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イワテバイクライフ 2007年 9月後半


9月30日(日)
最高気温21度2分は、実に爽快な秋。けれど、最低気温8度7分こそが岩手の秋。 @滝沢村(トライアルパーク)


  夕暮れのスーパーマーケットに
  立ち尽くした。
  精肉コーナーで
  さんざん考えた。
  
  一枚1280円のステーキを

  買ってよいものかどうか
  考えた。
  
  昼飯も食わず闘って

  表彰台の真ん中だったから、
  特別な晩飯にしようと思ったけれど、
  一枚1280円のステーキに
  値するほどの出来事だったのかと、
  さんざん考えた。
  
  表彰式で号泣したかったけれど

  笑顔しか出なかったから、
  何か記憶に残る夜にしたくて
  一枚1280円のステーキを手にして、
  おろおろした。

  
  すると

  「二日遅れの誕生祝い」という名目を
  妻が見付けてくれて、
  肉は、買い物カゴにおさまった。


  レジで「昨日の肉」と認められ
  渾身の晩餐は、1152円になったのだった。
  


9月29日(土)
空は、澄み切って高く蒼く、踊る雲の無垢な白さが、北国の秋らしくて、しみじみ風に吹かれた。 @岩手山麓


  すまないなあ。
  実はね、
  
  心の底をいくら覗き込んでも

  青空が広がるばかりだよ。
  (君の傘は、もういらない)
  
  山の頂からいくら見渡しても

  楽園が広がるばかりだよ。
  (君の牙は、もういらない)
  
  遥か彼方に目を細めてみても

  光輪が広がるばかりだよ。
  (君の灯は、もういらない)
  

  すまないなあ、

  俺はね、
  
  俺のことも君のことも

  昨日も明日も忘れて
  この風に目を見張るばかりだ。


9月28日(金)
朝方、薄墨を流すような雲。風に混じる水滴。束の間、大雨、雷、洪水の注意報。夕暮れには天気回復の兆し。 @盛岡市(北上川)

  ついに信じ切れない者よ。
  (ならば、よいか)
  
  いかなる危機に直面しても

  助けを求めてはいけない。
  (痛みに身構えろ)
  
  いかなる不幸を背負っても

  苦しみを吐露してはならない。
  (幸福を演じ切れ)
  
  いかなる孤独に襲われても
  友人を求めてはいけない。
  (賑やかに暮らせ)
  
  いかなる饗宴に誘われても、
  その輪に入ってはならない。
  (ひとり酒を飲め)
  
  その果てに

  おそろしいほどの安らぎが
  舞い降りて来たら、

  お前の直感とやらは
  正しかったのだ。


9月27日(木)
朝方の雲は、思わせぶりに途切れ払われ、けれど、安定とはほど遠く、波乱含みの夕空。。 @岩手山麓



  笑顔で声を掛け
  互いを認め、助け合い、
  秘密を明かし合い、
  幾多の時間と冒険をともにして、
  友情の絆が結ばれた途端
  おもむろに請求される「奉仕」の
  何と高額なことだ。

  いっそ道端で
  見知らぬ顔から
  理を尽くして懇願される「奉仕」のほうが
  よほど頷ける。

  下心の微熱がこもる握手に嘔吐しながら
  やがて
  私は、人の役に立たない者になる。
  夢に花を咲かせる力も失う。

  日々暮らすことで精一杯の私に
  なお、「奉仕せよ」と微笑みかける者こそ
  真の友人に違いない。

  

9月26日(水)
そもそも朝が、さらりひんやりしたことが嬉しい。ようやくの秋を実感。北の空には切れ味鋭い岩手山。 @滝沢村

  車窓の景色は
  刻々流れ移ろう。
  それを見つめる私は
  同じ椅子に座ったままだ。
  列車に乗る前と、何が変わった?
  列車が動き出した後、何が変わった?
  
