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イワテバイクライフ 2014年3月後半


2014年3月31日(月)
青空は戻った。昨日の雪もどきの残骸は、みるみる消滅し、街も道も乾いた。最高気温も11度6分(盛岡)だから文句は言えないが、夕刻の曇り空もあって、どこか寒々。



  もしもね、いつかね、
  この見渡す一面が、誰かに占領されてしまうのなら、
  知性に輝き、教養に富み、文化の香る人であってほしい。

  ただね、残念なことにね、
  他者の平和を蹂躙する者に、
  そんな遺伝子は期待できない。
  (人の歴史に貧しい数世紀は、つきものだ)

  いっそ、地中海の黄昏に生まれ変わろうか。
Harley‐Davidson XL1200CA @岩手山麓

2014年3月30日(日)
昼過ぎから風雨が強まった。日中は5〜6度(盛岡)で、このところの温暖を味わった身には辛かった。夜に入って、みぞれまじり。時折、叩きつけて来る風は、つまり、春一番の類なのか。



  日頃
  挨拶さえ出来ず、
  人を労うことも知らない者達が、
  別れの日を迎えた途端、大仰な宴を開く。

  そんな拍手は、うすらさむい。
  そんな花束は、うさんくさい。

  節目の儀式は
  日々の体温があって、はじめて成立する。

  (引きこもりの免罪符じゃあるまいし)
Harley‐Davidson XL1200CA @岩手山麓 ※撮影日は3月27日

2014年3月29日(土)
春霞とは、もう異質の、けだるい温もりだった。宮古の22度7分をはじめ、岩手各地で20度前後。初夏と言い切るより、違和感が先に立つ。岩手の大気は変質し始めている。



  私は、赦されているのだろうか?
  赦されて、今日の私であるのだろうか。
  それとも、
  あるがままの流れの瞬間に過ぎないのか。

  一日の意味は、
  風に舞い、道の果てに遠ざかる。
MOTO GUZZI 850GT @岩手山麓

2014年3月28日(金)
岩手の三月に、この春爛漫は掟破りでしょ。そりゃあ、ふわりと温もる大気は楽園のそのものだけれど、どうにも、らしくない感触。岩手の三陸沿岸各地、最高気温18度台。



  復興へ向う港は、
  新造船の白さが眩しい。

  それぞれの記憶の色を纏った舟たちは、
  あんなことがあったばかりに、
  白い器にリセットされ、
  昔のままの海の蒼さに戸惑い、揺れる。
MOTO GUZZI California Vintage @岩手県三陸沿岸

2014年3月27日(木)
もう気温なんかじゃない。大気が人を自然の中に誘い出し、遊ばせるようになったのだ。もはや三月とは別次元の楽園。最高気温18度3分(盛岡)。



  また、恋をした。

  イタリアの歌手
  Ornella Vanoni

  熱情を冷えたベールに包み
  幾多の悲しみを透明な涙に変えて、
  今日のあるがままを抱きしめる強さは、
  薄氷の様にはかなくて、切ない。

  ヒット曲 Perduto が好き。
MOTO GUZZI 850GT @岩手山麓

2014年3月26日(水)
春霞と解釈していたのは、ただの薄雲か異国の汚染大気だったのか。ともあれ、今日も気温は上がり、16度5分(盛岡)。でも、所詮は三月の数値。特段の春ではなかった。



  シンプルでいい。
  楽譜はね、それでいいんだ。
  とことん削ぎ落として、
  風に飛ばされるくらいシンプルにね。

  それをね、
  深く、やわらかい音色にしておくれ。
  この早春の朝にとけ入る魂を
  奏でておくれ。

  幾多の歳月の微粒子を
  今日という日の微熱を
  ひと息に込めて、さあ、語っておくれ。
Harley‐Davidson XL1200CA @岩手山麓

2014年3月25日(火)
最高気温だけはね、まあ、立派でしたよ。14度9分(盛岡)ですから。でもね、うすぼんやりの陽射しと天気雨と、やたらに強い風は、体感温度で2月へ後退した気分。



  言ってやりたいことは、
  誰でも腹にしまっている。

  ここぞという場面で
  がつんと一撃、繰り出したくて、
  日々鍛えて磨いて尖らせている。

  ところがね、
  そういう伝家の宝刀とやらを抜かせないように、
  やんわり、ほんわり、すり抜けて、
  結局、時間切れにするのが
  大人なんだよな。


  (武器なんて、先に使った方が負けだからね)
MOTO GUZZI V7Classic  @盛岡市近郊

2014年3月24日(月)
盛岡の最高気温が13度4分。青空と競り合うように雪原が広がっても、もはや勝負はあったのだ。怒涛の春なのだ。



  時季が来れば
  消えていくものがある。

  ところが、
  消えようもないものが年毎に累積されると
  酷い春を迎えることになる。

  冬の棘は、
  ひとつひとつ丁寧にとかしていかないと、
  桜吹雪は炎の渦と化す。
MOTO GUZZI 850GT @岩手山麓

2014年3月23日(日)
好転を渋る曇り空で朝を迎えたが、昼前には明確な晴天となった。夕刻、盛岡へ帰ってみれば、未練がましい雪の堆積の数々は消えていた。さすがに最高気温8度8分(盛岡)だったから。



