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イワテバイクライフ 2008年 5月後半


2008年5月31日(土)
曇天は、予報以上によく堪えたが、夕刻に至り、小雨断続。水田の水鏡も厚みを増してきた。 @滝沢村(トライアルパーク)


  花は
  見せるために咲くのではない。
  命の声に従って開くのだ。
  見つめる者が、
  花の印象を語り継ぐだけだ。

  蝶は
  見せるために舞うのではない。
  命の源を求めて彷徨する。
  見つめる者が、
  その姿に心躍らせるだけだ。

  人は
  見せるために語るのではない。
  隠し切れないから現れる。
  見つめる者が、
  その本性を読み取るだけだ。

  毒は
  ただ殺す為にあるのではない。
  苦しみの中に滲む結晶だ。
  手にする者が、
  救済される夢を見るだけだ。
ライダー:菅原さん、マシーン:モンテッサ コタ4RT


2008年5月30日(金)
どこか温もり切らない晴天。最高気温17度7分(盛岡)。沿岸北部などでは10度以下で、梅雨のはしり。 @八幡平アスピーテライン


  挨拶を交わしながら、
  ふと辛い本音を漏らされる。
   曖昧に笑うつもりが、
  思わず甲高くなって、
  不謹慎になる。

  (苦手だな)

  わかってはいる。
  「言葉じゃない。飾るものじゃない。
  素直に響くもの。相手を思いやる真っ直ぐな心。
  要するに、人柄の問題です」

  (時と場合さ)

  人の言葉の
  理由がわかっているくせに
  わからない振りをするから
  面倒になる。

  滑稽なものに、シリアスになれない。
  関心のないものに、目など輝かない。

  見破ってくれと言わんばかりの私だから、
  どうでもよいものから、
  どうでもよい言葉が返る。

  おかげで、
  無駄な汗もかかず、
  心にも無い私にならずに済む。
愛機:BMW HP2愛機:BMW HP2


2008年5月29日(木)
朝方の小雨。その後は曇り。けれど、回復というにはほど遠い空。最高気温は、12度9分(盛岡)など、4月に逆戻り。 @八幡平市


  (狭い争いが絶えない世界なら)

  道の真ん中をのし歩く者には、
  軽く会釈すれば良い。
  間違っても、すり寄るな。
  (手下と間違えられるから)

  鮮明な旗を打ち振る者達には、
  微笑んでおけば良い。
  間違っても、旗を仰ぐな。
  (同士と誤解されるから)

  日陰に打ち捨てられた者には、
  自然に振舞えば良い。
  間違っても、見下すな。
  (復讐の標的になるから)

  今日を支配するものは、いずれ崩れ出す。
  昨日を謳歌したものは、やがて狙われる。
  明日を奪われたものは、ついに牙をむく。

  鉄壁の門は破られ、
  絶対の掟も焼かれ、
  一切は振り出しだ。

  残党狩りの嵐の中で
  静かに佇む者であれ。
  捨て置かれるがいい。
愛機:BMW HP2


2008年5月28日(水)
最高気温20度3分(盛岡)の晴天。でも、岩手山の頂は雲に覆われていたし、大気の透明度は、かすかにマイナスだし。 @盛岡市近郊


  こんな山中で、
  こんな時を過ごすことに
  興味のない連中ばかりだから、
  わたしは、今日も、まんまと安らかだ。

  この穏やかな場所に
  嫉妬するものなどいない。
  (みんな勲章探しに血眼だ)
  だから、放っておいてもらえる。
  この緑の天幕に。

  この深い深い静寂に
  心寄せるものなどいない。
  (みんな最前線こそ生甲斐だ)
  だから、関知するものなどいない。
  この風の回廊に。

  ここで、何ヶ月、ものを思っていても
  咎められない。

  ここで、何年、楽園を拓いていても、
  不審がられない。

  ここで、生涯、仲間と楽しんでいても、
  連れ戻しに来る者はいない。

  このどうでもよい私の楽天に
  石を投げつける影はない。

  こみあげる私の笑い声を
  近くでウグイスが聴いている。
  遠くでカッコーが聴いている。
愛機:ホンダ ベンリィ50S


2008年5月27日(火)
暗く荒々しい雲も昼前までには風に払われた。昨日雨に洗われ天地は乾き、清々しい夕暮れだった。 @岩手山麓(八幡平市)

