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イワテバイクライフ 2009年 8月後半


2009年8月30日(日)
ぼんやり、なまぬるい朝。午後からの空はよく覚えていない。山は動き、秋の夜気がしみた。 @八幡平市

  敗北を重ねてきた者は、
  勝つことの意味を知る。

  それが、
  どれほど険しい道か。
  どれほど嬉しい事か。
  どれほど耐える事か。

  だから負けるたび、それを
  受け止める強さを身に付ける。
  突き詰める厳しさが磨かれる。
  無駄にしない賢さが生まれる。

  それらの狭間で真摯に生きていると、
  勝ち負けでは無いことが分って来る。
  所詮人生の表裏であることに気付く。
KTM250EXCーF

2009年8月29日(土)
未明までの雨も止み、急速に青空が戻った。風にはかすかな夏の余韻。 @八幡平市(安比高原)


  うれしいこともあれば
  くやしいこともある。

  最高の瞬間もあれば、
  最低の瞬間もある。

  好運な一日もあれば、
  運の悪い一日もある。

  ストライクもあれば、ボールもあるし、
  ホームランもあれば、凡打もある。

  すべては、隣り合わせ。
  一切は、紙一重。
  どれもこれも、あるがままの私。

  だから、理由をかみしめて歩もう。
  だから、この青空の記憶を抱きしめて走ろう。
  何もかも、受け入れて微笑もう。
第33回出光イーハトーブトライアル大会

2009年8月28日(金)
小雨は初秋を濡らし、思わせぶりに止んでは、また降り出した。 @岩手山麓


  村の見回りに使う車なのに、
  なぜフェラーリが必要なの?
  乗りこなせるの?
  可哀想なことだ。
  やがて埃が積って、最後には愚政の遺物か。
  (せめてレースの夢でも見ていておくれ)


  村を荒らす猿に備えるのに、
  なぜ最新の戦車が必要なの?
  使いこなせるの?
  勿体ないことだ。
  やがて錆びついて、最後には無用の長物か。
  (せめて大勝利の夢でも見ていておくれ)


  村の祭りの余興大会なのに、
  なぜ世界の巨匠が必要なの?
  価値がわかるの?
  気の毒なことだ。
  飼い殺しにされて、最後には邪魔者扱いか。
  (せめてカーテンコールを夢見ておくれ)
HONDA Monkey

2009年8月27日(木)
数値で見れば、まあ「夏日」なのだが、急速な秋の冷気を緩和する一錠の太陽、みたいな。 @盛岡市


  標識には従うさ。勿論ね。
  だが、行く先は自分で決めるのさ。
  たとえ行方不明になったって、
  「早く帰れ」と指示する標識なんか無いのさ。
  だから、そのまま神隠しさ。


  楽譜には忠実さ。当然ね。
  だが、音色を奏でるのは自分なのさ。
  どんなに聴き手を陶酔させても、
  「正気に帰せ」と記した楽譜なんて無いのさ。
  だから、そのまま踊るのさ。


  人の道は守るさ。絶対ね。
  だが、生き様だけは自分で選ぶのさ。
  どんなに遠回りや道草をしても、
  「他人と同じ道」を求める掟なんて無いのさ。

  だから、そのまま未完成さ。
 
HONDA ベンリィ50S

2009年8月26日(水)
ひんやり晴れて夜は明け、かすかに汗を誘って陽は射し、やがて体の芯に届く夜の冷気。 @八幡平市


  この地を追われる日が来たらね、
  最後の砦を失う時が訪れたらね、
  安息を奪う波が押し寄せたらね、
  もう、わたしは
  名を伏せる必要は無くなるのだ。

  わたしが誰で、どんな旅の果てに
  この地へ辿り着いたのか、
  一切を明らかにしようと思うのだ。

  何十年という根気と、何万頁という執念で、
  山が跡形もなくなるまで語ろうと思うのだ。
  善悪の境界で起きた出来事を綴ろうと思うのだ。

  わたしが、この地で穏やかに生きている限り、
  封印される黒い記憶。
  わたしが、この空の下で風になっている限り、
  けして起きない反乱。

  愚かにもその箱をこじ開けるのは、
  大概、いきさつを知らない役人だ。
  ニュアンスを感知できない石頭だ。

  だから、この地を追われる日が来たらね、
  わたしは火達磨になって
  群衆の中へ飛び出そうと思うのだ。
  焼けただれた喉から、
  逃げ切ることを願う者達の名を
  鮮やかに叫ぼうと思うのだ。



  ※現場では許可を得て撮影作業道のみ走行。
HONDA Ape100 

2009年8月25日(火)
エネルギッシュな雲がひとしきり踊ってみせたが、夕刻には濾過されて澄んだ夕闇。 @岩手山麓


  何かにすがりついて生きるということはね、
  何かにすがりつかれるということなんだよ。

  ひとたび助けられたら、
  いざという時には、その何かのために、
  全財産を投げ出せるかい?
  命までも差し出せるかい?
  間違った意見でも受け入れられるかい?
  大切なものを泥の中に捨てられるかい?
  信じるものを裏切ることができるかい?
  身代りに重いものを背負い切れるかい?
  それを、ある者は
  「友情」と言い「絆」と言い「信仰」と言う。

  その覚悟が無いのなら、
  何かにすがりつくことなく、
  時にどんな目に遭おうとも、
  孤独を貫いていけるかい?

