TOP

イワテバイクライフ 2014年2月後半


2014年2月28日(金)
頑なな冬も、三寒四温のモードに入って、今日は思い切り春へ進んだ。最低マイナス0度7分、最高8度7分(盛岡)。この薄い雪景色で三月を迎えられれば、もはや「逃げ切り」も同然。



  いる。何処にもいる。確かにいる。
  カミソリと呼ばれる厄介者が、いる。

  理屈の網を十重二十重に張り、逃げ場を奪い、
  ギリギリと問い詰め、追い込む者が、いる。
  攻めるだけ攻めて、廃墟を残す者が、いる。

  そんな災難に遭わない手は、ある。

  斬るに足る者にならないことだ。
  どこまでもノホホンと御目出度く、
  浮世を離れて笑っていれば、
  牙をむく群も離れて行く。

  (詮議無用の直線街道を、ささっ、鼻歌で参ろう)
MOTO GUZZI 850GT @岩手山麓

2014年2月27日(木)
そりゃあ、地上の気分も生きものだから、あれこれ移ろうことでしょう。この時季に最高気温が8度6分(盛岡)という気分もあるでしょう。ただ、やがて迎える寒の戻りの辛さまでは、考えていないでしょう。



  記憶はね、
  たぶん、どれもモノクロームなんだよ。

  でもね、そんな思い出に色が滲んでいたら、
  あの日あの時を、今も、君が愛しむからだよ。

  これからも、ずっと抱きしめていたという思いが、
  遥か昔日の瞬間に色彩を与えるんだよ。
Harley‐Davidson XL1200CA @盛岡市近郊

2014年2月26日(水)
異国からの汚染大気による不透明を、春霞と思い込める「寛容」や「鈍感」ば、この国の人々の特異な資質だろう。しかし、まあ、最高気温8度7分(盛岡)は、皮膚に浸透する春の劇薬で、来週の寒の戻りが恐ろしい。



  誰かが、世界に向かって異議をとなえると、
  見慣れぬ一団が気色ばむ。

  「我等を侮辱するのか」と腕をまくり、
  「一戦交えようというのか」と凄んでみせる。

  (唖然としてはいけない)

  自分が世界の中心だと思い込んでいる群にとって、
  広く世界に異議をとなえる者は、
  すなわち看過できない者になるらしい。

  そのように、この地上には、
  無数の「世界」がひしめいている。

  (未開のジャングルで一般論は通じない)
Harley‐Davidson XL1200CA @花巻市

2014年2月25日(火)
朝方は、憂いの無い青空と春を運ぶ雲の流れ。昼前後は、吹雪もどきや、ためらいがちな水滴。夕刻には回復。最高気温は肩すかしの3度7分(盛岡)。



  大概、そうなる。
  舞台中央への執着心は、劇団をひとつ飼い始める。

  自分の言葉に深く頷く旧知の役、AとBとC。
  自分の行動を礼賛する手下の役、AとBとC。
  自分の天敵を駆逐する懐刀の役、AとBとC。
  自分の値打ちを高める装飾の役、AとBとC。
  (配役と筋書は自在だ)

  あたかもサーカス団のように、
  笛や太鼓を轟かせ、村から村を渡り歩き、
  今日も「明るく利口で正しい私」を上演する。
HONDA Monkey @岩手山麓

2014年2月24日(月)
完璧な晴天で一日は始まった。氷点下7度9分をプラス5度6分へ押し上げる力は、陽射しの力量と言うより大気の心変わりだ。風は明確に春を意識し始めた。



  常識を異にする者たちは、
  言語を異にしている限り、
  深刻な対立には至らない。

  なまじ、意味が通じると、
  相違は不穏の空気を招き、
  話し合う程に血が流れる。

  曖昧だから救われることもある。
  突き詰め、追い込むことなかれ。
  (ぽかんとゆるい平和であれ)
HONDA Monkey @岩手山麓

2014年2月23日(日)
最低気温マイナス7度1分より最高気温プラス3度(盛岡)に意味がある。日中の大気が目覚めれば、3月どころか4月も間近なのだ。さあ、春への加速だ。



  春が近付くほどに
  いつもの道が現われる。

  だが、しかし、だ
  行く我は、どうなのだ。

  時の風に削られて、
  旅するほどに移り変わる。

  明日の姿どころか、
  今日の心さえ別の誰かだ。
Beta Evo 2st @花巻市

2014年2月22日(土)
放射冷却による冷え込み。最低気温マイナス8度9分(盛岡)は、さすがに春から一歩後退。それでも昼過ぎまでは完璧な青空と陽光だった。緩やかに薄雲が夜に向かって広がった。



  ムカデの大群が庭に押し寄せ、
  家の中を埋め尽すくらいなら、
  塀の外に餓狼がうろつく方が
  よほどマシだという了見では、
  遂に、この地上に春は来ない。
BMW HP2 @岩手山麓

