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イワテバイクライフ 2009年12月後半


2009年12月31日(木)
柔和な曇天は、昼過ぎから急速に冷え出し、夕闇に雪が舞い荒れた。 @盛岡市


  さだめに手を引かれていく者よ、
  振り返り振り返り、
  幾度と無く昨日の名を呼ぶ者よ。

  覚えていてくれるか。
  冬の街角に突っ立ち、
  途方に暮れていた私の姿を。

  思い出してくれるか。
  雪雲の到来を見渡し、
  唇を噛み締めた私の横顔を。

  ついに心を決めて
  キックバーを踏み抜いた男の背中を
  振り返ってくれるか。

  君の遠い記憶の中に
  私は刻まれているか。
HONDA Monkey

2009年12月30日(水)
今年の雪は、新年へのカウントダウンとともに消えていく。どこか街の空気もやわらかい。 @盛岡市


  この街に地下鉄は無い。
  暗闇に轟音を立てて目指す場所は無いからね。
  (だから、みんな空の下だ)


  この街に人混みは無い。
  肩をぶつけ合い先を争う理由なんて無いからね。
  (だから、みんなそれぞれだ)


  この街に飾り物は無い。
  輝かせないと消えていく幸福なんて無いからね。
  (だから、みんなありのままだ)
HONDA Monkey

2009年12月29日(火)
いつもの冷え込みが戻って、とけかけた雪が凍った。それでも、薄日に希望を感じた。 @岩手山麓


  受け流すことは、
  思いのほかに辛いことなんだよ。
  誰かの決めたことに従いながら、
  すべてが終わるまで待つわけだからね。
  それも平気を装ってね。

  受け止めることは
  思いのほかに楽なことなんだよ。
  自分の心の在処を確かめながら、
  何かと折り合いをつけるわけだからね。
  それも素顔のままでね。

  同じ歳月なら、
  一喜一憂していようじゃないか。
  泣き笑いしていようじゃないか。
  立ちはだかるものに心をぶつけ、
  挫けたり立ち直ったりしながら、
  生きてみようじゃないか。

  夢中で受け止めているうちに、
  やがて抗うべき風は止み、
  霧も消えていくんだよ。
  振り返れば、すべては「一瞬の道程」さ。
  何事も無かったように、また「ひとり」さ。
HONDA Ape100

2009年12月28日(月)
小雨断続。雪をとかす雨だった。道も屋根も洗われて、天然の大掃除になった。 @盛岡市


  そりゃあ、仕方がないのさ。
  小さな街だもの。
  登場人物は、いつも同じ顔ぶれさ。

  事に応じて、
  少し配役を変えるだけだから、
  相も変わらぬ筋書きさ。

  いつもの誰かが、
  いつもの誰かに何かを言わせて、
  いつもの誰かを動かすんだよ。
  そうして街は回るんだよ。
  あれもこれも、なにもかも、
  どこかで見かけたことの繰り返しだよ。

  そりゃあ、仕方がないのさ。
  そしてね、その仕方なさが懐かしいのさ。
  わびしくて、せつなくて、古びていて、
  どこか愛おしいのさ。




   ※本文と画像は一切関係ありません。
HONDA Monkey

2009年12月27日(日)
北東北の年の瀬にしては、どこか優しい空気だった。裏道の雪は凍ったままだったけれど。 @盛岡市


  絵を描きたいな。
  この地の色彩という色彩を
  目に焼き付けたら、
  筆をとろうと思う。

  曲を作りたいな。
  この地の風音という風音に
  耳をすませた後で、
  奏でようかと思う。

  劇を書きたいな。
  この地の楽園から廃墟まで
  巡ってしまったら、
  形にしようと思う。


  色彩という色彩に染まって、
  果てしない風音に耳を傾け、
  希望と絶望を胸におさめて、
  その日までひた走るんだよ。
HONDA ベンリィ50S

2009年12月26日(土)
午前中の霙(みぞれ)。その暗さ、不機嫌。救われたのは曖昧な寒気。 @盛岡市


  従うべきものや
  縛られるものや
  形だけのものを
  斧で断ちきれば
  軽蔑するものや
  馬鹿げたことや
  抗うべきことを
  すっかり消せる。

  (ところがね)

