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イワテバイクライフ 2009年 7月後半
「今朝の雲を掴み取ったあなたに、 それ以上の汗が待っているとは思えないわ」 君は、そう笑って僕を見送った。 実はね、 その雲を胸の内にしまって、 机に向かい続けるのは、少々大変なんだ。 刻々移ろい奔放に流れたがる心を抑え、 地に足を着けて一日働くわけだからね。 それはそれで汗がにじむのさ。 誰にも気取られない痛快な汗がね。 |
2009年7月30日(木)
夕べの雨に街は濡れたままだったが、昼過ぎに天気は急速に回復。爽やかな夕風に気分まで乾いた。 @盛岡市
薄暗い空ばかり見上げていると、 たまにのぞく青空は、 とてつもない宝石だ。 陰鬱な人間達に囲まれていると、 ありふれた冗談でも、 実に有り難く和める。 軽薄な波を受けて揺れていると、 三文小説の類にさえ、 「文学」が匂い立つ。 裏切りの仕組など知り尽くすと、 何事も起きない夜が、 ひどく退屈に思える。 |
2009年7月29日(水)
果てしない梅雨空。朝から小雨断続。山は霧にかすんだ。 @盛岡市
その穏やかさを求めて、 ここに暮らすためには、 無理に無理を重ねなくちゃいけなかったんだね。 (それで、やっと居場所を許されるんだよ) その四季に惚れ込んで、 ここに生きるためには、 見たくないものまで見なくちゃならないんだね。 (それで、やっと仲間にしてもらえるんだよ) その透明な風に憧れて、 ここで走り続けるには、 暗い霧に包まれ彷徨わなくちゃならないんだね。 (それで、やっと道の先が見えてくるんだよ) 愛していればこそ、今日もこうしていられる。 無理を情熱と言い換えて、暮している。 落胆を現実と言い換えて、生きている。 絶望を試練と言い換えて、走っている。 |
2009年7月28日(火)
青空になり切れず、波乱の夏雲がわき、束の間のスコールに濡れた。 @岩手山麓
どんなに、まっとうに生きていても、 人は、誰かの「不満の種」になる。 (避けようの無い事実だ) それは、幾層にも重なり、 やがて、火薬庫になる。 ならば、肝心なことは、 その不穏な地層を刺激しないことだ。 火をつけないことだ。 反感に大義を与えないことだ。 犬にもわかる怒りの気分を与えないことだ。 売り言葉に買い言葉など、もってのほかだ。 だから、日頃から、 抑えつけないことだ。 押し付けないことだ。 強く出てスイッチを入れてしまわないことだ。 煮えたぎっているものを誘導しないことだ。 爆発したがっているものに 暴発の口実を与えないことだ。 慎重に、丁寧に、言葉を選び、 そそう無く、やりすごすことだ。 無事に逃げ切ったら、 旅の果ての宿で、 大噴火の音でも聞いて、ビールを飲もう。 夜空を焼くマグマを眺めて、乾杯しよう。 (そういう気分さえ、反感の種になるのだが) |
2009年7月27日(月)
途切れることのない梅雨の空。午前中は薄日も射したが、夕刻、雷鳴とともにスコール。 @滝沢村
好きな山へ向かう途中、 猛烈な雷雨に襲われた。 そりゃ勿論ずぶ濡れさ。 でもね、そのおかげで、 いい雨宿りができたよ。 溢れ流れる雨水にはね、 山の命がとけているよ。 甘く匂うのは何の花? 青臭いのは何の吐息? 生臭いのは何の死骸? 私とバイクも洗われて、 大地深く吸われていく。 |
2009年7月26日(日)
夕刻からは雷まじりの雨が予想されていたが、何も起きなかっただけで充分の梅雨空。 @秋田県たざわ湖スキー場
