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イワテバイクライフ 2009年 1月前半
2009年1月15日(木)
真冬日。午前中は吹雪いた。雪は止んでも、刺し込む寒気。圧雪路は、あたかも白いアスファルトロード。 @盛岡市
何処のことでもなく、誰のことでもなく、 文書になった未来の形に従って、 立案されたものが、のし歩く。 何処に誰が生きているのか、 そこからすべては始まるはずなのに、 机上に生きる者の 保身や名誉のために、 無用な計画がわいてきて、 不可解な力と金を使い出す。 思いつきひとつ、作文一枚で 何かが削られ、奪われ、消えていく。 人が路頭に迷っていても、恒例行事。 人が病に苦しんでいても、祭り騒ぎ。 追及をおそれて並べたてる台詞は、 相変わらずの綺麗ごと。 その場限りの者の目は虚ろだ。 その日をしのぐことに夢中で、 何を説明しようと、人の心に届かない。 人々の落胆と諦観に気付かない。 ただ、大地だけが、 雪を赤く染めて恥ずかしがる。 |
2009年1月14日(水)
今日も凍てついて夜は明けたが、日中は青空で、最高気温も4度2分(盛岡)なら、まずは穏やか。 @花巻市(トライアルパーク)
先行きが見えないから 不安になる。 ならば、立ち止まり、 道の先を足の裏で確かめればよい。 ほら、目には見えなくても 感触となって覚えた岩や溝は、 裏切ることなく私を迎え入れる。 度胸ひとつで突っ込んで 思わぬ罠に掴まるくらいなら、 まずは、立ち止まれ。 よく見渡せ。じっと睨み付けろ。 (楽をして進む前に、汗することだ) 勢いひとつで駆け出して、 思わぬ道に引きずり込まれるくらいなら、 まずは、立ち止まれ。 しばし目を閉じ、本当のラインをイメージしろ。 (甘い夢を見る前に、汚れることだ) めざす場所が明らかであれば、 立ち止まることなど怖くはない。 静かに時を費やすがいい。 |
2009年1月13日(火)
最低気温・氷点下7度(盛岡)。日中は青空もあったが、凍結した道をとかす陽射しはなかった。 @盛岡市
私が撮っているのはね、 静物としてのオートバイではないんだよ。 絵葉書にするための風景ではないんだよ。 撮る技術を確かめる素材でもないんだよ。 そこには、私の行動が在るだけなんだよ。 光とともに揺れ動き、 雲とともに流れ続ける私の記憶なんだよ。 花瓶や果物を奇麗に描いたり、 トルソーを精密にスケッチするのとは、 別の作業なんだよ。 歪んでいても、いいんだよ。 そこをめざした思いが刻まれていれば、いい。 ピンボケでも、いいんだよ。 そこへ辿り着いた事実が見えていれば、いい。 風変わりでも、いいんだよ。 走り続ける意志が写ってさえいれば、いい。 奇麗に見せるための旅じゃない。 完璧に残すための瞬間じゃない。 (そんなものは) 100万枚に一枚の奇跡でいいんだよ。 |
2009年1月12日(月)
最低気温は氷点下8度1分(盛岡)。この冬一番の冷え込み。午後から小雪で化粧直し。 @滝沢村(トライアルパーク)
前進したければ、行先は自ずと決まる。 雪が降ろうと、寒かろうと、 凍った山肌にタイヤが空転しようと、 そこで、理想のイメージを追いかけるのだ。 最後まで何も出来なくても嘆く必要はない。 何もしなかった自分を遙かに越えたはずだから。 自己満足とからかわれても俯く必要はない。 誰のためでもなく、自らの心を満たす時だから。 果てしない徒労に思えても悩む必要はない。 繰り返す力こそが、基本なのだから。 困難を困難として噛み締め、 何とかしようとして 雪を纏い、泥にまみれた午後の記憶こそ、 困難を困難とも思わない私にしてくれる。 (それだけで、もう充分じゃないか) 苦行ではなく、生き甲斐なのだから。 嬉々として深めるだけだ。 |
2009年1月11日(日)
夕べ、さんざん冬の嵐の予報に脅されたが、夜が明けてみれば拍子抜けの青空だった。 @花巻市(トライアルパーク)
