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イワテバイクライフ 2008年 9月前半


2008年9月15日(月)
まずは穏やかな祝日。岩手山など雲に隠れがちだったが、まずは優しい陽射しだった。 @岩手山麓

  うまくいかないから
  ぐっと飲み込む。
  (それが、いいんだよ)
  歳月とともに、
  うまい酒に変わるんだよ。

  どうしようもないから、
  いつもの通り。
  (それが、いいんだよ)
  季節は巡っても、
  思いは変わらないんだよ。

  がっかりしたり、ため息ついたり、
  そんなことを繰り返して
  心を削り出すことが、
  実は大切なんだよ。
愛機:HONDA Ape100


2008年9月14日(日)
早朝、北上川にたちこめる川霧に包まれた。仙台近郊では雷雨もあったが、盛岡に戻れば爽快な夕暮れ。 @宮城県村田町


  どの道筋を選ぶか、
  ひとりで探り出す。

  どこで勝負するか、
  ひとり心に決める。

  入ったが最後、出口までひとり。
  もがいても、あがいても
  止めるか、続けるか
  決めるのは、ひとり。

  結果を受け入れるのも、ひとり。
  悔やむのもひとり。
  次こそはと燃えるのもひとり。


  ふと気付いて
  見上げれば秋晴れだ。

  ふと温かくて
  振り向けば友の笑顔だ。


  ああ、そのように
  ひとり、ふたりと、
  飛んでいく。
  越えていく。
  乗り切っていく。
  ひとりではないことを確かめるまで。
200東北トライアル選手権シリーズ・第7戦 宮城大会にて


2008年9月13日(土)
朝方の秋晴れは幻だったのか。その余韻を追うほどに曖昧な曇天。諦め賭けた頃、心を染める夕焼け。 @岩泉町



  この道は、歩み続ける者が
  たった一人になっても
  地平の彼方へ続くのか。

  この光は、追い求める者が
  たった一人になっても
  大地一面を照らすのか。

  この雲は、仰ぎ見る者が、
  たった一人になっても
  空いっぱいに踊るのか。


  私が永眠した後も、
  この道は、最後の一人まで導くのか。
  この光は、最後の一人まで救うのか。
  この雲は、最後の一人まで誘うのか。

  私が、今ここで受け止めている通りの眺めが、
  果てしなく続くというのか。
  私が生きていた記憶が塵になってもなお、
  私が記憶した天地は、
  今日と変わらず、ここに在り続けるのか。

  叶うことなら、どうか、
  この秋空と一緒に
  私を焼き払ってくれないか。
  この蒼い風に炎を放ち、
  ここに佇んだ記憶まで灰にしてくれないか。
 

愛機:HARLEY−DAVIDSON XL1200R SPORTSTER


2008年9月12日(金)
未明からの雨。各地に大雨警報、土砂災害警戒情報。夕刻までには天気も回復して街は乾いた。 @盛岡市


  それは巨大な倉庫だった。
  天を突くほどの扉を開くと、
  林となって棚が並び、膨大な文書が眠っていた。

  倉庫の番人は小さな老人で、
  深い皴をゆがめて笑った。
  「発覚する日を待っているもの達です」
  宝でも見上げるように目を細めた。
  「隠し切れない日を待つ大問題たちです」
  今にも雪崩を打ちそうなほど傾いていた。

  (すべて白日の下に晒せないのか?)

  勇む私に老人は首を振った。
  「棚がカラになったら、この世の終わりです。
  だから各々発覚する日が定められているのです」

  (その日はどのように決まるのだ)と詰め寄れば、
  白い口髭は、束の間考えて語りだした。
  「人々が自らの暮らしに夢中で
  発覚する事実にかまっていられない日です。
  どんな怒りも数日です。どんな追求も数週間です。
  人の心は移ろうのです。だから、ひとつひとつ
  機を見て、ゆっくり発覚させていくのです。」

  そうしている間にも、棚に積まれた事実が、
  ひとつふたつと持ち出されていく。
  今夜のニュースのために、
  明日の紙面のために出荷されていく。



  ※本文と画像は何ら関係ありません。
愛機:HONDA ベンリィ50S


2008年9月11日(木)
多少白く霞んでいたが、まずまずの秋晴れ。何より空気が乾いて、夜気は爽快。 @早坂高原


  忠告するなら、
  教育を受けた者にすることだ。
  そうでないと、
  五月の蝿になるだけだ。

  鼓舞するなら、
  向上心のある者を選ぶことだ。
  そうでないと、
  鞭打つ者になるだけだ。

  怒鳴るなら、
  しっかりした者を叱ることだ。
  そうでないと、
  加害者にされるだけだ。

  追求するなら、
  花鳥風月などに止めることだ。
  そうでないと、
  黒い手帳に載るだけだ。


  情熱を傾けることで罠にはまる例は、
  枚挙にいとまがない。

  求められているのは、
  ほどほどの者であることを思い知れ。

  (したたかに時代をやりすごせ)
愛機:HONDA Ape100


2008年9月10日(水)
よく晴れた。ひんやり夜明け。深みを増す青空。連なる山の稜線も鮮明。 @八幡平市


  どんなに疎遠であっても、
  同じ名簿に載っているだけで、互いに力を貸す。
  (それを同盟という)


