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イワテバイクライフ 2008年 10月後半
2008年10月31日(金)
束の間、濃密な晩秋の青空。瞬く間に雲は広がり、陽射しも途切れ途切れ。夜の雨、冷たく。 @盛岡市
あなたは あなたの意志でこの地を選んだのよ。 それはそれで正しかったのよ。 こうして毎日、楽園を駆け巡っているのだから。 ところが、あいつらにとっては、 ここで終わろうとするあなたが どうにも不自然に見えて仕方ないのよ。 そりゃ、そうよ。 地獄を生き抜いた末のあなたの決断だったのだから。 尋常じゃないのよ。 けれど、そうさせたのは自分達の落ち度のように 思われたくないから、 あいつらは、あなたを脅すのよ。 「いつ追い出されるかわからない」ってね。 あなたが(ここでずっと暮らしたい)と 手紙でも書いて懇願するのを待っているのよ。 それを証拠にして、 あなたがここに暮らし続けることに 自分達の責任は何も無いということを はっきりさせておきたいのよ。 「一切は、こいつの選択である」と。 だから、結論は出ているのに、 思わせぶりなのよ。恩を着せたがるのよ。 脅迫してくるのよ。 (ああ、君は今夜も剃刀で月の裏を斬る) |
2008年10月30日(木)
次の瞬間の姿など約束できない晩秋の雲が、冷えた青空の中を駆け抜けていった。 @岩手山麓
終電車が走り去って 私は一人歩いていた。 街灯もまれな歩道だ。 漆黒の塀に寄り添い、 私の影は走り出した。 そこが何処なのかは 定かではないのだが、 見覚えのある看板や、 渡った気がする橋が 次々現れ消えていく。 路地裏を抜け出ると、 風景は一変していた。 轟音上げる高速道路。 ヘッドライトの大河。 車を待てという指令。 私は、いったい、 何をしてきのだ。(何が終わったのだ) 何をしようというのだ。(何が始まるのだ) 前後の欠落した夢の真っ只中で朝を待つ。 |
2008年10月29日(水)
季節は嶮しさを増した。雲の表情を見れば、一目瞭然だ。風を突いて走り出せば、身にしみる。 @岩手山麓
冒険を重ねて何かを築き上げた途端、 変質していく心がある。 あまりに美しい思い出を捨てられず、 違う道を歩けなくなる。 昨日までの形を維持する事に夢中で、 意見する友を遠ざける。 立派な冠を失うことがおそろしくて、 誰かの顔色ばかり窺う。 清々しく旅立った日のことなど忘れ、 収支の行方ばかり追う。 築き上げたものと自分とを混同して、 すべてを支配したがる。 自らの理想とやらを最上段に奉らせ、 流儀の違う者を見下す。 自らを飾る名誉にはとりわけ貪欲で、 羊達を顎で使いまわす。 (すべては、志という名のもとに) |
2008年10月28日(火)
低く流れる雲と青空が混在し、昼過ぎには不意打ちの雨。夕暮れは、夜の雨を暗示する暗雲。 @盛岡市
そうですか。辛いのですね。 お気持ちはよくわかりました。 それはさておき、 祭りは今年も始まります。 (さあ、そこをどいてください) 御輿に突き飛ばされますから。 そうですか。どん底なのですね。 お気持ちはよくわかりました。 それは、さておき、 夜明けは今日もやって来ます。 (さあ、そこに隠れてください) 太陽に照らし出されますから。 そうですか。死にたいのですね。 お気持ちはよくわかりました。 それは、さておき、 新しい命は日々誕生しています。 (さあ、そこを空けてください) 明日を求める人々のために。 すべては流れ続けます。 あなたとは無関係に。 |
2008年10月27日(月)
前日の「曇天」の予報をくつがえす青空に誘われた途端、冷え切った夕暮れの雨。 @岩手山麓
心の器もまた 炎の中に生まれる。 山へ入る勇気はあるか。 土を探す気力はあるか。 形にする技量はあるか。 お前という陶土を 練り上げ、叩き上げ、 轟々たる炎の海に佇ませる覚悟はあるか。 今日限りの朱をあらわす執念はあるか。 永久の秋を焼き上げる魂はあるか。 |
2008年10月26日(日)
