イワテバイクライフ 2007年 12月前半
12月15日(土)
いきなり朝からの青空。柔和な陽射し。広く乾いた幹線道路。そんな冬の空白も、午後には冬雲に覆われ落ち着いた。 @岩手山麓
苦しければ 日々と闘え。 (痛みがあるうちは、生きている) 虚しければ 彼方を見ろ。 (月明かりがあれば、潮は満ちる) 寂しければ、 風と戯れろ。 (歌が聞こえる限り、思いは走る) |
12月14日(金)
朝霧は払われ、雲は途切れ、青空が広がった。昨日の湿り雪もずいぶんとけた。が、夕闇の寒気は鋭利だった。 @盛岡市(天峰山)
和気藹々も、よい。 助け合いも、よい。 強い結束も、よい。 (だがな) 誰かひとりの、 どこかの国の、 見知らぬ神の、 名誉と野心のために用意される 舞台や旅路や友情など、 無用だ。 通行人にされて、喜んではいけない。 提灯を持たされ、励んではいけない。 山の賑わいにされて、踊らされてはいけない。 和気藹々とは、自然に沸くぬくもりだ。 助け合いとは、自然に手が伸びる支えだ。 強い結束とは、自然に形になっていく志だ。 誰かの役に立っているものが、 己自身か、あるいは財産か、 よくよく考えるがいい。 |
12月13日(木)
濃霧注意報で明け、昼前には本格的な降雪。みるみる15cm前後の積雪(盛岡市街地)。夕刻、雪から雨へ。 @盛岡市
意見せず、断定せず、 すっとぼけているがいい。 呼ばれたら、明るく返事をすればいい。 頭数に入っているくらいで、 ちょうど良い。 勝負せず、顕示せず、 すっとぼけているがいい。 呼ばれたら、間抜けな返事をすればいい。 いつも嘲られるくらいで ちょうど良い。 関知せず、離反せず、 すっとぼけているがいい。 呼ばれたら、忘れた頃に返事をすればいい。 回覧板が届くくらいで ちょうど良い。 縛られず、叩かれず、 すっとぼけているがいい。 呼ばれたら、流行病などにかかればいい。 当てにされないくらいで ちょうど良い。 |
12月12日(水)
日陰の雪の欠片さえ消えていった。最高気温5度9分(盛岡)。曖昧な陽射し。処刑前の一服。 @岩手山麓
正しいものが否定されることは、 まあ、そう悪くない。 だって、 正しくないものが どこまで間違っているか、 実にはっきりするじゃないか。 くだらないものが評価されることは、 まあ、そう悪くない。 だって、 牛耳るものが どこまで滑稽なものか 実にはっきりするじゃないか。 間違っているものを担ぎ くだらないものを祭り上げる輩が、 自らの正体を勝手に明かすなんて、 何と手間のかからないことだ。 血の一滴も流れない。 一発の弾もいらない。 (あながち悪くはない) ほら、猟犬が腐臭めがけて駆けてゆく。 |
12月11日(火)
気圧の谷だとか寒気の影響だとか、気象予報士の能書き通りに空は崩れ暗くなり、雨は雪に変っていく。 @盛岡市
古びていくものに 意見など無い。 (どうか、いつまでもお元気で) もはや 明日が、昨日以上とは言い切れないから。 新しくなるものに 期待など無い。 (どうか、そっとしておいてくれ) もはや 進歩が、最善などとは断言できないから。 通りすがるものに 要求はしない。 (どうか、粛々と通り過ぎてくれ) もはや 変化が、打開の道とは誰も信じないから。 真の幸福のためなら、 千年の思考を求めよ。 万年の静止を恐れるな。 (そして、即日の狂気をしのばせろ) 本文と画像は、一切関わりはありません。 |
12月10日(月)
最高気温5度7分(盛岡)。青空のもとで、街の日陰の雪は相当とけた。けれど、山かげの残雪は健在だった。 @滝沢村
この地のことを決めるのは、 この地に生きる者であって、 通りすがりの者ではない。 いずれ去り行く者の 思いつきで決められるものは、 いつでも元に戻せるものだ。 この地を 所詮通過点と見下す者に 人は抗議などしないが、 真実など、かけらも渡さない。 瞬く間に時が来て、 通り一遍の思い出を都への手土産に いい気な涙を流す者のことなど、 ついに思い出すことはない。 (匂いまで焼き払う) この地に生き続けるということは よそ者に置き去りにされることではなく、 無縁なものに けして従わないということだ。 (ありのままの本能だ) |
12月9日(日)
冷えて曇ったままだった。雨や雪がいつ降ってもおかしくない暗さだった。 @滝沢村(トライアルパーク)
航続距離 ある者にとって それは、 燃料を使い果たすまでのことだ。 金と時間が尽きるまでのことだ。 気が晴れ晴れするまでのことだ。 利害が解消されるまでのことだ。 権威が地に堕ちるまでのことだ。 インチキがばれるまでのことだ。 執念が燃え尽きるまでのことだ。 虚栄の心が萎えるまでのことだ。 世の耳目が遠のくまでのことだ。 客の足が途絶えるまでのことだ。 宴から人が消えるまでのことだ。 手口が気付かれるまでのことだ。 守り切れなくなるまでのことだ。 隠し通せなくなるまでのことだ。 頂にふんぞり返るまでのことだ。 真実を告げられるまでのことだ。 さて、私の航続距離は、 実際行けるところまでのことだ。 |
12月8日(土)
午前中の青空は柔和で、光を浴びて街は乾いた。午後は、冬の雲に山並みも霞んだ。 @岩手山麓
