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イワテバイクライフ 2009年 1月後半
2009年1月31日(土)
湿った雪が20cmほどの厚みで街を覆った。日中は青空のもと、雪は、ぐしゃぐしゃ崩れ、夜には鋼のように凍った。 @盛岡市(某オートバイ店)
大切なことがひとつ決まると、 あとは雪崩を打って全体が動くことがある。 願いが通じないことを知ると、 あとは残酷なほどに冷えていくことがある。 心の軸になるものが見えると あとは止めようもなく加速することがある。 この雪の朝、湿って重い白い朝。 引き返すことも、前に進むことも難儀な 冬の真ん中で、 私は、野太い釘を一本、 未来に打ち付けたのかもしれない。 目を見張るほどの春のために、 すべてを一新するために、 雪崩を打つ者になろうとしている。 |
2009年1月30日(金)
早春を思わせる大気だったが、青空の透明度は、みるみる落ち、ついに夜には雨から雪。 @岩手山麓
そうか、そうだったのか。 それで、やっとわかった。 それで、説明がついたよ。 それで、霧が払われたよ。 君が突然 泣き叫んだり、 怒り出したり、 黙りこんだり、 別人のように何かに拘り、執着した理由が、 実によくわかったよ。 それこそ、神の光に照らされたように 一切が明らかになったよ。 君がすがりつくものがわかれば、 もう、私は、恐れることはない。 (そこに理屈は無いのだから) 君が信じ込むものの正体がわかれば、 もう、私は、思い悩むこともない。 (そこに是非など無いのだから) そうか、そうだったのか。 なんだ、そうだったのか。 |
2009年1月29日(木)
霞がかかった青空。束の間、春を幻想する光。凍ることを忘れないのは、山の上の雪だった。 @盛岡市(岩手山遠望)
暮れていくから、 どんな一日にも意味がある。 宵闇に飲まれて区切りがつく。 過ぎていくから、 どんな時代も懐かしくなる。 許し難いことも昔話になる。 流れていくから、 どんな結末でも向き合える。 巨悪さえ世の波に飲まれる。 消えていくから、 どんな悪夢もやり過ごせる。 痛みは呼吸ひとつで鎮まる。 そうでなければ、お前は、 幾度、流血を見る? 幾度、正気を失う? 幾度、真実を叫ぶ? 幾度、言葉を失う? |
愛機:HONDA Ape100
2009年1月28日(水)
放射冷却。氷点下9度6分(盛岡)の朝。日中は、すさまじいほどの冬晴れ。 @岩手山麓
嫌われているわけではない。 好かれているわけでもない。 挨拶だけは、きちんと交す。 だから、まれに笑顔に会う。 それ以上はね「好み」だよ。 冷たくされるわけではない。 優しくされるわけでもない。 意見だけは、きちんと通す。 だから、まれに手など組む。 それ以上はね「損得」だよ。 厳しくされるわけではない。 緩めてくれるわけでもない。 結果だけは、きちんと出す。 だから、まれに拍手される。 それ以上はね「博打」だよ。 すべてはね、 あの山との間合いくらいで ちょうどいいんだよ。 |
2009年1月27日(火)
朝方、積もり切れない雪が街を濡らした。冷えた晴天のもと街は乾いた。そして満天の星空。 @盛岡市
立ち止まるのは、難しい。 立ち止まれば、何かに向き合う。 そこに何を求め、 何を受け止めようとしたのか、 わかってしまう。 敢えて立ち止まり、 心に刻むほどのこととは何なのか、 明らかになる。 意味あることも、そうでないことも、 関わりあることも、そうでないことも、 思い込みも、思い違いも、 あるがままに突きつけられる。 愛するものの傍らに立ち尽くし、 無縁な風に吹かれることなど、おそろしい。 (早く立ち去れ)と誰かがささやく。 いっそ、立ち止まったまま、 時に染まり、風に吹かれ、 この道端の塵になってしまいたい。 |
2009年1月26日(月)
最低気温が平年より5度も高い−1度5分(盛岡)。後は、夕暮れの青空以外に印象は希薄。 @盛岡市(北上川)
十人の共感を得たければ、 静かに語れ。 過去を明かすように語れ。 千人の賛同を求めるなら、 腹から歌え。 夢を押し出すように歌え。 何億という支持が必要なら、 未来を示せ。 幸福も残酷も隠さず示せ。 さて、ひとりの女のためなら、 音楽となれ。 ただ一本の弦を震わせ、 星の数ほど愛を奏でろ。 |
