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イワテバイクライフ 2008年 9月後半
2008年9月30日(火)
朝方は、所により11月上旬並みの冷え込み。日中は爽快な秋晴れ。けれど夕闇の到来は日毎に早くなり・・・。 @田沢湖(秋田県)
しょうがねえなあ。 この雲に免じて帰ってやる。 あんたの嘘っぱちを暴いていたら、 あっという間に雲は彼方へ流れる。 しょうがねえなあ。 この風に免じて黙ってやる。 あんたの無為無策を語っていたら、 あっという間に風は秋を連れ去る。 しょうがねえなあ。 この光に免じて笑ってやる。 あんたの猿芝居を罵倒していたら、 あっという間に山並みは闇に沈む。 しょうがねえなあ。 この水に免じて走ってやる。 あんたの悪企みを凝視していたら あっという間に波紋は対岸へ届く。 (この夕暮れだ。それどころじゃない) |
2008年9月29日(月)
肌にしみる朝の冷気。盛岡市藪川では、この秋初めての氷点下。とはいえ日中は穏やかな秋晴れ。 @北上高地
何かを示したければ、 自分でやるんだよ。 しんどい事だけ他人を使うんじゃないよ。 (自分の手柄のような顔で) 何かを求めたければ、 自分で探すんだよ。 肝心な事だけ他人から貰うんじゃないよ。 (自分が見つけた様な顔で) 何かを創りたいなら、 自分で苦しむんだよ。 完成を急いで他人から盗むんじゃないよ。 (自分が拓いたような顔で) 何かになりたければ、 自分でなるんだよ。 他人の肩を踏み付けて踊るんじゃないよ。 (信任されたかの様な顔で) |
2008年9月28日(日)
冷えた青空に冬を匂わせる雲が流れ、時折の小雨に晩秋へ雪崩を打つ兆し。 @盛岡市(岩鷲トライアルパーク)
新しい道を選ぶことが、何故難しいのか。 それはね、 自分にとって本当に必要なものかどうか、 その直感を信じるには勇気が必要なんだよ。 だからさ、 とてつもない道に怖じ気づいちゃいけない。 とことん続けることが、何故難しいのか。 それはね、 思いや努力が結果に反映されるかどうか、 運不運で割り切らない勇気が必要なんだよ。 だからさ、 激しい紆余曲折に我を見失っちゃいけない。 終止符を打つことが、何故難しいのか。 それはね、 過ぎた歳月に微塵の悔いもないかどうか、 明日に未練を残さない勇気が必要なんだよ。 だからさ、 今日という日の物語を忘れちゃいけない。 |
2008年9月27日(土)
静かな秋晴れは、にわかに波乱の雲を呼び、つむじ風、天気雨、暗い午後。夕刻何事もなかったように晴れ間。 @北上高地
通りすがりの旅女は 里のヤクザにちやほやされて、その気になった。 村はずれの芝居小屋を指さして、ねだった。 (ねえ、私を舞台に立たせて) 役をもらって女は酔った。 (ねえ、私を主役にしてよ) やがて女は中心に立った。 (ねえ、私を花形にしてよ) 意気揚々と都へのぼった女は、しかし、 一本調子な芸で舞台を追われた。 気位と我が儘を捨てられず、人は離れた。 女は田舎芝居を懐かしんだ。 あの日のように酔っていた。 あの日の声で電話した。 (ねえ、主役なら帰ってあげる) 凱旋の幕は上がった。 人々は、惜しみなく拍手を送った。 「お帰り」と懐かしい声が飛んだ。花が飛んた。 涙でかすむ客席を見渡し、女は悟った。 (この舞台が本当の故郷なのだ)と。 ここで生きていく決心を明かそうとした瞬間、 ライトは消えた。 女は、闇の塒(ねぐら)から這い出ると、 何か夢を見ていたような気がした。 都の窓から場末の秋が匂った。 |