朝方、思いのほかに強い雨が降った。雷雨注意報とともに日は暮れた。 @滝沢村(トライアルパーク)
何が、どう終わろうと、 私に出来ることは、 終わる寸前まで生きることだ。 終わった後のために 今日を呼吸するのではない。 何が、いつ終わろうと、 私に見えることは、 終わる寸前までの見渡す限りだ。 終わった後のために 今日の眺めがあるのではない。 何が、どこで終わろうと、 私が知り得るのは、 終わる寸前までの道程なのだ。 終わった後のために 今日の行方があるのではない。 何万年であろうと、わずか一日であろうと、 すべては終わる寸前までのことだ。 (あたかも永久の営みのように輝いて) |
2008年10月25日(土)
午前中は、途切れ途切れの青空もあったが、午後になって雲に制空権を握られた。 @岩手山麓
私は、大平原に長い長い貨物列車を走らせていた。 すると線路に君が立ちはだかった。 温厚な君が険しい目で列車を止めた。 運転席に駆け上がった君は、私を問い詰めた。 「あなたは、この貨物を どこへ運び去ろうというのですか」 積荷は、楽園の季節の一切だった。 桜の花びらが、ぎっしり詰まっていた。 紅葉が、すきまなく押し込まれていた。 新雪が、折り重なり息を詰めていた。 ひまわりの種が、ざくざくとこぼれた。 「あなたの墓穴をみたすために 一切を引きずり込むのですか」 私は、言い返した。 (すべては、私ひとりで集めたものだ) 激しい口論になった。 すると、君のひと言が突き刺さった。 「あなたは、問われもしないのに、 実に勝手な思いを述べ立てる人だ」 列車は、それっきり動かず、赤錆びていく。 夢の大平原に立ち往生したまま。 |
2008年10月24日(金)
朝からの雨は、勢い余って、所により大雨警報。県南部に土砂災害警戒情報。 @盛岡市
今の私なら 狂騒の輪の中で寡黙に微笑んでいられるのに。 (ここで暮らせるなら)白痴にもなるのに。 今の私なら、 愚作の群を前に嘲笑わず紳士でいられるのに。 (ここで働けるのなら)太鼓もたたくのに。 今の私なら 狡猾な者を追わず撃たず眺めていられるのに。 (ここで酔えるのなら)騙され続けるのに。 今の私なら 犬の餌を出され美味そうな顔でいられるのに。 (ここで食えるのなら)毒だって飲むのに。 許し難いものばかりだった私よ。 馬鹿正直だった私よ。 確信犯を志願した私よ。 今の私なら、お前を楽にできるのに。 (可哀想なことをしたものだ) |
2008年10月23日(木)
雲は厚さを増し、空は暗くなるばかり。昼過ぎには小雨が降り始めた。最高気温15度1分(盛岡)。どこか、うすら寒い夜。 @岩手山麓
権威ひとつで食っている者は、 お前が笑顔で這い上がって来ることを 面白く思うはずがない。 それなりの用心棒を連れてきて、 お前を迎え撃つ。 お前の言動を執拗に監視して、 重箱の隅を突く。 お前の情熱をたかが酔狂と蔑み、 足跡を踏み消す。 それでも、お前は、にこにこ頑張るから、 ますます反感を買う。 それでも、お前は、とことん楽しむから、 ますます邪魔される。 それでも、お前は、狂った様に走るから、 ますます標的になる。 |
2008年10月22日(水)
放射冷却の冷え込み。濃霧の余韻か霞んだ晴天。日中も曖昧な青空。透明度無き秋空。 @盛岡市
いいか。お前は、 ただ走り続けるだけではいけない。 注意深く行く手を観察しなくてはならない。 お前に仕掛けられた罠をかわして、 初めて走り切ったことになる。 いいか。お前は、 ただ進歩を続けるだけではいけない。 並大抵の努力や集中では足りない。 お前を貶めようとする影を払って、 初めて前進したことになる。 いいか。お前は、 ただ輪の中にいるだけではいけない。 他人を気遣い謙虚でなくてはならない。 お前の自由奔放が妬まれず疎まれず、 初めて仲間入りしたことになる。 |
2008年10月21日(火)
ひたすらにマイルドな秋は、季節の歩調を忘却させるほどで、夏に引き返す道さえ開かれていそうです。 @盛岡市近郊