今日一日、 他人様に 幾度助けられた? 幾度励まされた? 幾度教えられた? 絶対絶命のお前が、 幾度、蘇った?立ち直った? 幾度、感謝した? 今日というお前の一日は、 結局、他人様が運んでくれた一日だ。 神の如き温情に支えられた一日だ。 それでもなお、 お前という猜疑心は、 お前という傲慢は、 他人様に不平不満を投げつけるのか。 (もう、二度と言わないぞ) 全世界と和解せよ。即刻。 ※ 画像と本文は一切関係ありません。 |
2009年7月25日(土)
まれに濁った陽が射した。何処の国から流れて来たのか、べたべたに湿って不快な大気。 @滝沢村
沈みゆくものに 愛想笑いを送り 最終の船に乗る。 (これにて失礼) やがて霧の彼方に断末魔の声を聞く。 己を知らぬ者に 相槌など打って 終列車に飛乗る。 (ではお達者で) やがて闇の向うに破綻の炎を眺める。 理想だけの者に ただ平伏しつつ 艫綱を断ち切る。 (いざ、さらば) やがて月夜の海原に発狂の影を見る。 この夏が終わる頃、 おぞましい熱情は、 遥か記憶の彼方だ。 |
2009年7月24日(金)
上等な梅雨空だったが、高校野球のひと試合((決勝)が終わるまで雨を堪えてくれた。決着の後は小雨断続。 @盛岡市(惣門通り)
御輿の担ぎ手から遠ざけられて、 大人しく沿道で見物する馬鹿はいない。 (太鼓の音さえ聞きたくはない) 未練なく立ち去り、 いつもの里へ帰るだけさ。 走ることをやめ、佇むだけで、 支えてあげたい眺めがある。 担いであげたい人々がいる。 そのように穏やかな時を過していると、 祭気分に我を忘れた輩が追いかけてくる。 「御輿は担がせない。けれど祭には参加せよ」 浮世離れした声で、 「熱意だ、心意気だ」と騒がしい。 (なあ、あんちゃん、いいようにおやり) 俺の提灯は明るすぎる。 祭の裏表を照らしちまう。 俺の喉は並みじゃない。 祭の理由をばらしちまう。 この気分がわからねえ若衆宿なんざ、 御輿と一緒に焼き払っちまいな ※画像と本文は一切関係ありません。 |
2009年7月23日(木)
真夏日寸前(盛岡)。気温より何より、猛烈な湿度。この北国の大気の変質は、数年暮らしただけでは気付かない。 @滝沢村(トライアルパーク)
一生懸命やる。 切れない包丁で、大汗かいて めちゃくちゃにする。 (無駄な努力) それを未熟という。 要領よくやる。 良い材料を集め、てきぱきと 売り物にしてみせる。 (経験の蓄積) それを熟練という。 自然体でやる。 あるものだけで、知らぬ間に、 昨日を越えてみせる。 (道楽の境地) それを達人という。 三者が共存できる場所こそ栄えるのだが、 未熟者に限ってでかい声を出す。 「もっと熱意を示せ。汗をかけ」と。 |
2009年7月22日(水)
梅雨空に変化なし。雨が降らないだけのこと。「日食」がどうであれ、終日ひんやり。 @滝沢村(トライアルパーク)
戦いの先頭に立ちながら、 楽隠居の算段をしていないか? 怒りに拳を震わせながら、 和解の時機を決めていないか? 復讐の道筋を固めながら、 撤退の理由を探っていないか? 悲壮感など漂わせながら、 今夜の宴を準備していないか? 餌を争って剥き出す牙は、 腹ごなしの戯れではないのか? 満たされたまま 闇をまとう者よ。 (この大嘘つきめ) |
2009年7月21日(火)
昼前後に雨が降ったが、本降りには至らなかった。ひんやりと梅雨寒(つゆざむ)。 @岩手山麓
