TOP
イワテバイクライフ 2008年 10月前半
2008年10月15日(水)
最低気温10度、最高気温22度(盛岡)。おそろしいほど緩慢な秋の歩調。厳冬への束の間の猶予か。 @八幡平市
高層の御殿に住むコメンテーターが 格差社会の地獄を斬る。 ありあまる財産を抱えた老評論家が 高齢社会の暗闇を突く。 高級ブランドに身を包んだ文化人が 低賃金労働に言及する。 東京を出たこともないキャスターが 地方の惨状を分析する。 夜毎、会員制の倶楽部で寛ぐ先生が 節約し生き残れと語る。 苦労知らずのお嬢様アナウンサーが 自殺者の心を推し量る。 名誉欲しさの売名行為に勤しむ者が ふるさとの顔を演じる。 (だから、どうした) 発言者の素性など、どうでもいいのさ。 問題は、話が肝心なところにさしかかると、 いつも不思議に時間切れになることさ。 (イライラするな) 所詮、芸能ニュースと隣り合わせだから。 |
2008年10月14日(火)
うっすらと陽が射していた。けして鋭くも深くも鮮やかでもない秋の青空だった。 @盛岡市近郊
生きていけそうな気がするのは、 どうしてもしておきたいことがあるからだ。 その全体像は、少しぼやけながらも 輪郭だけは見えている。 漂う霧を払えばよいのだが、 今日一日では到底無理だから、 明日も生きるのだ。 果たして、その全容は 盆栽のような丘か、あるいは大山脈か、 10年や20年で答えは出ない。 急いで答えを出したがる商売もあるが、 所詮は責任の無い「放言」で いっとき世間を酔わせるだけだ。 黙々正気を保ち生きる人々は 確信と予感の間に揺れ、 絶望する夢にうなされながら、 明日という日を求めるのだ。 心の夜が明ける限り、 霧の向こうを食いいるように見つめるのだ。 現れた岩ひとつに思わず足をかけるのだ。 |
2008年10月13日(月)
まろやかな秋の光。雲もまれな青空。陽射しに艶めくススキの群。揺らす風も無い。 @滝沢村(トライアルパーク)
なんとも 気持ちの良い祝日じゃないか。 私を包む一切のものを抱きしめたくなる。 もう、これ以上、何を望むというのだ。 こう思えるようになるまで、 幾度、心は潰された? 幾度、心は張り裂けた? 壊死(えし)していた大地に 奇跡のような発芽があり、 信じられないことに 何事も無かったかのように この安息の風だ。 実に、祝うべき日じゃないか。 永久に祝うべき場所じゃないか。 正気を保てる私が 私にはうれしくてうれしくて、 けれど、万が一、この地と時を失うことが おそろしくておそろしくて、 結局、気が狂いそうだ。 |
2008年10月12日(日)
秋の陽がのぼるほどに見渡す限り鮮明。日陰はヒンヤリしたが、日向ではTシャツでもOKだった。 @奥中山高原(一戸町)
まったく、あなたという人は 彗星の如く現れ、 瞬く間の進歩で わたしを置き去りにしていく。 まったく、あなたという人は、 はにかみながら いざとなれば大胆に わたしの頭上高く越えていく。 まったく、あなたという人は、 闘い終わっても、 なお、森に残って わたしの知らない道を拓いている。 (すべては、こうあって欲しい) 完膚無きまでに負けるなら、 あなたのような人に、だ。 逆襲の炎を燃やして追撃するなら、 あなたのような人を、だ。 |
2008年10月11日(土)
青空があろうと、陽射しがあろうと、大気の不安定を告げる雲の舞踏。雨が降らなかっただけでもよしとしよう。 @岩手山麓
君は、その嫌われ者とやらを 見たことはあるのか。 言葉を交わしたことはあるのか。 同じ風を浴びて走ったことはあるのか。 どんな笑顔か、見もせず、 どんな声音か、聞きもせず、 どんな思いか、触れもせず、 君は、何処かの誰かを嫌い続けるというのか。 誰かを嫌うことで 誰かに安心され、認められるというのか。 誰かを嫌わなければ、 気まずくなって、居場所がなくなるのか。 (そのような輪の中に生きているのか) 嫌われ者は、群から追われ、群から離れ、 自由になり、孤独を楽しみ、季節の空を闊歩する。 その笑顔が群の主には忌々しくて、 ますます酷い噂が流される。 (それが結束を固める群の手口なのか) |
