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イワテバイクライフ 2009年 7月後半


2009年7月31日(金)
山間部にはひんやり霧がたちこめていたが、人里には夏空が広がった。@北上高地


  「今朝の雲を掴み取ったあなたに、
  それ以上の汗が待っているとは思えないわ」
  君は、そう笑って僕を見送った。

  実はね、
  その雲を胸の内にしまって、
  机に向かい続けるのは、少々大変なんだ。
  刻々移ろい奔放に流れたがる心を抑え、
  地に足を着けて一日働くわけだからね。
  それはそれで汗がにじむのさ。
  誰にも気取られない痛快な汗がね。

愛機:KTM 250EXC−F

2009年7月30日(木)
夕べの雨に街は濡れたままだったが、昼過ぎに天気は急速に回復。爽やかな夕風に気分まで乾いた。 @盛岡市



  薄暗い空ばかり見上げていると、
  たまにのぞく青空は、
  とてつもない宝石だ。

  陰鬱な人間達に囲まれていると、
  ありふれた冗談でも、
  実に有り難く和める。

  軽薄な波を受けて揺れていると、
  三文小説の類にさえ、
  「文学」が匂い立つ。

  裏切りの仕組など知り尽くすと、
  何事も起きない夜が、
  ひどく退屈に思える。
愛機:モンテッサ コタ4RT(ツーリングトライアル仕様)

2009年7月29日(水)
果てしない梅雨空。朝から小雨断続。山は霧にかすんだ。 @盛岡市



  その穏やかさを求めて、
  ここに暮らすためには、
  無理に無理を重ねなくちゃいけなかったんだね。
  (それで、やっと居場所を許されるんだよ)

  その四季に惚れ込んで、
  ここに生きるためには、
  見たくないものまで見なくちゃならないんだね。
  (それで、やっと仲間にしてもらえるんだよ)

  その透明な風に憧れて、
  ここで走り続けるには、
  暗い霧に包まれ彷徨わなくちゃならないんだね。
  (それで、やっと道の先が見えてくるんだよ)


  愛していればこそ、今日もこうしていられる。
  無理を情熱と言い換えて、暮している。
  落胆を現実と言い換えて、生きている。
  絶望を試練と言い換えて、走っている。

愛機:HONDA ベンリィ50S

2009年7月28日(火)
青空になり切れず、波乱の夏雲がわき、束の間のスコールに濡れた。 @岩手山麓


  どんなに、まっとうに生きていても、
  人は、誰かの「不満の種」になる。
  (避けようの無い事実だ)
  それは、幾層にも重なり、
  やがて、火薬庫になる。

  ならば、肝心なことは、
  その不穏な地層を刺激しないことだ。
  火をつけないことだ。
  反感に大義を与えないことだ。
  犬にもわかる怒りの気分を与えないことだ。
  売り言葉に買い言葉など、もってのほかだ。

  だから、日頃から、
  抑えつけないことだ。
  押し付けないことだ。
  強く出てスイッチを入れてしまわないことだ。
  煮えたぎっているものを誘導しないことだ。
  爆発したがっているものに
  暴発の口実を与えないことだ。
  慎重に、丁寧に、言葉を選び、
  そそう無く、やりすごすことだ。

  無事に逃げ切ったら、
  旅の果ての宿で、
  大噴火の音でも聞いて、ビールを飲もう。
  夜空を焼くマグマを眺めて、乾杯しよう。

  (そういう気分さえ、反感の種になるのだが)

愛機:HONDA Monkey


2009年7月27日(月)
途切れることのない梅雨の空。午前中は薄日も射したが、夕刻、雷鳴とともにスコール。 @滝沢村


  好きな山へ向かう途中、
  猛烈な雷雨に襲われた。

  そりゃ勿論ずぶ濡れさ。
  でもね、そのおかげで、
  いい雨宿りができたよ。

  溢れ流れる雨水にはね、
  山の命がとけているよ。

  甘く匂うのは何の花?
  青臭いのは何の吐息?
  生臭いのは何の死骸?

  私とバイクも洗われて、
  大地深く吸われていく。
愛機:HONDA Ape100


2009年7月26日(日)
夕刻からは雷まじりの雨が予想されていたが、何も起きなかっただけで充分の梅雨空。 @秋田県たざわ湖スキー場


  今日一日、
  他人様に
  幾度助けられた?
  幾度励まされた?
  幾度教えられた?

