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イワテバイクライフ 2010年6月後半
2010年6月30日(水)
振り上げた拳をおろしかねてサッカーWカップ「岡田ジャパン」の惜敗を伝え続けるメディア。まずは涙雨か。 @岩手山麓
まったく、人間というやつは、 つまらないことで 一年でも二年でも 悩んでいられるものであります。 どうでもよいことを 十年でも二十年でも 煮詰めていられるものであります。 答えなど無いことに 一生を捧げられるものであります。 けれど、人間というやつは、 その無益に見えるものに、 心を使うのであります。 自分とやらを掘り返して、 ごく稀に、大鉱脈を発見するのであります。 |
2010年6月29日(火)
曇天の割には真夏日に近く、蒸し暑い梅雨。午後、不穏な雲から水滴。夜になって本降り。 @岩手山麓
意地を張って、それでどうなる。 張ったものなど、いずれゆるむ。 そうでなければ、疲れ果てる。 誰かを牛耳り、それでどうなる。 支配の満足など、やがて虚しい。 そうでなければ、生涯戦場だ。 怜悧に生きて、それでどうなる。 計算された道など、いつも崩れる。 そうでなければ、つまらない。 (意思とやらに縛られてはいないか?) |
2010年6月28日(月)
予想された未明の豪雨も無く、日中は稀に霧雨程度。それでも夏日(盛岡)にはなった。 @岩手山麓
ある神社を訪ねた。 村で生きていく許可を得るためだ。 居並ぶ氏子は、黙って私を見ていたが、 誰かが口を開いた。 「では、儀式に出てもらおう」 私が深々と頭を下げると、 「明日の夜明け前、鎮守の森です」と告げられた。 「いいですね。約束ですよ」と念を押された。 そんな夢を見た。 目がさめると真夜中だった。 約束を果たすために、 森へと通じる夢を見なくてはならない。 夜明け前までに あの夢へ帰らなくてはならない。 そんな夢を見た。 |
2010年6月27日(日)
ゆるやかに天気は下り坂。陽射しもあり、真夏日に迫ったが、夕闇とともに雨。 @岩手山麓
仮に、君が、辺境の地で 文化人とやらを気取りたいのなら、 毎日、小高い丘の上で、 真実を叫ぶがいい。 高らかに歌うがいい。 思い上がった声を出すがいい。 翌日の壁新聞の片隅に 君を諌め、揶揄する記事が載っていたら、 しめたものだ。 黙殺しておけない者になったのだ。 挑発のボルテージを上げるほどに、 件の紙面が執拗に反応し出したら、 君は、もはや主役だ。 ニュースも稀な欠伸だらけの寒村で、 何か書いてやりたい「気位の筆」を 動かし、踊らせたのだから、 村の活性化と言うべきだ。 まずは、ひとつの文化活動だ。 |
2010年6月26日(土)
太陽の熱を間近に感じた。逃げ場のない真夏だった。 @岩手山麓
鍵を差し込んでも、開かない扉。 弾を撃ち込んでも、倒れない的。 牢へ叩き込んでも、自由な精神。 そんなものに出くわしたら、 何か変だと感じることだ。 何かある、と悟ることだ。 ところが、 足し算と引き算しか知らない者ほど、 ムキになる。 無用に鍵を回し続ける。 無駄な弾を撃ち続ける。 無残な拷問など続ける。 結局、解決の糸口を失い、 こじらせ、壊す。 違和感を覚えたら、 さり気無くその場を離れるセンスこそ、 大人の基本なのだが、 なまじ腕力を持つ無教養に限って、 馬鹿な汗を流し、ますます苛立ち、 自滅する。 |
2010年6月25日(金)
真夏日へまっしぐらの盛岡を離れ、下北半島を北上するほどに冷涼。最後まで強靱な晴天。 @青森県(尻屋崎)
僕ら夫婦は、 最果ての岬で、 梅雨の晴れ間の大海原を見渡した。 「2010年の、6月も下旬に、 二人でこんな旅をすると、 あなたは確信していたかのようだわ。 この一年、今日という日を思い描いて、 着々と準備したのね。 私にさえ本心を隠して、 こんな休日を目論んでいたのね」 「いや、そうじゃない。 流れとやらに身を任せていたら、 こんな休日が転がりこんだのさ」 「だから、あなたは、 誰かにとって忌々しい人なのよ。 わけもなく憎まれるのよ」 僕らは、ふふっと笑って、 寄せる波が絶えるまで、 水平線を眺めた。 |
2010年6月24日(木)
朝方は音を立てる雨。雷注意報。しかし空の回復は目を見張るばかりで、満点の夕暮れ。 @岩手山麓
いつもの小料理屋に 雨上がりの夕風が入る。 冷えた純米酒がうまい。 目の前の刺身包丁が ふと止まって、呟いた。 「何を言われても、堂々としていることです。 何をされても、お陰様でと笑うのです。 これまで通り、人に愛されて働けるなら、 何がどうでも、いいじゃありませんか」 わたしは頷いた。 「たかが知れた通り雨ですから」 (そうですとも) ふぉふぉふぉふぉと包丁が笑った。 店のテレビでは、サッカーや選挙だ。 世界のすべてのように告げている。 私一匹、その騒ぎに紛れ込み、 まんまと寛いでいる。 来たる日の美酒は、店の棚に預けてある。 |
2010年6月23日(水)
未明には大雨警報も出たが、まずは小雨程度。雷鳴も無く、収束。 @岩手山麓