  未解決の私が

  じっとしているだけだ。
  
  その様を哂って何になる。
  流れ変わる景色を追いかけ、
  私も走れというのか。
  心を入れ替えろというのか。
  生まれ変われというのか。
  それが出来なければ
  列車から飛び降りろとでもいうのか。

  やがて
  車窓は漆黒の夜に塗り込められる。
  急き立てるものが見えなくなるまで、
  私は、この固い座席に
  置き去りにされようと思うのだ。

  地球の回転速度を追い掛け

  世界の潮流速度に寄り添う者よ、
  一切が止まった瞬間(とき)を
  思ったことはないか。


  追随するものや同調するものを失った時、
  お前の車窓には何が見える?
  


9月25日(火)
街は未明の雨に濡れた。朝方の雲は、ゆっくり途切れ、流れ去り、爽やかな秋の夕暮れに辿り着いた。 @滝沢村


  嗚呼、へなちょこだなあ。
  でも、降りかかる火の粉は払う。

  嗚呼、ちゃらんぽらんだなあ。
  でも、道は間違えない。

  嗚呼、馬鹿が付くほどお人好しだなあ。
  でも、人の嘘は見抜く。

  嗚呼、仕事嫌いなんだねえ。
  でも、決める時には決める。

  嗚呼、飲兵衛だねえ。
  でも、夢を忘れるほど酔わない。

  嗚呼、優し過ぎるのかなあ。
  でも、刀は迷わず振り下ろす。

  嗚呼、臆病なんだねえ。
  でも、どんな残酷にも目をそむけない。



  (見上げれば、ほら、はぐれ雲)


9月24日(月)
秋晴れ。ただし爽やかさより、かすかな残暑。盛岡で25度。 @滝沢村


  (私の言う「敗北」は、少し違う)

  出来るか出来ないか
  本当の私に会えるから
  ときめくのだ。

  困難と重圧の中で
  明確に判定されるから
  本気になるのだ。

  他人との勝ち負けではない。
  納得のいく私であったかどうか
  ということだ。

  私が向き合うものは、どこまでも私だ。
  挑んだ果てに突き付けられるのは、
  私のありのままだ。
  私に負けた私が許せなければ、
  強くなって、
  私と和解すればよいのだ。

  (喜びは真剣勝負の中にある)

  泥や汗を嫌い、
  他人に負けることが我慢ならず、
  面子を気にし闘わない者に限って、
  こんな台詞を吐く。

  「楽しんだ者の勝ち」


9月23日(日)
盛岡の最高気温25度。これが県内最高のデータ。日中は雲のかけらも稀な秋晴れ。 @滝沢村


  道が途切れたのではない。
  お前が歩むべき道は

  ずっと先にあるだけだ。
  (辿り着くまで、標は無い)


  扉が閉まったのではない。
  お前が開くべき門は、
  ずっと奥にあるだけだ。
  (辿り着くまで、鍵は無い)



  夢が遠のいたのではない。
  お前が掴むべき夢は、
  ずっと心にあるだけだ。
  (辿り着くまで、灯は無い)


9月22日(土)
出鼻を挫く曇り空。とどめを刺す午後の小雨。それでも、所により真夏日前後。 @雫石町

  強く大きなものを
  骨抜きにするのは
  そう難しくはない。

  楽をさせることだ。
  怠けさせることだ。
  議論させぬことだ。
  思考させぬことだ。
  挑ませないことだ。
  英雄を斬ることだ。
  見せしめることだ。
  歴史を断つことだ。
  孤立させることだ。
  怯えさせることだ。
  追いつめることだ。
  気力を殺ぐことだ。
  劣化させることだ。
  夢を与えぬことだ。
  絶望させることだ。

  あとは、
  醜聞のひとつもあれば、瓦解する。

  そのような策謀で
  何かを掴むものも、
  いずれ
  そのような道筋で
  すべてを失うのだ。


9月21日(金)
朝方の雲や霧はみるみる払われ、夏空。9月も下旬の真夏日(盛岡で31度1分)で記録更新。 @姫神山麓

  照らされ 
  吹かれ
  乾いて
  寝転ぶ
  軽き心。
  
  
  駆け上り

  駆け下り
  乾いて
  水飲む
  一途な心。
  
  
  待たされ、

  捨てられ
  忘れられ
  涙乾いて
  嗚呼、
  自由な心。


9月20日(木)
晴れた。秋空ではない。わきたつ雲だ。盛岡市でも30度を越えて、観測史上最も遅い真夏日。 @盛岡市(雫石川)