  絶対絶命のお前が、
  幾度、蘇った?立ち直った?
  幾度、感謝した?

  今日というお前の一日は、
  結局、他人様が運んでくれた一日だ。
  神の如き温情に支えられた一日だ。

  それでもなお、
  お前という猜疑心は、
  お前という傲慢は、
  他人様に不平不満を投げつけるのか。

  (もう、二度と言わないぞ)

  全世界と和解せよ。即刻。



  
※ 画像と本文は一切関係ありません。
  
2009東北トライアル選手権シリーズ・第5戦秋田大会


2009年7月25日(土)
まれに濁った陽が射した。何処の国から流れて来たのか、べたべたに湿って不快な大気。 @滝沢村


  沈みゆくものに
  愛想笑いを送り
  最終の船に乗る。
  (これにて失礼)
  やがて霧の彼方に断末魔の声を聞く。

  己を知らぬ者に
  相槌など打って
  終列車に飛乗る。
  (ではお達者で)
  やがて闇の向うに破綻の炎を眺める。

  理想だけの者に
  ただ平伏しつつ
  艫綱を断ち切る。
  (いざ、さらば)
  やがて月夜の海原に発狂の影を見る。


  この夏が終わる頃、
  おぞましい熱情は、
  遥か記憶の彼方だ。
愛機:HONDA ベンリィ50S


2009年7月24日(金)
上等な梅雨空だったが、高校野球のひと試合((決勝)が終わるまで雨を堪えてくれた。決着の後は小雨断続。 @盛岡市(惣門通り)


  御輿の担ぎ手から遠ざけられて、
  大人しく沿道で見物する馬鹿はいない。
  (太鼓の音さえ聞きたくはない)
  未練なく立ち去り、
  いつもの里へ帰るだけさ。

  走ることをやめ、佇むだけで、
  支えてあげたい眺めがある。
  担いであげたい人々がいる。

  そのように穏やかな時を過していると、
  祭気分に我を忘れた輩が追いかけてくる。
  「御輿は担がせない。けれど祭には参加せよ」
  浮世離れした声で、
  「熱意だ、心意気だ」と騒がしい。

  (なあ、あんちゃん、
いいようにおやり

  俺の提灯は明るすぎる。
  祭の裏表を照らしちまう。
  俺の喉は並みじゃない。
  祭の理由をばらしちまう。

  この気分がわからねえ若衆宿なんざ、
  御輿と一緒に焼き払っちまいな




  ※画像と本文は一切関係ありません。
愛機:HONDA Monkey


2009年7月23日(木)
真夏日寸前(盛岡)。気温より何より、猛烈な湿度。この北国の大気の変質は、数年暮らしただけでは気付かない。 @滝沢村(トライアルパーク)


  一生懸命やる。
  切れない包丁で、大汗かいて
  めちゃくちゃにする。
  (無駄な努力)
  それを未熟という。

  要領よくやる。
  良い材料を集め、てきぱきと
  売り物にしてみせる。
  (経験の蓄積)
  それを熟練という。

  自然体でやる。
  あるものだけで、知らぬ間に、
  昨日を越えてみせる。
  (道楽の境地)
  それを達人という。


  三者が共存できる場所こそ栄えるのだが、
  未熟者に限ってでかい声を出す。
  「もっと熱意を示せ。汗をかけ」と。
愛機:HRC RTL260F


2009年7月22日(水)
梅雨空に変化なし。雨が降らないだけのこと。「日食」がどうであれ、終日ひんやり。 @滝沢村(トライアルパーク)


  戦いの先頭に立ちながら、
  楽隠居の算段をしていないか?

  怒りに拳を震わせながら、
  和解の時機を決めていないか?

  復讐の道筋を固めながら、
  撤退の理由を探っていないか?

  悲壮感など漂わせながら、
  今夜の宴を準備していないか?

  餌を争って剥き出す牙は、
  腹ごなしの戯れではないのか?


