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イワテバイクライフ 2009年 5月前半
2009年5月15日(金)
空の蒼さが、どこか固い。陽射しは穏やかだが、風が少し冷えていた。本来の北国の五月だ。 @盛岡市
君の立つ位置は、 誰が決めてくれたんだい? その人物が立つ位置は、 誰が決めたんだい? で、そいつが立場を失ったら、 君は、どうなるんだい? 君が歩む道筋は、 誰が決めてくれたんだい? その人物が歩む道筋は、 誰が決めたんだい? で、そいつが道をはずれたら、 君は、どうなるんだい? 君の存在価値は 誰が決めてくれたんだい? その人物の存在価値は、 誰が決めたんだい? で、そいつが価値を失ったら、 君は、どうなるんだい? (ねえ、どうなるんだい?) |
2009年5月14日(木)
この時期の最高気温13度6分(盛岡)は薄ら寒い限り。時折の強風に水滴が混じり、黒雲と青空が入り乱れた。 @盛岡市
あなたが人々に認知されるとしたら、 それは、あなたの 美しい精神世界ではなく、 実に些細な失敗なのです。 あなたの才能や努力に反応しない群も、 あなたの単純な間違いには敏感です。 もし、あなたが、 あなたの世界を信じ、歳月をかけて育み、 花開かせようと願うのなら、 今日一日を正確に生き抜くことです。 馬鹿馬鹿しいほど当り前のことを 当たり前にやり抜くことです。 人々は、当り前のことに関しては、 誰もが、専門家であり、評論家であり、 陪審員なのですから。 鼻で笑おうと、欠伸しようと、 何でも構いませんから、 とにもかくにも、単純なミスをしないことです。 心の中のことは、それから、ゆっくりでよいのです。 |
2009年5月13日(水)
岩手全体に出された濃霧注意報。確かに晴天のもと、山並みが鮮明になったのは午後になってからだった。 @八幡平市(樹海ライン)
寡黙で、必要なことを言葉にせず、 大切なことさえ伝えられないまま、 生涯に一度のチャンスを 流し去ってしまう人々が 私は、愛しい。 才気走った者達の騒々しい議論に 耳を傾けるばかりで、口を挟まず、 明日の行方が決まる日も 採決に加わらない人々を 私は、認める。 何事もなかった様に静かに目覚め 新聞を黙読して、溜息さえつかず、 けして感想を述べ立てず、 粛々と身をけずる人々を 私は、信じる。 |
2009年5月12日(火)
けだるい白濁の空。雨が降りそうで降らず、むしろ少しづつ明るさを取り戻していった。 @岩手山麓
飼い殺しという手法が、 目論見通りの威力を持つのは、 その世界が尊敬され、憧憬であり、 人生を託すべき対象であることが条件だ。 さもないと、 おいしいところを食い逃げされるよ。 懲らしめるどころか 楽園を創られてしまうよ。 したたかな者は、 痛い痛いと泣きながら、夢を積上げているよ。 辛い辛いと俯きながら、友を増やしているよ。 放置され粗末にされて、自由の翼を広げるよ。 その牢獄をのぞいてごらん。 犬小屋をのぞいてごらん。 みんな楽しむことに多忙で、 からっぽだから。 |
2009年5月11日(月)
周囲を霧に包まれ、所により小雨に濡れた。有り難くも束の間のお湿り。 @岩手山麓