2008年10月10日(金)
秋本番とは思えない「ぬるい一日」。曇天、晴天、小雨に陽射し、入り乱れて、結局だるさを残して夜を迎えた。 @岩手山麓
憂い無く 急かすものも無く 楽しみにしていた日曜日を目前に 金曜日の風となる。 素直に今日を過ごせばよいのだ。 (何かと争い、何かを解決することもない) 普段通り仕事をすればよいのだ。、 (何かに追われ、何かを犠牲にすることもない) 静かに時を迎え、にこやかに時を見送るうちに 日曜日はやって来る。 サンドイッチをつくり、スープを温め、 僕ら二人、北の高原へ向うのだ。 この心の凪(なぎ)を見渡したくて走り出す。 おそろしいほどの平穏を エンジンの波動でくすぐりながら、 覆されることのない安息の道を愛しむ。 |
2008年10月9日(木)
曇天ながら、20度5分(盛岡)まで気温が上がった。山から下りて来る紅葉も少し足踏み。 @盛岡市
もう、いらないものは、 はっきりしている。 そして 捨てたり焼いたりする必要もないから そのままにしている。 つまり、形の上では、 何も変わらず、今まで通りだ。 けれど、 隠し切れないものだね。 心が向かないものは、 みるみる色褪せていく。 どんどん錆付いていく。 とうとう決別していく。 同じ空の下なのに、 同じ風の中なのに、 もう、二度と言葉を交わすことのない影が 音も立てず遠ざかる。 |
2008年10月8日(水)
「曇り」という曖昧な予報は案外正確だった。それでも、夕刻、おまけみたいな晴れ間ものぞいた。 @盛岡市近郊
(狭い輪の中は、所詮、居酒屋みたいなものだ) 見知らぬ誰かが、突然横に座り込んで話し出す。 私の一日を見て、すべてを語りたがる。 昨日と今日の違いも知らず。 (まあ、耳を傾けようじゃないか、ほほお、と) 私の一行を読み、深層を見抜きたがる。 現実と空想の境界も知らず。 (まあ、驚いてみようじゃないか、ははあ、と) 私のひと声を聞き、人格を論評したがる。 意識と表現の意味も知らず。 (まあ、頷いてみようじゃないか、へへえ、と) 他人は、人に関わることが嬉しいのだから。 面と向かって言ってやった興奮で、 鼻を脹らませ、紅潮し、 上機嫌の一升酒など飲めるのだから。 「おそれいりました」と ひとつ額を叩いてみせようじゃないか。 ビールを注いで回ろうじゃないか。 |
2008年10月7日(火)
雨上がりの朝、最低気温は14度3分(盛岡)。青空がのぞいた午後、最高気温は21度8分(盛岡)。かすかに汗ばんだ。 @イーハトーブ
想像できない者を戸惑わせてはならない。 厄介なことになるだけだ。 寡黙に生きて来た者には、 快活に振舞ってはならない。 (軽薄と断じられる) 片隅に生きて来た者には、 中央で振舞ってはならない。 (傲慢と断じられる) 小心に生きて来た者には、 豪放に振舞ってはならない。 (酔漢と断じられる) 無芸に生きて来た者には、 明確に振舞ってはならない。 (誇張と断じられる) 辺境において謙虚な者でありたければ、 鮮烈に振る舞ってはならない。 自由闊達な振る舞いは、罪だ。 |
2008年10月6日(月)
時折音を強め雨は降り続いた。けれど、体の芯に届く冷気ではなく、まずは、カドのない雨だった。 濡れてみてわかることがある。 @盛岡市
現実論者が知りたがるのは、 「今日のあなた」であって 「明日のあなた」ではない。 (事実を突き付けていく他あるまい) 陰湿な者が待ち続けるのは、 「あなたの成功」ではなく 「あなたの失敗」なのだ。 (ひたすら無事でいることは武器だ) 辛辣な者が飽き飽きするのは、 「あなたの自慢」ではなく、 「あなたの美談」なのだ。 (美しくあることは辛辣な撃退法だ) 画策する者が最も恐れるのは、 「あなたの腕力」ではなく、 「あなたの友情」なのだ。 (利害の通用しない絆を結ぶことだ) |
2008年10月5日(日)
深い霧の中、遠野へ。午前中は青空もあったが、午後から怪しい雲行き。ただ降雨には至らなかった。 @遠野市