2014年2月21日(金)
午前中は青空と雲がせめぎ合った。昼過ぎには、晴天の印象が優勢となったが、山岳地帯までは制圧できなかった。最高気温はプラス1度6分だったが、街は、かなり乾いた。


  
  老いて、語らず動かぬ者。
  彫像となることを期待されるようになったら、
  腹を決めよう。

  押し寄せる時代の波の中で、予言めいた言葉は慎むのだ。
  興亡をかけた一戦のもとで、最前線へ心など奔らせない。
  衰弱し色褪せる群の真中で、栄華の記憶を歌い上げない。

  ありのままの惨状に、透明な影となり、
  一滴の涙も落とさず、立ち会うことだ。


  ※ 当然のことながら、震災とは一切関係のない心情です。念のため。
HONDA ベンリィ50S @岩手山麓

2014年2月20日(木)
プラス1度6分(盛岡)の最高気温も、2月も下旬となれば、肌触りが違う。春霞のような大気に馴染む陽射しは柔らかく、しかも無風の穏やかさで、希望の芽を膨らませる。



  レンズに映るものを撮るわけじゃない。
  すでに心に決めて来た今日の私を
  そこへ迎えに行くんだよ。

  ほら、冬の夕暮れに待っていた。
  ほら、駆け寄れば、微笑む。
  ほら、約束通りだ。

  もう、ずっとずっと、
  この地を離れないと決めたあの日の私が、
  今日の私を待っている。
  じっと信じて待っている。

  花の季節(とき)を思って、
  いつもの道で待っている。
HONDA ベンリィ50S @岩手山麓

2014年2月19日(水)
朝方は、瞬間的な吹雪もあったが、やがて青空が滲み出て、この厳冬の大地に、取り返しのつかない蒼い天空を見せてしまった。最高気温プラス1度8分(盛岡)の幻覚か。



  海の底の亀裂の奥深く、船体を落ち着けると、
  艦長は、酸素を惜しむような呼吸で語り出した。

  厄介な事案の発生に目を光らせる者は、
  自慢の防御ネットとやらを張り巡らせ、
  闇から届く噂話に耳をすます。
  (それで安心する素人は、多い)
  しかし、手に入る秘密に毒が紛れ込めば、
  神経は麻痺し、自らの秘密まで晒すことになる。
  月の裏の管理は厄介だ。

  その時、レーダーは頭上の危機を告げた。
  超深海爆雷が雪の様に降って来る。

  「つまり、こういうことだ」と艦長は覚悟し、
  鋼鉄の棺は戦闘態勢に入った。
HONDA ベンリィ50S @岩手山麓

2014年2月18日(火)
東京周辺の大雪の後始末を横目に、岩手山麓は、積み上げた雪を削り鎔かすモードに入った。ここまで、こんなに心軽い冬は、稀だ。最高気温プラス0度1分(盛岡)でも、風は、どこか柔らかい。



  半個ボールをずらす。
  相当きわどいところに、外す。

  ひとつのストライクより、
  その後の対戦を支配する一球が、
  あればいい。

  (ゆっくり料理しようじゃないか)
HONDA Monkey @岩手山麓

2014年2月17日(月)
沿岸に大雪を降らせた雲は遠ざかり、岩手全体に断片的ながら青空が現われた。最高気温プラス3度(盛岡)で風が強いとあれば、街の雪は、解けもせず凍りもせず。岩手の二月も立ち往生。



  旅の果てに聞く子供たちの数え歌は、
  耳慣れない言葉だった。

  異邦人の私を憐れんで、
  村外れの小屋の古老は忠告してくれた。

  よいか、けして競ってはいけない。
  万一、わずかでも先に出ようものなら、
  村の誇りや面子の名のもとに
  粗末な裁判にかけられ、檻に叩き込まれ
  挙句の果てに神隠しだ。
  愛想を絶やさず、言葉は忘れて、息を潜めるがいい。
  夜毎の乱痴気騒ぎに紛れ、
  出発の日の算段を整えるがいい。
  都の空を仰ぐまで、無駄は、およし。

  (そんな辺境の記憶が、今となっては懐かしい)
HONDA ベンリィ50S @岩手山麓

2014年2月16日(日)
首都圏から鳴り物入りで送り出されてきた大雪の嵐。一夜明けてみれば、盛岡の街には特段の変化もなく、日中は空気も和らぎ雪解けが進んだ。テレビで沿岸部の分厚い雪景色を見て呆然。



  夕暮れの峠道。
  蒼白の大気を叩き割って、
  三頭の騎馬が駆け上がって来る。

  眼前に雪煙を巻き上げて止まると、
  馬上の陣笠が、私を見据える。

  「この先の丘に怪しい人影を見なかったか」

  「はて、気付きませなんだ。何事でございますか」

  傍らの役人らしき者が、忌々しげに吐き捨てた。
  「己の夢の為に、藩の法度を悉く破りおった者じゃ」

  目を丸くして立ち尽くす旅人に、もう用は無いと、
  追っ手は宵闇に刺さって行った。
HONDA ベンリィ50S @盛岡市

このページの先頭に戻る