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イワテバイクライフ 2009年 6月後半


2009年6月30日(火)
時折、水滴がまじり、かすかに冷えた風。暑さ続きで消耗した身には救いだった。 @盛岡市


  (公になる事実なんて、燃え殻だ)
  おそらく、ものごとは、
  本人の知らないところで、
  見知らぬ誰かに決定され、
  想像以上に動き出しているはずだ。
  (そう考えるべきだ)

  嬉しい決定の知らせなら、いざ知らず、
  つらい決定の噂は、
  なかなか漏れ伝わって来ない。
  知った本人は、落胆し荒れるから。
  知らせたものまで陰鬱になるから。
  公表される寸前まで
  のらりくらり曖昧にされるのだ。

  一切が告げられる前の静けさは、
  実に、確定した不本意の足音なのだ。
  そうとも知らず、
  願望ばかり膨らませて知らせを待つ者は、
  結局、現実の針のひと突きで破裂する。

  絶望が匂う静寂の回廊に
  一人闊達な足音を立てる者こそ、覚悟のある者だ。
  すれ違う誰もが視線をそらす道を
  一人にこやかに歩き続けられる者こそ、優しい者だ。

  明日の運命が告げられる日まで、
  どのように生きるか。
  試されているのだ。
愛機:HONDA Monky


2009年6月29日(月)
梅雨のブラックホールの如く、真夏の青空が続く。北国の冷房フル稼働。 @小岩井農場



  人生という流れはね、
  ひたすらに平穏だと、
  よどんでくるんだよ。

  するとね、
  神様は、波乱の石を川に投げ込むのさ。
  大きな音がして
  波紋が広がって、
  何かが壊されて、
  何かが流されて、
  束の間、混乱の濁流に巻き込まれるのさ。

  けれどね、ある朝、人は、
  やさしいせせらぎの音で目をさますんだよ。
  川の流れはね、
  見たこともないほど、まっすぐで、澄んでいて、
  心地よい流速で日々を運ぶようになるんだよ。

愛機:KTM 690ENDURO R


2009年6月28日(日)
熟した真夏の大気。ほてり、けだるく、不透明。まさに熱帯の午後。 @スポーツランドSUGO(宮城県)



  群れることを嫌い、
  けれど群を離れる勇気が無いのなら、
  一度、はぐれてみるがいい。

  道を見失い、方角を失い、
  ひとり彷徨ってみるがいい。
  不安は高まり、
  恐怖に苛まれ、
  孤独に包まれ、
  ひとり絶望の淵を渡り歩くがいい。

  (その時、わかるのだ)

  お前が捨てようとしたものに
  どれほど救われていたことか。
  お前が見切りを付けたものが、
  どれほど優しいものだったか。
  やっと、わかるのだ。

  わかったところで、もう群には戻れない。
  その残酷を噛み締めて、
  自ら絆を結ぶがいい。
  群と揶揄されるものを形作り、
  群を包み守る者になれれば幸いだ。

愛機:HRC RTL260F


2009年6月27日(土)
空の青さは、うすぼんやりで、所によっては小雨に濡れたり、雷鳴が轟いたり。@盛岡市



  みたされぬ海に
  浮かび漂う日々ゆえに、
  大陸の幻が現れるのでございます。
  (あたかも楽園のごとく)

  ゆるされぬ道に
  ただ彷徨う日々ゆえに、
  旅の果てを夢見るのでございます。
  (嬉し涙が溢れるごとく)

  むくわれぬ空に
  光を求める日々ゆえに、
  祝砲の幻聴を聞くのでございます。
  (暗い雲を払うがごとく)


  失ったものの重さと深さを
  心に刻み続ける日々ゆえに、
  求めるものの輝きと尊さが、
  実に鮮やかに迫るのでございます。

愛機:HONDA ベンリィ50S


2009年6月26日(金)
宮古で33度8分。岩手全体炎熱に包まれた。焼かれた気分の一日。 @岩手山麓



  誰かが「テレビなんて見るやつは」と言うけれど、
  さあ、どうなのかなあ。
  世の中の有り様ぐらいは眺めたいしね。
  あんまり真剣に考えたことはないなあ。
  (構えるほどのことかなあ)

  誰かが「大きい馬車に乗るやつは」と罵るけれど、
  さあ、どうなのかなあ。
  大きくないと積めないものもあるしね。
  それぞれ事情ってものがあるからなあ。
  (強いるほどのことかなあ)

  誰かが「でかい声を出すやつは」と軽蔑するけれど、
  さあ、どうなのかなあ。
  小声でも伝わる言葉ならいいけどね。
  微笑んでばかりもいられないしなあ。
  (見下すほどのことかなあ)


  拘りをいくら投げつけても
  世間は、けろっとしているからなあ。
  拘りを受け止めてくれると
  それを無二の親友とか言うのかなあ。
  (なんだかなあ)

愛機:KTM 250EXC−F


2009年6月25日(木)
空の蒼さより、まぶしい光より、太陽の熱を近くに感じた。29度4分(盛岡)
 @岩手山麓



  この炎天下で頑張ったことは、
  涼やかな風が吹く別の日に延ばせなかったのかい?