何に乗っているのか ということではない。 (道の有り様は、どうだ?) まずは、そこからだ。 何を走らせるのか ということでもない。 (私のバランスは、どうだ?) ということだ。 何処へ行くのか ということではない。 (心の向きは、どうだ?) ということだ。 道を感じ、私を保ち、 心の無限軌道を 流れるように描き続けられるかどうか、 ということだ。 |
12月7日(金)
青空より何より、氷点下から解放された一日だった。日陰の雪も解凍されていった。 @盛岡市
無為に生きる者は、 見過ごされる。 志を立てる者は、 目をかけられる。 成し遂げる者は、 目をつけられる。 のし上がる者は、 目ざわりになる。 盲従しない者は、 目の仇にされる。 すべてを見てきた者は、 風にまじる雪の匂いに 人の心を見通している。 |
12月6日(木)
最高気温5度8分(盛岡)にしては、窓辺の陽射しには小春日和めいた温もりがあった。 @岩手山麓
そうかい。 あの頂をめざすのかい。 それは大変だ。難儀なことだ。 (なにせ) 誇りや名誉をかけた頂には、 君が辿り着くのではなくて、 誰かが担ぎ上げるのだから。 担ぎ上げることを生業にしている者は、 君のような志がなくちゃ、 食っていけないのだから。 さんざんの画策と暗闘の果てに 見事頂へ担ぎ上げた後は、 恩を売って食べていくのだから。 担ぎ上げられた君も 生涯恩を感じて生きていくのだから。 そうかい。 あの頂をめざすのかい。 |
12月5日(水)
小雪がちらついた。おとといの雪は氷と化して日陰に生きている。限りなく真冬日に近い一日。 @盛岡市
いいなあ、ここは。 あのことなら、あの人。 このことなら、この人。 そのことなら、その人。 半世紀ぐらいは ずっと変わらぬ顔ぶれだから (話は早い) 勝敗とは無縁で、 諍いなど起きようもないから (のどかだ) 何か困った時は、 すがりつけばよいのだから (有り難い) いいなあ。ここは、ぬくぬくだ。 目立たず、愛想良く、腰を低く、 守り合い、頼り合い、馴れ合い、 けして生意気など言わなければ、 まったく極楽だ。 |
12月4日(火)
昨日の雪の上に、ちりちりと小雪が舞うこともあったが、消えていく雪の方が多かったかもしれない。冷えてきた(最高気温2度4分)。 @盛岡市
教室が固く静まり返った。 顔を上げると、 若い教師が目の前に立っていた。 「また、イワテのことを考えていましたね」 イワテというところに苛立ちを込めて 罰を思案する背広には 辛気くさい研究室が匂った。 「よろしい、授業はあと120分。 その時間をあげようじゃないか。 君が愛するイワテとやらについて 十全に論じてみたまえ」 私は、こみ上げる笑いを ノートに挟んでこたえた。 (いいのですか?本当に) 出来るものならやってみろと 見下す眼鏡が頷いた。 私は、ひらり教壇に立つと、 ひとつ息をためて言い放った。 さて諸君。教科書はしまおうじゃないか。 人生の楽譜はね、 君たち一人一人の楽器のために綴るのだ。 「まずは音を出せ。君の音を知れ」 晴れ晴れと私の声は大教室に響き渡った。 白銀の朝の夢だった。 |
12月3日(月)
市街地では足首まで埋まる雪。日中は雨に近い雪で、重くぬかるむだけの冬の一種。 @岩手山麓
百年前の私の正しさを証明するために 今日の私が在るのではない。 証明したくなる過去の正義や理想など 今日という現実以上のものではない。 ところが、 百年前の私の過ちは、 どれほど時が流れようと、 いかに弁明しようと、 形も重さも変ることなく 今日も在り続けるのだ。 雪が雨に変ろうと ありのままなのだ。 すっかり忘れて放っておいても そのままなのだ。 私が振り向き引き返すまで 在り続けるのだ。 |
12月2日(日)
朝方の青空は、みるみる雲に占拠され、うすら寒く陰気な午後。夕刻からの小雨断続。明朝の雪が匂う夜。 @岩手山麓
明日の私を予感できるのは 私であって、誰かではない。 私が確信する私を形にしていくのは 私であって、誰かではない。 私の変化に気付く者は 私であって、誰かではない。 誰かにとっての私は、 所詮、誰かが決め付ける印象に過ぎない。 遥か未来の私に向かって走る時、 誰かの誤解や偏見が 案の定、 風の中にかき消されていくことを知りながら、 その歳月を越えていく力だけは 振り絞らなければならない。 確信する百年先を引き寄せるためには、 百年の混沌に耐えなければならない。 (馬鹿馬鹿しいと思ってはいけない) |
12月1日(土)
青空はあったが、冷えた風に吹かれて踊る冬雲が主役で、太陽の所在は、ついに曖昧だった。 @滝沢村(トライアルパーク)
明から暗へ、 あるいは 影から光へ、 その境界に棲むものは、 今日一日のために 心をつかわない。 すべては うつろうものの瞬間なのだから、 光の川を止められないように、 押し寄せる夜を阻めないように、 今日という日は、 明暗の螺旋の一段なのだ。 光しか知らないものは 太陽を遮る雲すら畏れる。 闇しか知らないものは、 夜が明けることさえ怖ろしい。 明暗の境界には 光に照らし出される残酷や 闇に包まれ眠る安らぎが 隣り合わせて棲んでいる。 |