  モノクロームな夢だ。

  海岸沿いの保養地だ。
  暗い海に白波が立つ。
  私は旅芸人か何かで、
  出番待ちの控え室だ。
  窓を開けるとホテル。
  朽果てた無人の塔だ。

  私の舞台が始まった。
  何故か結婚式の話だ。
  客席は老人で満員だ。
  話は花嫁の件に移る。
  すすり泣きが起きる。
  深い嘆きの渦が巻き、
  記憶が逆流していく。

  私はこの海辺の街で
  結婚式を挙げたのだ。
  あの日の出席者達が、
  つまり目の前の客だ。
  私は狂った様に叫ぶ。
  (花嫁はどうした)
  式を前に旅に出た私。
  とめどなく続く航海。
  やがて一切を忘れた。
  女を置き去りにして。

  窓を開けるとホテル。
  朽果てた無人の塔だ。
  その最上階で待つ女。
  (早く迎えに行け)
  誰かが背中を押した。
  転落する私が見えた。
愛機:ハーレー XL1200Rスポーツスター


2008年5月26日(月)
小雨断続。午後に至り雷鳴。でも、暗い印象もなく、天気は持ち直し、夕暮れの陽射し。 @姫神山麓


  すべては、
  移ろい、色褪せ、朽ち果てる。
  大地すら風化し、
  まして人など瞬時に老いていく。

  歳月を越えて在ろうとするものは、
  ついに虚しい。

  歳月を懐かしむだけのものは、
  ついに一人だ。

  消えるために現れ、
  失うために求め
  美しくあろうとして醜くなる。
  その始めと終わりを結ぶものが、歳月だ。


  (一切は、時の中の出来事だ)

  永久に鮮やかなものは、
  季節のたびに茂り、実り、
  花を咲かせ、花を落とし、
  潔く次の時を待つものたちだ。
  もっとも輝かしい姿を
  惜しげもなく捨てられるものこそ、
  歳月をおそれないものだ。
愛機:ホンダ モンキー


2008年5月25日(日)
午前中の雨は、天気予報ほどではなかった。午後の空の回復は、天気予報ほどでもなかった。 @滝沢村(トライアルパーク)


  ここに、洒落た「言葉」なんか
  転がってはいない。
  (転げ落ちる私がいるだけだ)

  ここに、美しい「光景」なんて
  期待してはいけない。
  (泥まみれの私がいるだけだ)

  ここに、冴えた「知恵」なんか
  埋まってはいない。
  (迷い続ける私がいるだけだ)

  ここに、さめた「大人」なんて
  近付くことはない。
  (もがき続ける私がいるだけだ)

  雨に阻まれ、霧に遮られ、
  荒い息の中に、
  大地の感触を探る者がいるだけだ。
  なお挑む心を確かめる者がいるだけだ。

  そんな仲間が、今朝も集う。

愛機:GASGAS TXT PRO250


2008年5月24日(土)
日本列島を西から覆う雨雲。岩手も薄日の中、湿度を含んだ南風が吹き、汗を誘った。 @滝沢村(トライアルパーク)
ライダー:菅原さん、マシーン:モンテッサ コタ4RT

  難しいことが上手く出来ない・・・。
  それは、ごく普通のことだ。

  (複雑な理由があるわけじゃない)

  目の前の困難に我を忘れ、
  単純にして重要な何かを忘れていないか。

  身に付けた力を信じ切れず、
  その場を安易に乗り切ることを考えていないか。

  その限りにおいて、
  難しいことは、難しいままだ。

  (思い出せ)