北国の冬は、あまりに短い。 どんな春を迎えたいのか。 どんな私でいたいのか。 どんな一年にしたいのか。 どんなラストシーンにしたいのか。 明確なイメージがある限り、 冬は、あまりに短い。 燃え盛る様な思いがあれば、 雪は、やがて消える。 去年を越える意志があれば、 氷は、いずれとける。 いつまでも、どこまでも、 消えることなく、 とけることもなく、 在り続ける心に出会えた者は幸いだ。 笑うように息を弾ませ、 宝石を纏うように汗を流し、 恋をするように困難を選ぶ。 そのように生きる冬の 何という短さだ。 |
2009年1月10日(土)
大雪や強風への注意が飛び交った割に、もの静かに小雨や小雪が降る程度(盛岡市街地)だった。 @盛岡市
もしかして、 君は、無意識のうちに 都合のよい誤解を誘ったのではないか? もしや君は、田舎の酒場で こんな話をしなかったか? 「私もプロ野球で投げていた」と バッティング投手だった君は、語らなかったか? 「私も巨匠と交流がありました」と 名刺を交換しただけの君は、語らなかったか? 「私も大舞台を踏んだ者です」と、 通行人を一度演じただけの君は、語らなかったか? 美しく誤解を誘い、幸福を掴みかけた途端、 真実がばれて、信用を失い、 バッティング投手のことや、 巨匠との名刺交換のことや、 通行人を演じたことまで疑われ、 履歴書の再提出を求められているのではないか? |
2009年1月9日(金)
憂いの無い青空は、嵐の前の静けさだった。沿岸を中心に大荒れの気配。夜には盛岡でも湿り雪。 @岩手山麓
何かを残すためではない。 美しく記録するためではない。 まして日記ではない。 今日の居場所を求めて彷徨い、 其処に至った心に 束の間のピリオドを打つために シャッターを切るのだ。 消えることのない悲しみを 一枚の眺めに閉じこめ、 一日の微笑みを得るために、 今日も走るのだ。 いくらメスを入れても断ち切れない悪夢なら、 果てしない楽園の眺めに紛れ込ませ、 見失ってみたいだけだ。 叫び狂う前に、 鎮魂のシャッターを押し続けるのだ。 |
2009年1月8日(木)
晴天続きで、表通りから去年の雪は消えた。けれど、街の日陰には凍って艶めく残雪のかけら。 @岩手山麓
あなたの死について わたしは、今も考えている。 闇に生きたあなたは、 耐えがたい重圧を酒でごまかし、 ヤクザな生きざまを誇示して 権力の回廊を闊歩した。 ある日、闇の裂け目に光が差し込んだ。 霧が払われ、時代は変わった。 けれど、青空の下で、 闇を脱ぎ棄て切れないあなたは、 あまりに目立った。 まさに、そんな冬のある日、 あなたは、驚くべきタイミングで逝ったのだ。 (固く口を閉ざしたまま) かつて、私を不条理にも 谷底に蹴落とし始末したあなたは、 しかし、結果的に 私をこの楽園に導いた恩人なのかもしれない。 そのように、あなたの死の意味を 風の中に反芻するのだ。 (あなたは、本当に病死だったのか?) |
2009年1月7日(水)
青空に雲は走り、光と影がめまぐるしく入れかわった。冷えてはいたが、まずは穏やかだった。 @岩手山麓
よかったね、 すっかり道に迷って。 よかったね、 何から何まで失って。 よかったね、 みるみる闇が晴れて。 よかったね、 ここでこうしている。 見晴らす一面、美しくて、 仰ぎ見る空は、明るくて、 振り返る道は、笑ってる。 だからさ、 一度死んでよかったんだ。 こんなことなら、 最初から、ここでよかったのに。 ここに産声を上げたかったのに。 (悲しい回り道だったね) |
2009年1月6日(火)
青空らしきものも現れたが、見渡す限り冬の雲に囲まれた。最高気温は2度1分(盛岡)が精一杯。 @岩手山麓
幾度、私は暮れてゆくのだ。 何処かを求めて彷徨い、 何処にも辿り着けないまま 日は暮れていく。 こんなことを あと幾度、繰り返すのだ。 夕闇に染まる雪原に やがて轍は途切れ、 夜に飲まれていく。 こんな結末を あと幾度、眺めるのだ。 彼方に揺れる灯を求め、 里の戸を叩けば、 ひとつふたつと灯は消え、 私が立ち去る時を待つ者の 咳払いが聞こえる。 こんな落胆を あと幾度、噛み締めるのだ。 (嗚呼、あと幾度だ?) |
