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イワテバイクライフ 2009年12月前半


2009年12月15日(火)
灰色の冬が重くたれこめ、さし込む寒気。周辺の山野は乾いた雪に染まった。 @盛岡市


 こんな彷徨に
 うつつをぬかしていたおかげで、
 救われたのかもしれない。

 滑稽な刃などを抜かずにすんだ。
 汚れ果てた話を聞かずにすんだ。
 軽々に明日を決断せずにすんだ。
 形だけの反省などせずにすんだ。
 浅薄な理想など掲げずにすんだ。
 胡散臭い盟約を結ばずにすんだ。
 泥仕合に巻き込まれずにすんだ。

 こうしているだけで、すべては、
 無心に流れ去り、無縁に遠ざかり、
 正気だけが、ぽつんと立っていた。
HONDA Ape100

2009年12月14日(月)
青空はあった気もする。けれど、冬の皮膜が山々を覆い、宵闇に小雪が舞った。 @岩手山麓


  酒場のカウンターで
  ひとり酒を飲み、
  聞き耳を立てる君のことは、
  とっくに気付いていたよ。

  だからね、
  いかにも君が欲しがっている話の時には、
  熱弁をふるっておいてあげたよ。
  ありきたりな打ち明け話を、
  とっておきの調子でね。
  君の背中を眺めながら、
  結論へ向かうと見せて引き返し、
  君の心を読みながら、
  核心へ至ると見せて曖昧に、
  結局、和気藹々のうちにお開きさ。

  大丈夫。
  君が探らなくても、その日は来る。
  酔いも覚める不意打ち。
  暁に踵を返す炎。
  その時を思い、怯えるがいい。
スポーツスター883R

2009年12月13日(日)
朝からの青空は、冬雲の乱舞を許しながら、消えそうで消えず、穏やかな夕暮れになった。 @岩手山麓


  あなた。
  ねえ、あなた。
  もう師走なのよ。
  いろいろ大変なのよ。
  片づけることは沢山あるのよ。
  だから、じっと机に向かってばかりいないで、
  さっさと要らないものを出して捨ててちょうだい。
  本当にもう、
  撮るだとか綴るだとか走るだとか、
  そんなことばかりなのね。
  家のことなんかどうでもいいのね。
  自分のことにしか興味の無い人なのね。
  そんなあなたを少しばかり受け入れる者だけに、
  にっこりするのね。
  さあ、あなた。
  捨てるものは捨ててちょうだい。
  この際、きっぱり片づけてちょうだい。

  (少し静かにしてくれないか)
  その真っ最中なのだから。
ヘリテイジ ソフテイル クラシック

2009年12月12日(土)
昼過ぎまで小雨。冬をとかす雨。街は濡れたまま夜を迎えた。見上げれば所々に星。 @盛岡市


  温厚というより、
  微笑むほかには手が無い人々が、
  あれこれ手を出すから、
  無残なことになるんだよ。
  (ほら、試みも無く崩れていく)

  寡黙というより、
  自分自身を押し出せない人々が、
  あれこれ耳を貸すから、
  まとまらなくなるんだよ。
  (ほら、議論も無く散っていく)

  思慮というより、
  大鉈を振るう習慣の無い人々が、
  あれこれ取り組むから、
  全体が歪んでくるんだよ。
  (ほら、方針も無く流れていく)


  嗚呼、その善良が、その不器用が、
  どうしようも無さが愛おしくて、
  歳月の板塀の前に突っ立ち、
  一緒にずぶ濡れになっていたい。



  ※本文と画像は一切関係ありません。
HONDA Monkey

2009年12月11日(金)
無愛想な曇り空。いつ雪がちらついてもおかしくなかった。うすら寒さに肩を縮めた。 @盛岡市


  言い出せないさ。
  すでに崩れだしているなんて、
  誰も口に出せないさ。
  言った途端、崩れ去ったら
  暮していけないから、
  今日という日を積み上げているのさ。
  砂の歴史の上に黙々積み上げているのさ。

  切り出せないさ。
  もはや腐り果てているなんて、
  誰も切り出せないさ。
  言った途端、腐臭が漂えば、
  息などできないから、
  今日という日に蓋をしてしまうのさ。
  汚れた川の中に黙々夢を流しているのさ。

  触れられないさ。
  とっくに終わっているなんて、
  誰も触れたがらないさ。
  触れた途端、墓場と化せば、
  生きていけないから、
  今日という日に意味を見付けるのさ。
  莫大な債務の上に希望を押し立てるのさ。



  ※本文と画像は一切関係ありません。
  
HONDA ベンリィ50S

2009年12月10日(木)
その蒼さ、その広さ、その冷たさ。もはや青空などと呼べない鋭利な天空の出来事。 @岩手山麓


  それを屈辱と言うのか?
  誰かの思惑通りに踊らされることは、屈辱なのか?
  その舞台で嵐のような拍手喝采を奪えるのなら、
  勝利と言うべきだろう。
  (まずは、磨き鍛えよ)

