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イワテバイクライフ 2009年11月後半
道は、もう開いてしまった。こっそりとね。 あとは、知らぬ振りして暮すだけだ。 誰かが用意する紆余曲折とやらに 戸惑ってみせたり、 驚いてみせながら、 季節の匂いを胸におさめるだけさ。 友人と美味い酒を酌み交わすのさ。 午睡の中で彼方の悲鳴を聞くのさ。 そのように歳月を見送れば 辿り着く場所は、 この見晴らしなのさ。 結局、ここなのさ。 血を流して切り開いた道は、 誰かの都合で用意された道とは、違うのさ。 けして時の波に持ち去られないのさ。 だからさ、今日もこうして 押し寄せるものを愛想良くあしらうのさ。 |
そうですか。 私は、それほど邪魔ですか。 あなたの繁栄を破壊しかねないほどのものですか。 よくわかります。 数年の無事を踏み台にして、 身の丈を越える綱渡りに明け暮れる者の 狡猾と愚劣を嫌というほど見て来ましたから。 どうにも許せない私ですから、 よくわかります。 では、私は、しばらく旅に出ます。 あなたが一切を腐らせ、 この地をめちゃくちゃにする間、 日溜りの宿場町でくつろいでいます。 あなたの逃げ道に仕掛ける罠を作りながら、 一膳めし屋のテレビを見上げて、 その日を指折り数えています。 |
たかだか己の1年や2年の安寧ために、 この理想郷に火を放つ影がある。 死んだ魚の目をして、笑い声だけは甲高く、 見渡す限りを灰にして逃げていく。 さて、僕はね、 そんな仕打ちには慣れている。 故郷を追われた日々を風の色に染め上げてね、 愛しんで眺めるんだよ。 するとね、復活の日までは瞬く間さ。 だから、僕はね、 馬鹿げたカレンダーを すべて破り捨てた後のことで 頭がいっぱいなんだよ。 僕の居ない此の地の季節から 誰が消え、何が崩れていくのか。 風の色に心を染めて、 彼方から眺めていてやろう。 遂に沈みゆくものに手を振ってやろう。 祝福の口笛を吹き鳴らそう。 こうしている間にも すべては、その日へ走り続ける。 カレンダーから、ほら、また一日が消えた。 面白いように時は過ぎている。 闇の時代が高速で流れ去る。 嗚呼、流星のように遠ざかる。 |
子供はね、 君が求めるものを傷つけようとするものだ。 だからさ、 どうでもよいものに手を伸ばしておくことだ。 君が見向きもしなければ、守られる。 大人はね、 君が計画していることを阻みたがるものだ。 だからさ、 どうでもよい設計図など一枚用意することだ。 君が思案すらしなければ、守られる。 悪魔はね、 君が憎むものに力を与えようとするものだ。 だからさ、 天使のような微笑みを振りまいておくことだ。 君が拘りを封殺できれば、守られる。 |
綴らない者は、 そりゃあ涼しい顔さ。 ぼろを出さなくて済むからね。 気分だけは高潔を気取っていられる。 語らない者は、 そりゃあ安全地帯さ。 態度表明を免れるんだからね。 気分だけ客観の丘に立っていられる。 表さない者は、 そりゃあ賢こそうさ。 時の流れに頷くだけだからね。 気分だけ思慮深い佇まいでいられる。 物陰から風向きを窺うだけでは、 握りしめている正義や美意識とやらが、 腐っていても気付かないものだ。 それが、どれほど滑稽なものか、 修羅場で確かめてみることだ。 |
飛び出してみれば 思いのほか青空が広がる。 (気持次第で光はさす) 走り続けてみれば、 地図には無い道が現れる。 (探し求める限り続く) 彼方まで見渡せば、 懐かしい海と山と町がある。 (歩み寄れば許される) 道程を振り返れば、 悪い事ばかりじゃなかった。 (微笑むなら救われる) もう、いいじゃないか。 さあ、夕闇の向うに待つ明日へ 手を振ろうじゃないか。 よろしく頼むと頭を下げようじゃないか。 それでみんな笑顔になれば、 今日の旅は無駄じゃなかったんだよ。 |
ひたすらに岩を砕く者よ。 今日一日手を休めるがいい。 風に吹かれ、雲を眺め、 大地に移ろう光を追い、 無心に一日を過ごせ。 するとどうだ。 今日という日が 見事に終わっていくことを知る。 終わらせるものの力強さを知る。 正確に公平に顔色ひとつ変えず、 今日を終わらせ明日を引き寄せるものを知る。 岩を砕き、山を崩そうとする者よ。 時の力を思え。 意志の力を遙かに超えていくものを思え。 歳月の津波が、 怒りも悲しみも押し流す様を思え。 山岳を削り消し去る力を思え。 闇さえ飲み込む力を思え。 |