わたくしは、 今歩いている道を ずっと昔に歩き尽くした気がします。 振り返れば、この道の途上において、 公正とは、誰かのための方便であり、 目標とは、誰かのための思惑であり、 成果とは、誰かのための利益でした。 その道を辿るほどに、 自身の足跡が消えていく旅でした。 行き着いた先には、荒廃の風景が広がり、 ひどく落胆したものです。 わたくしは、生きる為に来た道を引き返し、 もう一度、同じ道を歩き出したのです。 見覚えのある風景や通行人、そして出来事。 曲がり角の先に潜む危険。 答えのわかっている旅を 粛々と続けているのです。 だから、 どんな悲しいことにも、涙は流れず、 どんな騒動にあっても、心は静かで、 どんなに不運だろうと、のんびりで、 見覚えのある道を歩いているのです。 道を支配する者の手の内を知り抜いて、 憂い無く、恐れることも無く、 二度目の道に繰り返される季節を楽しむのです。 (その限りにおいて、すべては新鮮です) |
2009年5月10日(日)
青森は曇って、どこか涼しく、かすかに水滴も感じたが、岩手の南では夏日だったと聞く。 @青森県大鰐町
星々が、それぞれに明滅を繰り返す様に、 僕たちも、それぞれに光と影を重ねている。 うまくいったと はしゃいではいられない。 他の誰かも、うまくいっているのだ。 (楽観してはいけない) しくじったと 落ち込んではいられない、 他の誰かも、しくじって苦しいのだ。 (落胆してはいけない) 誰が、どれだけ成功し輝いているか、 その結果を知るのは、 すべての挑戦が終わってからだ。 自分を信じ、静かに燃えて、 常に次のトライに希望を託す心こそ 最後の奇蹟をもたらすものだ。 不本意な自分を許せず諦めて止まることと、 不本意な自分を受け止め走り切ることの差は大きい。 わずか半歩の差でも、その差はあまりに大きい。 |
2009年5月9日(土)
最高気温25度4分(盛岡)に凄味は無いが、どろっと澱んだ真夏のエキスが肌にからんだ。 @岩手山麓
夢は現(うつつ)に染まり、 志は欲に犯され、 悲しいことに、人は変わる。 辛いことに 人は自らの変化に気付かない。 有頂天の時ほど気付かない。 だから、他人は音もなく離れていく。 ただ微笑み、息を殺して逃げていく。 利益に固執して 面倒を避け、要領を求め、真心を忘れ、 あざとい者になった時、思い知るのだ。 親友すら夕闇の彼方に去ったことを。 (その決別は、穏やかに訪れる) |
2009年5月8日(金)
花巻では29度9分など、内陸を中心に真夏並の熱気。各地で火災続発。 @岩手山麓
(春の健康診断で) 個人病院の昼下がり 窓からは夏日の匂い 柱時計の音を遮って 待合室の私を呼ぶ声。 カーテンの向こう側 どうぞ、と招く女医。 向き合って目が合い 歳月が逆流していく。 (お元気でしたか) 青年の私が追い求め 遂に届かなかった女。 私のカルテに見入る。 あの日のままの横顔。 一度死にかけたのね。 傷を治療しないまま 生きてしまったのね。 今でも痛むでしょう。 ねえ苦しいでしょう。 私はその胸の中で泣きじゃくるのだった。 |
2009年5月7日(木)
強烈な晴天。北国の5月上旬に25度前後の気温など、体感的には真夏日に近いものがある。 @岩手山麓
灼熱の陽光に焼かれながら走って、 したたる汗をなめたことはあるか。 そうさ、透明な海の味がするのさ。 もしも、砂糖水の様に甘かったら、 それはね、危うい人生の味なのさ。 |
2009年5月6日(水)
内陸を中心に、ほぼ真夏日の状態。車の運転に冷房は必需品。けれど、夜の風は天然の冷房。 @一関市(室根山)
どこを、 どう進めばよいか、 目はわかっている。 どこに行ってはいけないか。 どこで何をすべきか。 頭ではわかっている。 けれど、 失敗を怖れ、 減点を嫌い、 成功を熱望する心は、 不本意な足跡を残す。 だから今日も、 後悔の絶叫を 春の山に叩きつける。 |
2009年5月5日(火)
