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イワテバイクライフ 2008年 11月後半
2008年11月30日(日)
頭上には青空。彼方の山並みには雪雲。陽射しのおかげで、凍ることは無かった。 @岩手山麓
吹雪くものを 私は鎮められない。 手出しの出来ないものを ひたすらに記憶するばかりだ。 波乱の果ての純白を願うばかりだ。 燃え盛るものを 私は鎮められない。 気休めの通じないものを ひたすらに肯定するばかりだ。 火炎の果ての再生を待つばかりだ。 叫び狂うものを 私は鎮められない。 慰めなど拒絶するものを ひたすらに抱きしめるばかりだ。 思いの果ての静寂を祈るばかりだ。 一切の手出しを許さず、 取り返しのつかない姿になっていくものよ。 今日を壊さなければ、 明日は無いと信じるものよ。 吹雪き、燃え盛り、叫び狂うものよ。 お前たちには、冷徹に見届ける者が必要なのだ。 |
2008年11月29日(土)
朝方は、憂い無き青空。山々の雪の白さも際立った。夕闇に小雨が混じって街は閑散とした。 @岩手山麓
カウボーイは、焚火越しに私を睨んだ。 やつは、お前さんが怖かっただけさ。 あるいは、目障りだっただけさ。 そこに大そうな理由なんてありゃしない。 考えてもみな。お前さんが頑張るほど、 誰が面白くないか。ぴんと来ないか。 お前さんが、そこまで頑張るとは、 到底思えなかったことが、やつの誤算だったわけだ。 それで、お前さんは疎まれた。それだけのことだ。 ところが、お前さんときたら、大真面目に受け止めて、 やつに認めて貰おうと、また頑張り出す始末だ。 理由のないことを あれこれ考えて、何とかしようというのは、 優等生気取りだぜ。 心をこめて、時をかければ きっとうまくいくと思い込むのは、 善人気取りというやつだ。 やつは、お前さんが邪魔なだけだ。 「まだ、わからないのか」 その言葉を合図に、 カウボーイは、銃を抜くと私の頭上を撃ち抜いた。 木の枝から毒蛇が崩れ落ちて来た。 男は、硝煙を吹き払って言った。 「蛇の毒に理由はねえ。 蛇と関わる場所に居るお前さんが悪いだけだ。」 (無駄なことはするな) 男は、きつい酒をあおって横になった。 |
2008年11月28日(金)
1週間前の雪のかけらをとかし、形を失った落ち葉の群を洗い、冷たい雨は降り続いた。 @盛岡市(肴町)
私は、わくわくする。 愚かな者が、 高いところから道を説くことの可笑しさ。 叫び出したいほどのエンターテイメント。 私は、いらいらする。 独善の輩が、 自らの趣味のままに街をいじり壊す不幸。 莫大な金を使って建設される破綻の螺旋。 私は、がくがくする。 黒幕たちが、 それぞれの損得で未来をむしりとる大罪。 ついに取り返しのつかない崩壊への序章。 こんなに笑える、 こんなに呆れる、 こんなに震えるストーリーが 粛々と大真面目に準備されていることに 私は、わくわく、いらいら、がくがくするのだ。 |
2008年11月27日(木)
冷えて明けた一日は、あまりに穏やかな晴天で、明日の「雨」の予報など悪い冗談のようで・・・。 @岩手山麓
君は、良いことをしようと頑張って、 自分とは違う自分になっていく。 (それが成長というものだ)と言い張る。 何十年の道草をしようと(いいのだ)と笑う。 君は、理想に近付こうと無理をして、 自分の道から遠くはずれていく。 (それが自由というものだ)と言い張る。 何百という友を失おうと(いいのだ)と俯く。 君は、自分の醜さがどうにも許せず、 自分をうつす鏡を失っていく。 (それが憧憬というものだ)と言い張る。 何万頁の幻想を綴っても(いいのだ)と頷く。 君は、己のみすぼらしさが許せずに 美しい物にすがりついていく。 (それが精神というものだ)と言い張る。 何億の勘違いを重ねても(いいのだ)と泣く。 |
2008年11月26日(水)
光は鋭く、空は蒼く、山は近く、彼方の雪は眩しく、憂い無き初冬の一日。 @岩手山麓