  それを「自由」とも言うのだけれど。
KTM250EXCーF

2009年8月24日(月)
季節は一気に秋の淵を滑り落ちていく。もはや引き返せない空の蒼さ。しみる夜風。 @岩手山麓


  どんな山にも頂を占める者はいるが、
  誰も理由を問わない。
  誰も異議を唱えない。
  頂を見上げる度、心は静まるからだ。

  そこに技は無い。
  ただ無事に過ごしてきただけの者だ。
  そこに魂は無い。
  ただ如才なく振る舞っただけの者だ。
  そこに志は無い。
  ただ己の地位に執着しただけの者だ。

  それでも、山は形を成しているから、
  なるほど、そんなものかと得心する。
  だから、頂をめざし競う影も消えた。

  (見上げてごらんよ)
  みすぼらしい者が、颯爽としている。
  退屈きわまる者が、嬉々としている。
  赤面を誘うものが、堂々としている。
  (それはそれで腹も立たない眺めだ)

  もはや麓に生きる者は、
  何も求めず何も追わず、不条理にも揺れず、
  足元の暮しを見つめ、汗を流していられる。
KTM690ENDURO R

2009年8月23日(日)
澄んで乾いた一日。日中の陽射しは夏のなごりだったが、夕暮れからの大地は秋に包まれた。 @滝沢村(トライアルパーク)


  ほほお。
  火傷がこわくて、遠巻きにしているのかい。

  ふうん。
  巻き添えが嫌で、黙り込んでいるのかい。

  そんなわけで、誰かの意のままに
  右へ向き、左へ走るのかい。
  本当は真っ直ぐ進みたいのにね。

  ならば、よく見るがいい。
  お前が跨っているものを。
  お前が握っているものを。
  お前が奏でているものを。
  (わかるかい)
  高まるエンジン音は、お前の思いだ。
  見据えるその先は、お前の未来だ。
  つなぐクラッチは、お前の決断だ。
  さあ、跳べよ。跳んでみろよ。

  迷っていると、

  瞬く間に夜だ。瞬く間に冬だ。
  秋は、心を決める時だ。
  
モンテッサ コタ 4RT(公道走行可能なトライアル車)

2009年8月22日(土)
どこか冷えた曇り空。最高気温23度1分(盛岡)。秋の虫の音、いよいよ夜気に馴染む。 @滝沢村(トライアルパーク)


  他人の歳月など、瞬く間だ。
  待ち続けていた時間や
  積み重ねてきた時間の
  果てしなさなど、分らない。

  何かのついでに目を向けて、
  まだ元気だとか、相変わらずだとか、確かめて、
  5年や10年を、いともたやすくひとつに括る。

  (でもね、それで、いいんだよ)

  壊れては直し、
  泣いては笑い、
  憎んでは愛し、
  捨てては求め、
  日々狂おしく彷徨う他人の生き様を
  間近で見つめてはいられない。
  じっと寄り添っていられない。
  遂に見届けられはしない。
  所詮は受け止めきれない。

  (それぞれの歳月を知る者は、それぞれだけだ)

  ならば、せめて、その道のりを思いやり、
  偶然すれ違う時ぐらい、
  腹の底から声をかけ励まそうじゃないか。




  ※画像と本文は一切関係ありません。
ライダー:千葉さん、マシーン:モンテッサ・コタ4RT

2009年8月21日(金)
午前中は束の間の本降りもあった。午後には空も少し明るくなり、街は乾いた。


  走るものが
  蛍光灯に照らされ、
  ショーウインドウに佇んでいる。
  何とはかない姿だ。
  石ころひとつ飛んで来ただけで砕け散る
  ガラス細工だ。
  (泥にまみれて旅を重ねてこそ、走るものだ)


  闘うものが、
  肘椅子に座らされ、
  涼しい部屋で時計を睨んでいる。
  何とむなしい姿だ。
  数行の文書一枚で呆気なく勝敗が決まる
  机上の世界だ。
  (生身の人間と向き合ってこそ、闘うものだ)


  生きる者が
  あてがわれた道を
  無駄口も叩かず歩き続けている。
  何と残酷な風景だ。
  遥か昔に定められた計画をひたすら守る
  絶望の日々だ。
  (夢を潰され立ち上がってこそ、生きる者だ)
スポーツスター883R・2010年モデル(発信者のものではありません)

