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イワテバイクライフ 2009年 5月後半
2009年5月31日(日)
空を行く雲の大河は、まれに小雨をもたらしただけだった。むしろ、所により濃厚な霧。 @一関市(室根山)
勝ったり負けたり うまくいったり、しくじったり 運が良かったり、悪かったり、 そんな一日を 克明に振り返ることも大切だけれど、 其処にいられたことや、 其処で夢中になれたことや、 其処で己を試せたことこそが、 何よりのリザルトだったことを 忘れちゃいけないよ。 (振り向いてごらんよ) 何と広大で莫大な初夏の中に 今日の君が生きていたことか、 忘れちゃいけないよ。 |
2009年5月30日(土)
幾筋も暗い雲が頭上を覆い流れた。雨こそ降らなかったが、気分は冷たく濡れた。 @盛岡市
記憶の中でサイレンが鳴っている。 北上高地の夜空を 火炎の帯がかすめたかと思うと 森をゆさぶる轟音が東へ走った。 僕は、そんな不意打ちを 幾度かくらっていたから、立ち止まらない。 自動小銃の重さを腰に受け止め走り続けた。 苔むした岩の群を越えながら、 焼き払われる歴史を思った。 腐りかけた倒木を越えながら、 失われていく故郷を思った。 僕のような者は、確かに大勢いて、 漆黒の森を東へ並走していた。 時折、誰かが発砲するから、 夜襲にも似た空気が流れたけれど、 それは、恐怖を振り切る 咳払いの様なものだということを 誰もが理解していた。 やがて、夏の風に海が匂った。 夜明けには、まだ時間があったが、 太平洋の彼方が異様に明るい。 鼻孔に「きな臭い予感」が突き刺さる。 戦闘機が、編隊を組んで山岳を越えていく。 何かを決める為に大きな舞台が回り出した。 そう思った瞬間、 暁は、火だるまになって僕らを照らした。 (そんな夢を見た) |
2009年5月29日(金)
低気圧の接近で夕べの予報では「曇り空」が確定されていたから、望外の晴天に違いない。 @岩手山麓
ほら、いつもの季節だよ。 ほら、人が流れていくよ。 助かるなあ。 少し待てば、 だめなものを風が運び去ってくれる。 (血を見なくても済むよ) 便利だなあ。 時が経てば、 腐ったものを雲が掃き去ってくれる。 (手を汚さなくて済むよ) 有難いなあ。 最後の最後に、 嫌われものを引き受ける場所がある。 (背負わされずに済むよ) 嬉しいなあ。 いつまでも、 こんな狂人を抱きしめる場所もある。 (無駄な旅をせずに済むよ) 此処に、ひとり、じっとしているとね、 いつもの季節の馬鹿馬鹿しさが、 ほら、総天然色で見渡せるよ。 |
2009年5月28日(木)
霧なのか雲なのか、湿って不透明な一日。夕刻、ぼんやりと山々が現れた。 @岩手山麓
これからも、あなたに、 お願いすることはあると思います。 いちおうね。 でも、ほかの誰かに 同じお願いをします。 きっと、あなたは、 忘れているから、 私は手を打つのです。 あなたが思い出した時には、 すべて事は済んでいます。 (こっそりと、ね) これからも、あなたに 相談することはあると思います。 いちおうね。 でも、ほかの誰かに 同じ相談をします。 きっと、あなたは、 聞く耳を持たないから、 私は手を打つのです。 あなたが気にし出す時には、 すべて解決しています。 (ひっそりと、ね) |
2009年5月27日(水)
「午後には曇って雷発生」の予報に照らし合わせてみれば、終日上出来の晴天。霞み加減ではあったが。 @岩手山麓
私が、 此処に追いやられれば、 悲嘆に暮れ、 自ら命を絶ってくれると、 あんた達は期待したんだろうなあ。 俺が、 まさか、こんな魂を持っていたとは、 想像もしなかったんだろうなあ。 己が、 信じる己を持つ実例を、 あんた達は、 見たこともなかったんだろうなあ。 政争に明け暮れ、 季節の風にすら心を向けなかった あんた達には、 予見できなかったんだろうなあ。 (この独立国を) |
2009年5月26日(火)
すっきり晴れた。陽射しは強く、照り返しも厳しかった。けれど、緑陰は乾いて涼しく、別世界だった。 @矢巾町
同じことを 幾度も幾度も繰り返していれば、 やがて出来るようになる。 相当なことが出来るようになる。 けれど、それを上達とは言わないらしい。 いつもの場所、 いつもの道筋、 いつもの課題という、 「その範囲」の成功に過ぎないからだ。 少し場所を変え、 少し道筋を変え、 少し課題を変えただけで、 途端に上手くいかなくなるとしたら、 なるほど、所詮、それだけのものだ。 新しい状況を前に、 精密に観察を施し、 自らの道筋を決め、 正確に辿るために、 必要な力と技術を 繰り出せて初めて、 山にひとり立てる。 (そういうものらしい) |
2009年5月25日(月)
脱色された晴天。陽射しは照り付けるほどではなく、風は乾いて、朝夕はひんやりした。 @岩手山麓