私には、何かとりえなどあるわけもなく、 ただ、他人(ひと)様に迷惑などかけずに 暮らしていられればよいと、 そう念じるばかりです。 陽だまりの片隅で、それこそ身を縮め、 じっと鉛筆を削るような毎日を思います。 私には、伝えるべきことがあるはずもなく、 ただ、他人(ひと)様の気分をかき乱さずに 生きていられればよいと、 そう祈るばかりです。 公園の日陰のベンチで、それこそ背を丸め、 じっと柿の皮を剥くような日々を思います。 私には、生きる意味を断言する才もなく、 ただ、他人(ひと)様の喜怒哀楽に逆らわず、 歩んでいければよいと、 そう思うばかりです。 場末の映画館の暗闇に、それこそとけてしまい、 じっと物語を眺めるだけの夜を思います。 (曖昧な温もりに包まれていると、 しみったれた台詞が、ひんやりと心地よい) |
2008年11月25日(火)
数日前の日陰の雪すら消え始め、まずはリセットされた季節の印象。けれど、青空の暗さは冬を隠しようもなく。 @盛岡市
自らが語るべきことを探し続け、 一睡もしなかったことが、かつてあったか? この静かな北東北の午後、 斜光に染まる教室で、 若人に私は何を語ったのだ。 それは、どう振り返っても 夢や希望ではなく、 人生が「不本意の連続」であることを 述べ立てただけだったのだ。 (けれど、それでも) 人は耐え抜いて楽園に辿り着ける。 その日までの修羅から目をそらしてはいけない。 (そのように) 私は、最後の蝋燭を燃やすように語った。 自らの道程を告白した時、 何か、こう、何か、 やっと、この地の本当の扉が開いた気がして、 教壇に立ち尽くしたのだ。 魂をこめた一日の終わりは、火傷するほど熱い。 初冬の夕暮れの、北国の夕焼けの、 深く澄んだ冷気の他に 今日の心をしずめてくれるものはないのだ。 |
2008年11月24日(月)
充分の青空と陽射し。最高気温も7度8分(盛岡)。山野の雪も緩んでとけだしていた。 @岩手山麓
見覚えのある料理店だった。 私は注文したスープを待っていた。 店の片隅から怒りを押し殺す店主の声がする。 使用人と何か議論が続いている。 諍いの声が高まった途端、店内の照明が落ちた。 しばらくして、暗がりの中、店主が皿を持って現れた。 トマトのかけらがふたつ皿にのっていた。 私は、仕方なくそれを食べ、 代金を支払おうとして千円札を出した。 すると店主の顔色が変わった。 「これだけお食べになって 千円に負けろというのは、ご勘弁ください。」 その手に握られたレシートには 数十万円分の料理や酒が記載されていた。 私は、弁護士のような口調で、 店に入った経緯から、注文内容を説明した。 何時間も意を尽くした。 すると厨房から青いチャイナドレスの美女が現れた。 切れ長の瞳が私を見据えた。 「実は、レシートに記載された料理は、 これからあなた様がお食べになるものだったのです」 私は、その誠実な声に抗えず店を出た。 けれど、まっすぐな女の眼差しに恋をした。 私は、食べられなかったスープを注文しようと 引き返すと、もう店は無かった。 そんな夢を見た。 |
2008年11月23日(日)
最高気温8度4分なら、気分は晩秋へ逆戻り。青空のもと街は乾く一方。 @盛岡市
気難しいわね、あなたって人は。 なのに、気さくを装うから、 苦しむのよ。 疑い深いわね、あなたって人は。 なのに、信じたりするから、 休めないのよ。 負けず嫌いね、あなたって人は。 なのに、引き下がるから、 許せないのよ。 執念深いわね、あなたって人は。 なのに、忘れようとして、 眠れないのよ。 せめて笑って生きていたくて、 軽蔑するものまで受け入れるから、 自分を切り刻んで焼き払いたくなるのよ。 ねえ、あなた。 |
2008年11月22日(土)
穏やかな青空に満たされた市街地(盛岡)。見渡す山々は雪雲に覆われた。 @盛岡市
思い巡らせば、 蒼く凍った朝。 刺しこむ寒気。 滑り転ぶ予感。 徒労の冬の旅。 そのように 身を固め眠る。 駆け巡るなら、 白く眩しい朝。 風も光る歓喜。 大地の手応え。 未来へ続く旅。 そのように 心を開き走る。 汝、窓の内に居て、季節を思うべからず。 天地の狭間に立ち、はじめて今日を知る。 見渡すものを持ち、ついに明日を求める。 |