  どんなに軽蔑していても、
  同じ隊列に並ばされた以上は、足並みを揃える。
  (それを同列という)


  どんなに対立していても、
  同じ生まれ故郷というだけで、肩を抱きもする。
  (それを同胞という)


  どんなに思惑は違っても、
  同じ利害に縛られているから、鍵を貸借りする。
  (それを同類という)


  だから私はね、
  名簿を焼いた。隊列を離れた。
  故郷を忘れた。利害を絶った。


  で、そのような者たちが出会う時、
  こう呼び合うのだ。「やあ、御同輩」と。
愛機:HONDA Ape100


2008年9月9日(火)
乾いた秋晴れ。けれど、陽射は脂ぎって、風には夏の残り香。 @八幡平アスピーテライン


  遠ざかる遠ざかる。
  走り出した影が遠ざかる。
  昨日の私を捨てて
  別の私へ走る影が遠ざかる。


  離れていく離れていく。
  一緒だった雲が離れていく。
  今日の私に失望して
  別の私を夢見る雲が離れていく。


  消えていく消えていく。
  先を照らす光が消えていく。
  明日の私を裏切って
  別の私を導く光が消えていく。


  流れ去る流れ去る
  日々の風が流れ去る。
  ここに止まった私を追い越し
  流れ去る。


  別の私などいるはずもないことを知りながら、
  秋の道が流れ去る。
愛機;BMW HP2


2008年9月8日(月)
初秋のイメージを遙かに越えて夏雲がわきたった。まぶしい青空だった。最高気温27度8分(盛岡) @八幡平市


  走り続けるのはね、
  音楽が聞こえて来るからなんだ。


  初めて聞く音楽なんだ。
  果てしなく広い音楽なんだ。

  はじめは、
  単純な旋律の繰り返しなのだけれど
  走るほどに
  ふくらみ、かさなり、たかまり、
  もう、とめどなく広がっていくんだ。

  この地球上のすべてのオーケストラが
  心をひとつにして演奏しているんだ。

  何億という人々が手をつないで
  歌っているんだ。

  雲の流れのままに
  移ろう光と影に寄り添って、
  今日という日の物語が聞こえてくるんだ。

  ああ、僕はね、
  風となって五線譜を駆け抜けるんだ。



愛機:HARLEY−DAVIDSON XL1200R SPORTSTER


2008年9月7日(日)
大気不安定。所により大雨による土砂災害警戒情報が発表された。梅雨以上に剣呑な空。 @盛岡市


  ここで、
  じっとしていれば、
  昨日も明日も無い。
  時は表通りに流れるものだ。
  ここには、
  季節の風が吹き抜けていくだけだ。
  (老いてみたり若返ったりだ)


  ここで
  うとうとしていれば、
  悪い夢など見ない。
  記憶は求めるから蘇るのだ。
  ここには、
  追いかける者も逃げる者もいない。
  (悲しみは、まどろみに仕舞う)


  ここで
  ゆらり酔っていれば、
  大声など聞かない。
  ここには、
  断じるべきことなど何ひとつない。
  (このまま生きる覚悟があれば)





  ※本文と画像は何ら関係ありません。
愛機:HONDA Monkey


2008年9月6日(土)
盛岡をはじめ所により30度を越えた。どんなに夏雲がわいても、夜の虫の音が熱気をさます。 @岩手山麓


  まあ、座れ。
  他人(ひと)はね、
  お前が思っているほど、
  お前には関心がないんだよ。
  ただね、
  お前以上に
  お前の欠点をよく知っているだけだ。


  まあ、休め。
  他人(ひと)はね、
  お前が信じているほど
  お前の仕事を知らないんだよ。
  ただね、
  お前以上に
  お前の失敗をよく覚えているだけだ。


  まあ、飲め。
  他人(ひと)はね、
  お前が想像するほど、
  お前の目を見てはいないんだよ。
  ただね、
  お前以上に
  お前の本心を見抜いているだけだ。