  愚かな者に説き回ったことは、
  地上に正気の風が吹く日まで待てなかったのかい?

  砂塵を巻き上げ探したものは、
  いつか何気なく見つかるとは思わなかったのかい?


  あふれるほどの光の中では、
  眩しくて何も見えないから、
  夜が匂う夕風につつまれて、
  衰弱する光を見つめながら、
  道の果ての静寂に耳を傾け、
  今日一日の熱狂を思い返せ。

愛機:HONDA Ape100


2009年6月24日(水)
雲は熱い日光に焼かれ、その燃えがらが、透明な夕空を飾った。 @盛岡市(岩手山遠望) 



  ありのままの自分に飽きたら、
  心の中に宝物を探してごらん。
  深く深く掘って探してごらん。
  何か現れたら良く見てごらん。
  いかに退屈なものかわかるよ。
  日々の欠伸の訳を思い知るよ。
  そこに辿り着けただけで立派。
  自分の鉱脈や水脈を幻想して、
  芸術家を名乗るのは自由だが、
  自分以外のものまで掘り返し、
  迷惑などかけちゃいけないよ。

  ありのままの自分で良いなら、
  あれこれ探すことはないのさ。
  きっと豊かな鉱脈とか水脈が、
  日々の笑顔に現れているから。
  余計な言葉を重ねなくたって、
  それは誰かに確かに伝わるよ。
  何千頁も物語を綴らなくても、
  ありのままに心は伝わるのさ。

  ほら、
  この大地深く眠るものたちが、
  夕闇の色になってにじみ出す。

愛機:KTM 690ENDURO R


2009年6月23日(火)
曇は、みるみる払われ、空は光を取り戻し、夏がわき立った。 @盛岡市近郊



  (意地で続けているとね、わかるんだ)

  一日休むと、気持ちに穴が開く。
  一週間離れると、反応が遅れる。
  ひと月怠けると、動機は薄れる。
  それ以上になると、自分が他人になる。
  体を元に戻すには、倍の時間がかかる。
  心を取り返すには、数倍の意志が要る。
  その先を望むには、出直す覚悟が要る。


  (無心に続けているとね、わかるんだ)

  いつでも、どこでも、
  続けてきたことなど、すんなり止められる。
  未練なく、悔いもなく、ごく自然に、
  その日が来たことを受け入れられる。
  新しい呼吸のために、古い息を吐くように、
  積み上げたものなど、すっかり忘れられる。
  こだわりなく、新しい道を歩き出せる。

ライダー:ナカタさん マシーン:GASGAS


2009年6月22日(月)
陽射しという希望の欠片も無い梅雨空。湿って生暖かい空気に、小雨がまじったのは、夕暮れのことだった。 @岩手山麓



  許し難い出来事も、
  私が私を知らない私に引き合わせるための
  手順のひとつなんだよ。

  思い出してごらんよ。
  いくつものチャンスと方角を奪われることで、
  この楽園へ導かれたことを。

  振り返ってごらんよ。
  幾度となく襲う不条理が
  この安息の時へ続く石段になっていたことを。

  ひとつの壁に阻まれ、新しい扉は開き、
  ひとりの悪意に邪魔され、思わぬ道が開ける。
  そのように、至福の日々を迎えられたのだから、
  嘆き憤る必要は無いんだよ。

  思い通りにならないから、
  思った以上の私になれるんだよ。

  意志を持つことは尊いが、頑なではいけない。
  その心が素直に自然に歩んで行ける場所こそ、
  辿り着くべき場所なんだよ。
  その道程だけは、
  何ものにも奪われることはないんだよ。

愛機:KTM 250EXCーF


2009年6月21日(日)
夏至。盛岡の日の出4時7分。日の入り19時7分。梅雨空の中で、夏の日の息は下り坂に入った。 @岩手山麓


  ほお、それは大変ですな。
  なんとかしなくちゃいけませんが、
  お先に失礼します。

  ほお、それは困りますな。
  対策を考えなくちゃいけませんが、
  今日はこのへんで。

  ほお、それは難儀ですな。
  手を尽くさなくちゃいけませんが、
  後の事はよろしく。

  なんとかしなくても
  なんとかなっていくものに関わらない。 

  対策を立てなくても、
  自然に解決していくものに意見しない。

  手など出さなくても、
  それなりに落ち着くものを邪魔しない。

  私が頑張らなくても、一切は定めの通りだ。

  本当に大切なことは、安易に関わった挙句、
  ものごとをこじらせ、複雑にしないことだ。

  (命がけの覚悟があるのなら話は別だが)
愛機:HONDA Monkey


2009年6月20日(土)
薄日の記憶以外に、曇天の一日を救うものは無かった。ひんやり乾いた夕暮れは、まあ受け入れられた。 @岩手山麓


  誰が何を選ぶか。
  そのこと自体が、
  興味深いことだ。
  数あるものから、
  たったひとつを
  選び取る行為が、
  すでに見世物だ。
  選ぶ者の正体が
  晒されるわけだ。
  その時代感覚や、
  美意識までもが、
  有無を言わさず、
  照らし出される。
  じつに見ものだ。
  裏の事情などが
  透けて見えれば、
  これまた笑える。
  何が選ばれるか、
  それは二の次で、
  選ぶ者の値打が
  決定することに
  意味があるのだ。
  価値があるのだ。
愛機:HONDA Ape100