2008年9月26日(金)
朝方の青空は、予報通り雲に覆われ、確率通り小雨が降り、秋は一歩深まった。 @岩手山麓
狭い輪の中に生きていくのなら、 覚えておくといい。 1等賞はね、 応援する声のでかさで決まるんだよ。 決着寸前の横槍一本で決まるんだよ。 御神輿を担いだ回数で決まるんだよ。 (けして競い合ってはいけない) 正当性はね、 他人の都合を斟酌して決まるんだよ。 差し出して来た犠牲で決まるんだよ。 飲み干した無理の量で決まるんだよ。 (けして主張してはいけない) 指導者はね、 月が雲に隠されてから決まるんだよ。 真実を忘却できる者に決まるんだよ。 ひとりで決めない者に決まるんだよ。 (けして逆らってはいけない) さもないと、 仕事を失う。仲間を失う。棲家を失う。 生きてきた証すら消される。 |
2008年9月25日(木)
曇天のもと最高気温18度7分(盛岡)。ひと雨ごとに秋は深まる頃。夕刻の小雨で、夜はひんやり。 @岩手山麓
30年も前のことだ。 その娘は、私の顔を見るたび 不機嫌にそっぽを向いた。 言葉も交わしたことがないのに。 みんなでボールゲームをしていると 「あなたなんて大嫌い」と泣き叫んだ。 私は、受け流し、気にも止めなかった。 私は、六畳間のアパートで暢気にひとり暮らし。 せっせと励む仕事は、成功の一途で、 窓を開ければ、南国の草原が輝いていた。 やがて、私は結婚して、その土地を離れた。 それから30年。旅行で思い出の地を踏んだ。 懐かしい散策の先に かつてのアパートがあった。 赤く錆びた鉄階段を上がって最初のドアだ。 あの日々と同じ強烈な日差しが、 通路を光と影に切り分けていた。 ふと、表札を見ると、住人は女性だった。 帰りかけて、その三文字が私を引き止めた。 ドアに向き直り、その名前を反芻した。 凍り付いていくのがわかった。 今だから了解できる執念だった。 ひとりで住んでいたのだ。あれからずっと。 私が見上げた天井を見つめて眠り、 私が見渡した季節を同じ窓から眺め、 女は、私の記憶の中に暮らし続けていたのだ。 立ち尽くす私の前に、ゆっくりドアが開いた。 (真夜中の夢は、そこで止まった) |
2008年9月24日(水)
朝晩の冷気が固く鋭くなって来た。それでも、日中の青空は、冬のイメージを寄せ付けない。 @岩手山麓
花園の向こうは、谷をひとつはさんで大山脈だ。 今日も突撃ラッパに蹴飛ばされ 若い兵隊が蒼い壁をよじ登っていく。 けれど、勇ましいのは、そこまでで、 尾根に点在する要塞から狙い撃ちされ 谷底に転落していく。 (無理も無い。昨日今日兵隊になった少年達だ) 戦況をぼんやり眺める私の傍らに隊長が立った。 「あの頂めざし、君も飛び出して行きたいだろう。 しかし、君は出撃してはならないのだ。 君が出撃すれば、要塞のひとつやふたつ 容易く落とせることはわかっている。 しかし、それでは村に兵隊は育たない。 若者達に経験を積ませることこそ先決だ。 諦めろ。君の出番は無い。」 秋の光を浴びて山岳は血に染まり、 谷底には、おびただしい屍が折り重なっていく。 (死者は何を学び、何を語り継ぐというのだ) 隊長は、なおも「方針」とやらをを強弁し、 幼い進軍の尻を叩いている。 乾いた風が聞き慣れた声を運んで来る。 丘の上で妻が手を振る。 (さて、昼飯の時間だ) 私は我が家へ引き上げる。 銃声に振り向けば、狙撃された隊長の断末魔だ。 (代わりは、いくらでもいるさ) 窓辺で彼方に轟く砲声を聞きながら、 夫婦は、スープの湯気越しに微笑み合う。 (村の陥落まで、これでいいんだね) |