  困難の扉を叩くまでの道筋を。
  いつもの場所で、いつもの試技を
  黙々繰り返した日々を。

  新しい力は
  自らが築いてきたものの中から生まれるのだ。

  新しい心も
  自ら苦しみ抜くことによって芽生えるものだ。

  今日の私を積み上げられる場所は
  昨日まで私が積み上げたものの上だけだ。

2008年5月23日(金)
強い風も、白粉を撒き散らしたような霞みを払えず、最高気温25度4分の夏日の印象も曖昧。 @滝沢村


  何故、春は色褪せたのだ?
  その色彩に
  思惑が垣間見えたからか。

  何故、風は冷え切ったのだ?
  その流れに
  我執の匂いがしたからか。

  何故、人は遠のいたのだ?
  その領域に
  鎖の音が聞こえたからか。

  私は、この大地で、
  こだわりのない笑顔に会いたかっただけだ。
  垣根のない人の輪に加わりたかっただけだ。
  誰のものでもない空を仰ぎたかっただけだ。

  吹き渡る自由の風をいっぱいに浴びて、
  ここに佇むことが誇りだった。
愛機:GASGAS TXT PRO250


2008年5月22日(木)
緑は乾いて強い風に踊り、日陰はひんやり。どこか霞がかかった夏日(盛岡で25度5分) @岩手山麓


  偶然立ち止まった場所が
  日陰か日向か
  一喜一憂してはならない。

  光に照らされた私が
  何者なのか
  はっきりしないことこそ
  憂うるべきことだ。

  闇に包み込まれた私が
  何も恐れず
  明日を信じることこそ
  喜ぶべきことだ。

  光の中で
  光り輝くものを見分けるのは難しい。

  闇の中で
  影を纏うものを見つけるのは難しい。

  敢えて、立ち止まり、
  世界を見渡すのなら、
  光と影の境界線上がいい。
愛機:BMW HP2


2008年5月21日(水)
朝方は風に水滴が混じるなど、天気回復の歩みは緩慢。午後になって、ようやく薄日の印象。 @盛岡市


  最大射程距離が100mの者は、
  120mのことなど、
  博打だ、と断じる。
  150mのことなど、
  無謀だ、と嗜める。
  1km先のことなど、
  空想だ、と嘲笑う。

  (そんな者に仕える者よ)
  1km先の的を射抜く者よ。
  来る日も来る日も
  100mの視界に生きることに
  憤慨してはならない。

  差し引き900mの余裕だ。
  容易く、確実に成果を残せばよい。
  密かに、豊かな時を過ごせばよい。
  自在に、新しい道を拓ければよい。

  義務でありながら、思いのままに。
  目標がありながら、とらわれずに。

  そのように、さり気なく、
  日々射程距離を伸ばすことだ。
愛機:HONDA Ape100


2008年5月20日(火)
低気圧の接近。眠りを覚ます未明の雨音。昼過ぎまでは、沿岸を中心に風雨が荒れ狂った。 @北上高地


  その鳥は、何故、いつまでも
  同じ森で鳴き続けるのですか?
  (羽も凍る何かがあったのさ)

  その花は、何故、いつまでも
  枯れずに咲き続けるのですか?
  (絶滅寸前の何かがあったのさ)

  その人は、何故、いつまでも
  同じ空を仰いでいるのですか?
  (夢も凍る何かがあったのさ)

  あなたが、見たことも聞いたこともない
  酷い季節をくぐり抜けたものは、
  最後の楽園を選び取れるんだよ。

 (そこで、ずっと歌えばいい)
  (そこで、ずっと咲くがいい)
 (そこで、土にかえればいい)
  きっと、そんな声が聞こえるんだよ。
  天地が交わす暗黙の了解なんだよ。
  それでも、
  救われることのない記憶を抱きしめて、
  鳥は鳴き、花は咲き、人は生きるんだよ。
愛機:ホンダ ベンリィ50S