2009年1月25日(日)
車のフロントガラスに2cmほどの積雪。ワイパーで払い落とせた。凍るほどではなかった一日。 @花巻市(トライアルパーク)
あなたが知る私は、 何かに拘っていた昨日の私だ。 そんな私を封じ込めようと、 あなたが秘策を練る間に、 私の心は宙に舞い、向きを変えている。 あなたが勇んで私を仕留めようとしても、 冷えた風が吹いているだけだ。 昨日の熱情は、もはや今日の氷雪。 昨日の熱弁は、もはや今日の戯言。 昨日の熱望は、もはや今日の妄想。 この自由な大地では、 昨日の私に縛られることは無い。 夕暮れのたび、新たな熱情はわき、 熱弁と熱望が、明日を説得し始める。 夜が明ける前に、 昨日の抜け殻を焼き、 何食わぬ顔で今日も生きている。 だから、 あなたの東奔西走は、徒労に終わる。 あなたの退屈な画策は、間が抜けている。 ※ 画像と本文は、一切関係ありません。 |
2009年1月24日(土)
本来の冬が戻って来た。青空の下、氷点下にならなかった程度のこと。きりっと刺してくる夜の寒気。 @岩手山麓
さて、お前が求めているもののことだ。 思うほどに夜も眠れぬほどのことだ。 手に入れたくて気も狂わんばかりのものだ。 一生を左右するとさえ信じていることだ。 どうなのだ? それは、形あるものか? それは、限りあるものか? それは、心を持つものか? それは、命あるものか? 触れられず、時を知らず、 思い通じず、終わり無く、 お前を支配するものなら、 焼き払ってみてはどうだ。 それで何が起きるのか、何が変わるのか、 あるいは、音もなく空が広がっているだけなのか。 よくよく見ておくことだ。 幻を深追いしてはならない。 無縁なものを希求し、虚しく老いてはならない。 |
2009年1月23日(金)
4月並の気温に、湿度は高まり、あたりは霧が立ちこめた。時折の小雨に街は洗われ雪はとけた。 @盛岡市
これから、何がどうなるのか。 (それは、わからない) それより、何をどうしたいのか。 考えることだ。 (それなら、わかる) これから、何ができるのか。 (それは、断言できない) それより、何の為に挑むのか。 問い続けるのだ。 (それなら、できる) これから、何がうまくいくか。 (それは、保証できない) それより、何を成功とするのか。 思い描くのだ。 (それなら、見える) 未来の樹は、今日の土に芽生えるのだから。 |
2009年1月22日(木)
雪が雪に成り切れず、束の間の雪化粧も瞬く間に消え、どこか、ぼんやり、ゆるい一日。 @盛岡市(手代森)
それは、けして夜明けではないのだけれど、 行く手が、ぱあっと照らされることがある。 しかし、明るいだけで何も見えては来ない。 つまり、暗闇と大差ない世界があるだけだ。 (だから、野火を放ってみたくなる) それは、けして青い空ではないのだけれど、 行く手が、からっと乾いていることがある。 しかし、乾いているだけで何も潤いはない。 つまり、砂漠と大差ない世界があるだけだ。 (だから、海の底深く沈みたくなる) それは、けして安らかではないのだけれど、 行く手が、こわいほどに静かなことがある。 しかし、静まり返っているだけで夢はない。 つまり、何も変わらない世界があるだけだ。 (だから、狂人になってみたくなる) 轟々たる火炎よ、照らし出す朝に、私はいるか。 光届かぬ水底よ、ゆらめく海流に、私はいるか。 氷結した静寂よ、音もなき雪山に、私はいるか。 |
2009年1月21日(水)
印象に残る青空ではなかったが、雪や氷を踏まずに歩ける場所が、ぐっと広がった。 @盛岡市(北上川)
あなたの目標とやらを聞こうじゃありませんか。 半年後に、この地を捨てるあなたが、 この地で何を成し遂げたいのか、 (耳を疑う綺麗ごとを) 聞かせてもらおうじゃありませんか。 あなたの提案とやらを聞こうじゃありませんか。 一年後に、名誉な座へ走るあなたが、 この地の将来をどうしたいのか、 (嘔吐を誘う建前論を) 聞かせてもらおうじゃありませんか。 あなたの熱愛とやらを聞こうじゃありませんか。 二年後に、予定通り消えるあなたが、 この地をどれほど愛しているか、 (呆れ返るほどの嘘を) 聞かせてもらおうじゃありませんか。 カレンダーを眺め、時計を睨み 気もそぞろなあなたの その場限りの舞台を さあ、見せてもらおうじゃありませんか。 |