なるほど。 まだまだ、 いろいろ 手はある わけだね。 そうさ、あるんだよ。 安心なんかさせない。 なるほど。 これから あれこれ 起きると いう訳か。 そうさ、想像以上さ。 怯えさせてあげるよ。 息をひそめている卑怯者を見ると、 俺は、たちの悪い人間になるんだ。 逃げ切る寸前の船に注意しておけ。 北国の裏路地で、そんな言葉を交わし、 私は、あの秋の私に今日のすべてを渡した。 やつは、疑い深く受け取ると、 バーボンの匂いを残して、 夜明けの夢から立ち去った。 |
あなた馬鹿ね。 無関心な人に 大切なものを 披露するのは 誤解されたり 揶揄されたり 標的にされて 良いことなど 何も無いのよ。 分かっているさ。 「それらしいもの」は分っている。 過去に棲む者には、白黒の眺めを。 誉れ高い者達には、文化の香りを。 芸術家気取りには、美しい孤独を。 書斎に籠る影には、静寂と思索を。 滑稽な自尊心には、無意味な謎を。 教養の塗り壁には、陰気な散策を。 そんなことは、分かっているのさ。 でもね、一面を見渡してごらんよ。 雪原には狐か狸の足跡ばかりだよ。 (だから、たまにはいいんだよ) 闇を旅する私には、ブリキの夢を。 |
春はね、 到来するのではなくて、 人が自らの心に準備するものなんだよ。 花のように夢を咲かせ、 薫風のように血を巡らせ、 陽光のように命を温めれば、 春なんだよ。 氷雪の日々に ゆったり心を広げていられるなら、 春なんだよ。 暗い時代の中で、 悠々と心を走らせていられるなら、 春なんだよ。 桜吹雪を浴びながら、心を閉ざし、 新緑に包まれながら、笑顔を失っていたら、 それを、冬というんだよ。 |
邪魔されても構わないことは、 ことさら計画を明らかにする。 (まずは手口を見極める) 阻まれても影響のないことは、 前もって道筋など漏しておく。 (どう動くかを見定める) 壊されても痛くはないものは、 よく目立つ所にさらしておく。 (その習性など記録する) 愚かな獣は、 おもしろいように尻尾を出す。 |
それは すでに 誰かが 語った 表した そんな 考えで 物事を 斬って いると 自分の 心さえ だれの ものか 分らぬ ことに なるよ。 |
ねえ、私はね、街角で その横顔を見かけたのよ。 いかにも心の襞の無い、 季節の香りとは無縁の プラスチックな鼻筋をね、見たのよ。 (ああ、これか、と思った) プラスだとかマイナスだとか 方程式だとか元素記号だとか そういう目で あなたを値踏みしたのね。 (可哀想に) じゃあ、あなたは けしてプラスにならない人間で、 けして割り切れない厄介な者で、 けして誰とも手を結べない男で、 無用なものと断定されたわけね。 それで街を追われるというのね。 (よくわかる。すごくわかる) |
ひっそりしていれば、 そっとしておいてもらえる。 ただし微笑んでいればね、 そうしてもらえる。 (鋼のような沈黙ではいけない) ぼんやりしていれば、 片隅に住まわせてもらえる。 ただし羊の様であればね、 そうしてもらえる。 (群から離れていてはいけない) ゆったりしていれば、 時々背中を押してもらえる。 ただし愛されていればね、 そうしてもらえる。 (自立した様な顔ではいけない) ことさらに正しく明るく逞しくなくても、 そのたたずまい次第で、 そうしてもらえる。 ※本文は画像と一切関係ありません |
そうさ、世界にはね、 美しいものが星の数ほどさ。 でもね。 何がどう美しいのか 主張することに興味は無いんだよ。 敢えて言葉にしなくても、 美しいものは、 美しいままだからね。 安っぽい言葉で汚したり、 思い違いでねじ曲げたり、 己の値打の装飾にしたり、 そんなことなら、 関わらない方がよほど良い。 むしろ、 何故それを美しいと感じるのか、 自覚しておきたいものだ。 何かに向き合うということは、 自分に向き合うことだからね。 そこに誤解があっても まあ、いいじゃないか。 (所詮ひとりの心の中のことだから) 粗悪で半端な評論にくらべれば、 罪は無いからね。 |