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イワテバイクライフ 2009年11月前半


2009年11月15日(日)
冬の嵐。木々を騒がす風。高速で流れる雲。束の間の陽射し。冷えた雨。地を打つ霰(あられ)。 @八幡平市(安比高原)


  そうありたいと願うことは、
  行動の起点だ。
  では、どうありたいのか。
  それを知るために
  人は何もせず閉じ籠もることもある。

  そう伝えたいと志すことは、
  表現の原点だ。
  では、表わすべきは何か。
  それを知るために
  人は思い描いた夢を焼くこともある。

  そう生きたいと祈ることは、
  日々の基本だ。
  では、求める道とは何だ。
  それを知るために、
  人は冬空の下に飛び出すこともある。

モンテッサ コタ4RT

2009年11月14日(土)
布団を邪魔に思うほど温もった朝だった。その後の雨も刺すような冷たさは無かった。 @盛岡市

  
  雪が降り出した。宵闇が白く染まった。
  老夫婦は、プラットホームのベンチに座っていた。

 「ねえ、あなた。

  こうしていれば、列車がやって来て、
  あたたかい所へ連れて行ってくれるのね。
  楽なものね。ありがたいことね。」

  「そうだね。まったくだね。
  でもね、列車を降りずに、
  窓に流れる季節を楽しんでいてもいいんだよ。
  すると、やがて列車は、
  ぐるり歳月を一周してね、
  また此処に戻って来るのさ。春の頃にはね」

 「まあ、うれしい旅なのね。
  でも、その日、
  私たちを覚えている駅員さんはいるかしら」

  「そうだね。みんな旅の途中だからね。
  もしかすると、この駅も無いかもしれないね。」

  「まあ、さみしい話。」

  「そうだね。さみしい話だね」

  闇の彼方に汽笛を聞いた気がして、
  二人は、肩の雪をはらった。
HONDA ベンリィ50S

2009年11月13日(金)
盛岡でも氷点下の朝。そこそこの青空など昼前後からの雲に覆い隠された。 @岩手山麓


  あなた、考え過ぎよ。
  その男の沈黙はね、
  言うべき事を持たないだけなのよ。
  何も打つ手が無いだけ。それだけ。
  (深い意味なんてありゃしない)

  あなた、構え過ぎよ。
  その男の不遜はね、
  常識を知らずに育っただけなのよ。
  振る舞い様が無いだけ。それだけ。
  (何も思惑なんてありゃしない)

  あなた、疑い過ぎよ。
  その男の狡さはね、
  本能のまま走っているだけなのよ。
  欲に従うほか無いだけ。それだけ。
  (気の利いた嘘もありゃしない)


  あなたがどうのこうのという話じゃないのよ。
  そいつが、それだけのものだというお話よ。
  (正体を眺めていればいいのよ)
スポーツスター883R

2009年11月12日(木)
方角によっては低く広くたれこめる雲もあったが、かろうじて青空の印象が優った。風は確実に冷えている。 


  俺が孤立無援だった時代、
  お前は、まだ設計図にすらなかった。

  俺が此処に流れ着いた日、
  お前は、まだ溶鉱炉にさえ無かった。

  俺が迷い苦しんでいた秋、
  お前は、まだ太平洋上の船底だった。

  俺がすべて乗り越えた冬、
  お前は、ようやく横浜港に揚がった。

  俺が未来を予感できた朝、
  お前は、此処に辿り着き俺を待った。

  俺が波乱を覚悟した夕刻、
  お前は、俺の目前で開封されたのだ。


  ついに合流した者よ。
  どうか俺の歳月を優しく運んでくれ。
  どうか俺の狂気を笑って流してくれ。
ヘリテイジ ソフテイル クラシック

2009年11月11日(水)
刺し込む様な寒さは、まだ無い。冷えた雨が、街の紅葉を軽やかに鮮明にしているだけだ。 @盛岡市


  昨日の件ですが、忘れていただけますか。
  私、ちょいと旅に出ますので。
  (いえね、目的の無い旅です)
  ですから、話の続きは、
  幾度か春を数えた後にしていただけませんか。

  例の約束ですが、猶予して貰えませんか。
  私、ちょいと退席しますので。
  (いえね、恒例の野暮用です)
  ですから、道の続きは、
  幾度か夏を数えた後にしていただけませんか。

  例の計画ですが、遠回りは出来ませんか。
  私、ちょいと道草しますので。
  (いえね、単なる暇潰しです)
  ですから、夢の続きは、
  幾度か秋を数えた後にしていただけませんか。