2009年1月20日(火)
夕べは送電線をショートさせるほどの風雪(盛岡)。一夜明けて3月並の朝。日中は穏やかな青空。 @盛岡市
君の失敗は、 道の途上で成功者のように語ることだ。 君の誤りは、 人生の評価を他人の目に任せたことだ。 君の醜さは、 まぶしい電飾の都に恋い焦がれながら、 辺境に暮らす現実を恥と感じることだ。 君の傲慢は、 自らの決断で虚飾の舞台を降りた者に、 失格者という烙印を押したがることだ。 君の滑稽は、 狭隘な「知の庭」の片隅におさまって、 君自身の失敗と誤解と醜さと傲慢さを 得意満面に日毎夜毎さらけ出すことだ。 成功は、満たされて静かな心のことだ。 自ら感じ掬い取る人生の温もりなのだ。 失敗は、器に満たすものを誤ることだ。 自ら噛み締めるべき人生の教訓なのだ。 ひとつの器に明暗の海がある。 栄光と挫折は渾然一体なのだ。 成功も失敗も見る心で変わる。 何が成功か、何が失敗なのか。 そのイメージで、器は決まる。 |
2009年1月19日(月)
冬の雨が雪をとかし街を洗った。午後には青空ものぞいたが、大地を乾かす陽射しは無かった。 @花巻市(トライアルパーク)
(ひとつの岩に宇宙がある) 乗り越えるべきものを 正面から見るだけでは、 確信を持って挑めない。 向こう側はどうなのだ。 裏側はどうなっている。 実はそれこそが大切だ。 表裏を知れば憂い無く、 前後を知れば流れ有り。 一切を球体として眺め、 まるい心におさめれば、 岩すら微笑みを浮かべ、 春風の様に越えられる。 (心の死角を消すことだ) |
2009年1月18日(日)
ふっと、冬がゆるんだ。やわらかい晴天だった。昨日の雪化粧が、とけて消えていく。 @花巻市(トライアルパーク)
失敗する自分をイメージできないと 怪我をする。 成功する自分をイメージできないと、 挑めない。 進歩する自分をイメージできないと、 繰り返せない。 ひとつの岩ばかり見るな。 同じ道ばかり思い描くな。 いつもの技に頼り切るな。 刻々移ろうイメージと、 絶えず変わる私の心を、 大きな風景におさめていたい。 真冬のイーハトーブの夕暮れに、 奥羽山脈と北上高地の間で 斜光に染まって飛ぶ情熱を、 空高く舞うものの目で、 じっと見つめていたい。 |
2009年1月17日(土)
夕べの粉雪が、街をうっすら染めた。日中は明るい青空で、幹線などの雪はとけ、乾いた。 @盛岡市(高松の池)
議論することに慣れていない村は、 大きな声を出す者を無教養と見る。 粘り強く向き合うのは野暮と見る。 主張を持つのは不穏とみなされる。 意見をぶつけ合うのを野蛮と見る。 話が弾み活気づくのを混乱と見る。 そんなわけで、 ある朝、すべては、なんとなく決まっている。 批判されることに慣れない村では、 素直に服従する者は善良とされる。 見て見ぬふりが大人の証とされる。 図星を突くのは暴力とみなされる。 誤りを指摘するのは無粋とされる。 理詰めに追い込む者は鬼とされる。 そんなわけで、 ある夜、すべては、酒と金と色で丸く収まる。 相変わらずの顔が 相変わらずの歌で 村を寝かしつける。 「良い子は、黙って、ねんねしな。 首を横にふると、鬼が来る。 静かだ、いい子だ、ねんねしな」 (やがて、村は、永久に寝静まる) |
2009年1月16日(金)
高濃度の青空だった。道の雪をとかす陽射しだった。ただ、濁った水が飛沫となり、街に飛び散った。 @岩手山麓
(この道の途中で) 誰が誰を寄り切ろうと押し出そうと、 どうでもよい。 なにせ、今、新雪に轍を刻むことで夢中だ。 (この風の只中で) 誰が誰の記録を破って先頭に立とうと、 それが何だ。 なにせ、今、未知の領域に分け入ったのだ。 (この天地の間で) 誰が誰から認められて表彰されようと、 他人ごとだ。 なにせ、今、清々しく誇らしい光景なのだ。 誰が何勝したとか、 誰が頂に立ったとか、 誰が何者になったとか、 適当にテレビかラジオでやっていてくれ。 この見渡す限りの白さに入り込めるものは、 勝利でも、記録でも、名誉でもないのだ。 冷えて透き通る心が、 足跡を残すだけだ。 |