2009年6月19日(金)
青空と暗い雲の混濁。陽射しは曖昧だったが、盛岡では夏日(25度3分)になったらしい。 @盛岡市


  わたしは、ずいぶん長い間、
  ここにじっとしているのだが、
  (面白いものだね)
  やって来る者も去っていく者も、
  みな同じに見えて仕方がないよ。
  同じ視線、同じ思考、同じ口調、
  誰が誰だったか区別できないほどだよ。

  ここに来る者は誰もが
  次の旅のことで頭が一杯だから、
  語り明かすことも飲み明かすこともなく、
  日々過不足無く挨拶を交わすうち、
  旅の順番が巡って来て、
  何事もなかったように消えていく。

  だから、わたしが彼らに伝えることは、
  幾つかの山と川の名前だけさ。
  春夏秋冬を見渡せる丘のことや、
  竜神のように流れる雲のことや、
  何億という妖精が舞い降りる夜のことなど、
  けして明かさぬまま、見送るのさ。

  嗚呼、繰り返される歓迎と送別の儀礼。
  とり残される孤独の風音を聞きながら、
  わたしは、ここで眺めている。
  誉を求め、傷を怖れ、何ものにも関わらず、
  ただひたすらに移ろう群の心を眺めている。
愛機:KTM 250EXCーF


2009年6月18日(木)
暗い雲に覆われたが、まれに降る小雨で済んだ。かすかに冷えた夕暮れ。 @岩手山麓


  (ちょっと尋ねるが)
  濡れた夕闇を纏って、そいつは現れた。

  寂しい此の山の中で、
  あんたの他に、賑やかに勲章ぶらさげて
  主張する者はいるのかい?
  いないでしょ。ね、そうでしょ。
  一番正しいと思い込んでいるわけさ。

  辺鄙な此の山の中で、
  あんたの他に、きらびやかな王冠のせて
  闊歩する者はいるのかい?
  いないでしょ。ね、そうでしょ。
  一番美しいと信じ込んでいるわけさ。

  ウサギやネズミにチヤホヤされて、
  ライオンみたいに肩をいからせて、
  俺を無視するやつは許さないとか、
  俺に話を通さないと認めないとか、
  生意気なやつは追放してやるとか、
  まあ、そうなっちゃったわけだな。

  あんたの価値は、
  食うか食われるかの中で決まるはずなのにね。
  一度、張り子の山の頂から下りることですよ。

  老いた狸は、そう語って笑うと、
  ひとつ屁をして、藪の中に消えた。
愛機:HONDA Ape100


2009年6月17日(水)
頭上はどんより、周囲は霧に包まれ朝を迎えた。日中は青空の断片もあったが、所により小雨に濡れた。 @雫石町


  数に勝れば、中心になる。
  声を出せば、圧力になる。
  群が動けば、勢力になる。
  闇が立てば、独裁になる。
  光を奪えば、恐怖になる。
  嘘を売れば、詐欺になる。
  夢で釣れば、催眠になる。
  誉に拘れば、貪欲になる。
  掟に従えば、残酷になる。
  心を売れば、奴隷になる。
  裏を知れば、黒幕になる。
  血を流せば、英雄になる。

  どうすれば、自分になる?

  心穏やかな日々を求めて、
  清々しい明日を希望して、
  みたされた己を想像して、
  人は、何故、
  どす黒い波に乗ろうとするのだ?
  不透明な仕組みに迷い込むのだ?
  実に単純な幻にすがりつくのだ?
愛機:HONDA ベンリィ50S


2009年6月16日(火)
透明度の低い晴天。けだるく、ほてった風。夕暮れになって不穏な黒雲。 @盛岡市近郊


  人間嫌いのあなたは、
  その店のカウンターに限って、
  見知らぬ酔漢の相手をするのね。
  (そうさ、生涯のとまり木だから)


  花知らずのあなたは、
  その山を駆け巡る時に限って、
  風に踊る草花に足を止めるのね。
  (そうさ、骨を埋める場所だから)


  不信の塊のあなたは、
  その岩に飛び掛る時に限って、
  なにも疑わず加速していくのね。
  (そうさ、その先に光があるから)




  ※画像と本文は、一切関係ありません。
 
ライダー:米澤さん マシーン:ベータ


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