2008年11月21日(金)
積もる気も無い「みぞれ雪」が束の間、朝の街を白く染めた。最高気温3度3分(盛岡)が雪を涙にした。 @盛岡市
あたかも 自殺現場のようだった。 思い一色であたりを染めて、 冷えた体を自ら置き去りにした者の名を 私は呼び続けた。 あたかも、 戦闘現場のようだった。 思わぬ方角から狙い撃たれ、 止めようのない血の勢いに衛生兵の名を 私は呼び続けた。 あたかも、 撮影現場のようだった。 思い描いた一瞬に恋焦がれ、 とめどなく押すシャッターに女神の名を 私は呼び続けた。 雪の朝のまどろみの中で、 私は、確かに、 誰かを失い、誰かと闘い、誰かを求めた。 |
2008年11月20日(木)
盛岡で初積雪。昼前、薄日の中、雪が強く舞った。午後には青空が戻ったが、山々は雪雲の中。 @姫神山麓
慌てることはない。私に締切りは無い。 遂に息絶える日に、話は完結するのだ。 描いては破り捨て、砕いては組み立て、 挑んではやり直し、進めては引き返す。 実に果てしもなく、魂は試されていく。 ほら、今日もまた、我先に頂をめざし、 旗を争う群がある。功を焦る影がある。 未完成なテーマ達。杜撰な道筋の数々。 頂に留まり凍える覚悟などないままに、 祝賀パーティーだけは懸命なもの達よ。 薄汚れた足跡を吹雪が黙って始末する。 真実を綴る者はいないのかと冬が叫ぶ。 |
2008年11月19日(水)
盛岡市街地は冷たい小雨に濡れ、近郊の山野は白く染まった。冬の扉は開いた。 @岩手県内陸
きついとか つらいとか そんなことは、所詮イメージに過ぎない。 凍る前に、とにかく動くことだ。 滑る前に、とにかく構えるのだ。 もう、寸分も前進できない所まで、 力という力、 心という心、 一切を使い、 今日の私が立っている。 惨憺たるイメージを覆して 至福の現実が広がっている。 |
2008年11月18日(火)
朝から坂を転げ落ちる天気の予感が濃厚だった。案の定、昼過ぎから冷えた雨。明日の雪の予報。 @盛岡市
みんな仲良く、助け合い、支え合い、 それぞれの輪を満たし、生きている。 その友情は、 その輪の中にあって初めて有効で、 その盟約は、 その輪を固く結ぶ限り有効なのだ。 誰もが輪の中で、 目を輝かせ、夢を語り、肩を組み、歌を歌い、 酔いしれる。奇跡のような結束に酔いしれる。 ひとたび事が起きれば、 立ち上がり、手分けし、奉仕する。 驚くべき労力を傾注し、輪を守る。 旗を振り、笛や太鼓で支え合い、 憑かれたように突き進む。 けれど、ひとたび輪が異なれば、 黙殺し、疎外し、叩き合う。 こののどかな大地は、反目の戦場なのか。 このひなびた街角は、暗闘の現場なのか。 ここにたたずむ私は、遂に異邦人なのか。 ※画像と本文は一切関係ありません。 |
2008年11月17日(月)
街路樹の黄色い葉が、歩道を染めていた。まずは、温和な曇天。宵闇とともに小雨。 @盛岡市近郊
私は、私ではない。 私が誰であるかを決める誰かが いただけだ。 私は、私のものではない。 私を利用して何かをする誰かが いただけだ。 私が、私になるのではない。 私をたまたま見聞きする誰かが いただけだ。 (人のために)生きる前に すでに誰かに使い込まれた私が 遺棄されていた。 そのような仕組みに決別した私が、 今ここにいるだけだ。 |
2008年11月16日(日)
終日曇天ではあったが、盛岡市街地に雨らしい雨は降らなかった。近郊の山野は小雨に濡れたが、冷えてはいなかった。 @岩手山麓
生真面目な青年が私に尋ねる。 「そこは、何処ですか」 私は、困り果てる。 「そこは、何処でもないんだよ。 そこは、つまり、その瞬間(とき)だったんだよ」 青年は、一層熱心に尋ねてくる。 「では、何かヒントをください」 私は、懸命に考え、笑顔でこたえる。 「そうさ、そこに私がいたんだよ。 だから、そこは其処になったんだよ」 青年は、あきらかに落胆して呟いた。 「あなたは、なんと不誠実な人だ」 私は、これからも同じ道筋を辿り、 多くの友を失っていく。 そのように私は、ますます私になる。 (其処が何処か)知るのは、 私に併走する風だけなのだから。 |