  もし、幾度冬を数えても私が戻らなかったら、
  私の記憶を焼き払って貰えませんか?
  無意味な歳月に力尽きたと御想像いただき、
  灰にして貰えませんか?
HONDA Monkey

2009年11月10日(火)
霧に包まれ夜は明けた。平年を10度も上回る温かさだった。日中は小雨断続、霧雨乱舞だった。 @盛岡市(北上川)


  僕ら夫婦は、乳飲み子を抱え
  アフリカのある村に辿り着いた。
  不思議に木造の日本家屋があり、
  暮らし始めたのだが、
  やがて、その村が諍いの村であることを知る。
  多くの人々が、ひどい暴力の果てに
  切り刻まれ、焼かれていく。

  けれど、僕ら日本人に対し、
  彼らは、けして手を出さない。
  肉片や骨の焼ける匂いに麻痺した頃、
  村にもうひと組、日本人の夫婦が住みつく。

  善良な二人が、ある日、僕らの子供を連れ去り、
  自分たちの子供だと主張する。
  双方の夫婦に味方して村は二つに割れた。
  僕らの庭(ジャパニーズガーデン)は、
  凄惨な主戦場と化す。

  台所の隅で、夫婦は腐ったにぎり飯を頬張り、
  雨戸を叩き割る音を聞いている。
  斧を握りしめた手が震える。


  そんな夢を見た。おそろしく生温かい朝だった。
HONDA Ape100

2009年11月9日(月)
どこか柔らかい大気。降ったり止んだり、枯れて縮んだ紅葉を色濃くする雨だった。 @盛岡市


  「あなた様は、たぶん
  ご立派なお方なのでしょう」
  そう言ったまま言葉の絶えた受話器に、
  青春の求愛は頓挫し、
  人の世の視界が開けた気がしたのだ。

  愛するひとを
  休ませ、和ませ、満たし、幸福にする。
  そのために膨大な研鑽と経験を積む。
  深く豊かな精神の湖水を広げる。
  無垢で純で優しく、多芸で博識で・・・。
  それで、ようやく愛されるというわけか。
  (なるほど、ご立派なことだ)

  あれから、
  失恋は歳月の果てに流れ去ったのだが、
  私は、未だに「ご立派」とは無縁だ。

  今日も、先が見えない決断をして、
  その決心に見合った苦難を引き受け、
  途方に暮れている。

  そんな私に、いつも通り寄り添ってくれるのは、
  妻よ、君ひとりだ。
HONDAベンリィ50S

2009年11月8日(日)
なまぬるい初冬だ。雲のような霧のような白い何かが舞って、青空の印象を霞ませた。 @岩手山麓


  きっぱりと断ち切る。
  大したことじゃない。
  問題は、その後だよ。

  未練があると揺れる。
  悔いがあると乱れる。
  面影があると震える。

  それがわかっていて、
  きっぱり切り捨てる。
  問題は、その先だよ。

  変化が無いと萎える。
  意義が無いと凍える。
  展開が無いと絶える。

  それがわかっていて、
  きっぱり止めるなら、
  覚えておくといいよ。

  取り返しがつかない
  ものごとの中にこそ、
  教訓がひそんでいる。
  手遅れになってから、
  やっとそれに気付く。
HONDA Ape100

2009年11月6日(土)
立冬ではあるが、ほぼ小春日和。北国の季節の執行猶予みたいな・・・。 @岩手山麓


  なにかに出会い、
  なにかを選び取り、
  なにかを捨てる。

  それはね、今日の心のことさ。
  今日に限って言葉に出来る話さ。

  明日になれば、
  選んだ理由も、
  捨てた理由も、
  探し出せないことがある。

  本当に選ばなくちゃいけなかったのか。
  本当に捨てなくちゃいけなかったのか。
  それほどのものだったのか。

  それを確かめるために
  生きるんだよ。
スポーツスター883R

2009年11月6日(金)
朝霧が払われ、温かい青空が広がった。最高気温16度(盛岡)。弛緩した晩秋。 @北上高地


  何かひとつ方針が決まったところから、
  ものごとは本当に動き出す。
  方針を離れ、方針を否定し、方針を破棄し、
  ついに、方針とは正反対の結論へおさまる。

  (そんなものだよ)