  それを孤独と言うのか?
  誰にも理解されず一人でいることは、孤独なのか?
  その静けさの中にわきあがる旋律を聞いたなら、
  歓喜と言うべきだろう。
  (まずは、耳を澄ませ)

  それを不毛と言うのか?
  誰も心を向けない物語を綴ることは、不毛なのか?
  その万巻の中に一行でも愛をあらわせたのなら、
  本望と言うべきだろう。
  (まずは、思いを抱け)
スポーツスター883R

2009年12月9日(水)
希望に満ちた朝の陽射しだったのに、昼前後は、束の間の気象現象で小雨小雪に濡れた。 @岩手山麓


  人はね、
  誰かの思惑に踊らされているものだよ。

  腹を立てちゃいけない。
  誰かの思惑を越えて踊り続けるうちに、
  本物になるんだよ。

  毛嫌いしちゃいけない。
  誰かの思惑を察して先回りするうちに、
  自由になるんだよ。

  頑なになっちゃいけない。
  誰かの思惑に大らかに向き合ううちに、
  優しくなるんだよ。

  甘えていてはいけない。
  誰かの思惑に乗って怠けているうちに、
  捨てられるんだよ。
HONDA Ape100

2009年12月8日(火)
北に青空。南の空に冬の陰鬱。その狭間で光を拾い集めた。 @花巻市


  過ぎ行くものにすがりつき、
  迎えるものから逃げ出して、
  愛しい楽園に帰ってみれば、
  友は老い、木々は枯れ果て、
  閑散とした残酷に包まれる。
  キラキラ舞ったブランコは、
  錆び付いて悲しく軋むだけ。
  見覚えのある顔はうつむき、
  諦観と嘆息を漏らすばかり。
  こんなはずではなかったと、
  思い出を辿り彷徨うほどに、
  帰る場所が無いことを知る。

  (だからね)
  どれほど窮屈で薄汚くても、
  棲家は今日の風の中にある。
  どれほど遠回りであっても、
  正解は今日の道の上にある。
  どれほどいかがわしくても、
  信じるべきは目の前に在る。

  (そう思えるのなら)
  いつか記憶の懐に安住できる。
ヘリテイジソフテイルクラシック

2009年12月7日(月)
暦の上では「大雪」。うっすら雪化粧して迎えた朝。青空もあったが、夕刻の底冷え。 @盛岡市


  その地に愛着など無い者が、
  その地の明日のことを決め、
  明後日には、その地を離れ、
  やがて、その地を忘れ去る。
  そんな決定が街をのし歩く。
  誰が決めた事か誰も知らず、
  決定だけが生き延びていく。

  お前の事など知らない者が、
  お前の明日を酷くねじ曲げ
  明後日には、この地を捨て、
  すぐに、お前など忘れ去る。
  そんな杜撰が繰り返される。
  誰の仕業か誰も知らぬまま、
  首をかしげ引き継いでいく。

  (つまり、そんなものさ)

  その仕組を熟知したものが、
  ある日議論の輪に乱入して、
  地平線の彼方まで支配する。
HONDA ベンリィ50S

2009年12月6日(日)
薄ら寒い日曜日だ。小雨断続。まれに現れる青空や光も冷え冷えと流れ去った。 @盛岡市


  ねえ、5年前のことを覚えているかい?
  輝くばかりの日々だったね。
  何もかも愛おしかったね。
  
  ねえ、5年後のことを想像出来るかい?
  陽は陰り風は冷えていくね。
  何もかも懐かしくなるね。

  ねえ、5年という歳月が見えるかい?
  誰が何者になるとか、
  街がどう変わるとか、
  そんなことじゃなくて、
  相変わらずの眺めに加えられる色彩が見えるかい?
  5年という月日の筆を
  僕はね、目を閉じ、思い描くのだ。

  叶うことなら、
  今、此処で、パレットを広げ、
  冷えた雨水で5年の歳月をとかし、
  絵筆に含ませ、
  壁という壁を5年の歳月に染め上げ、
  佇んでみたい。
HONDA Monkey

2009年12月5日(土)
希望の欠片も許さない空。重く暗く冷えて湿って、午後からは覚悟の降雨。 @盛岡市


  匂わないか?
  また旅に出ることはともかく、
  一年も前に下車駅が知らされるなんて、怪しいな。

  まるところ、
  「そこに降り立つのが嫌なら、早く列車を降りろ」
  ということじゃないのか。

  この弛緩するほどの猶予期間は、
  飛び降りた後の算段を
  ゆっくりさせようということじゃないのか。

  明日への道筋を早々に明かして、
  下車の決心をさせたがっているんじゃないのか。

  (そうかい、面白い。ならばだ)
  何くわぬ顔で南京豆など食っていようじゃないか。
  窓外に流れる季節をスケッチしながら、
  だらだらと旅を続け、乗り継ぎの時間を楽しみ、
  いつの間にか始発駅に戻ってやろうじゃないか。