2009年1月5日(月)
柔らかい陽射しだった。最高気温3度3分(盛岡)など、ゆるい「寒の入」だった。 @花巻市
ある日あなたは現れ、私に握手を求めた。 「友達になりませんか」と。 さて、それは無理だ。 なにせ、あなたは、 私を憎む一団の同志だ。 私を嘲笑う集会の前に、 あなたは、私とどんな宴を開こうというのだ。 秘密のルートや計画のことを 酔いにまかせて吐けというのか? 暗号や隠れ家のことを うっかり漏らせというのか? (なるほど、呆れるほどの純真無垢だ) あなたと私が、屈託無く肩を組めるのは、 一切の鎖を断ち切ってからだ。 それまでは、一心不乱に、 そちらの御輿を担いでいればよい。 ひたすら声を合わせていればよい。 馬鹿馬鹿しい限りだが、 どうやら、ここでは、そういう仕組みだ。 |
2009年1月4日(日)
いささか風が冷たく感じられたが、それでも陽射しと青空の断片はあった。まずは穏やかな正月。 @花巻市
旅の途中の道端で、 里の悪党の目に止まり、 釣り上げられ、 持ち上げられ、 褒めそやされ、 子分にされ、 危ないものを持たされ、 使い捨てられる。 (よくある田舎芝居だ) へつらわず、疎まれ、 盲従せず、邪険にされ、 意見して、石など投げられ、 それでも頑として生きていると、 ひそかに真似され、盗まれるようになる。 真夜中の裏木戸に使者が立つようになる。 深い闇を告発する手紙が届くようになる。 明日を打診する影が訪ね来るようになる。 (本当の舞台は、そのように用意されるものだ) まぶしいだけの光など、道を迷わせるだけだ。 |
2009年1月3日(土)
まったく、のどかな正月だ。このまま春を迎えるかのようだ。新年は三日経過。なるほど春は近い。 @花巻市(トライアルパーク)
挑むなら、躊躇してはならない。 そうでないと、 失敗した時の後悔が大きくなるだけだ。 (行け、迷う事なく) 磨くなら、ゴールなど設けない。 そうでないと、 上っ面の輝きを見て手が止まるだけだ。 (行け、果てしなく) 闘うなら、結末など予想しない。 そうでないと、 他人の勝ち負けに振り回されるだけだ。 (行け、孤独なまま) 飛ぶなら、着地点など決めない。 そうでないと、 届くべき高さを忘れ無事を祈るだけだ。 (行け、矢となって) |
2009年1月2日(金)
最低気温氷点下1度7分。最高気温6度2分(盛岡)。のどかな新春の青空。 @花巻市(山屋トライアルパーク)
確かに 激烈な夢を見た気がする。 許せないものと闘う夢だった。 けれど、 夕闇が押し寄せる山中で あなたが描いた軌跡の美しさに 私の夢の記憶は遠のいた。 闘うのではない。 競うのでもない。 力などではない。 技とは違う何か。 自らのイメージを信じ、素直に従い、 舞い踊るあなたの心だ。 軽々と事を運んだ後で、 振り返る笑顔の何と優しいことだ。 あなたの瞬間を心に刻み、 私の一年は始まったのだ。 |
2009年1月1日(木)
新年の青空に誘われ飛び出したが、ぐるり山並みは雪雲に覆われていた。家にいる限り極上の元日。 @岩手山麓
悪いが、私は、あなたの敵になることにした。 あなたは大勢に守られている。 あなたの意見は常に絶対だ。 あなたの集団は当然のように中心を占める。 あなたに楯突く者は極悪人とみなされる。 あなたの世界観こそ正義だと言い張る。 あなたの人徳が人を呼ぶと信じている。 あなたの画策ひとつで何でも潰せると思っている。 私は、嫌いだ。我慢ならない。 そういうものを見ていると 歯車を狂わせてやりたくなる。 斬り捨てられた者と肩を組みたくなる。 あなたにとって不愉快な存在になりたくなる。 あなたの思い通りにはならないように、 私は、誠実に真剣に朗らかに生きようと思う。 弱い者と手を握り、隅に追いやられた者を励まし、 見渡す限りを震わせる声で、 あなたの眉間に異議を放とうと思う。 実に面白くない一年にしてやろうと思う。 (そんな啖呵を夢で切った) |