  君が北をめざすと言い切るから、
  道は途絶え、南に道ができるんだよ。

  君が春を描いてくと決めるから、
  空は暗転し、季節は冬になるんだよ。

  君が此処を終の棲家と言うから、
  意地でも阻止する影が現れるんだよ。

  だからね。
  ひとつ方針が決まっても、
  それで安心してはいけない。
  それで諦めてもいけない。

  (逆転のための時間はたっぷりあるからね)
KTM690ENDURO R

2009年11月5日(木)
そりゃあ、秋だって不機嫌になることもある。朝から小雨断続。夕刻の本降り。 @盛岡市


  ねえ、俺はね、今日、決めたんだよ。
  馬鹿馬鹿しい嵐が去ったら、
  このシートに君を乗せて旅に出ると、
  決めたんだよ。

  何を語ろうと、
  どう振る舞おうと、
  何を夢見ようと、
  誰にも咎められない朝、
  こいつに火を入れようと思うんだ。

  出会った土地。
  親になった街。
  光り輝いた時。
  黙り込んだ日。
  復活した場所。
  心を決めた丘。

  それらひとつひとつを訪ね、慈しみ、
  心からの涙を流し、
  「じゃあ、またね。元気でね」と
  別れを告げるために、
  君をこいつに乗せて出掛けてみたい。

  感傷にひたることさえ許されなかった俺たちには、
  そんな旅が必要なんだと思う。
2010年式 FLSTC / ヘリテイジ・ソフテイル・クラシック

2009年11月4日(水)
低く重く頭上を覆う雲は、冬。白鳥の羽が受け止める風も、冬。かすかな青空や雨も、冬。 @岩手山麓


  その女は、
  用もないのに私のそばで
  じっとしているから、
  身の上話のひとつもしてあげる。
  嘘をしのばせ話してあげる。
  (さあ、早く持っておいき)
  私を探る者へ届けておくれ。


  その男は、
  わけもなく私にすり寄り
  同調してみせるから、
  理想や計画など披露してあげる。
  毒をしのばせ語ってあげる。
  (さあ、早く拾っておいき)
  私を窺う者へ届けておくれ。


  その群は、
  音もなく私を取り囲んで
  仲間などを装うから、
  秘密の道や扉を明かしてあげる。
  罠をしのばせ教えてあげる。
  (さあ、早く盗っておいき)
  私を憎む者へ届けておくれ。
HONDA Ape100

2009年11月3日(火)
各地で氷点下の朝。この秋一番の冷え込み。盛岡で初雪観測。日中は雪や雨も降らず。ただそれでだけの冬。 @滝沢村


  うれしさを噛み締めている者に、
  わたしは、微笑んで頷くだけだ。
  大袈裟な拍手や讃辞はいらない。
  こみあげる感動の邪魔はしない。
  知ったような顔で肩を叩かない。
  (喜びが器にみたされるまで)


  激しい痛みをこらえている者に、
  わたしは、口を噤み俯くだけだ。
  大袈裟な心配や見舞はいらない。
  耐えて忍ぶ意志の邪魔はしない。
  その場限りの気休めを言わない。
  (苦しみが器から消えるまで)





  ※本文は画像と一切関係ありません。
ライダー:沢上さん マシーン:ベータ(トライアル大会「チャグトラ」にて)

2009年11月2日(月)
冷え込んだ。山は雪を纏った。街には小さな霙も落ちてきた。まあ冬の顔見せか。 @岩手山麓


  崩れていく理由など
  誰だって知っている。
  けれどそんなことを
  わざわざ告げる者は
  ついに現れないのさ。

  腐っていく仕組など
  誰もが気付いている。
  けれどそんなことを
  あえて口にする者は
  けして出て来ないさ。

  正されることを不名誉に思う者に、
  誰が真実なんか告げるというのだ。

  頂に居座りうっとりしている者に、
  誰が明日の嵐を伝えるというのだ。

  平穏であればうれしいだけの者に、
  誰が闘う術など明かすというのだ。

  (歳月よ、さっさと掃き捨てろ)
スポーツスター883R

2009年11月1日(日)
見渡す限り薄暗いベールに包まれ、雨の到来を覚悟したけれど、意外なほどの猶予があった。 @室根山


  ひとつとして
  同じことには
  ならないのだ。

  繰り返すほど
  同じ道程には
  ならないのだ。

  思い描くほど
  同じ結末には
  ならないのだ。

  (それはね)

  昨日とは違う天地だからさ。
  さっきとは違う風だからさ。
  あの日とは違う私だからさ。
  心はみるみる移ろうからさ。

  (それでもね)

  めざすものを夢に見るのさ。
  どうありたいのか思うのさ。
  その瞬間を掴み取るまでね。
ライダー:橋場さん マシーン:RTL260F (トライアル大会「とんトラ」会場にて)

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