愛機:HONDA Ape100


2008年9月5日(金)
雨の気配は無い。蒸し暑い。秋の風ではない。北に行くほど青空が広がった。  @岩手山麓


  心というのは、
  ひとたび揺れ出すと、もう止まりません。
  一度崩れ出すと、もとには戻りません。

  心の薬に絶対的なものなど、ありません。

  ひとりひとりが
  自分で自分を救済し治癒するしか
  ないような気がします。

  私は、たまたま岩手の夕暮れに
  それを見付けたわけです。

  透き通った光と影の境界線に
  私をそっと佇ませるのです。

  そうすると、
  心の明暗に大地の光と影が
  やさしく重なり合うのです。
  悲しみと喜びを分けるものなど無いことが
  わかってくるのです。
  絶望と希望は、どこまでも隣り合い
  抱きっていることが
  見えてくるのです。

  あとは、泣きたいだけ泣けばよいし、
  叫びたいことを叫べばよいのです。
  歌いたければ歌えばよいのです。

  そのように、今日も静かに私を終わらせます。
愛機:BMW HP2


2008年9月4日(木)
朝方みるみる広がった青空も、午後には雲に覆われた。最高気温28度(盛岡)は「夏の余韻」。夕刻、北へ向かう風に水滴。 @岩手山麓


  たったひとりの人間を
  怒らせると
  そんなに凄いことになるのか?
  (道も歩けなくなるのか)

  たったひとつの血脈を
  批判すると
  そんなに酷いことになるのか?
  (息もできなくなるのか)

  たった一度の宴などに
  顔を出すと
  そんなに呆れることになるのか?
  (がんじ絡めになるのか)

  そんな秘境の原人の村が
  この地上には、まだ存在すると君は言うのか。

  よし、私を連れて行きたまえ。

  槍や鉄砲などいらぬ。
  銭(ぜに)と勲章と濁酒(どぶろく)を持て。
愛機:BMW HP2


2008年9月3日(水)
昼過ぎにスコール。ずぶ濡れに追い打ちをかける蒸し暑さ。ありえない9月。 @盛岡市(中津川)


  あなたって人は
  ほんとうに他人に関心がないのね。
  (と、君は呆れる)

  人が、どれほど誤っていても
  頷くだけなのね。
  (いいじゃないか)
  誤りを重ねて、人は人になっていく。
  私も私になっていく。

  人が、どれほど迷っていても
  黙っているのね。
  (いいじゃないか)
  迷いを重ねて、道は真っ直ぐになる。
  私も私を拓いていく。

  人が、どれほど沈んでいても
  歌っているのね。
  (いいじゃないか)
  頂と底を知り、心は平衡を保つのだ。
  私もその狭間に在る。

  頷きながら、黙りながら、歌いながら、
  私が私になる道筋を辿るだけで、私は精一杯だ。

  (君は違うのか?)

  その場限りの関心で何かに関わり、
 不実と混乱を残すくらいなら、
 ありのままを受け入れていたい。
愛機:HONDA Monkey


2008年9月2日(火)
秋の長雨も小休止。曇天ながら、日中はいささかの蒸し暑さが漂った。所によって秋の青空ものぞいた。 @岩手山麓


  書物の中に
  自分を弁護してくれる一節を発見すると、
  人は「よい本だ」と言う。
  自分の愚かさを指差す一節に出くわすと、
  人は「下らない」と貶す。

  他人の心に
  自分が参加できそうなドアを発見すると、
  人は「よい人だ」と言う。
  自分が置き去りにされる様な気がすると、
  人は「下らない」と貶す。

  (ならば、私は)

  口先ばかりの者にとって、目障りでありたい。
  奇麗事だけの者にとって、厄介者でありたい。
  保身にはしる者にとって、不可解でありたい。
  権威にすがる群にとって、無礼者でありたい。
  腐敗していく城にとって、疫病神でありたい。
愛機:HONDA Ape100


2008年9月1日(月)
みるみる青空が戻った。勢い余って夏雲がわき立った。盛岡で29度2分など、真夏並。 @八幡平市



  太平洋から吹き寄せる冷えた風は、
  霧となって北上高地を越え、
  田代平(たしろだいら)に至る。
  けれど、その稜線に手をかけたところで
  ついに力尽き、
  七時雨の青空を奪い切れないまま、
  消えていく。

  昨日まで、このイーハトーブを駆け巡った風は
  もはや地平の彼方だ。
  弾ける笑顔と轟くエンジン音は、
  遠い過去のことのようだ。
  (祭の季節は終わった)

  めざすものにあと一歩届かず
  この夏に幕を下ろした強者の影が
  雲と戯れるばかりだ。

  最後の稜線を越えられなかった霧の無念は、
  やがて雪となって一面を白く染め、
  大地に散った夢を眠らせる。
  再びの夏の日のために、
  新しいイーハトーブ(理想郷)のために。
    

愛機:HARLEY−DAVIDSON XL1200R SPORTSTER


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