魔法の杖を持たされると、 人は、早速使いたがる。 誰かに何かを与え、 誰かから何かを奪う。 それで自尊心を満たすように 来る日も来る日も、 与えて恩を売り、 奪って力を示す。 愚かな者ほど杖を振り、私憤まで晴らす。 あからさまな殺生与奪に酔いしれる。 さて、老いて杖を失うと、 与えた理由や奪った理由など 説明できるはずもなく、 ただ、おろおろと、しどろもどろに、 汚れた過去を追認するだけだ。 そんな虚しさを味わいたくなければ、 器では無い者に杖を渡さぬことだ。 |
2010年6月22日(火)
西から大雨の気配。撤収モードの陽射し。気温だけは28度3分(盛岡)で夏の盛り。 @八幡平
群の中に生きているとね、 人は、人の地位を恐れる。 自らの地位を守るために、 誰かの心証とやらに怯え、 災いが及ばぬことを祈る。 心にも無い言動にはしる。 聞き耳を立て覗き見して、 報告に勤しみ密告に励む。 陰湿な苛めに知恵を絞る。 成すべきことを忘れ果て、 舞台の裏が全世界になる。 観客を忘れて暗闘に酔う。 立ち位置を争い刺し合う。 実に空疎な大伽藍なのだ。 その正体を熟知する者は、 群の中にあって自由人だ。 もはや何ものも恐れない。 恐れないから迷いも無い。 迷わないから刃物になる。 そういう狂気が一番怖い。 誰も触れたがりはしない。 地位という幻が惜しくて。 |
2010年6月21日(月)
梅雨ではあっても、雨は降らない。これといった陽射しは無くても蒸し暑い。結局、夏日(盛岡市) @姫神山麓
胸に何かをぶらさげたり、 肩に何かをのせていたり、 そんな人間が投げる球は、 実に規則通りのボールだ。 ところが、自由な個人は、 予測不能の魔球を投げる。 日々の風や雲行き次第で、 不規則に揺れて変化する。 緻密な計算で狙い球を絞る打者は、 たいてい、魔球の餌食になるものだ。 |
2010年6月20日(日)
蔵王は蒸し暑く、予想された雨も降らず、白濁の夏空だった。岩手に戻ると雨の痕跡。 @山形県
一番苦しい時代こそ、 最後まで記憶に残る。 その時代を愛する者と乗り切った記憶は、 生涯の宝になる。 振り返るほどに、 熱い涙が溢れ、 力がわいて来る。 生きて来た甲斐があったと思える。 だから、今、 目の前に立ちはだかる馬鹿馬鹿しさなど、 微笑んで抱きしめて接吻して おさらばできるほど、 他愛のないものだ。 所詮、思い出にさえならない日々だ。 ならば、せめて、 純粋な困難に挑む時を自らに与え、 人生の空白を埋めることだ。 |
汚れた沼に ハクチョウが舞い降りると、 沼は、いかがわしくも甘い餌を与える。 その味が忘れられなくて、 季節のたびに ハクチョウは濁った沼に通う。 やがて純白の羽根に、 刺青のような模様が浮き上がる。 ハクチョウよ、 お前が、いくら潔白を主張しようと、 もう遅いのだ。 いくら羽根をむしり取っても、 黒い過去は消えない。 もはや沼の一部なのだから。 断罪の日は近い。 (怯えて待つがいい) |
KTM250EXC−F 撮影日:2009年6月19日
2010年6月18日(金)
青空は無かった。しかし、陽射しは強かった。曖昧な夏日だった。ただ、蒸暑さだけは梅雨の証だった。 @岩手山麓
蹴球も組織も戦争も 同じだ。 たまさかの成功に喜び勇んで、 我を見失い大それた夢を見る。 砂粒ほどの可能性を脹らませ、 歴史的な大行事に盛り上げる。 目を疑う程の犠牲を出しても、 逆転を信じて命を削り続ける。 錦の御旗のもと大博打に酔う。 決めつけた結末を待ち切れず、 勝利を叫ぶ予定稿が溢れ出し、 興奮の渦に真実は飲み込まれ、 人々は歓喜のゴールを妄想し、 理性を嘲笑い道理を破壊する。 もはや結束ではない。それは狂信だ。 もはや団結ではない。ファシズムだ。 |
2010年6月17日(木)
梅雨の晴れ間。陽射しは強かったが、それを遮る雲もあった。結局、夏日に届かず(盛岡) @盛岡市
日々の空から 逃れることはできない。 優しさも嶮しさも ありのままに受け入れるだけだ。 今日の光を浴び、 今日の雨に濡れ、 明日の空の蒼さを思うばかりだ。 けれど、ただひとつ、 今日の風は、思いのままだ。 目を閉じ、 心を広げ、 受け止め、 舞上がる。 呼吸し、流れる大気に寄り添い、 天空の一点にくつろぐ。 時に押し寄せる険悪な風さえ さり気なく受け止め 滞空の力とする。 風が止めば、墜ちるだけだから、 私は、劣悪な風など厭わない。 嵐さえ楽しむことを覚えたのだ。 |
2010年6月16日(水)
そうさ、夏だったよ。吹き出す汗に「梅雨」の凱旋を思ったよ。 @盛岡市
厄介な問題を抱えた前戦には たいてい無名の将校が配属される。 命令には絶対服従のタイプだから、 何とか結果を出そうと、 部隊が全滅するまで頑張る。 で、さんざんの修羅場の末に ひと区切りついたところで、 精鋭の機甲師団がやってくる。 颯爽と降り立つのは、 エリート将校と相場が決まっている。 「御苦労」のひと言で 件の将校はお払い箱、というのも 実に予定通りだ。 さて、雲の上のことなど知らない兵隊は、 今日を生き抜くことで精一杯だから、 誰が部隊を動かしているのか、 そんなことには無頓着だ。 手持ちの弾丸と煙草の数が多いほど幸せだ。 とりあえずの武器。束の間の安息。 それがすべてだ。 ※本文と画像は一切関係ありません。 |