今日、トライアル仲間のFさん(国内B級)が 岩手県選手権大会で優勝し 国内A級昇格を決めた。 日頃は、控えめな氏も さすがに念願叶って喜びを爆発させていた。 (私にも、そんな日がかつてあった気がする) 関門を突破したとか、 試練を乗り切ったとか、 檜舞台に立てたとか、 あるには、あった気がする。 それは仕事の話だ。 (快挙のひとつやふたつ無ければ困る) 愛する土地で、好きな世界で、思いひとつの道で、 F氏のような日を迎えたことは、まだ、ない。 けれど、 秋の匂い立つイーハトーブの懐で、 夢を実現していく友人に 心底の拍手を送れることこそ、 何よりの人生だと思う。 |
2008年10月4日(土)
早朝は青空。やがて小雨断続。すっかり洗われた街に午後の陽射し。乾いた夕闇。 @滝沢村
確実に、上質に、心こめ 仕上げれば済むのは、仕事だよ。 (それでは済まないのが魂だよ) いつまでも不確かで 壊れたり、崩れたり、のたうち 自らに火を放ち、自らを照らし 今日を確かめる他ないんだよ。魂というやつは。 そんな自分に とにもかくにも明日をもたらすのが 仕事なんだよ。 (だから、大人でなくちゃいけないんだよ、仕事は) 微塵のゆがみも許されないんだよ。 ついに答えの無い魂を守るために。 ついに安息の無い魂を遊ばせるために。 |
2008年10月3日(金)
晴れて、放射冷却。最低気温5度、最高気温20度(盛岡)「澄み切った秋」の典型的パターン。 @岩手山麓
(辺境においてはね) 間違っていても、いいのさ。 君が好かれているなら、正解にしてもらえる。 鍵が無くたって、いいのさ。 君が愛されているなら、裏口から抜けられる。 大失敗したって、いいのさ。 君がボスのお友達なら、事は穏便に運ばれる。 それでいいのかって? いいのさ。 そうしないと群は保てないから。 そうしないと村はボロボロだから。 そうするしかないのさ。 それが嫌なら群を離れるだけさ。 摩天楼が競り合う都で、最先端の戦場で、 情など通用しない乾いたステージで、 是々非々主義の風に吹かれて、 いつまでも「その他大勢」でいることに 潔さを感じるなら、それでいいのさ。 (どちらか選び、選んだら、従うだけさ) |
2008年10月2日(木)
朝は、しゃっきりきりり。日中は、さらりさらさら。夕暮れはひんやりぞくぞく。文句なしの秋晴れ。 @八幡平市
辿り着いた時、 ラストシーンは始まっていた。 (どうやら、間に合った) じっと日が暮れていくのを眺める。 山岳を越えて射し込む光は、 里を離れ、森を離れ、 やがて山の頂を照らして終わる。 秋の影の中に 置き去りにされた私は、 何かほっとして、その場に佇む。 光を追って猟犬の様に走る必要はないのだ。 雲を追って童の様に彷徨う必要はないのだ。 もはや、私の傍らには夜が立っていて、 凍り付いた星のいくつかが 山の向こうに落ちて砕けることや、 火を焚き野営する旅人が、 山を越えて押し寄せる津波を見たことを 語り始めている。 ここで一夜の幻を楽しむか、 それとも、いっそ行方不明になるか。 (それは、お前次第だ)と告げると 夜は、牧草地へ分け入り、森を抜け、 山の頂へ駆け上がった。 やおら天空に星を配置して、 夢の筋書きを思案している。 その夢を確かめるために、私は今夜も眠るのだ。 |
2008年10月1日(水)
衣替え?では先月、最低気温5度の朝に君たちは夏服で風をきっていたの?へえ〜、と感心する秋晴れ。 @岩手山麓
一度山に登って 「登山」を語る者がいる。 (多くの者は語らない) ただ、黙々、聳え立つ岩の壁に挑むだけだ。 語りたくなったら、 せめて頂の高さを仰ぎ見ろ。 語ることの無力を知るがいい。 数日歩き回って 「紀行」を綴る者がいる。 (多くの者は綴らない) ただ、黙々、心の地図に道を記すばかりだ。 綴りたくなったら、 せめて旅の重さを推し量れ。 綴ることの赤恥を知るがいい。 お遊びを体験し 「奥義」を説く者がいる (多くの者は論じない) ただ、黙々、胸を突く階段を上がるだけだ。 論じたくなったら、 せめて道尽きる所まで行け。 説くことの覚悟を知るがいい。 |