  突き抜けて行く姿がある。

  追いかけることさえ忘れ、
  呆然と見送って、微笑み、
  ついには誰もが拍手する。

  みんなが、ひとつ、そういう後ろ姿を持てば、
  この地上に春は来る。
@花巻市(トライアルパーク)

2014年3月22日(土)
朝方は青い空を見た気がする。やがて薄雲がかかり、山々の眺めは曖昧になり、夕闇に雪が舞い、街は濡れた。最高気温5度7分(盛岡)。



  あなたの里では、それは、どんな響き?

  遥か遥か地平の彼方の風は、どんな声?
  幾つも海を越えた先の光は、どんな色?
  時空を越えて流れ行く雲は、どんな形?
  片道限りの旅の果ての夢は、どんな話?

  さあ、この春を吸って、
  ひと息の物語にしておくれ。
MOTO GUZZI V7Classic @岩手山麓

2014年3月21日(金)
岩手県沿岸北部は記録的な大雪。久慈では60cmを越える積雪。交通や電力に大きな被害。一方、盛岡は、積雪4cmという穏かさ。春の産みの苦しみ。



  美しく、優しく、明るい心を主人公にして、
  舞台を仕立て上げ、見守るうちに、
  色褪せ、穢れ、崩れて行く物語を
  見ることもある。

  良い種子は立派に育つと高をくくり、
  微笑みを浮べ成り行きに任せて眺めるうちに、
  とてつもない地獄が醸成されていたりする。

  善意の気分に安住する無為無策が、
  多くのものを見殺しにする。
HONDA ベンリィ50S @盛岡市

2014年3月20日(木)
午前中は白い霧雨。地上を濡らすだけの「雪のようなもの」だった。夕刻に至り、思い切り湿った大粒の雪となり、厚みを増し、ぐちゃぐちゃな世界となった。最高気温1度3分(盛岡)。



  精神の復興。
  流行り歌の題名の様に謳わないでくれ。

  その道程は、
  一度、廃墟と化した者のみが知る困難であり
  幾多の孤独の果てに叶うものだから。
HONDA Monkey @岩手山麓

2014年3月19日(水)
爽快な朝だった。昨日の雨に洗われた大地は、今日の陽射しを浴びて乾いた。午後は予報以上に雲が出たが、最高気温7度9分(盛岡)。油断して近付いた山麓で雪解け水に濡れた。



  イタリア北東部、国境の村。
  夕暮れのバールで爺さんが声をかけてきた。
  帽子から溢れる白髪をかき分け、
  カプチーノに砂糖をたっぷり入れながら
  表通りに停めた私のMOTO GUZZIを眺める。
  甘い気付け薬をかっと飲み干すと、
  ごく短いフレーズを口にした。

  「お前さんの人生に彼女はある。
  彼女の中にお前さんの人生があるのではない」

  直訳すれば、そんな意味だった気がする。
  「チャオ」と別れた後は、宵闇に続く一本道だ。
  私は、今宵のワインを思い浮かべ、
  オートバイのことなど、すっかり忘れていた。
MOTO GUZZI V7 Classic @岩手山麓

2014年3月18日(火)
午後には、折り重なる湿り雪を砕く降雨。その雫に冷たさは無く、ひたすら温和に街を洗った。沿岸の宮古では最高気温14度9分。春の扉をこじ開けた。



  想像で描くのも楽しいけれど、
  愛すべきものの今日の姿を記憶するには、
  そこへ私を立たせるしかないんだよ。

  そのために
  今日の雪を踏み、雨に濡れ、雲に潰され、
  それでも空を見上げなくちゃならないんだよ。
HONDA Monkey @岩手山麓

2014年3月17日(月)
昨日の分厚い雪をメロメロにしてとかす陽射しだった。もう、どれほど冬の残党が跋扈しても、戦況は決したのだ、と青空が告げた。最高気温7度7分(盛岡)。



  それぞれの地の文化は、
  その広さ深さに、
  折紙を付ける者の器にほかならない。

  (けして溢れることはない)
Harley-Davidson XL883R @岩手山麓

2014年3月16日(日)
盛岡は、朝から想定外の降雪に怯んだ。昼過ぎ、湿り雪を踏んで沿岸へ出てみれば、降雪は皆無。小雨に濡れていた波打ち際に、ほどなく薄日が射し、うっすら青空さえ現われた。



  その日に向かって一週間は流れる。
  その日のために心を砕き算段する。
  その日の手応えを思って自重する。

  その日を踏みしめ乗り越えるから、
  一週間が心底納得して暮れていく。

  (日曜日のある人生は、幸いだ)
@岩手県三陸沿岸

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