イワテバイクライフ 2012年5月後半
2012年5月31日(木)
盛岡は最高気温25度で夏日。でも、数字じゃないんだ。涼やかな風にとけた太陽の熱。その心地よさは、北国のこの時季だけの感触だ。
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ある日、突然、空は開ける。 すると、俄然、道は直線だ。 だから、僕ら、歓喜の加速。 失われた歳月を取り戻すように、 彼方の眺めを引き寄せる。 至福の季節を纏って走る。 嗚呼、あの波瀾の日々は、 この瞬間に至る伏線だったなんて、 あまりに手の込んだ物語じゃないか。 |
MOTO GUZZI 850GT @青森県との境 |
2012年5月30日(水)
午前中は、雲と晴れ間が譲り合っていたが、午後には急速に空は開け、劇的な雲の乱舞が見られた。涼やかな夕暮だった。
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居間の電話が鳴った。 真夜中だった。 身構えて受話器を取ると、 もの静かな女の声だった。 「御存知でしたか? 悪魔は放逐されるのです。 多くの人が力を出したのです。 でも、油断してはなりません。 次の闇に目を凝らすのです」 私は、心の安全装置を外すと、 窓を細く開け、 夜風を銃口におさめた。 そんな夢を見た。 |
YAMAHA YB1(2スト) @盛岡市近郊 |
2012年5月29日(火)
曇り空を告げる朝の天気予報も、どこか信用し切れない雨の気配だったが、昼過ぎから順調に回復。清々しい夕暮。最高気温19度6分(盛岡)。
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この地の仕組を語る前に この天空の動きを眺めたことはあるか? この地の文化を語る前に この一面の香りを呼吸したことはあるか? この地の未来を思う前に この瞬間を強く抱きしめたことはあるか? (すべては眼前にある) |
HONDA Ape100 @岩手山麓 |
2012年5月28日(月)
さすがに極上の晴天が続いた後は、雲に覆われる。午後には小雨となり、夕刻には雷鳴まじりの夕立。
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幾度知らされても 知ろうとしない者は、 思い知らされることになる。 繰り返し見せられても、 見ようとしない者は、 目に物見せられることになる。 先送りの果てに待つものは、 とんでもなく恐ろしい。 |
BMW HP2 @岩手山麓 撮影日2008年5月29日 |
2012年5月27日(日)
岩手の内陸は、ほぼ夏日。白濁の青空。強い陽射し。その割には爽やかな大気だった。
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理想が、どんどん崩れる。 目標から、ずるずる遠ざかる。 それでも挑み続ける。 いいんだよ、それで。 其処が一番確かな土台なんだから。 スタートラインなんだから。 自分の現状を 克明に受止めようじゃないか。 |
2012東北トライアル選手権シリーズ第3戦・岩手大会(一関市・室根山) ライダー:米田選手(国際B級優勝) |
2012年5月26日(土)
快晴。最高気温22度4分(盛岡)とは思えないほど陽射しは強かった。まあ、そこが北国の初夏なのだが。東北六魂祭開幕。
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「た、大変だぁ」 と男が転がり込んで来た。 見知らぬ顔だった。 よほど走ったらしく息が荒い。 コップの水を飲み干すと、 途切れ途切れに話し出した。 「あんなことは、 見たことも聞いたこともない。 とにもかくにも凄いことだ。 とてつもないことだ。 言葉になんかできないことだ」 私は、絵筆を差し出した。 「では、見たことを絵にしてくれ」 男は、少し戸惑って、受け取った。 力を込めて描き始めた絵は、 見事なまでにリアルな太陽系だった。 そんな夢を見た。 |
MOTO GUZZI 850GT @盛岡市 |
2012年5月25日(金)
回復への妥協も無い曇天だった。当然のように昼前から水滴などばら撒き、夕刻には小雨になった。どこか優しい五月雨(さみだれ)ではあったけれど。
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「季節にとけたくて飛び出す」 それも素敵だが、 「誰かに会いたくて駆け出す」 それも嬉しいな。 |
HONDA ベンリィ50S @岩手山麓 |
2012年5月24日(木)
岩手全体気温上昇。所により夏日に迫った。けれど、吹く風は温厚で、時に涼しく、走るほどに気分はほぐれた。
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明暗は繰り返す。 光と影は連なり、 追う程に高速で流れだし、 眩暈(めまい)を誘う。 並走する季節は、 いつもの通り移ろうだけなのに、 眼前に迫る禍福に見入るうちに 人は老い、 歳月に置き去りにされていく。 |