2009年8月20日(木)
おおむね暑さも引いた初秋の曇天。あえて夏を探せば、甲子園で花巻東がベスト8。 @盛岡市


  わたしはね、もしかしたら、
  もう、ここには居ない人間なのかもしれない。
  ぼんやりとした抜け殻かもしれない。
  (そう思うことがあるんだよ)

  誰がどんなミスを犯しても、
  怒鳴らず、騒がず、問い詰めず、
  ひと言「まあ注意しよう」と微笑むだけの
  そんな人間になってしまった。
  それぞれの責任は、それぞれが自覚していて、
  誰もが懸命なのだが、
  ちょっとした意識の加減で、
  過ちを犯してしまうんだよ。
  では、その責任を全うできない者に対して、
  どうしろと言うんだい。
  反省では足りないから、
  指をつめれば済むのかい。
  追放されれば済むのかい。
  そんな審判に目を血走らせて、活気付いて、
  どうするんだい?何が守れるというんだい?
  人間なんてものはね、過ちを繰り返すんだよ。
  (あんたもね)
  ぎりぎり頑張るほど、それは避けられない。
  ならば、過ちの理由を凝視して、
  歯を食いしばって進み続ける他ないんだよ。
  その切なさを知らない無傷の役人どもが、
  今日も責任の追及に嬉々として走り回る。
  その喧噪の中に、わたしは幽霊となって佇んでいる。
  (わたしはね、もう、ここには居ないんだよ)



  ※本文と画像は一切関係ありません。
HONDA ベンリィ50S

2009年8月19日(水)
曇は湿って、灰色を濃くして、夕刻の道を所々濡らした。盛夏ついに力尽き、一面の秋。 @岩手山麓


  収穫を終えた場所に今日も居る。
  区切りのついた場所では、
  誰もが大らかで、
  私のことなど見過ごしてくれる。
  だから、私だけの実りの季節を思い描いて、
  今日も奔放に種をまく。


  物語が終わった場所に今日も立つ。
  幕をおろした舞台では、
  誰もが虚脱して、
  私のことなど視野には入らない。
  だから、私だけのプロローグを思い描いて、
  今日も嬉々と演じる。


  夢からさめた場所で今日も走る。
  無数の熱情の墓場では、
  誰もが絶望して、
  私なんかに期待したりはしない。
  だから、私だけのささやかな希望を追って
  今日も自在に風になる。
KTM250EXC-F

2009年8月18日(火)
不透明な陽射し。真夏の記憶が重すぎて疲弊した大地だが、朝夕は秋の匂い。 @滝沢村(トライアルパーク)


  公に罪を負うと、さあ大変だ。

  犯したミスそのものなんか
  どこかに置き去りにされて、
  全人格そのものを叩き出す群が現れる。

  やれ、無愛想だった、とか、
  やれ、破綻者だった、とか
  やれ、酒飲みだった、とか、
  とことん、
  どうしようもない人間だったことにしたい輩が、
  あることないことを喋り出す。
  私憤にまみれて潜んでいた悪意が、
  蛆となってわいて出て、
  ここぞとばかりに欝憤を晴らす。

  (だからさ、私もね、用心しているのさ)

  退屈な日記を「詩人気どり」だとか、
  生業を指差し「露出の趣味」だとか、
  日々の散歩を「スピード狂」だとか、
  話をつくりたがる一人一人の顔を思い浮かべて、
  悪魔のように慎重に暮らすのさ。
  毒々しい程に正しく生きるのさ。
 
HRC RTL260F

2009年8月17日(月)
頑とした夏雲がわき立った。最高気温29度3分(盛岡)は、秋の気配をはらった。 @岩手山麓


  何かしようとするな。
  まずは、静かに佇め。

  誰にも心配されず、警戒されず、
  放っておいてもらえる者であれ。
  遂に何もしでかさない者であれ。

  何か語って誤解など招くな。
  何か訴えて敵味方を作るな。
  何か指摘して狼狽させるな。
  何かを信じて滑稽になるな。
  何か創って評価を求めるな。
  何か決心して無理をするな。

  そのまま、いつも通り、
  置物のように佇み、
  波紋など広げず、
  ゆるやかに忘れられていくことこそ、
  至難の業だ。

  ともあれ、この世の空気を
  ひとつまみ分けてもらって、
  今日の命に置き換える者であれ。

  (風景のひとつになり切れ)
HONDA Ape100

2009年8月16日(日)
じわじわと現れた青空は真夏のそれ。最高気温は31度3分で、まずは残暑の典型。 @八幡平市


  人は、人の世のあれこれには敏感で、
  多彩な感情と意見を持ち、
  言葉にしたがる。
  けれど、そのほとんどは、
  言い放った途端、
  泡のように弾けて消えて、
  気が済む程度のことだ。
  その怒りに義は無く、
  その悲しみに同情の余地は無く、
  その主張に理の欠片も無いことを知る。

  ならば、
  名状しがたい日々の天地を前に、
  阿呆となって、
  道端に立ち尽くしていたい。
HONDA Ape100

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