下界の熱風は、高原にまで押し寄せた。立夏どころか、もはや盛夏と言い切ろう。 @一戸町(奥中山高原)
高原は、 まだ桜の季節だというのに 夏の太陽に風がとける。 タイヤまでとけだして 立ち往生しそうだから、 アクセルを開け、 アスファルトロードを振り切る。 厳冬は人を凍り付かせ、 盛夏は人を粘り着かせ、 どう季節が流れようと、 イーハトーブは、 人の心に絡み付く。 |
2009年5月4日(月)
曇りから晴れへと空は移ろったはずだ。けれど、曖昧なベールが記憶に揺れるだけの初夏。 @岩手山麓
遥か彼方の異郷から ガソリンを燃やし続け、 睡魔と闘い気力を振り絞り、 夜を越えて、 ついに、この山麓に辿り着いた人々は、 テレビで見たことのある たった一本の桜の前に群がる。 この世で崇め奉られるものの多くは、 そんなものだ。 私は、観光客でいることが、 どうにも我慢ならなくて、 この山麓に生きることにした。 誰も通りがからない、 誰も立ち止まらない、 静寂の風景から風景へ、 小鳥となって飛び渡ることにしたのだ。 たった一枚の 手垢にまみれた景色で商売する者から離れ、 ひっそりと、この大地の眺めを耕すのだ。 |
2009年5月3日(日)
曇っていたのか、それとも濃厚な霞みだったのか、乾いた風に鶯の喉が冴え渡るばかりだった。 @滝沢村(トライアルパーク)
もう何年もそうだった。 五月の連休などに縁は無かった。 むしろ、休日を潰して働くことで、 自身の価値を確かめていた。 (哀れな話だ) ところが、 今年は人並みのカレンダーなのだ。 仲間と同じ場所に集い、 同じ空の下、同じ風の中、 年に一度の祭に参加し、 今まで以上の絆を結んだ。 (普通であることの素晴らしさよ) 世間と歩調を合わせて生きるのは、 実は、とても大切なことだ。 全体の呼吸に寄り添うことで、 私も大きな力を貰う。 そうでなければ、 今日という日は無かった。 |
2009年5月2日(土)
皮膚感覚では、ほぼ盛夏。でも、あまりに乾いて柔らかい風だから、木陰の居心地は特別だった。 @滝沢村(トライアルパーク)
いいよ、いいんだよ。 どれほど、わたしを罵倒しても。 この薫風の中ならね。 (溢れる鮮血さえ止まるから) いいよ、いいんだよ。 どれほど、昨日の罪を責めても。 この緑に包まれれば。 (希望が芽生えて来るから) いいよ、いいんだよ。 どれほど、行く手が辛くたって。 この光の中にあれば。 (枯れた夢さえ蘇生するから) わたしはね。 ここに立っていられれば無事なんだよ。 血にまみれることも、 罪に苦しむことも、 闇に染まることも、 ないんだよ。 嗚呼、五月の風が絹糸のように、 私の叫びを包み、封じ、 繭(まゆ)となって ほくほく温もるばかりだ。 |
2009年5月1日(金)
春霞の中で気温上昇。各地20度を大きく突破。所により夏日。初夏へ加速。 @八幡平アスピーテライン
ひと粒の真理をつかむために 何千何億という誤謬にまみれ 果てしない紆余曲折を重ねて 惨憺たる暮らしを続けるより 季節の移ろいを眺めていたい。 ひとかどの自分になるために 何千何億という筆を無駄にし とりとめのない妄想と戯れて 退屈な超大作を世に問うより 季節の伽藍を見上げていたい。 ひとしきり拍手されるために 何千何億という己を焼き払い 人形の如き笑顔をふりまいて 汚れた舞台の真中に立つより 季節の片隅で微笑んでいたい。 ひとつの時代を生きるために 何千何億という悪にまみれて 取り返しのつかない罪を犯し 歴史に深く鋭く名を残すより 季節の道で風になっていたい。 (叶うなら、春の質量にとけていたい) |