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イワテバイクライフ 2009年 8月前半


2009年8月15日(土)
山の上には涼やかな風が吹き渡り秋雲が舞った。下界の夏も脱力気味。 @室根山(一関市)


  ひとつのことに夢中になれる。
  (いいことだ)
  ついに夢で終わるものでも、
  そのラストシーンを見届けた者は
  再び夢中になれる。

  ひとつの道を深く掘り下げる。
  (いいことだ)
  ついに幻で終わるものでも、
  地下深く眠る鉱脈を見届けた者は、
  再び探求を始める。

  ひとつの技を何年も磨き込む。
  (いいことだ)
  ついに未完で終わろうとも、
  日々進化するものを見届けた者は、
  再び努力を始める。


  限界に踏み込んだ者ほど、
  (まだ足りない。まだ出来る)と
  思えるのかもしれない。
トライアル大会「盆トラ」にて(ライダーは米澤さん)

2009年8月14日(金)
陽射しや雲は真夏のそれだったが、空の蒼さは、もはや秋の絵の具だった。 @北上高地


  無傷で迎えた大型連休は、
  さて、どんな気分だい?
  ここまで無難に運んだ人生が勿体なくて、
  冒険なんかできないかい?
  山で転んだり、海で溺れたりするのが怖くて、
  ひたすら家にとじこもっているのかい?
  結局、危機管理で日が暮れるのかい?
  息を殺して暮れるのかい?


  名誉へつらなる大渋滞は、
  さて、どんな気分だい?
  ここまで勝ち進んだ人生が誇らしくて、
  Uターンなんかできないかい?
  小さなミスや勘違いで道を外れるのが怖くて、
  行列が流れ出すのを待っているのかい?
  結局、現状報告で旅は終わるのかい?
  欠伸しながら終わるのかい?


 (で、結局、誰のための夏休みだい?)
KTM690ENDURO R

2009年8月13日(木)
朝から小雨断続。少々ひんやり、薄暗い一日。気分的には、お盆の梅雨「梅雨盆」みたいな・・・。 @盛岡市


  雨の気持ちはね、
  窓から眺めているだけじゃ、
  わからないよ。

  向い風にまじる雨を
  胸板に受け止めて走っているとね、
  増水した川の土臭さや、
  柳の葉の甘い揺らぎや、
  墓地に漂う紫の香りが、
  夏の大気の予熱にとけて
  体を濡らし、心に滲みて、
  今日という日の記憶になるんだよ。

  乾いたタオルで拭い切れない八月の雨が、
  記憶の中に降りしきって、
  秋を濡らし、冬を洗い、春を潤すんだよ。
HONDA Monkey

2009年8月12日(水)
真夏の太陽に焼かれながら長旅から戻ってみれば、岩手には、かすかに秋の雲が浮いていた。 @岩手山麓


  いったいどれだけ走ったことか。
  雄大にうねる大河や、
  天空にそびえる山岳を見渡す異郷の地で
  墓参りを済ませた。

  長旅に疲れ果て、
  私は、村はずれの宿に転がり込んだ。

  真夜中、月明かりにくすぐられて目が覚めた。
  窓の外に何かいる。どう猛なうなり声だ。
  寝床で目を見開き身構えていると、
  隣で誰かが寝返りを打つ。
  見知らぬ女だ。大女だ。
  闇の中に青い瞳が笑っている。
  (ナツカシイ夜ダワ。オボエテイル?)
  女の長い指が私の額に触れた。
  その瞬間、記憶が数千年逆流した。
  故郷を捨てたあの日。
  夜が明ける前に家を出て
  東へ駆け出す自分が見えて来る。
  放浪の旅を重ね、幾度死に、幾度生き、
  今の私に辿り着いたことか。
  気の遠くなるような歳月を思うほどに
  私が残した何百、何千という墓標が見えて来る。
  丘一面を埋める墓の中を
  一匹の狼が彷徨っている。

  (そんな夢を見た)
HONDA Ape100

2009年8月8日(土)
開けた青空も無く、照り付ける陽射しの印象も希薄だったが、結局、真夏日。夕立が熱気を冷ました。 @岩手山麓


  (静かだな。静か過ぎる)

  夏の休暇が終われば、
  人は帰って来て、
  活気が戻るはずなのに、
  そんな気配がまったく無い。

  カレンダーに従って
  人は己に復帰し、
  生活が始まるはずなのに、
  そんなイメージも描けない。

  冷房のきいた部屋に
  ぽつんととりのこされた私には、
  ひどくわかる気がする。

  (誰も、ここへ帰って来る気は無いのだ)

  それぞれに生きる算段を求めて忙しく、
  ここへ戻って来る気など毛頭無いのだ。
  やりかけたことに一片の未練も残さず、
  山積みの計画に見切りをつけたわけだ。
  焼き払われなかっただけの「昨日」が、
  ここにあるだけだ。

  見捨てられた膨大な夏に埋もれて、
  私は、その留守番をしているだけなのだ。
KTM 250EXC-F

2009年8月7日(金)
青空のかけらも許さない曇天。それはそれで日傘となったが、蒸暑さまでは防げなかった。 @八幡平アスピーテライン


  黙って走りなよ。
  道の先は、何から何まで決まっているから。

  まず手を挙げ声を上げるのは誰か、
  決まっているよ。
  (いつもの人々さ)

  検討を重ね話をまとめるのは誰か、
  順番の通りだよ。
  (いつもの面々さ)

  異議を唱えて盛り立てるのは誰か、
  専門の役者だよ。
  (いつもの配役さ)

