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イワテバイクライフ 2013年3月前半


2013年3月15日(金)
そうそう、これを春というのだ。濃厚な青空は蜜をしたたらせ、陽射しの眩さは世界をまろやかに包む。最高気温8度2分(盛岡)を遥かに上回る精神温度だった。



  春は、春さ。
  其処は、其処さ。
  いつもの通りさ。

  ところが、
  おいらという気持ちが通りがかると、
  今日限りの春だ、山だ、道だ。

  じっとしていられない心の筆が、
  昨日とは違う色に染めていくのさ。

  (一度限りの風さ)
Harley-Davidson XL883R @岩手山麓

2013年3月14日(木)
午後には晴れるという予報だったが、どうしてどうして、しぶとい雲が跋扈していて、夕空を味わい深くした。最高気温3度5分(盛岡)は2月下旬並み。それでも日の長さに救われた。



  剃髪の大男は、広間の隅に端座し、
  私を見据えて言った。

  「不思議なことがあるものです。
  見えてきてしまうのです。
  人と人の縁とでも申しましょうか。
  その強さ弱さ、濃淡まで、
  どうにも鮮やかに見えてしまうのです。」
  ところが、と、男は目を細めて呟いた。
  「あなた様には、それが見えない。
  一切のものと無縁であられる。」

  そんな夢を見た。
MOTO GUZZI V7 Classic @岩手山麓

2013年3月13日(水)
朝方、曇り空にとけこんで岩手山はあった。午後になって小雨断続。陰鬱なれど、春の塵を洗う雨滴なり。最高気温4度6分(盛岡)であれば、可とする。



  まあ、打ち合わせは
  いちおうしておこうね。
  いざ、撃ち合い、斬り合いが始まると、
  段取りなんかひっくり返るけれど。
  (その程度に考えておこうね)

  ところが、
  打ち合わせこそが
  仕事のすべてのように思い込む石頭が、
  戦(いくさ)本番をめちゃくちゃにする。
  作文した方針とやらに縛られているから。
  (それも計算に入れておこうね)

  結局、辻褄を合せるのは、
  いつも兵隊の臨機応変(アドリブ)だ。


  ※本文と画像は一切関係ありません。
HONDA Monkey @盛岡市

2013年3月12日(火)
昨日の真冬への後退を打ち消すように青空は微熱に霞み、四月並みの陽気。最高気温10度(盛岡)を、にわかに信じられないのも純情のひとつ。



  人は、生きているだけで、
  誰かに嫌われる。

  それは、雨に濡れるようなものだ。

  あなたの人格のあれこれではなく、
  あなたが、誰かにとって不都合な場合、
  あなたは、ある日、殊更に疎外される。

  胸に手を当て、心を鉛で埋めるより、
  屈託なく微笑み合える仲間と、
  日々を楽しめれば、それでいい。

  雨を怖れず
  堂々陽光に顔を向けていればいい

  (居場所はいくらでもある。)
Harley-Davidson XL883R @盛岡市近郊

2013年3月11日(月)
東日本大震災からまる2年。あの日によく似た一日だった。気温は瞬間プラスになっただけ。ほとんど氷点下の一日(盛岡)。青空はあったが、主役は小雪含みの雲だった。
※画像は昨年撮影したものです。



  人は生きている。
  同様に、海も生きている。

  人が呼吸する様に、
  波は寄せ、引いていく。

  初めと終わりの狭間に生がある限り、
  人は幸せを求めて幾度も変わり、
  新しい命をまねき、育み、
  昨日以上の希望を積み上げ、
  胸板に春の波濤を受け止める。

  その思いを試すように、
  海は海であり続ける。
  顔を変え、声を変え、息を変え、
  今日も人の覚悟に迫って来る。
MOTO GUZZI Clifornia Vintage @岩手県三陸沿岸 

