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イワテバイクライフ 2010年3月後半
2010年3月31日(水)
灰色の空がベースだったが、青空の記憶も断片的には、あった。風も無く、10度前後まで気温が上がれば、まあ、いいか。 @岩手山麓
老いていく私よ。 変だと思った時には、もう遅い。 それは変ではなくて、 もはや普通のことなのだ。 私が知るものは、 すっかり変わったのだ。 何か別のものに入れ替わったのだ。 ただ名前が変わらないだけだ。 懐かしい記憶や経験に照らして見るから、 戸惑うのだ、苛立つのだ。 すでに、それは、それではないのだ。 もはや、あれは、あれではないのだ。 国も人も言語も価値も仕組も流儀も、 私が知るそれではないのだ。 気持ちを静めるために、 「下らない時代だ」とか、 「崩壊が始まった」と嘲るのは簡単だが、 その変わり果てたものの上で 私は生きているのだ。 沈み行くものに乗っているのだ。 (知らぬ振りして最後まで付き合うがいい) |
スポーツスター883R
2010年3月30日(火)
楽天的な天気予報の通りにはいかない「晴天」。冷えた風。冬雲の乱舞。所により雪。 @岩手山麓
帰る場所がある者は幸いだ。 住処だとか故郷だとか、 そういう場所ではなくて、 心の居場所のことだ。 ところが、輝かしい未来にこそ その場所があると信じる者は、 進み続けるばかりで、 帰る場所など思うことは無い。 明日の立場を追い求め、 それを棲家と定める者は、 この静けさの中に帰ることはない。 その確信を胸に 僕は、今日も晴れ晴れと風を浴びる。 この天地にふさわしくない者達と 二度と会わずに済む幸いを思うだけで、 どんな仕打ちにも笑っていられる。 |
ヘリテイジ ソフテイル クラシック
2010年3月29日(月)
朝の青空は凍ったままで、午後には山沿いで吹雪。いつ4月が来るというのだ? @岩手山麓
廃れる一方の商売の特徴はね、 春になるとわかるよ。 壁紙を変えるのさ。 売り物はそのままにして。 台詞を変えるのさ。 筋書きは昨日のまんまで。 段取を変えるのさ。 客の心を後まわしにして。 「春が変わる」と叫ぶ売り言葉に ほら、もう腐臭が漂う。 (そのように幾つ店を潰すのだ) |
スポーツスター883R
2010年3月28日(日)
開きかけた春を凍結させる寒気。山には凍った残雪。分厚い霜柱。@宮城県村田町(スポーツランドSUGO)
どんなこともそうだ。 追い求め 辿り着き 繰り返し 親しめば、 当たり前のことになっていく。 それが出来ることが、 そこに居られることが、 ごく当然のことになっていく。 だから人は、 ありきたりな道を離れて、 新しい物語を追いかける。 ただ、その道程をあらわす者は稀だから、 頂を見上げる者は、孤独だ。 |
東北トライアル選手権シリーズ 第1戦宮城大会にて
2010年3月27日(土)
たじろぐほどの勢いで風雪が一面を染めた。朝方の青空は、幻だったのか。@岩手山麓
見渡してごらんよ。人影も稀だから。 野兎が聞き耳を立てるだけだから。 さっ、言っちまいなよ。 自分が何者か、声に出しちまいなよ。 芸術家だとか、音楽家だとか、 俳優だとか、歌手だとか、詩人だとか。 宣言しちまいなよ。 此処では、言い張る者の勝ちだから、 まずは看板を立てちまいなよ。 あとは、なりすますだけさ。 狐や狸に礼を尽くしながら。 (実に寛大な大地じゃないか) |
HONDA Ape100
美しいものを追い求める心は、 汚れ切った日々の中にこそ芽生える。 (腐ったものが花を養うように) 純粋なものに憧れる眼差しは、 嘘で塗り固めた壁の中にこそ見開く。 (闇に点る灯が鮮やかなように) 新しい世界へ向かう冒険心は、 波ひとつ無い鉛の海にこそ浮上する。 (倦怠が遊戯を編み出すように) 天空を駆け巡る想像力の翼は、 思考の固着した群の中にこそ広がる。 (絶望が一切を破壊するように) 汝の地獄に感謝せよ。 |
たまたま立姿が立派で、 周囲から誤解され、 トップに推されたばかりに、 才覚の無さが明らかになり、 結局、落胆される。 たまたま声音が大きく、 周囲から期待され、 重責を負わされたばかりに、 内容の無さが明らかになり、 結局、見下される。 たまたま心根が優しく、 周囲から頼られて、 難題に向き合ったばかりに、 信念の限界が明らかになり、 結局、見限られる。 そのように、春になると、 散っていく人影がある。 |