  その清々しさは、
  期待するほどに
  楽しくはないよ。

  やはり人にはね、
  軽蔑するものや、
  馬鹿げたことや、
  抗うべきことが
  必要だと思うよ。

  そこに明日を思う力は生まれ、
  人生の体温は上がるのだから。

  (いいんだよ、それで)
HONDA Monkey

2009年12月25日(金)
上機嫌の青空だった。眩しくしみてくる陽光だった。すべてを乾かす風だった。 @岩手山麓


  わたしが
  その地に暮した日々を知る者など、
  もう、ひとりもいない。
  だから、
  わたしを知るわたしを今日も其処に置く。

  わたしが
  その地で夢を追い続けた時代など、
  もう、あとかたもない。
  だから、
  わたしが追ったものを今日も其処に見る。

  わたしが、
  その地に抱かれ救われた記憶など、
  もう、雪におおわれた。
  だから、
  わたしが愛したものを今日も其処で探す。


  (だから、夕闇の先を照らして行く)
HONDA ベンリィ50S

2009年12月24日(木)
クリスマスイブの空気はやわらぎ、街の雪をとかし、道は水浸しで、陽射しを反射した。 @盛岡市


  恋い焦がれた場所に佇むには、
  魂の絵筆が一本必要なんだよ。


  まず、辿り着く腕力が必要だ。
  途切れぬ前進の轍を描けるか?

  次に、門を叩く思いが必要だ。
  そこに求めるものを描けるか?

  更に、じっと待つ時が必要だ。
  天地の移ろいを感じ描けるか?

  遂に、引き返す覚悟も必要だ。
  無為におわる一日を描けるか?


   (さて、それだけでは足りないのだ)

  何より思い立つことが必要だ。
  そこに向かう物語を描けるか?
HONDA Ape100

2009年12年23日(水)
昼前後に青空を見た気がする。寒気はゆるみ、小雨が宵闇を濡らし、氷をとかした。 @盛岡市


  ねえ、その街に落ち着いたら、
  小料理屋で一杯やろうよ。
  何杯飲(や)れば旅が終わるのか、
  語り合おうじゃないか。
  そうこうしているうちに
  一晩が過ぎるのさ。
  (しみじみ酔っているだけでいい)

  ねえ、その仕事場に慣れたら、
  近くの湯治場に行こうよ。
  幾度湯につかれば旅が終わるのか、
  想像しようじゃないか。
  そうこうしているうちに
  季節が変わるのさ。
  (黙々汗を流しているだけでいい)

  ねえ、大馬鹿野郎が現れたら、
  さらりかわしてやろうよ。
  何人やり過ごせば旅が終わるのか、
  数えてみようじゃないか。
  そうこうしているうちに
  終着駅に着くのさ。
  (戦うことなど忘れていればいい)


  ねえ、高速で流れ去る「お笑い種の日々」を
  「もっともらしい旅」にしようじゃないか。
  好人物のように。
HONDA Monkey

2009年12月22日(火)
昼過ぎまで雪が舞ったが、夕刻には透明な青空が広がった。かすかだが寒気がゆるんだ。 @盛岡市


  (すごいな。すごいことだな)
  一日一日が揺ぎ無く過ぎていく。
  時の車輪が誰かの思惑を潰し、
  歳月は整然と流れ去る。
  今日という季節を眺めているだけで、
  未来はやって来る。
  待ちに待たなくても、
  その日になれば歓喜の扉が開くなんて、
  すごいな。すごい仕組みだな。

  例え別れの日が来ても、
  その日から再会への秒読みは始まる。
  時が来れば、笑顔の自動ドアが開く。
  「また会えたね」「お帰りなさい」と、
  僕らは今日の続きを始めるだけさ。

  過ぎた数年の速さを思うほどに、
  迎える数年の短さが見えて来る。
  (暇は無いのだ。気忙しい限りだ)
  旅が終わった後の準備は、
  旅の初日から始まっているのだ。
  まごまごしていたら、
  本当の朝が玄関先に立っている。
  さあ、さっさと事を進め、終わらせよう。
  爆発的な春のために冬の旅を片付けよう。
HONDA ベンリィ50S

