TOP
イワテバイクライフ 2010年3月前半
此処で心底笑顔になるために どうでもよい選択を済ませる。 (すぱっと割り切る) 此処で流す爽快な汗のために、 どうでもよい計画を消化する。 (きちんと足していく) 此処で確かめる自分のために、 どうでもよい勲章を捨て去る。 (さっさと差し引く) 私の時間や距離や高低は、 此処を起点に算出される。 だから、時に、とんでもない答えが出る。 |
流れていく。私が流れていく。 確かに、その姿は私で、 濁流の中に浮いては沈んでいる。 (けれど、何故だ) 私は、此処に居て、 流れていく私を眺めている。 では、流れていくのは誰だ? あるいは、此処で傍観するのは誰だ? 私は、私を見捨てたのか。 私は、私から離れたのか。 此処で、ぼんやり歳月の河を眺めることで、 事の成り行きとやらを、 他人事にしようというのか。 そのように正気を保とうというのか。 束の間、何者でもない私を彼方に流し、 何者でもない私を此処に佇ませようというのか。 |
実は、僕はね、 かつて、この地の風景を撮っていた。 やがて、この地を離れ、 けれど、この地を思い、 来る日も来る日も、 この地のアルバムを眺めていた。 たかだか数百枚の写真だったが それが、ある朝、僕を突き動かした。 (生きるべき場所は、この風景と人々の中だ) 僕は、衝動的にこの地に還り、 此処を終の棲家にした。 この天地と人々の記憶は、 それほどの力を持っている。 さて、あの日以来、 すでに何十万枚という記憶を 積み重ねてしまった僕は、おそろしい。 アルバムを見つめるうちに、 今度は何をしでかすのか、おそろしい。 |
できるかもしれない。 それも、上手にできるかもしれない。 なれるかもしれない。 それも、一気になれるかもしれない。 (人には、そんなことがある) でもね、思いがなければ、 手を出しちゃいけないんだよ。 それが礼儀だよ。 できないかもしれない。 それも、絶対できないかもしれない。 なれないかもしれない。 それも、一生なれないかもしれない。 (誰にも、そんなことがある) でもね、思いがある限り、 挑まなくちゃいけないんだよ。 それが覚悟だよ。 |
明後日のために 明日を犠牲にする者よ。 せめて今日一日、 昨日を思い、弔え。 夢を見るために 真実を黙殺する者よ。 せめて今日一日、 大地一面に、謝れ。 幻を追いかけて 心を踏みにじる者よ。 せめて今日一日、 道に佇んで、泣け。 お前が求めたものの虚しさを思い知るまで、 そこで、そうしていろ。 夕闇にのまれるまで、そうしていろ。 |
境界線なんて 今日の風ひとつで 変わる。 友と敵の間に立てば分る。 どちらが正しいのか、なんて、 ついに答えられないのさ。 春と冬の間に立てば分る。 どちらが美しいのか、なんて、 じつに愚かな問いなのさ。 光と影の間に立てば分る。 どちらが真実なのか、なんて、 空をつかむようなものさ。 どちらか一方に安住していると、 自分を見失う。 世界を見誤る。 |
そうかい。 頂に立った気分なのかい。 だったら、さっさと辞めたらどうだい。 あとは転落するだけだから。 そうかい。 行き先が見えないのかい。 だったら、暫らく道草したらどうだい。 道は逃げてはいかないから。 そうかい。 苦しくて仕方ないのかい。 だったら、ひたすら続けたらどうだい。 君が生きている証拠だから。 |
足並みを揃えているんじゃない。 みんなが、何かに引きずられているだけだ。 力を合わせているんじゃない。 みんなが、何かにしがみついているだけだ。 目的地を定めているんじゃない。 みんなが、何かに乗り運ばれていくだけだ。 何事も起きない日々を求める何かが、 波ひとつ無い鉛の海原へ 今日も船出していく。 ※本文と画像は、一切関係ありません。 |
おしなべて 築き上げられたものの 最大の使命は 一度崩れ去ることだ。 それで世界は更新されるのだから。 とりわけ、 人の悲しみや怒りの上に 築き上げられたものは、 そうなのだ。 時の風を受けて崩れ去ることだ。 |
言葉を失うことに あえて言葉で向かっていくことなど もう止めにしようと、 俺は、この地に来たのではなかったのか。 筋の通らぬことに とことん抗い火達磨になることなど もう止めにしようと、 俺は、此処を選んだのではなかったのか。 滅んでいくものに 未来を託し右往左往することなど もう止めにしようと、 俺は、今日へ走ったのではなかったのか。 だから、よいのだ。 この気も狂わんばかりの静寂は、 実に正しいのだ。 |
いずれ消えるものを 急かす心が 時を長くする。 やがて訪れるものを 急かす心が 時を黒く焦す。 ついに立ち止る者を 急かす心が 疾病をまねく。 いつか帰り来る者を 急かす心が 狂気をまねく。 雪解けさえ、待ってはいられない。 春到来さえ、待ってはいられない。 終着駅さえ、待ってはいられない。 その日さえ、待ってはいられない。 すべてを待ちきれない炎が ほら路傍に揺れている。 |
理想は実現できると信じ、 荒っぽい手段も許されて、 心意気ひとつで頑張れた。 誰もが夢を追い冒険した。 そんな時代を知る者達よ。 記憶を語ってはならない。 あの日々を言葉にすれば、 誇大妄想と揶揄され、 野蛮人だと指さされ、 規則違反と非難され、 狂気の沙汰と嗤われ、 傍若無人と罵られる。 良い時代を呼吸した者は、 じっとしているだけでも、 どこか不敵な面構えだ。 どこか不埒な目つきだ。 そんな気配を押し隠し、 去勢された時代に紛れようとするから、 退屈で退屈で大欠伸が出るのさ。 馬鹿馬鹿しくて笑う他ないのさ。 |
イメージせよ。 誰かがもたらす明日を 破壊して越えていく明後日を。 イメージせよ。 割り振られて来る明日を 土台から打ち崩す どんでん返しの明後日を。 思い描け、その意外な結末を。 思い定めよ、その決行の日を。 それだけで、ほら、今日が動き出す。 まるで時限爆弾の秒針みたいに回り出す。 いきいきと、容赦なく、 何より確信にみちて、 今日が動き出す。 |
鼠が一匹、 意気揚々と神様に報告した。 「この度の難局を わたしは一人で戦い、乗り切りました。 虎の牙も借りず、 像の思慮や猿の知恵も借りず、 わたし一人で戦い抜きました。」 すると王様は尋ねた。 「何故、お前ひとりで戦ったのだ?」 鼠は怪訝な顔でこたえた。 「わたしだけで十分だからです」 神様は深く落胆して呟いた。 「そうか、お前は、 すべてのものの力を活かさず、無駄にして、 お前一匹のみすぼらしい成果に 胸を張っているのか。 お前一匹の野心のために、 みすみす最善の成果を逃したのか」 |
警報は、 わずかでも可能性があれば、 大きな危機に備えるために 躊躇無く出されるものだ。 万が一の為に、 最善の構えをとることを 求めるものだ。 では、何故だ。 この地上に この時代に この人心に 何故、サイレンは鳴らないのだ。 (すでに大きな波にのまれた後なのか) |