そういえば、 そうだなあ。 イライラしなくなったなあ。 もうどうでもいいのかなあ。 闇雲に叱らなくなったなあ。 斬り捨てちゃったのかなあ。 言い争うこともしないなあ。 結論が見えてきたのかなあ。 やたらに褒めたりするなあ。 批評以前の問題だからなあ。 仲裁するようになったなあ。 立ち位置に執着しないなあ。 (いや、そうじゃない) あれこれを、さっさと片付けて、 心穏やかな時間や 心ときめく場所へ 一刻も早く飛んで行きたいだけさ。 |
2009年7月20日(月)
昨日の大雨に洗われた空だからこそ、澄み切った青空。雲は秋雲から夏雲に変化した。 @盛岡市
(ゲームセットが待ち遠しかった) 鋭いスライダーに コーナリングのブレーキを思っていた。 走者一掃の長打に 急勾配に挑むエンジン音を聞いていた。 ファウルの行方に 流れ出すタイヤの感触をかさねていた。 外野の空の夏雲に 紆余曲折の旅の日々を思い出していた。 試合終了のサイレンの中で、 心はキックバーを踏み抜いていた。 |
2009年7月19日(日)
早朝の大雨が地を叩いた。北上川は濁流となり、高校野球の準々決勝も流された。 @滝沢村
この地に暮らすことが 空気のようになると、 ことさらに、 その美しさを歌い上げなくなる。 貪る様に思い出を集めなくなる。 日々の意義を求めはしなくなる。 ここまでの道程を語らなくなる。 言葉にするほど 干からびていく わたしの物語は、 今日の雨を浴び、 泥の水となって 今朝の空を映す。 水鏡の中に生きる覚悟を試すように 風が吹く。光が舞う。 |
2009年7月18日(土)
昼過ぎになって、とうとう雨になった。でも高校野球の4回戦を止めるほどの雨ではなかった。 @盛岡市(映画館通り)
絵の具じゃ到底出せない色が あるよね。 猶予に猶予を重ねて生き延びてきたものの 歳月の色彩って、あるよね。 理屈じゃ説明出来ない空気が あるよね。 そこに在ることの意味すら超越したものの 頑なな空気って、あるよね。 設計図ではあらわせない形が あるよね。 移ろうものに合わせ自らも移ろったものの 行着いた姿って、あるよね。 善悪だけで斬れない人の心が あるよね。 浮いては沈む人間の切なさを知ったものの 静かな横顔って、あるよね。 ※画像と本文は一切関係ありません。 |
2009年7月17日(金)
濁って不快な真夏日(盛岡)。北東北の爽やかさが無いまま、雷注意報。そして夜更けの降雨。 @滝沢村(トライアルパーク)
もはや 出口無く、 友は無く、、 忌まわしい誤解に包囲されたらね、 しばらくは実力でしのぐんだよ。 圧倒的な技を繰り出すんだよ。 言いがかりを封殺するんだよ。 そうして時を稼いで、 思いもかけない出口を開けた朝にね、 大きな波を起こせばいいんだよ。 ひっくり返してやればいいんだよ。 (でもね、結末へ急いじゃいけない) 何十年という屈辱や、 すくい切れない涙を、 黙殺する悪魔になり、 すべてを終わらせ すべてを一新する その歓喜のために、 今日の汗を流すんだよ。 |
2009年7月16日(木)
空は灰色。風にまじる水滴。遠慮がちな青空や陽射しはあったが、所詮は梅雨空の気紛れ。幾分の涼しさが救い。 @岩手山麓
八方美人? 八方塞がりより、よかろう。 外に向かう気力があるだけ救われる。 意固地がまねく孤立無援より ずっといい。 独断的? 優柔不断よりは、よかろう。 時間切れで御破算になるよりマシだ。 均衡を気にして破綻するより ずっといい。 偏執的? 投げやりよりは、よかろう。 破れかぶれになるより遙かに正気だ。 誰かに何かを丸投げするより ずっといい。 あんたの歩みを少しでも遅らせたくて 有象無象がもっともらしく呟くものさ。 |