2008年9月23日(火)
秋分の日。中津川にサケ遡上のニュース。昼過ぎに一時小雨。その後、晴れ間ものぞき清々しい夕暮れ。 @岩手山麓
少し賢いものは、すぐに王様にはならない。 愚か者に王冠を与えておいて しばらく様子を見る。 無為無策を存分に確かめておいて、 やおら王冠を奪い取る。あるいは譲り受ける。 昨日までの酷さに慣れた人々には、 颯爽たる登場だ。 花を飾り、歌を歌い、木を植え、語り合う。 そんな他愛のないことでも、 昨日までの酷さに較べれば、 素敵なアイディアに見えて来る。 人が飢えても、討論会。 戦になっても、運動会。、 地が割れても、音楽会。 大らかに停滞し、やさしく後退し、美しく崩壊する。 そこで愚か者に向けて王冠を放り投げる。 (まったく予定通りだ) そのように、凡庸から暗愚へ、暗愚から凡庸へ 王冠は禅譲されていく。 救世主の登場は、 そんなていたらくの数世紀を経て、突然のことだ。 |
2008年9月22日(月)
「曇り」の予報などさっさと掃き捨てられて、穏やかな青空が広がった。冷えて乾いた極上の夜気。 @盛岡市
俺はね、 太平洋の潮風匂う町まで走って、 背負いきれないほどの秋を収穫したのだ。 脇目もふらず家路を急いでいたら、これだ。 今日一番の光と影だ。 今日一番の静けさだ。 今日一番の透明度だ。 今日一番の寂しさだ。 もはや記憶の鞄をカラにしてでも 詰めて持ち帰りたい神々の時間だ。 ああ、俺はね、 こんな時、 もう、追放されてもいいと思うんだよ。 もう、斬られたっていいと思うんだよ。 もう、焼かれたっていいと思うんだよ。 だから、この夕空を 背嚢(はいのう)にぎっしり詰めて、 爆薬など抱えて飛び立ちたくなるんだよ。 この大地はね、 おそろしいことに 季節の色ひとつ、 雲のひとかけら、 風が運ぶ瞬間に 生死の選択を迫る力を持っているんだよ。 |
2008年9月21日(日)
昼前後に生温い小雨。夕刻には、かすかに空も明るくなったようだが、回復にはほど遠く。 @滝沢村(トライアルパーク)
うまくいく時は、 怖さも、難しさも、不安も覚えず、 すべては何事も無く済んでいるので、 自らを振り返ることもない。 つまずく時は、 イメージ出来ず、力を信じ切れず、 案の定、悪い方向へ流れていくので、 自らを責めるばかりだ。 あきらめた時は、 向上心や野心や自尊心すら保てず、 今日という日を早く終わらせたくて、 明日に逃げ出すばかりだ。 結局、 今来た道を振り返る者は、そう多くはない。 その道筋の中にこそ、 解決や飛躍への鍵が転がっているのに、 みんな眩しい未来のことに夢中で、 挑もうと心を決めた「ついさっきの自分」を 置き去りにしていく。 ※画像と本文は一切関係ありません。 |
2008年9月20日(土)
なまぬるい曇天は、やがて薄まり、空の青さや陽射しもそこそこあったが、秋らしさは皆無。 @イーハトーブ
ここまで来た意味はね、 ここを離れるまで ついにわからないものだよ。 (離れる瞬間、それは、どうでもいいことさ) ならば、しがみつくな。 ここで息する意味はね、 ここを振り返るまで ついに霧の中の出来事だよ。 (振り返っても、どんどん、遠ざかるだけさ) ならば、すがりつくな。 ここを選んだ意味はね、 ここを追われるまで、 ついに説明もつかない事だよ。 (追われても、いつか、戻って来るだけさ) ならば、泣き叫ぶな。 ここで綴った意味はね、 ここを全て失うまで、 遂に辻褄が合わない事だよ。 (失ってなお湧いてくるものがあるだけさ) ならば、嘘などつくな。 ここに居続ける限りは、 問う意味が生まれる。理由も寄り添う。 (それを大切にしろ) |