  最後に決着させてみせるのは誰か、
  話題にもならないよ。
  (あまりに有名さ)

  そんな流れを裏で糸引くのは誰か、
  よく見ていてごらん。
  (いつも片隅に居るから)

  そのように、行く手を覆う霧の中で、
  誰かがうまくやっている。
  霧が晴れれば、相変わらずの眺めだ。
  だから、目をつむっていても駆け抜けられる。

  もし、目を見開いて走りたければ、
  人影も稀な新しい道を選ぶことさ。
KTM 690ENDURO R

2009年8月6日(木)
突き付けてくるような熱。刺し込んでくるような陽。焼けただれるような疲労感。 @盛岡市



  言っちまいなよ。
  「梅雨は明けました」と。

  (良く似た話だ)

  白状しちまいなよ。
  「お前と別れた俺が馬鹿だった」と。
  「お前との日々を忘れられない」と。
  「お前が居ない夕暮れは残酷だ」と。

  お願いしちまいなよ。
  「どうかどうか帰って来てくれ」と。
  「塒を用意して待っているから」と。
  「機嫌良く火炎を立てておくれ」と。

  約束しちまいなよ。
  「二度と手放したりしないから」と。
  「地平線の彼方へ連れて行くよ」と。
  「俺の骨でシリンダーを埋める」と。

  真夏日の倉庫の片隅で、
  取り返しのつかない夢を見た。
  確かなことは、
  未来への思いが沸騰して来たことだ。

  (夢からさめても、現が加速する)
※画像のオートバイは、発信者のものではありません(管理者の許可を得て撮影)

2009年8月5日(水)
不安定な大気。不透明な陽射し。唐突な降雨。日が暮れてようやく透明な風。 @雫石町


  夏になれば
  そんな風景が広がると
  思っていないか?

  自然にわいて、生えて、伸びて,
  夕風にそよぐと思っていないか?

  (見えないか?)

  見渡す一面を支え整え愛しむ人影が。
  香ばしい野焼きの煙を立てる人影が。
  旅人を彼方から凝視している人影が。
  守るべきものを胸におさめる人影が。
  一日の汗を拭き夕闇に染まる人影が。
愛機:HONDA Monkey

2009年8月4日(火)
白濁した空。方角によって乾いた夏空がのぞいたが、依然、北国とは思えない不快指数。 @北上高地


  平均速度に走行時間をかければ、
  何時に何処にいるか想像できた。
  (そんな旅もあった)

  地図を指でなぞるように走れば、
  風景は記号となって流れ出した。
  (そんな道もあった)

  冒険せず過不足無く汗を流せば、
  機械仕掛けの幸せがやって来た。
  (そんな日もあった)

  今、ひとり、この空の下に
  置き去りにされて、どうだ?

  掴み切れないものを求めて、あと一歩だった。
  空に舞い狂うものを追って、来た道を離れた。
  振り向けば自分の影は無く、記憶さえ失った。

  (だから、光にとけて果てしなく微笑んでいる)
愛機:KTM 690ENDURO R

2009年8月3日(月)
灰色の予報にしておけば、その筋の責任は問われないのかもしれないが、望外の青空があれば、どうでもよいことだ。 @北上高地


  一国を滅ぼすのに武器は要らない。
  
  まずは、贅沢に麻痺させることだ。
  個人の利益に夢中にさせることだ。
  努力や労働の評価を下げることだ。
  文学や芸術の地位を下げることだ。
  哲学や論争を毛嫌いさせることだ。
  子供をわがまま放題にすることだ。
  社会に厭世観を蔓延させることだ。
  事実を断片的な情報にすることだ。
  白黒しか判断できなくすることだ。
  本質を笑い草にしてしまうことだ。
  思考する者を引き籠らせることだ。
  結束をスポーツに限定することだ。
  老若の間に言語の溝を掘ることだ。
  大波は流行の範囲に収めることだ。
  巨悪を細分化して告発することだ。
  衰退の途上に祭を演出することだ。
  危機管理で互いを縛らせることだ。
  独創性など精神病棟に送ることだ。
  歴史への眼差しを覆い隠すことだ。

  その日まで、
  人々はビールなど呑気に飲み干し、
  飢える子を眺め、虚しい芸で笑う。
愛機:HONDA Ape100

2009年8月2日(日)
朝霧は払われ、昼過ぎまで真夏の陽射しが照り付けた。夕刻になって降雨。 @青森県大鰐町(トライアル大会会場)

  もし、ひとつの挑戦が
  完璧な結果をのこせたとしても、
  その勢いで、
  次の挑戦を始めてはいけない。

  弾みだとか、
  リズムだとか、
  テンポだとか、
  そんな気分で残せる成果なんて、
  たいしたものじゃない。

  まずは、勇む風から離れることだ。
  一度火を消し、
  彼方を見渡し、
  今日という日の意味を問い返し、
  そこで、はじめて
  足元の石ころひとつから
  行く手の一切を確かめるのだ。

  深々と息をため
  覚悟に背中を押されて
  思い描いた道筋に踏み出すのだ。
愛機:HRC RTL260F

2009年8月1日(土)
終日の濃霧注意報を嘲笑うように夏空拡大。「さんさ踊り」初日が終わる頃、かすかに水滴。 @盛岡市役所前


  余韻を楽しむのが「祭」だ。
  手際よく撤収するのは「イベント」だ。

  さて、その場の空気がどうであれ、
  決められたエネルギーを
  決められた時間示して見せるのが、
  いわゆる「まつりごと」だ。
愛機:HONDA ベンリィ50S

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