(頭の良い人物がいたものだ) いずれ、森の人口は限界に達し、 誰か一人、森を出なくてはならなかった。 その人選は、公平に行われるはずだから、 善良で有能な者も楽園を失う可能性があった。 遡って、ある年、 森に男が送り込まれていた。 その不遜と無能ぶりに 森には悪評の風が吹き荒れた。 さて、運命の日。 誰かが森を出なくてはならない日。 当然のように例の男が 森を追われた。 おかげで、森の住人達は、 再び、心安らかな日々を享受した。 それにしても、あの男は何者だったのだ。 ある日、突然現れ、瞬く間に追放され、 結局、人々の幸福を守った。 (頭の良い人物がいたものだ) あの男を森に束の間置いた、その知恵は、 まったく神の仕業というべきだ。 |
2009年5月24日(日)
薄日は射した。でも、それは、空一面を支配する雲が気紛れに許す青空からだった。 @岩手山麓
悪意に満ちた手紙は、 宛名を見ただけでわかる。 そんな闇は、 開封もせず、シュレッダー。 魂胆だらけの相談は、 声の調子を聞けばわかる。 そんな話は、 耳を貸さず、シュレッダー。 その場限りの計画は、 立案者の目の色でわかる。 そんな愚は、 検討もせず、シュレッダー。 乾いて鋭く歯切れよく、 迷い無き心のシュレッダー。 |
2009年5月23日(土)
朝方は小雨も降ったが、次第に天気は回復。それでも暗い雲が至るところに居座っていた。 @滝沢村(トライアルパーク)
箱庭の様な場所でも、 毎日踏み締めていると、 眺めが変わって来る。 急なものは、緩やかに、 険しいものは、穏やかに、 微笑みさえ浮かべ始める。 今まで見えなかった足場や 今まで思いつかなかった道筋が、 いくつも現れる。 やがて、行き先は、 山全体に伸びて、広がり、 足跡は網の目の様に張り巡らされていく。 そのように日々を駆け巡っていると、 心は、ついに翼を持つ。 恐ろしいほどの見晴らしを手に入れ、 いつか、禁断の道に挑む日が来る。 |
2009年5月22日(金)
終日小雨に濡れた。昨日の真夏並みの陽気から一転、梅雨寒のような一日。 @滝沢村(トライアルパーク)
どうせ雨に濡れるなら、 森の雫を全身に纏ってみたい。 どうせ泥をもらうなら、 滑落の加速度を噛み締めたい。 どうせ辿り着けぬなら、 意表を突く足跡など残したい。 そのように くたくたに 山にとけた この私には、 獣さえ道を譲ってくれる。 鳥さえ罠を教えてくれる。 花さえ心を開いてくれる。 闇さえ光を許してくれる。 |
2009年5月21日(木)
鮮明だったのは、盛岡で最高気温が28度2分など、真夏日に迫ったこと。あとは白濁の印象ばかり。 @盛岡市
関心の無い結果ほど、 隅々まで読み込んでおくことだ。 (不実を突かれる前にね) 面白くない結果ほど、 さっさと公にしてしまうことだ。 (腐って匂い出す前にね) 待ち続けた結果ほど、 じっくりと寝かせておくことだ。 (ここ一番の切り札にね) |
2009年5月20日(水)
最高気温25度6分(盛岡)。当たり前のように夏日が訪れる。でも、緑陰の風は、かすかにひんやり。 @イーハトーブ
友よ、 俺は、 此処で、 少し眠ることにしたよ。 駆け巡ってきた季節の夢を 見られそうな気がして、 此処で、 少し眠ろうと思うんだ。 友よ、 どうか、 俺をそっと捨てて 山をおりてくれないか。 俺のことは、 神隠しにあったとでも 説明しておいてくれないか。 |
2009年5月19日(火)
一関市で28度1分など、夏日を観測した地域も多数。救いは、乾いた緑陰の夕風だった。 @滝沢村(トライアルパーク)
自らの関心事を 何から何まで披露しない。 教養のひとつだな。 目に見えるもので、 すべてを知った気になる。 ひとつの無教養だな。 |
2009年5月18日(月)
盛岡は朝から晴れたが、風の強さは台風並みだった。西根では倒木が国道の流れを遮った。 @八幡平市
ここまで来れば、 もう逃げ切れたと思うだろ? ところがね、不思議なものだね。 振り切ったものの様子が見たくなって、 来た道を引き返したくなるらしい。 残酷な記憶ほど、 そんな気にさせるらしい。 |
2009年5月17日(日)
小雨降りしきる一日。最高気温15度では、命の芽吹きも縮んだ気がする。 @滝沢村(トライアルパーク)
復讐の炎はね、 そう簡単に燃え盛らせてはいけないよ。 その日は容易くおとずれないから、 静かに、死んだように静かに、 燃えていなくちゃいけないんだよ。 雨に消え入りそうな、 風に吹き消されそうな、 当人さえ忘れそうな、 そのくらいの炎でいいんだよ。 闇の中に、じっとしている蛍火のように 季節を越えたある日、 轟然と、火柱になって立つんだよ。 氷の中に、じっとしている人影のように 歳月を越えたある日、 さっと、悪魔の翼を広げるんだよ。 (その日のために天使のように生きるんだよ) ※本文は、画像と一切関係ありません。 |
2009年5月16日(土)
20度に届いた所は稀で、陽射しに温もりは無かった。夏山へ向かう山が所在無さそうだった。 @滝沢村
雨に洗われ やがて、季節の色まで褪せるのか。 風に削られ いずれ、一面の山まで消えるのか。 時に流され ついに、私の記憶まで遠のくのか。 それでも、なお、 ある日、ここにやって来た老人が、 鮮やかな緑を思い出すのか。 心は、木々のざわめきを聞くのか。 懐かしい山を思い出すのか。 心は、頂へ続く一本道を辿るのか。 砂塵舞い立つ公園のブランコで、 その老人は、記憶を揺らし遊ばせ ここに、かつて楽園があったと 語り出すのか。 ここで、かつて小鳥と戯れたと 歌い出すのか。 |