2008年9月19日(金)
台風13号の仕業か。南から吹き込む風で、ほぼ真夏日状態。青空より、したたる汗の印象ばかり。 @岩手山麓
君は、用意周到だね。 来年のカレンダーをもう睨んでいる。 では、来年も生きていなくちゃね。 君は、用心深いね。 壊れそうなものを壊れないうちに捨てる。 では、いずれ全部捨てなくちゃね。 君は、疑り深いね。 完成したものをすぐに壊してやり直す。 では、ついに未完成でいなくちゃね。 君は、執念深いね。 とうに済んだはずのことを掘り返す。 では、ずっと未解決でいなくちゃね。 君は、欲が深いね。 山ほど収穫したのにまた山へ戻って行く。 では、とうとう神隠しにならなくちゃね。 君は、読みが深いね。 先の先のそのまた先まで見通していく。 では、結局、君自身が未来でなくちゃね。 |
2008年9月18日(木)
最高気温は26度そこそこ(盛岡)。平凡な青空が所々にのぞいた。秋祭りも終わったのに夏を思わせる汗。 @盛岡市
それは、花火というより 飛び道具、巨大な兵器だった。 村の広場に危うく傾きながらも、 天空めざして飛び立つ構えだけは示していた。 幾歳月の苔と錆を纏い、 それが、破壊力の凄まじさを思わせた。 しかし、骨董の類には違いない。 発射の手段は導火線なのだ。 米俵ほどの太さのしめ縄だ。 さながら大蛇だ。 何世紀も続いた雨季の記憶を吸って 導火線は重く横たわっている。 それでも発射すべき時はやって来た。 ついに轟音を上げる日を迎えた。 村人は、全身に油をかぶって 自らに火を放った。 無数の火だるまが絶叫しながら 導火線に飛びついていく。 太古の雨水を含んだしめ縄は、 炎をまとって、ぶすぶすと白い煙を立てた。 私は、ガソリンを浴びると、松明を手にして 大きく呼吸した。 (暁の夢の中で、私は確かに心を決めたのだ) |
2008年9月17日(水)
霞み加減の晴天。9月中旬という思いこみを捨てれば、夏空の一種。最高気温28度8分(盛岡)。 @岩手山麓
力もある。知恵もある。 けれど、ずるい。 やさしい。愛嬌もある。 けれど、ずるい。 思慮深い。紳士である。 けれど、ずるい。 弁が立つ。見識もある。 けれど、ずるい。 夢がある。笑顔もある。 けれど、ずるい。 他人(ひと)に拘りを持ち過ぎると、 いつまでもひとりぼっちだよ。 (騙されておあげよ) そんな狡さをお持ちよ。 それでも どうにも許せないなら半端はおよし。 闇にまぎれて息の根を止めるんだよ。 (うんと狡猾なやり方でね) |
2008年9月16日(火)
高気圧の圏内。そこそこ薄雲もあって陽も陰ったが、まずまずの晴天。気温は夏日以上だった。 @雫石町
誰が野心を抱いていても (まあ、いいじゃないか) 花を咲かせるか、花火で終わるか ここで花見といこう。 誰が月の裏を支配しても (もう、いいじゃないか) この世を覆すか、闇に葬られるか ここで月見といこう。 誰が誰をどう演じようと (うん、いいじゃないか) 総立ちの拍手か、幕を下されるか ここで見物といこう。 終わってみれば、すべては秋風の中だ。 燃えて、走り回って、演じた挙げ句、 何事も起きなかったなんて、よくある話さ。 (それでよかったのさ) だから今夜もほろ酔いだ。 月に踊る影を眺めて微笑んでいられるのさ。 |