2013年3月10日(日)
青空なんぞは、沿岸のごく一部だった気がする。内陸は、朝の雨が吹雪に変わった。沿岸は、防風林をなぎ倒さんばりの強風だった。



  その一日は、
  今日も此処にある。

  カレンダーの中の
  特別な一日ではなく、
  とめどない波となって
  記憶は今日も押し寄せる。

  
私に出来ることは、
   この海の言葉を
   この身に受け止め、
   この地に生きることだけなのだ。
   
   一日だけの鎮魂歌は口にしない。
   日々移ろう海の相貌に向き合い、
   ひたすらに明日を思い描きたい。
   
Beta Evo 2st @岩手県三陸沿岸

2013年3月9日(土)
濃度は低いものの青空が広がった。鮮明度は落ちるものの山の眺めはあった。最高気温7度(盛岡)だから、道だけは一層乾いて広くなった。



  庭を支配する者は、
  管理しやすい草花や樹木を配置する。
  己の思惑通りに
  色付き、咲き乱れる世界をよしとする。

  支配する者自身が
  下僕に見えてしまうものを
  植えることはない。
  どれほどの姿態、品格、薫香であれ、
  庭に在ってはならない。
  支配する者の誇りを揺さぶる存在など
  禁忌にほかならない。

  主の器を超える庭は、
  ついに生まれない。
HONDA Monkey @岩手山麓

2013年3月8日(金)
濃い霧の中に一日は立ち上がった。折からの小雨か、とけ出した雪のためか、どこも水浸しだった。夕刻の陽射しも照らすものを失っていた。最高気温10度8分(盛岡)。



  広大な猟場が現われると、
  見知らぬ群がやって来て、
  狩りの主役に躍り出る。

  あたかも百年の奮闘の証の如く、
  数日の汗で勲章をぶら下げ、
  消えてゆく。

  この地の自然を知り、
  歴史を胸におさめ、
  人々の思いに寄り添う者も、
  無縁な輩のあからさまな割り込みと、
  浮ついた振る舞いを
  じっと眺める他はないのか。

  こんな騒動さえ忘れ去られた未来のある日、
  千年に一度と言われたあの日に向かって、
  とめどなく涙を流し、合掌する者でいたい。
Harley-Davidson XL1200R @岩手山麓  ※画像は過去のものです。

2013年3月7日(木)
時折、もったいぶった薄日を見たが、愉快なこととは無縁の曇り空。その不透明な様は、どこぞの貧しい空気でも吸い込んだのか。救いは7度を越えた気温(盛岡)。田の雪も沈んだ。



  人も季節も
  さしかえるのなら
  一切を変えないといけない。

  純白の雪原に
  一羽置き去りにされた烏。
  品格ある輪に
  一匹だけ取り残された猿。

  一面が清浄であるほど、それは醜い。
  全体が聡明であるほど、それは暗い。

  (むごい晒しものだ)
MOTO GUZZI 850GT @花巻市近郊

2013年3月6日(水)
気温はプラスで一日の幕を上げたが、もやもやと雲に覆われ、昼過ぎには小雨が降った。夕刻になって街は斜光に照らされた。最高気温が8度6分なら上出来。



  そうかい。
  もう10年になるのかい。
  今日の気分や思い付きを
  三拍子にのせて綴って
  歳月は流れたってわけだ。

  では、次の10年だが、
  目の前のありのままを
  正確に写しとるがいい。

  何の変哲も無い出来事や眺めを
  一筆の濃淡で描いてみることだ。

  私情を離れて、
  眼前に過ぎゆくあれこれの
  香りや手触り、物語や真実を
  ひと息の言の葉に置き換えてみることだ。

  (本当の準備は、時を惜しまない)
HONDA ベンリィ50S @盛岡市

2013年3月5日(火)
何と言っても「啓蟄」なわけだから、ほんのり生ぬるい陽射しもあった。だが、空の大半は白く霞んだ冬の雲で、実際、雪も舞っていた。最高気温4度2分(盛岡)で屋根の氷も気のせいか薄くなった。