2008年5月19日(月)
かすかに陽も射したが、しだいに風が強まり、雲は厚みを増し、夜の雨を予感させた。 @岩手山麓


  原形もとどめないほど
  未来を破壊した独裁者よ、
  得体の知れぬ恐怖を知れ。

  息の根を止めたはずの者が、
  黙って立ち上がり、血を拭い、
  鍬を持ち、荒地を耕し始める。

  破壊された一生を
  もう一度、最初から繰り返すように
  鍬を振り下ろす。

  どれほどの残酷が繰り広げられたのか、
  深く刻むように悲しみを振り下ろす。

  雨水の一滴まで奪われた日を忘れまいと
  汗をしたたらせ、怒りを振り下ろす。

  (お前が何をしたか)
  そのおびただしい記憶の種を蒔いていく。

  やがて一面に芽を出す命は、
  とりかえしがつかない勢いで繁茂する。

  傲慢の斧に潰された無念が
  全山にからみつき、
  二度と消えない事実となって、
  その罪を晒し続ける。

  (汚れた密約のことまで)
愛機:HONDA Ape100


2008年5月18日(日)
最高気温22度9分(盛岡)は6月上旬並の陽気。乾いて優しい風。まずは、穏やかな五月晴れ。 @盛岡市近郊


  人と人を疎遠にするのは、
  鵜呑みにした友情なのか。

  人と人を争わせるものは
  言葉不足の境界線なのか。

  人と人を決別させるのは、
  すがりつく信仰の違いか。

  何ひとつ問題も無いものたちが
  呆気なく壊れる。
  罵り傷付け合う。
  悪魔を呼び込む。
  何ひとつ残さないほど激しく醜く。

  人と人よ。
  大きく朝風を胸板に受けるがいい。
  深く季節の香りを呼吸するがいい。
  思いのままに大地と戯れるがいい。
  迷いの無い鳥の囀りを聞くがいい。

  憎み合い、隠し合い、殺し合うほどの理由など
  つゆほども無いことを知るがいい。


2008年5月17日(土)
透明な晴天に始まり、やがて大気は混乱し、小雨断続。沿岸部には雷鳴が轟いた。夕刻、空は落ち着いた。 @三陸沿岸部(山田町)


  深い森だった。
  けわしい沢だった。
  道を辿るだけでも、
  すでにトライアルだった。

  苔むした大小の岩が、
  尽きることなく現れた。
  複雑に折り重なり連続する岩の群れに
  呆然とした。

  ひとつひとつの岩の形や向きに
  気持が居ついて、離れようとしない。
  ひとつの岩を越えても、
  その先が続かない。

  (ひとつの岩は、所詮ひとつの過程だ)

  大切なことは、
  自分が向かうべき場所に心が走ることだ。
  最善のラインを見失うことなく視線を送ることだ。

  連続する岩に揺さぶられながら、
  体のバランス点を掴み、
  自由闊達に岩のリズムに乗ることだ。

  困難と格闘するのではない。
  そう、大地とダンスするのだ。
ライダー:太田さん、マシーン:GASGAS


2008年5月16日(金)
最高気温22度9分(盛岡)、転がり込んだ五月晴れ。風も光も、空の蒼さも、絵に描いたような「それ」だ。 @久慈市(小袖海岸)


  準備を整え、南をめざし
  ボクサーツインに火を入れようとしたら、
  バッテリーが弱っていた。
  (まあ、いいさ。仕事じゃないから)

  Vツインに乗り換え、
  早坂高原までのんびり流していたら、
  澄んだ風に東へ誘われた。
  (まあ、いいさ。終点などないから)

  久し振りの北山崎へ
  新しいルートを探っていたら、
  どこでどう間違ったか北へ向かっていた。
  (まあ、いいさ。どこまでも蒼いから)

  新緑の峠を下って
  久慈に抜けると、午後1時を過ぎていた。
  「千草」で大盛りチャーシュー麺。900円・・・。
  (まあ、いいさ。絶品だから)

  潮風に吹かれ、三陸のブルーに染まった。

  盛岡に戻ると心地良い夕暮れだ。
  二人で散歩がてら、馴染みの店で夕食。
  カツオを求めると、
  お薦めはカワハギだという。
  (これまた、絶品)
  ウルイ、コゴミ、ウド、ボウナ、アイコ、シドケ、
  いつもの山菜とともに
  南部の地酒がすすむ。

  (まあ、いいさ。今日は休日だから)
愛機:XL1200Rスポーツスター


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