  哲学する者こそ行け。

  
  そして、名誉な道など

  歩きたい者に歩かせておけ。


8月22日(水)
予想を越える大気の波乱。午前中の激しい雷雨。県南の一部に土砂災害警戒情報。午後には陽も射した。 @盛岡市

  登山靴を脱いで、
  サンダルに履き替え、

  「これで行ける場所こそ我が楽園」と、
  うそぶく君よ、
  まずは、頂きに届かぬ自身に向き合え。
  
  途上で挫ける技量とは何だ。

  逃げ出す心とは何だ。
  
  その反省もないまま、

  挑む姿を哂い(わらい)、
  殊更に余裕を謳う虚しさよ。

  
  辿る道程を切り詰め、
  めざす高さを引き下げ、

  「身の丈」という言葉にすり替え、
  自尊心を守る君よ。
  真剣を捨て、
  玩具のナイフをちらつかせ

  「使い切れるものは所詮こんなもの」と
  言い放つわけしり顔よ。
  
  みすぼらしい口実を背負って
  山の入り口に立ってはならない。


8月21日(火)
灰色と白い雲が攪拌され、曖昧な陽射しやスコールが入り交じった日。不安定な大気のもとで最高気温は27度台(盛岡市) @盛岡市


  待ち望むものは、
  
  待ち続ける時の中にこそ

  
  光を放つ。

  

  追い求めるものは、

  
  影すら見えない時にこそ

  
  夢になる。


  

  愛憎の火炎とは

  
  遠く離れている時にこそ

  
  燃え盛る。


8月20日(月)
最高気温27度5分(盛岡)に秋を認めてはならない。時折の雨と蒸し暑い大気の波乱は、まだまだ真夏の予感。 @滝沢村

  両国駅の人波に、あなたは現われた。
  巨大スタジアムの通路に、あなたは立っていた。
  (やあ、元気か?)と手を振っていた。

  陽射しに艶めく髪や
  日焼けした額に滲ませる汗が
  あまりに遠い過去のままで
  私は、息を呑み見入ったのです。

  あなたは、つかつかと私に近付き、
  少し時間はあるか、と
  懐かしい喫茶店に導くのです。

  かつて、10年という歳月、
  私は、あなたの弟子だった。
  暗い闇の底にうずくまる私を
  励まし続けてくれたのも、あなただった。

  幾度「辛抱」という言葉を貰ったかしれない。
  そのあなたは、何かに耐えきれず、
  自ら逝った。

  そして、今頃、
  すべてを終らせ、安息する私を
  夢の中まで追いかけて来て、
  「これでいいのか?」「本当にいいのか?」と
  親父みたいに尋ね、肩を叩くものだから、
  私は、泣きじゃくり、
  真実を明かそうとして
  夢は終ったのです。

  あなたの好きだった別れの歌を
  初秋の枕に呟き、再び目を閉じたのです。


8月19日(日)
印象も希薄な陽射しはあった。激しく動けば汗も流れた。けれど、秋の虫の音、控えめに。 @滝沢村(トライアルパーク)

  そこは、およそ人間社会から
  隔絶された場所だった。
  
  窓の外には壮大な山脈が連なっている。
  私は、通信社か、あるいは測候所か何かに
  赴任したばかりだった。
  事務室の中央には
  広い広いキッチンスペースが設けられ、
  専門のシェフが24時間腕をふるっている。
  (ここでは、食事が唯一の楽しみだから)
  上司がパイプの煙を燻らせた。
  と、無線に出先の担当者から連絡が入る。
  (チーム全員遭難、救助頼む)
  事実とは、およそ乖離した冷静な声だ。
  よし、わかった、とパイプの男は、
  ステーキにナイフを入れた。
  (まずは、腹ごしらえからだ)
  キャリア充分の口ひげが微笑んだ。
  私は、登山の装備を固め、
  救助に向うことを彼に告げた。
  (そうか、覚悟は出来ているのか)
  ならば、と、責任者は、
  私に錆び付いたカメラを手渡した。
  (いいか、一切を撮ってこい)
  そう言い放つと、スープの皿を空にして、
  言葉を足した。
  (無事なら、な)
  私は、目の前の鉄板にはじける肉汁を見て、
  ぎょっとするほどの明るさでこたえていた。
  (帰りますとも。帰って、こいつをいただきます)

  秋の風に運ばれてきた暁の夢は、
  そこで途絶えた。


8月18日(土)
理性を呼び覚ます涼しさと時折の雨に濡れて、あたり一帯、我に返った週末。 @滝沢村(トライアルパーク)

  二十歳の跳躍に

  
追いつくことは難しい。

  けれど、
  
近づこうとする努力に
  
年齢など意味は無い。

  (思いひとつ、あるか、ないか、だ)

  その軌跡に憧れる若さは、あるか。
  
その理論を求める知性は、あるか。

  その影を踏むために
  
追い続ける力は、あるか。
  
その道を心底楽しむ懐は、あるか。

  宙に舞う二十歳に
  
感嘆することだけが
  
大人の役割のすべてではない。

  関わろうとする思いひとつ、
  
あるか、ないか。

  そのために流す無骨な汗が、
  
あるか、ないか。

  確定しかけた未来を動かすものは、
  そこに芽生えるのだ。


8月17日(金)
猛暑は遠ざかった。曇り空から時折小雨が舞った。過ごしやすくはあったが、脱力した山野に秋の侘しさの兆。 @滝沢村(トライアルパーク)

  山肌を滑り落ちて
  (今日は何日だったか)
  答えられない。
  
  大岩を飛び越えて

  (今日が何曜日なのか)
  思い出せない。
  
  ガソリンを補給して

  (夏休みはあと何日か)
  立ち往生する。
  
  めざすラインを前に、
  (イーハトーブトライアル)のことさえ
  忘れかけている。
  
  今日、この日の私に大切なことは、
  過ぎたことではなく、
  迎えることではなく、
  ただ、ひたすらに
  この瞬間の大地に寄り添う喜びなのだ。


8月16日(木)
薄雲が陽射しをやわらげ、時折の風が気分を落ち着かせた。真夏日ではあったが、真夏収束の兆し。 @滝沢村(トライアルパーク)

  見渡す大地に整列した野砲よ、
  用意はいいか。


  諦観と密約する目標に向けて、

  撃て(てー)

  現実に縛られた理想に向けて、

  撃て(てー)

  思惑に歪められた道に向けて、
  撃て(てー)

  芸術で飾る虚栄の群に向けて、

  撃て(てー)

  画策によって立つ幻に向けて、

  撃て(てー)

  そして

  光を閉ざし続ける暗黒の扉に、
  撃て(てー)



  決然とした白煙で夜を吹き払え。
  明快な轟音で星空を揺さぶれ。

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