  迷いや
  不安や
  疑いや

  それら心に降り積もる灰に
  呼吸さえ出来ない時には、
  働け。一心不乱に。
  走れ。わき目もふらず。
  打ち込め。全身全霊で。

  
  その果てに、

  五体を汗で光らせ
  胸を波打たせ
  むさぼる空気の何と美味いことか。
  
  迷いを確信に、

  不安を希望に、
  疑いを信頼に変えて
  心の川は、
  輝きだすのだ。流れ出すのだ。

  
  (流れ着く先を思うことなかれ)

  
  みずみずしく、
  ほとばしり、
  砕け散り、

  ひたすら歳月に寄り添うものであれ。


9月19日(水)
雨は止んだ。けれど、川は猛り狂っている。すべては鉛色の空の下。 @盛岡市


  良いものは良いと

  高らかに言えないのは何故だ。

  新しいものを新しいと
  きっぱり言えないのは何故だ。

  都に持っていって
  いちいち値踏みしてもらわないと
  価値を決められないのは何故だ。

  哲学も芸術も何もかも
  異郷の誰かに折り紙を付けてもらうまで
  お墨付きをもらうまで
  宙にぶらさげておくのは何故だ。

  忘れた頃、干からびたミイラに
  寝惚けた勲章をぶら下げてやり、
  盛大に祝ったところで何になる。

  自ら判定しないことが、
  内弁慶ひしめく狭隘な里の知恵ならば、
  野火を放て、焼き払え。


9月18日(火)
雨雲は薄れ途切れ、けれど陽射しは許さず、少し冷えた曇天のまま日は暮れた。 @滝沢村(トライアルパーク)


  この山へ初めて入った日を
  覚えているかい。
  (より良く生きたかったのだ)


  この山へ通い続けた日々を
  覚えているかい。
  (その先の力を求めたのだ)


  この山で心底癒された日を
  覚えているかい。
  (四季を一人抱きしめたのだ)


  この山から離れかけた日を
  覚えているかい。
  (夢や幻を掴もうとしたのだ)


  この山に戻った日のことを
  覚えているかい。
  (宵闇に灯りが見えたのだ)


  今日もここに来たのは、
  ここに棲み続ける私に
  会いに来たのだ。


9月17日(月)
相当なものが頭上を覆っている。朝から間断なく叩きつける雨。大雨や洪水の警報が夜の闇に生きている。 @滝沢村(トライアルパーク)


  大地には
  しばしば雨が降る。
  まれに豪雨が襲う。
  濁水が溢れ返る。

  (それをごく自然なことと受け止められるなら)

  山を覆う水の幕を突っ切ることは、
  特別なことじゃない。


  山を削る流れを一息に渡ることも
  まあ過程のひとつだ。


  雨に打たれることは
  悲嘆の涙にくれるより、
  ありのままだ。

  雨の鎖に縛られるのは、
  時代の重荷を負うより、
  ありのままだ。


  だから、全山に音を立てる雨を
  にっこり笑って浴びるのだ。


9月16日(日)
山並みに白煙のような雲からみつき、朝方の雨、宵の内の雨。濃厚になる一方の秋雨の匂い。 @滝沢村(トライアルパーク)

  こんな暗い空のもと
  ここに来るのは、
  いつか
  晴れ晴れとしたいからだ。
  

  こんな雨降る日曜日

  ここに来るのは
  いつか
  嬉し涙に濡れたいからだ。
  

  こんな泥にすべる朝

  ここへ来るのは
  いつか
  確かなものを掴むためだ。
  

  困難の先に広がる青空を仰ぐのは、
  こんな暗く濡れた泥地獄の感触を
  幾度も幾度も噛み締めた者なのだ。


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