大概そういうものだ。 そういう輩に限って、 仲良く塒(ねぐら)を並べているものだ。 保身のための愚策を押したてる者と、 何も評価できず決断できない者とが、 実に和気藹々と肩寄せ合っている。 何もかも先送りする者と、 今日一日すら片付けられない者の 息の合った様は、見事なものだ。 明日の椅子のことで頭がいっぱいの者と 明後日の安寧のことしか頭に無い者の 不思議に合う波長は、もはや曲芸だ。 その一対の眺めは、 未来ある者達の間近にこそ配置すべきだ。 二度と見てはならない負の絆を 心に刻み付けて貰うために。 |
粛々と転落していくものは、 最期の風景を けして思い浮かべず、 かすかな猶予にしがみつかず、 気休めの夢など膨らませず、 今日一日の汗に満足し、 ひたすら転がり続けるものだ。 (奇跡など待ちわびない) 粛々と消滅していくものは、 最期の世界を けして論じたりせず、 つまらぬ記憶にしがみつかず、 気休めの壁紙を張ることなく、 今日一日を寝かしつけ、 ひたすら呼吸を薄めるものだ。 (理由など述べ立てない) 粛々ととけていくものは、 最期の一滴を見届けることなく、 大地深く吸われ、 遥か未来の命のために 流れ続ける。 |
人の意地なんてものは、 本人が思うほど大したものじゃない。 誰かをとことん拒絶したところで、 その誰かにとっては、蛙の面に小便で、 別にどうでもよいことだ。 特段困ることもないのだ。 痛くも痒くも無いことだ。 誰かにとって 自分が重要な存在だと思い込む者ほど、 独り相撲の意地を張る。 まったく御苦労なことだ。 じつに哀れな話だ。 (にっこり笑えば、楽になるのにさ) |
私の趣味が綱渡りだと知った男は、 熱心に芸を磨くことを勧めた。 もっと高く張った綱に挑んでみたらどうかと 持ちかけて来た。 挙句の果ては、 いつどこで曲芸大会が開かれるのか、 調べ上げ、勝手に参加の手はずまで整えた。 (私は知っていたのだ) 「危ない挑戦に興じるものに、 大きな責任を負わせられない」 という口実が欲しくて、 綱渡りを義務の如くさせたがる男の魂胆など、 見え見えなのだ。 ※本文と画像は一切関係ありません。 |
僕はね、 今日も数年先の日記ために 走ったのだ。撮ったのだ。 数年間を満たす記憶を残したのだ。 すると数年先の気分まで 思い浮かぶのだ。 僕の人生とは無縁の空の下、 数年前の今日を眺めて、 数年後の思いを添える。 そのように僕の日記は、 馬鹿げた歳月をやり過ごし、 無意味な旅路を終わらせる。 本当の日々を迎える準備は、 実に着々だ。 |
あなたから離れてみたくなる日も あるのだけれど、 あなたは、付いてくる。どこまでも。 あなたを忘れてしまいたくなる日も あるのだけれど、 あなたは、消えない。いつまでも。 あなたの無い空を探して走る日も あるのだけれど、 あなたは、立っている。すぐ其処に。 あなたの眼差しがこわくて、 束の間逃げ出してみても、 心の中にそびえるあなたがいる。 嗚呼、私がどうなろうと、 何ひとつ変わらぬこの天地に、 「故郷よ」と叫んでみる。 |
そうだよ。 親になるのは大変なんだよ。 知らなかったのかい。 それでも可愛くてならないから、 歯を食いしばって 今まで以上に頑張るわけさ。 そんなことも分らずに、 そんな覚悟も無いまま、 親になって 仕事もままならないのかい。 まさか、そのザマで、 人の上に立ってはいまいな。 人を育ててはいまいな。 人の明日を決めてはいまいな。 |
まだいたのか。 羽を汚して何してるんだ。 ぐずぐずしていると、 ほんとうに春になっちまうぞ。 でもなあ。まあなあ。 今更、北へ帰れと言われてもなあ、 面倒だよなあ。 そういう運命だとか言われてもなあ。 かったるいよなあ。 泥の中に餌を探して やがて、この土に還るつもりなら、 まあ、それもいいんじゃないかな。 白鳥であることを忘れても いいんじゃないかな。 (規則があるわけじゃないしなあ) |
雪が降り出した。 迫る夕闇に赤信号まで凍ったのか、 車列は身じろぎもしない。 ワイパーが雪を払うと、意外な光景に出会った。 病院の前で、赤子を抱えた男が煙草を吸っている。 その時間、そこにいるはずのないスーツ姿だった。 無表情に、一本の気休めに時を任せている。 自らの明日をぼんやり眺めている風情だ。 めざす栄達と抱え込んだ悲惨。 果てしない平行線を前に 途方に暮れる眼差しだった。 風が煙草の煙を引きちぎった。 泣き叫び、押し黙り、壊れていくものに耐えて、 その事実をひた隠す哀れが、 ひょろりと立っている。 私は、開けかけた窓を閉じた。 視線を移し、青信号を待った。 男にまつわる不可解な日々のことが、 すべて解けていくような気がした。 |