走り切ったような顔で、 どうしたんだい? 錯覚だよ、それは。 ゴールすることばかり願っているとね、 走破した道の幻が見えて来るんだよ。 旅は、まだ始まったばかりなのにね。 戦い切ったような顔で、 どうしたんだい? 妄想だよ、それは。 勝者になることばかり考えているとね、 撃破した敵の幻が見えて来るんだよ。 火蓋は切られたばかりだというのにね。 救済されたような顔で、 どうしたんだい? 幻覚だよ、それは。 苦痛から逃れる事ばかり夢見ているとね、 戯れる天使の群が見えて来るんだよ。 傷口から血が溢れているというのにね。 |
2008年10月20日(月)
うっすらとした雲だった。やわらかい秋の光だった。歩き回る背中に汗がにじんだ。 @八幡平市
明日を描く筆を折られた者は、 今日限りの絵を残すほかないのです。 瞬間の光に、 今日の色彩を見付けます。 一時の雲に 今日の時間を握るのです。 傍らの道に 今日のいのちを託します。 明日の行方を約束するものなど無いから、 今日という日の遺影を残すのです。 もう、いつ、今日という日を奪われても 嘆かずに済むように、 莫大な遺影を残して 厳冬に備えるのです。 |
2008年10月19日(日)
透明な光と風が大地を包んだ。すべては乾いて軽快で、あたかも楽園の一日だった。 @山形県蔵王(猿倉スキー場)
得点の数ではなく減点の数で すべては決まる。 そういう道を選んだ私は、 きっと完全なものに恋い焦がれる者だ。 わずかな失敗が 津波のような後悔となって押し寄せる。 (だから、ますます冷徹になる) かすかな期待が 情け容赦なく粉々に打ち砕かれていく。 (だから、ますます強靱になる) そのように、 今日という日の私の現実が彫り出される。 ごまかしのきかない結末を薪(たきぎ)にして、 落胆という落胆を燃やし、灰にして、 私の魂がダイヤモンドの硬さになるまで 挑み続けるのだ。 私の力が鞭のように自在にしなるまで 挑み続けるのだ。 私の夢が地平の彼方へ辿り着く日まで 挑み続けるのだ。 |
2008年10月18日(土)
晩秋へ向かう時季なのに、あたかも残暑を思わす陽気。紅葉前線は、さらに緩慢。 @山形県蔵王(猿倉スキー場)
あたりを見渡す。 澄み切った天地だ。 (どこまでも味方なのだ) わたしを見渡す。 まっしぐらな精神だ。 (けして恐れたりしない) 来た道を見渡す。 実に惨憺たる眺めだ。 (すべてを引き受けよう) 行く手を見渡す。 何という静けさだ。 (正解など無い未来だ) さあ、明日も この秋晴れを見渡すために、 今夜は、死んだように眠ろう。 |
2008年10月17日(金)
つまり、これを小春日和というのか。実に柔和な青空と陽射し。睡魔が忍び寄る心地よさ。 @岩手山麓
その人物が、 突然、あなたの道を塞いだのはね、 あなたを邪魔しようとしたのではなくて、 あなたに近づきたかっただけなんだよ。 (だから、笑顔だったんだよ) そうでなくても、そう思いなよ。 身構えるより楽だから。 その人物がね 突然、あなたを踏み越えたのはね、 あなたを蹴落とそうとしたのではなくて、 あなたに頑張って貰いたかったんだよ。 (だから、笑顔だったんだよ) そうでなくても、そう思いなよ。 やり返すより楽だから。 その人物がね 突然、あなたに意見した理由はね、 あなたを牽制しようとしたのではなくて、 あなたと同じ夢を語りたかったんだよ。 (だから、笑顔だったんだよ) そうでなくても、そう思いなよ。 頑なになるより楽だから。 笑顔ひとつ、すんなり受け入れ、楽におなりよ。 |
2008年10月16日(木)
濃霧注意報とともに朝を迎えた。陽射しはあったが、どこか白く霞んだ空と山並み。夕刻、所により小雨。 @岩手山麓
無心に走り続けていた頃が 幸せだったんだよ。 夢を追い、 人を呼び、 形になり、 誉を得る、 (そこで、立ち止まればよかったんだよ) 形を守り、 掟を作り、 利を求め、 冠を得る。 (そこで、引き返せばよかったんだよ) 花で飾り、 友を斬り、 底を突き、 つくろう。 (そこで、終わらせればよかったんだよ) 形だけ残り、 思いを離れ、 利用されて、 鞭打たれる。 (結局、食う為に走ることになるんだよ) |