2009年12月21日(月)
真冬日(盛岡で最高気温マイナス1度1分)。時折、視界を霞ませるほど雪が舞ったが、朝夕の青空があった。 @岩手山麓


  村の結束力を高めるなんて、
  雑作も無いことだ。

  ひとりのリーダーを送り込めば良い。
  無能で傲慢な権力者をひとり
  差し向けるだけで良い。

  すると、
  ひとりひとりの義憤が、
  互いを呼び合い、絡み合い、
  団結の気運が芽生え、
  大馬鹿者ひとりを追放することに
  手を尽くし出す。

  連携し合図を交わし、
  Xデーに向けて歩調を合わせ、
  思わぬ仕事を成し遂げるものだ。
  最後には固い友情で結ばれていたりする。
HONDA ベンリィ50S

2009年12月20日(日)
かすかに寒気はゆるんだが、街の雪は厚みを増していた。山へ近づくほどに降る雪は強まった。 @盛岡市


  成金の津波が押し寄せる。
  その波に乗って
  あざとく儲ける影がある。

  建設途上の価値基準につけこんで、
  贅沢だとか高級だとか希少だとか、
  そんな能書きと値札で釣り上げる。

  やがて、成金も無駄金を使わなくなる。
  金より愛だとか力より絆だとか、
  発展より環境だとか言い出して、
  波は引いていく。

  けれど、例の商いは、
  次の波を待ち侘びて、
  眉唾ものの宣伝文句を撒き散らす。
  成熟を嫌い、表面に拘る。

  そのように、
  自らの価値を破壊し、基準を失い、
  村も人も時代の海原に沈んでいく。

HONDA ベンリィ50S

2009年12月19日(土)
岩手の内陸は、概ね真冬日だった。道という道は白く凍って、引き返せない冬になった。 @盛岡市


  なにも期待していなければ、
  無残な結末を告げられても、
  氷の様に微笑んでいられる。

  初めから信じていなければ、
  ものの見事に裏切られても、
  手帳に記した予定の通りだ。

  微塵も尊敬していなければ、
  どれほど斬り捨てられても、
  心は無傷のままでいられる。

  てんで執着していなければ、
  すべてを叩き壊されたって、
  もの静かに眺めていられる。

  ひとかけらの夢もなければ、
  彼方まで白銀に染まっても、
  思いを描き出すことはない。



   ※本文と画像は一切関係ありません。
HONDA Monkey

2009年12月18日(金)
モノトーンの街は凍結したままで、ちりちりと小雪を纏い、蒼白の夕闇を迎えた。 @盛岡市


  精一杯働いて、
  手に入るものが、すべてだよ。
  (好運など夢見ない)

  存分に遊んで、
  溢れ出る笑顔が、すべてだよ。
  (救済など請わない)

  思いを寄せて、
  実現するものが、すべてだよ。
  (奇蹟など待たない)

  無用な力を出したり、
  無駄に心を砕いたり、
  無縁な絆を結んだり、
  そんなことをせずに、
  私でいられるのなら、
  ありのままの私なら、
  それでもう充分だよ。

  何処で生きようと、悠々歌っていられる。
  (ほら、結局、たったひとりなのだから)
HONDA Monkey

2009年12月17日(木)
氷点下6度7分の夜明け(盛岡)。この冬一番の冷え込み。それでも冬晴れ。心に届く光はあった。 @岩手山麓


  盾を使う者は、盾を上に置き、
  矛を使う者は、矛を上に置く。

  さて、ふたつを使いこなす者は、
  あまりに当然のことだから、
  その違いを論じることはない。

  時にのぞんで盾。
  場にいたれば矛。
  水のごとく自然に、左右なく、
  風のごとく自在に、上下なく、
  舞のごとく美しく、移ろって、
  ひたすらに修羅であるだけ。
スポーツスター883R

2009年12月16日(水)
朝からバキンと凍っていた。青空さえ固まっていた。私的な体感としては、ほぼ真冬日。 @岩手山麓


  10年後のことだって?
  その日、どうなっているか、だって?

  よく見なよ、道の下り勾配を。
  そこに今日というボールを転がしてごらんよ。
  転落の加速度が見えないか。
  止めようのないものが10年を待たずに
  闇の底へ消えていく様が見えないか。

  よく見なよ、塔の傾き加減を。
  そこに今日という日の重さを掛けてごらんよ。
  倒壊の加速度が見えないか。
  止めようのないものが歳月など待たずに
  音を立てて砕け散る様が見えないか。

  それがわかっていて、
  平然と来年を予告し、5年後を約束し、
  10年後を落着させる愚かしさが、
  わからないのか?
ヘリテイジ ソフテイル クラシック

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