  満たされたまま
  闇をまとう者よ。
  (この大嘘つきめ)
愛機:HRC RTL260F


2009年7月21日(火)
昼前後に雨が降ったが、本降りには至らなかった。ひんやりと梅雨寒(つゆざむ)。 @岩手山麓


  そういえば、
  そうだなあ。

  イライラしなくなったなあ。
  もうどうでもいいのかなあ。

  闇雲に叱らなくなったなあ。
  斬り捨てちゃったのかなあ。

  言い争うこともしないなあ。
  結論が見えてきたのかなあ。

  やたらに褒めたりするなあ。
  批評以前の問題だからなあ。

  仲裁するようになったなあ。
  立ち位置に執着しないなあ。

  (いや、そうじゃない)

  あれこれを、さっさと片付けて、
  心穏やかな時間や
  心ときめく場所へ
  一刻も早く飛んで行きたいだけさ。
愛機:HONDA Ape100


2009年7月20日(月)
昨日の大雨に洗われた空だからこそ、澄み切った青空。雲は秋雲から夏雲に変化した。 @盛岡市


  (ゲームセットが待ち遠しかった)

  鋭いスライダーに
  コーナリングのブレーキを思っていた。

  走者一掃の長打に
  急勾配に挑むエンジン音を聞いていた。

  ファウルの行方に
  流れ出すタイヤの感触をかさねていた。

  外野の空の夏雲に
  紆余曲折の旅の日々を思い出していた。


  試合終了のサイレンの中で、
  心はキックバーを踏み抜いていた。
愛機:HONDA Ape100


2009年7月19日(日)
早朝の大雨が地を叩いた。北上川は濁流となり、高校野球の準々決勝も流された。 @滝沢村


  この地に暮らすことが
  空気のようになると、
  ことさらに、
  その美しさを歌い上げなくなる。
  貪る様に思い出を集めなくなる。
  日々の意義を求めはしなくなる。
  ここまでの道程を語らなくなる。


  言葉にするほど
  干からびていく
  わたしの物語は、
  今日の雨を浴び、
  泥の水となって
  今朝の空を映す。


  水鏡の中に生きる覚悟を試すように
  風が吹く。光が舞う。
愛機:HONDA ベンリィ50S


2009年7月18日(土)
昼過ぎになって、とうとう雨になった。でも高校野球の4回戦を止めるほどの雨ではなかった。 @盛岡市(映画館通り)


  絵の具じゃ到底出せない色が
  あるよね。
  猶予に猶予を重ねて生き延びてきたものの
  歳月の色彩って、あるよね。


  理屈じゃ説明出来ない空気が
  あるよね。
  そこに在ることの意味すら超越したものの
  頑なな空気って、あるよね。


  設計図ではあらわせない形が
  あるよね。
  移ろうものに合わせ自らも移ろったものの
  行着いた姿って、あるよね。


  善悪だけで斬れない人の心が
  あるよね。
  浮いては沈む人間の切なさを知ったものの
  静かな横顔って、あるよね。




  ※画像と本文は一切関係ありません。
愛機:HONDA Monkey


2009年7月17日(金)
濁って不快な真夏日(盛岡)。北東北の爽やかさが無いまま、雷注意報。そして夜更けの降雨。 @滝沢村(トライアルパーク)


  もはや
  出口無く、
  友は無く、、
  忌まわしい誤解に包囲されたらね、
  しばらくは実力でしのぐんだよ。
  圧倒的な技を繰り出すんだよ。
  言いがかりを封殺するんだよ。

  そうして時を稼いで、
  思いもかけない出口を開けた朝にね、
  大きな波を起こせばいいんだよ。
  ひっくり返してやればいいんだよ。

  (でもね、結末へ急いじゃいけない)

  何十年という屈辱や、
  すくい切れない涙を、
  黙殺する悪魔になり、
  すべてを終わらせ
  すべてを一新する
  その歓喜のために、
  今日の汗を流すんだよ。
愛機:HRC RTL260F


2009年7月16日(木)
空は灰色。風にまじる水滴。遠慮がちな青空や陽射しはあったが、所詮は梅雨空の気紛れ。幾分の涼しさが救い。 @岩手山麓


  八方美人?
  八方塞がりより、よかろう。
  外に向かう気力があるだけ救われる。
  意固地がまねく孤立無援より
  ずっといい。

  独断的?
  優柔不断よりは、よかろう。
  時間切れで御破算になるよりマシだ。
  均衡を気にして破綻するより
  ずっといい。

  偏執的?
  投げやりよりは、よかろう。
  破れかぶれになるより遙かに正気だ。
  誰かに何かを丸投げするより
  ずっといい。


  あんたの歩みを少しでも遅らせたくて
  有象無象がもっともらしく呟くものさ。
愛機:HONDA ベンリィ50S


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