  思い返しちゃあいけない。
  思い返す必要も無い。
  そんな出来事が、ある。

  そんなものは、
  言葉にした途端、
  今日、此処に佇んでいることさえ
  憐れんだり、蔑んだりするから、
  金輪際、胸の内をうろつかせちゃあいけない。

  表裏無き雪の白さに染まって、
  今日という日のこれから先に道を広げ、
  上機嫌でいることが、
  老いていく者の作法じゃないのか。
HONDA ベンリィ50S @岩手山麓

2013年3月4日(月)
最高気温は盛岡で4度8分と大人しかったが、陽射しのやわらかさは4月を思わせた。車の中では明らかに太陽の熱を感じた。サンルームの温もりだった。



  神様は、
  ひとりひとりに
  筋書をお与えになる。

  その役になり切り、
  迷いなく台詞を飲み、
  忠実に生きて見せた者が、
  最後のページに辿り着ける。

  波乱万丈のすべては、
  ラストシーンへの算段なのだ。
HONDA ベンリィ50S @岩手山麓

2013年3月3日(日)
岩手広範囲に青空はあったようだが、陽射しを冷やす風が強く、最高気温は盛岡で3度2分ながら、どこか薄ら寒いだけ。裏道を占領する雪や氷は健在。



  空は変わる。
  風も変わる。
  時も変わる。
  なにより人が変わる。

  今日の此の場に立つ者は、
  昨日に較べ
  踏み込んだか、後ずさったか。

  日々の移ろいを
  すなわち前進とするために
  明日も、明後日も、
  いつも通りの岩
  いつも通りの山
  いつも通りの道に向き合う。

  迎え出でるは、
  とめどなく寄せる波音の直進。
Beta Evo (2スト) @岩手県三陸沿岸

2013年3月2日(土)
東北に「春一番」の呼び名は無いが、確かにそれを思わせる強風だった。交通は天地に乱れを生じ、秋田新幹線が脱線した。かすかな青空の記憶など、瞬く間に飛ばされた。



  戦は、あらかた決着がつき、
  日が暮れようとしていた。
  西に迫る山並みは、残光を背に
  漆黒の影となって屹立し
  勝者と敗者を見下ろしていた。
  生臭い血糊にまみれて、
  雑兵も武将も、馬さえも地に伏しながら
  「カァット」の声を待っていた。
  助監督はカメラの横に陣取る黒眼鏡に
  (まだですか?)と当惑を向けた。
  監督と呼ばれる男は、顎を横に振った。
  「まだだ。もう一戦の予感がする。
  そのまま夜を越えるのだ。
  明日の一番鶏を合図に
  朝陽も頭を伏せる筒音を聞くことになるやもしれぬ」

  そんな夢を見た。
YAMAHA YB1(2スト) @岩手山麓

2013年3月1日(金)
面白くも可笑しくも無い、まったく愛想の欠片も無い曇天。それでも最高気温が5度3分(盛岡)だから街の氷雪も水っぽくなった。宵闇を雨が濡らした。



  おてんとう様の下に己を差し出すなら、
  ひと筆ひと息で、すぱっとやることだ。

  回りくどいだけの生真面目なんぞ、、
  大欠伸され鼻で嗤われてお終いだ。

  その辺に転がってる台詞を拾い
  塩梅するだけじゃ話にならない。

  今日という今日の、
  遂に巡って来たという瞬間の、
  道の手応えや山野の顔色
  雨雪の具合や様子、風光の色彩や感触、
  何よりその場に至った自分の有様を見据えて、
  怠りなく鍛え上げることだ。

  一切を受止めた胸の奥底に、
  立ち現れる一口の刀に
  人を飲む深さや重さや艶めき
  不用意な指など落とすほどの切れがあるか。
  そもそも、その思いというものに、
  言葉にするほどの値打ちがあるのか。
  よく吟味して、削りに削って磨き上げ、
  もはや悔いはないと心を決められるのなら
  颯爽と走り出せばいいのさ。

  (以上、自戒の備忘録より)
HONDA ベンリィ50S @雫石町

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