  旅を終えた頃には、
  人の目を見られない車掌は消え、
  時刻表しか頭にない駅員も去った後だから、
  俺は、晴れて故郷のプラットホームに立ち、
  星空に歓喜を歌い上げようじゃないか。
HONDA ベンリィ50S

2009年12月4日(金)
なお冬本番への門をくぐろうとしない大気。のらりくらりの青空と陽射し。 @岩手山麓


  この地に暮らしていきたければ、
  もっと宝を出せ、と脅されると、
  老人は「はいはい」とこたえて、
  結局、何ひとつ提供しなかった。
  (脅した者は、すぐに流された)

  この地で無事に終りたいのなら、
  もっと手を貸せ、と迫られると、
  老人は「はいはい」とこたえて、
  結局、動く気配を見せなかった。
  (迫った者は、やがて追われた)

  この地で輝く勲章が欲しければ、
  もっと平伏せ、と強いられると、
  老人は「はいはい」とこたえて、
  結局、頭など下げはしなかった。
  (強いた者は、ついに消された)

  老人はいつも愛想良く返事した。
  風が吹いても「はいはいはい」
  雪が舞っても「はいはいはい」
  矢が降っても「はいはいはい」
  笑顔のからくり人形を仕掛けて、
  老人は、既に墓の中で寝ていた。
HONDA Ape100

2009年12月3日(木)
行き過ぎた小春日和の連続は、さすがに休止符が打たれ、午後には冷えた小雨。 @盛岡市


  丘は老残の兵で埋め尽くされた。
  その見渡す限りを支配する塔は、傾いたまま、
  変わらぬ調子で命令を出し続けた。

  ひとりの男に次の戦地が告げられた。
  男は、きょとんとして聞き返した。
  「私の銃は射程距離が数メートルです。
  それでいいんですね?本当にいいんですね?」
  塔が「良い」と返事をすると
  丘は、どっと笑い声に包まれた。

  また別の男に次の戦地が告げられた。
  男は、訝しげに聞き返した。
  「私は体を失い前進できません。
  それでいいんですね?本当にいいんですね?」
  塔が「良い」と返事をすると、
  丘は、苦々しい空気に包まれた。

  更に別の男に次の戦地が告げられた。
  男は、無表情に聞き返した。
  「私は、魂を撃ち抜かれています。
  それでいいんですね?本当にいいんですね?」
  塔は、ひとつ間をおいて「良い」とこたえた。
  丘は、静まり返った。

  老残の群は、塔を囲み、縄をかけた。
  掛声もろとも塔は引きづり倒された。
  (それを合図に戦は終わった)
HONDA Monkey

2009年12月2日(水)
かろうじて太平洋沖の高気圧の圏内。望外の小春日和。柔和な大気は初冬の幻覚。 @岩手山麓


  歳月には色がある。

  数年の筆は、
  樹を繁らせ、相変わらずだ。
  壁を剥がし、どこか寂しい。
  心を裏返し、よそよそしい。

  それでも此処を故郷とするなら、
  氷雪の丘に立ち続けなくてはならない。

  もう何があろうと動かない心を
  胸にしまい走り回らなくてはならない。

  例え束の間の旅に出たとしても、
  此処に幽霊となって還らねばならない。

  そのような数十年の果てに、
  私の樹が故郷に色を添えるのなら、
  私の壁が故郷にとけ微笑むのなら、
  私の心が故郷に迎えられるのなら、
  私は、灰となって春風に飛ばされて良い。
スポーツスター883R

2009年12月1日(火)
そこそこ風は冷えていたのだが、光だけは柔らかく、冬への構えをゆるませた。 @岩手山麓


  たった一年で顔ぶれはがらり変わる。
  あとには変わらぬ山河の眺めだ。
  (昨日血相を変えた者は、跡形もない)

  二年も経てば空気などがらり変わる。
  あとには変わらぬ季節の色彩だ。
  (昨日ひれ伏した影が、堂々胸を張る)

  三年も経てば風向さえがらり変わる。
  あとには変わらぬ天地の広さだ。
  (昨日の正義の御旗は、焼き払われる)

  何をめぐる騒動だったのか。
  何のための画策だったのか。
  誰のための暗躍だったのか。
  枯野を冬の陽射しが染めるばかりだ。

  ついに故郷に戻った者よ。
  見覚えのある残骸を片付けてくれ。
  虚しい傷跡を洗い流してくれ。
  一切の記憶を埋葬してくれ。

  (結局、此処に生きるお前ひとりだから)
ヘリテイジ ソフテイル クラシック

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