MOTO GUZZI 850GT @岩手県北部 |
2012年5月23日(水)
盛岡あたりは、曇天ながら、かすかに明るく、吹く風も爽やかだった。県北(けんぽく)は霧雨に濡れていた。
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魂がふるえるほどの喜び。 そこへ至る道程の入り口には、 過酷な現実が横たわっているものだ。 (でもね) 闇があればこそ光はまぶしいのだ。 困苦で始まる船出に幸あれ。 |
YAMAHA YB1(2スト) @岩手山麓 |
2012年5月22日(火)
予報を信じ、てっきり曇るのかと思ったら、初夏の青空が持続した。日陰に通る風は絶品で、それなりの好日。夕暮れから曇り始めた。
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里には、表と裏がある。 表で決まったことは、 何故か破棄されていく。 表で染められた色は、 ひと晩で塗り直される。 表が用意した筋書は、 突如ひっくり返えされる。 その不思議は、 里に同化した者だけが理解する。 |
YAMAHA YB1(2スト) @岩手山麓 |
2012年5月21日(月)
金環日食でお騒がせの太陽は、盛岡あたりには夏日をもたらしたが、三陸沿岸の風は、どこかひんやり。
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見届けていたいものは、無尽蔵。 この地の季節の眺めだ。 見届けるべきものは、ただ一つ。 この地の明日の幸福だ。 遂に見届けられないものもある。 今日の風に匂う未来だ。 |
ヘリテイジ ソフテイル クラシック @岩手県沿岸北部 |
2012年5月20日(日)
涼やかで透明な朝だった。ところが、もはや夏の圏内ということなのだろう。日中は疲労感をもたらす陽射しになった。最高気温26度9分(盛岡)。
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5月、この道を通る度、 もう幾度思ったことだろう。 こんな楽園の日々は、 もう終わりなのかと。 こんな至福の薫風も もう吹き止むのかと。 そして、今日、 道を引き返し、 あの日あの時の私の思いを 拾い集める。 こうして、この地に生きている私が、 過去の絶望を慰めて回る。 振り向けば、山の上に エンジンの音が轟く。 「さあ、今日一日ここに生きろ」と。 |
HRC RTL260F(トライアル競技車両) @矢巾町 |
2012年5月19日(土)
晴れて明けたが、寒気の余波か昼前後は不穏な雲に心が騒いだ。夕刻は、すっかり爽やかな初夏だった。
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人は誰でも都をめざし 聳える塔の頂をめざし 眩いばかりの光を求め 馬車馬のように働くと 思い込む者がいる限り この辺境という楽園は 薫風の中でほくそ笑む。 利を追う者達に蔑まれ 誉を貪る群に見放され 原野に遺棄された獣は 清々しく駆け出すのだ。 |
MOTO GUZZI 850GT @岩手山麓 |
2012年5月18日(金)
テレビの予報では、傘マークが並んでいた。ところが、曇り空はほのかに明るく稀に陽も射した。水滴を感じることはあったが降雨には至らなかった。
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内容が無いとか、 薄っぺらだとか言われて、 がっかりすることはない。 なまじ存在感を漂わせ、 異端視されるより安穏じゃないか。 へたに核心に触れて 付け狙われるより安全じゃないか。 誰もが受け流せる軽さこそ、 こんな時代には ふさわしいのかもしれない。 (不幸なことだけれど) |
YAMAHA YB1(2スト) @盛岡市 |
2012年5月17日(木)
爽やかな朝だった。南風は乾いて優しく吹き渡った。ところが午後には天気急変。青空は消え小雨に濡れた。
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痛みも無く 喜びも無く 物語も無く 決められた距離を走り切ったところで、 残るのは、無為の印象だ。 |
スポーツスター883R @北上高地 |
2012年5月16日(水)
未明までの小雨に濡れた街に光は戻り、強い風は雲を押し流し、青空を広げた。最高気温18度6分(盛岡)
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流れ去る雲の形に惑わされるな。 その影と闘ったりするな。 いずれ雲ひとつない空の下で、 ひとり微笑めばいいのだ。 なにせ、お前は、 大地に打ち込まれた杭だから、 此処で風を浴び、雨に濡れ、 雪に埋もれ、凍り、とけて、 土に還るのだから、 束の間の光景に心乱してはならない。 |
MOTO GUZZI 850GT @葛巻町 撮影日2012年5月7日 |